不動産のリスティング広告、"とりあえず出してみた"で失敗する3つの理由
この記事のポイント
リスティング広告を「とりあえず」で始めて月10〜20万円を消化した不動産会社は多い。失敗パターンはほぼ3つ—LP=トップページ、キーワードが広すぎ、反響対応が遅い。広告の前にHPの導線と反響対応体制を整えることが先。
「リスティング広告、うちもやったほうがいいかな」。不動産会社の経営者から、この相談を受けることが増えた。
SUUMOやアットホームに月数十万円を払っているのに反響が伸びない。「じゃあリスティング広告もやってみよう」と代理店に依頼して、月15万円で3ヶ月回してみたが反響は数件。「Web広告は効果がない」と結論づけてしまう—このパターンが本当に多い。
でも、問題は広告そのものではない。出す前の設計にある。
失敗パターン1:LPがトップページ
広告のリンク先が会社のトップページになっている
リスティング広告をクリックした人は「渋谷区 1LDK 賃貸」のように具体的なニーズを持っている。それなのに飛び先が会社概要やスタッフ紹介が並ぶトップページだと、ユーザーは3秒で離脱する。
ある管理会社では、月15万円のリスティング広告を3ヶ月回したが反響は2件だけだった。広告のリンク先を見たら会社のトップページ。物件情報にたどり着くまでに3クリック必要な状態だった。
→ 広告のリンク先は、検索キーワードに対応した専用のランディングページ(物件一覧や特集ページ)にする。トップページに飛ばすのは広告費を捨てているのと同じ。
失敗パターン2:キーワードが広すぎる
「不動産」「賃貸」で出稿している
「不動産」単体のクリック単価は500〜1,000円を超えることがある。しかも「不動産」で検索する人は転職希望者かもしれないし、業界ニュースを調べているだけかもしれない。
中小不動産会社の広告予算—月5〜30万円のレンジでは、ビッグキーワードに出稿した時点で予算が数日で溶ける。
→ 「地域名 × 物件種別」で絞る。「世田谷区 中古マンション 購入」「名古屋市東区 1LDK 賃貸」のように、成約に近いキーワードだけに集中する。
| キーワード例 | クリック単価目安 | 成約との距離 |
|---|---|---|
| 不動産 | 500〜1,000円 | 遠い |
| 渋谷区 賃貸 | 200〜400円 | 中間 |
| 渋谷区 1LDK 賃貸 ペット可 | 80〜200円 | 近い |
キーワードは「狭く・深く」が鉄則。月10万円の予算なら、3〜5個のキーワードに絞って運用するほうが反響につながる。
失敗パターン3:反響後の対応が遅い
広告から反響が来ても、初回対応まで半日〜1日かかる
リスティング広告経由の反響は「今すぐ客」の割合が高い。検索して、広告をクリックして、問い合わせフォームを送る—この一連の行動をしている人は、比較検討の真っ最中。
初回対応が30分以内か、翌日かで成約率は大きく変わる。ある調査では、反響から5分以内に連絡した場合の接続率は、30分後の4倍という結果もある。
→ 反響対応フローを広告出稿の前に設計する。誰が・何分以内に・何を返すかを決めておく。フローがないまま広告を回すのは、バケツに穴が開いた状態で水を注ぐようなもの。
反響対応の設計については「反響が来てから動くのでは遅い—不動産の反響対応フロー設計」で詳しく書いた。
効果が出るリスティング広告の使い方
地域×物件種別で絞る
中小不動産会社がリスティング広告で成果を出すには、「自社が強いエリア × 得意な物件種別」に絞ることが前提になる。
- 対応エリアが3区なら、3区に絞る
- 得意な物件が投資用ワンルームなら、投資用ワンルームに絞る
- 月の予算が10万円なら、キーワードは3〜5個まで
→ 広くばらまくのではなく、「このキーワードで検索する人は、うちの顧客になる可能性が高い」と言い切れるキーワードだけに出稿する。
専用LPを作る
広告のリンク先には、検索意図に合った専用ページを用意する。最低限必要な要素は以下の通り。
- 物件一覧または特集ページ(検索キーワードと一致する内容)
- 問い合わせフォーム(ページ内に設置。別ページに飛ばさない)
- 電話番号(スマホからワンタップで発信できる状態)
- 会社情報(信頼性の担保)
LP制作にどのくらいコストをかけるべきかは「不動産会社のHP制作費、相場と失敗しない発注の考え方」も参考にしてほしい。
反響対応フローを先に整える
広告を出す前に、以下を決めておく。
- 反響の通知先(メール・LINE・チャットツールなど)
- 初回対応の担当者と対応時間の目安(営業時間内30分以内が理想)
- 初回返信のテンプレート
- 追客のタイミング(翌日・3日後・1週間後)
フローが整っていない状態で広告費を増やしても、反響の取りこぼしが増えるだけ。
SUUMOとリスティング広告の使い分け
「SUUMOに月30万円払っているのに、さらにリスティング広告もやるべきなのか?」という質問をよく受ける。結論から言うと、役割が違う。
| 項目 | SUUMO・ポータル | リスティング広告 |
|---|---|---|
| 強み | 物件数で集客。検討初期に強い | 検索意図が明確なユーザーに直接リーチ |
| 弱み | 競合と横並び。差別化しにくい | LP・KW設計を間違えると効果ゼロ |
| 費用感 | 月10〜50万円 | 月5〜30万円 |
| 反響の質 | 比較検討段階が多い | 「今すぐ」の割合が高い |
| 成約単価 | 高くなりがち | 設計次第で低く抑えられる |
SUUMOの広告費対効果については「SUUMOの掲載費、本当に元取れてる?」で計算方法を解説している。
→ まずSUUMOで反響の流入元と成約率を把握する。そのうえで「SUUMOではリーチできない層」をリスティング広告で補完する、という使い分けが現実的。
リスティング広告の前にやること
広告を出す前に、以下の2つが整っているかを確認してほしい。
1. HPの導線整備
自社サイトに物件情報が載っていない、問い合わせフォームが見つけにくい、スマホ対応していない—この状態でリスティング広告を出しても、クリックされたあとに離脱される。
広告の前に、まずHPの導線を整える。物件ページへの動線、問い合わせフォームの位置、ページの表示速度。これらは広告費をかける前に無料で改善できる。
2. 反響対応体制
繰り返しになるが、反響が来てから「誰が対応するか」を考えているようでは遅い。営業担当が外出中で対応が翌日になる、という状態が常態化しているなら、広告費を増やす前に対応体制を見直すほうが先。
→ HPの導線 × 反響対応体制。この2つが整って初めて、リスティング広告の費用対効果が出る。
費用感の目安
中小不動産会社がリスティング広告に使う月額予算の目安。
| 月額予算 | 想定反響数 | 向いているケース |
|---|---|---|
| 5〜10万円 | 5〜15件 | まずテストしたい。1〜2エリアに絞って運用 |
| 10〜20万円 | 15〜40件 | 本格運用。LP制作と組み合わせて効果検証 |
| 20〜30万円 | 30〜60件 | 複数エリア・複数物件種別で展開 |
※ 反響数はキーワード・LP・エリアによって大きく変動する。上記はあくまで目安。
→ いきなり月20万円ではなく、まず月5万円で2〜3キーワードに絞ってテストする。反響単価と成約率を見てから予算を増やすのが、失敗しない進め方。
まとめ
リスティング広告で失敗する不動産会社のパターンは、ほぼ3つに集約される。
- LPがトップページ
- キーワードが広すぎる
- 反響対応が遅い
逆に言えば、この3つを潰せば効果は出る。ただし、広告の前にHPの導線と反響対応体制を整えることが前提。順番を間違えると、広告費だけが消えていく。
「ポータルサイトに頼らない集客チャネルを作りたい」と思ったら、まずは月5万円の小さなテストから始めてみてほしい。数字で判断できる状態を作ることが、広告費を「投資」に変える第一歩になる。
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泉 款太(いずみ かんた)
株式会社SalesDock 代表取締役
慶應義塾大学法学部卒。スタートアップ、ラクスル、リクルート(SUUMO)を経て2025年に独立。 不動産・製造業・クリニックなど現場産業向けのAI業務効率化コンサルを提供。 30社以上の中小企業のAI活用・業務改善を支援。
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