営業案件管理の設計|ステージ・確度・停滞をどう決めるか
入力項目を増やす前に、案件が進んだ・止まったと判断する共通ルールを作る
この記事のポイント
案件管理は「顧客一覧」ではない。1案件1行を基本に、ステージの入口・出口、確度の根拠、停滞理由、次回行動を揃える。営業3人なら更新習慣、5人なら定義と週次レビュー、10人なら権限・履歴・自動通知まで設計する。
営業担当が増えると、「あの案件はどうなった」「今月いくら受注できそうか」という確認が増える。原因はExcelかCRMかではない。案件の進み方と判断基準が人によって違うことだ。先に管理の設計を揃え、その後で最小の道具を選ぶ。
最初に「1案件」の単位を決める
同じ顧客でも、商品、契約、導入時期、決裁が別なら案件を分ける。一方、担当者との会話が複数あっても、同じ決裁で一つの受注を目指すなら一案件にまとめる。
- 分ける:提案内容、金額、導入時期、決裁者のいずれかが独立している
- まとめる:複数接点があっても、一つの契約判断に収束する
- 受注後に分ける:更新・追加提案は新しい判断が始まった時点で別案件にする
顧客単位と案件単位を混ぜると、一社に複数提案したときに金額も次回行動も上書きされる。スプレッドシートで始める場合の列設計は案件管理シートの作り方で具体化している。
ステージは入口と出口をセットで決める
「提案中」「見込み」だけでは担当者の解釈が分かれる。各ステージについて、入るための確認済み事実と、次へ進む条件を一行で定義する。
| ステージ | 入口 | 出口 |
|---|---|---|
| 未接触 | 対象企業・担当者を登録 | 相手と会話し、課題確認の場を設定 |
| ヒアリング | 課題確認の面談を実施 | 提案対象、時期、関係者を確認 |
| 提案 | 条件と金額を相手へ提示 | 懸念・比較条件・決裁手順を確認 |
| 条件調整 | 決裁に必要な論点が特定済み | 契約合意または見送り理由を確認 |
| 受注/失注 | 結果と根拠を確認 | 開始処理または再接触条件を登録 |
ステージは営業活動の回数ではなく、顧客側の意思決定がどこまで進んだかで置く。担当者が提案書を作っただけなら「提案」へ上げず、相手に提示した事実を出口証拠にする。
受注確度は確認済みの事実に結びつける
確度50%を「五分五分の感覚」として入力すると、担当者ごとの楽観・慎重さが予測へ混ざる。まず条件を固定し、過去実績が貯まったら同じ条件の受注率で更新する。
- 相手が解決したい課題を明言した
- 決裁者または決裁手順を確認した
- 予算・価格の論点を確認した
- 導入時期を相手と合意した
- 競合・内製・見送りを含む比較対象を確認した
- 次回の約束が日時と目的まで決まった
金額予測は「案件金額 × 確度」を足すだけでなく、確定売上、受注残、進行中商談を分ける。計算の全体像は営業パイプライン管理、確度条件の詳しい作り方は受注確度の決め方で解説している。
停滞は日数だけでなく、理由と次回行動で管理する
「14日更新がない」を検知しても、止まった理由が分からなければ責任者は動けない。停滞案件には理由コード、次回行動、担当、期限をセットで持つ。
| 停滞理由 | 次回行動の例 |
|---|---|
| 決裁者未接触 | 紹介依頼、決裁条件を質問 |
| 予算未確定 | 予算化時期、代替案を確認 |
| 社内優先度低下 | 再開条件と確認日を合意 |
| 競合比較中 | 比較軸と不足情報を確認 |
| 自社対応待ち | 成果物、担当、期限を確定 |
自由記述だけにせず、頻出理由を選択式にし、詳細だけ補足する。理由コードの設計例は営業案件の停滞理由コードで確認できる。
営業3人・5人・10人で運用を変える
| 規模 | 優先する設計 | 会議 |
|---|---|---|
| 3人 | 1案件1行、担当、ステージ、次回行動、期限 | 週1回、全案件を短く確認 |
| 5人 | 入口・出口、確度条件、停滞理由を統一 | 例外と停滞案件に絞る |
| 10人 | 履歴、権限、自動通知、集計責任者 | 責任者別レビュー+経営予測 |
人数は目安であり、案件数、商談期間、権限要件によって前後する。少人数でも複数部署が触る、高額案件の承認履歴が必要、引き継ぎが多いなら10人規模の設計が要る。
Excel・スプレッドシートとCRMの境目
最初からCRMを入れても、定義が曖昧なら入力欄が増えるだけだ。まずシートで管理単位と会議を試し、次の問題が繰り返すときにCRMを検討する。
- 同時編集や上書きで履歴が失われる
- 担当や役職ごとに閲覧・編集権限を分けたい
- 期限通知やメール履歴を手作業で転記している
- 案件数が増え、フィルターや集計が重い
- 会計、問い合わせ、契約など他システムと連携したい
機能と費用を比較する前に、必要な運用を決める。違いはSFAとCRMの違い、製品選定は中小企業向けCRMの選び方で整理している。
30日で案件管理を作り直す
- 1週目:直近20案件を集め、顧客と案件の単位、現在のステージ名、確認に使う証拠を書き出す
- 2週目:ステージの入口・出口、確度条件、停滞理由、必須項目を一枚にする
- 3週目:実案件をシートへ移し、週次会議で入力漏れと判断のずれを確認する
- 4週目:使わない列を削り、責任者・更新期限・CRM移行条件を決める
最低限の項目は、案件ID、顧客、案件名、担当、ステージ、金額、確度根拠、停滞理由、次回行動、期限、最終更新日だ。列の数を競わず、会議で実際に判断へ使ったものだけを残す。
案件管理の完成条件
責任者が「今月の見込み」「止まっている案件」「誰の判断待ちか」を同じ画面から説明でき、営業担当が次に何をするか分かる状態が完成条件だ。日報を集計して終わらせず、案件と経営指標へつなぐ方法は営業日報をKPIへ変える方法も参考になる。
よくある質問
営業案件のステージは何段階が適切ですか?
段階数より、各ステージの入口と出口を客観的に確認できることが重要です。最初は未接触・ヒアリング・提案・条件調整・受注/失注の5段階程度から始め、同じ案件が長く滞留する区分だけ見直します。
受注確度は営業担当の感覚で入力してはいけませんか?
感覚を完全に排除する必要はありませんが、経営予測へ使う数値は確認済みの事実に結びつけます。課題、決裁者、予算、時期、競合、次回約束などの条件を固定し、担当者が変わっても同じ判定になる状態を目指します。
ExcelからCRMへ移行する目安は何ですか?
人数だけでなく、同時編集、履歴、権限、通知、他システム連携の必要性で決めます。Excelで更新ルールを検証し、上書き事故、履歴不足、対応漏れ、集計負担が繰り返すならCRM移行を検討します。
泉 款太(いずみ かんた)
株式会社SalesDock 代表取締役
慶應義塾大学法学部卒。スタートアップ、ラクスル、リクルート(SUUMO)を経て2025年に独立。 中小企業の経営・営業・業務・データをつなぐ事業基盤の設計と実装を支援。 不動産・製造業・クリニックを中心に、累計40社以上の支援に携わる。
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本文中に一次資料へのリンクがある数値は、リンク先を出典としています。 リンクのない業務設計、判断基準、実務上の目安は、SalesDockが累計40社以上の支援と自社運用で得た知見を一般化したものです。 個別企業での成果を保証する数値ではなく、条件によって変わります。