不動産会社のHP制作、費用相場と失敗しない発注の仕方
この記事のポイント
不動産会社のHP制作費用は30〜300万円と幅が広い。大事なのは費用の安さでもデザインのかっこよさでもなく、「問い合わせが来る仕組み」として機能するかどうか。よくある失敗パターンと、発注前に押さえておきたいポイントを整理した。
「ホームページをリニューアルしたいんだけど、いくらかかるのか見当がつかない」
不動産会社の社長と話していると、この相談がかなり多い。見積もりを取ってみたら50万だったり300万だったり、何が違うのかよくわからない—そういう状態で発注してしまって、結果的に「作ったけど問い合わせが来ない」となるケースを僕は何度も見てきた。
この記事では、不動産会社のHP制作にかかる費用の相場感と、よくある失敗パターン、そして発注前に押さえておきたいポイントを整理した。
不動産会社のHP制作、費用相場はどのくらいか
まず、ざっくりとした相場感を整理するとこうなる。
| 制作タイプ | 費用相場 | 制作期間 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| テンプレート型(制作会社) | 30〜80万円 | 1〜2ヶ月 | デザインの自由度は低いが、早くて安い |
| オリジナルデザイン(制作会社) | 100〜300万円 | 2〜4ヶ月 | ブランディング重視。大手制作会社だと200万超えも普通 |
| フリーランス・小規模制作 | 30〜80万円 | 1〜3ヶ月 | 柔軟だが、品質・対応力にばらつきがある |
| WordPress + 不動産プラグイン | 50〜150万円 | 1.5〜3ヶ月 | 物件連動やIDX対応など不動産特化の機能を入れやすい |
ポイントは「高ければいい」というわけではないこと。300万かけてフルオリジナルで作っても、問い合わせ導線がなければ反響はゼロのままだ。逆に、50万のテンプレート型でも、導線設計がしっかりしていれば月5〜10件の問い合わせが来ることもある。
見積もりの内訳で見るべきポイント
見積書をもらったら、以下の項目が入っているかを確認してみてほしい。
- •デザイン費(トップページ + 下層ページ)
- •コーディング費
- •CMS構築費(WordPress等、自分で更新できる仕組み)
- •物件情報の掲載方法(手動 or ポータル連動)
- •お問い合わせフォーム設計
- •スマホ対応(レスポンシブ)
- •SEO基本設定(タイトル・メタ・構造化データ)
- •公開後の保守・運用費
「デザイン費一式 150万」のように中身がわからない見積もりは要注意。何にいくらかかっているかを分解して比較できないと、適正かどうか判断できない。
よくある失敗パターン3つ
僕がこれまで見てきた不動産会社のHP制作で、うまくいかなかったパターンを3つ挙げる。
失敗1: デザインにこだわりすぎて中身がない
「かっこいいサイトにしたい」という気持ちはわかる。ただ、不動産会社のHPを訪れる人が求めているのは、かっこよさよりも「この会社に相談して大丈夫か」という安心感だ。
ある不動産会社(A社)は、200万かけてデザイン重視のサイトを作ったが、代表の顔写真もなく、実績も曖昧で、問い合わせフォームもページの一番下に小さく置いてあるだけだった。結果、月の問い合わせは0〜1件。
→ デザインより先に「誰に何を伝えるか」を決めるのが先。
失敗2: 作ったあと更新できない
制作会社に丸投げして、納品後に自分たちで更新できない状態になるケースも多い。物件情報やお知らせの更新を毎回制作会社に依頼すると、1回数千円〜1万円の更新費がかかる。年間で考えると結構な金額になる。
→ CMSを導入して、最低限の更新(物件情報・お知らせ・ブログ)は自社でできるようにしておく。
失敗3: 問い合わせ導線がない
「電話番号はトップに載せてるから大丈夫」と思っている社長は多いが、今の時代、電話よりフォームで問い合わせたい人のほうが増えている。特に20〜40代の購入検討者はそう。
| Before | After |
|---|---|
| 電話番号だけ掲載 | 電話 + フォーム + LINE |
| フォームがページ最下部 | 全ページにCTAボタン設置 |
| 問い合わせ後の返信が翌日以降 | 自動返信 + 当日中に担当から連絡 |
ある不動産会社では、フォームとLINEを追加して、全ページの目立つ位置にCTAを置いただけで、月の問い合わせが3件から12件に増えた。サイト自体は変えていない。導線だけの問題だった。
「問い合わせが来るHP」に必要な5つの要素
反響が出ているHPに共通しているのは、以下の要素がちゃんと揃っていることだ。
1. ファーストビューで「何の会社か」が伝わる
トップページを開いて3秒で「この会社は何をしてくれるのか」がわかるかどうか。「○○市の不動産売買・賃貸管理」のように、エリアと業態が一目でわかる状態が理想。
2. 代表・スタッフの顔が見える
不動産は高額取引だから、「誰が対応してくれるのか」が見えないと不安になる。代表挨拶、スタッフ紹介、できれば写真付きで。これだけで問い合わせ率が変わる。
3. 実績・お客様の声がある
「年間取引○○件」「お客様満足度○○%」のような数字、あるいは実際のお客様の声。匿名でもいいから載せる。信頼感が段違いになる。
4. 物件情報が見やすい
売買仲介なら物件一覧、買取再販なら施工事例。写真が暗い・少ない・古いだと逆効果になるので、掲載するなら質にもこだわりたい。
5. 問い合わせ導線が複数ある
電話・フォーム・LINE、最低でも2つ。どのページからでもワンタップで問い合わせできる状態にしておく。
発注前に社内で準備すべき4つのこと
制作会社に依頼する前に、以下を社内で整理しておくと、見積もりの精度が上がるし、完成後の「思ってたのと違う」を防げる。
1. HPの目的を明確にする
「問い合わせを増やしたい」「採用を強化したい」「ブランディングしたい」—目的によって作り方がまったく違う。全部盛りにすると焦点がぼやける。まずは1つに絞ってみてほしい。
2. ターゲット顧客を決める
「売主を集めたいのか、買主を集めたいのか」「オーナーからの管理受託を増やしたいのか」。これが決まらないと、載せるべきコンテンツも導線も決まらない。
3. 競合サイトを3〜5社チェックする
同じエリアの競合がどんなHPを持っているかを見ておく。「ここは良い」「ここはうちと差別化できる」という視点で見ると、制作会社への要望が具体的になる。
4. 更新体制を決めておく
「物件情報は誰が更新するのか」「ブログは書くのか」「お知らせは月何回出すのか」。運用のイメージがないまま作ると、公開後に放置されるサイトになる。
制作会社の選び方
最後に、どういう制作会社を選ぶべきかについて。
不動産業界の理解があるか
不動産HPには業界特有の要件がある。物件情報の見せ方、レインズやポータルサイトとの関係、反響対応のスピード感。これを理解していない制作会社に頼むと、説明コストが膨大になる。
→ 過去に不動産会社のHP制作実績があるかを確認する。なければ、最低限こちらの業務フローを丁寧にヒアリングしてくれるかどうかで判断する。
運用・保守まで見てくれるか
HPは作って終わりではない。公開後の更新サポート、アクセス解析、改善提案まで対応してくれるかどうかは重要な判断基準になる。
| チェック項目 | 良い制作会社 | 注意が必要な制作会社 |
|---|---|---|
| 公開後のサポート | 月額保守プランあり | 納品で終了 |
| アクセス解析 | GA4設定 + 月次レポート | 設定なし |
| 改善提案 | データを見て改善提案 | 依頼があれば対応 |
| 更新作業 | CMS導入 + 操作説明 | 毎回有料で代行 |
見積もりが明瞭か
前述のとおり、「一式○○万」ではなく、項目ごとに分解された見積もりを出してくれる会社のほうが信頼できる。追加費用が発生する条件(修正回数の上限、素材の準備など)も事前に確認しておく。
「業務の流れ」から一緒に考えてくれるか
HPを作る前に、そもそも「問い合わせが来たあとの対応フロー」が整理されていないケースは多い。反響が来ても対応が遅れたり、追客が属人的だったりすると、せっかくのHPも活きない。
制作だけでなく、業務プロセス全体を見てくれるパートナーを選べると、投資対効果は大きく変わる。
まとめ
不動産会社のHP制作で大事なのは、費用の安さでもデザインのかっこよさでもない。「問い合わせが来る仕組み」として機能するかどうか。
- •相場は30〜300万。目的と規模に合った選択をする
- •デザインより導線。問い合わせ経路を複数用意する
- •発注前に目的・ターゲット・更新体制を社内で決めておく
- •制作会社は「業界理解」と「運用サポート」で選ぶ
HPは作って終わりではなく、運用して育てていくもの。発注の段階で「作ったあとどうするか」まで考えておくと、失敗する確率はぐっと下がる。
泉 款太(いずみ かんた)
株式会社SalesDock 代表取締役
慶應義塾大学法学部卒。スタートアップ、ラクスル、リクルート(SUUMO)を経て2025年に独立。 不動産・製造業・クリニックなど現場産業向けのAI業務効率化コンサルを提供。 30社以上の中小企業のAI活用・業務改善を支援。
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