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不動産

買取再販の仕入れ判断、まだ1件60分かけていませんか?—国交省APIで変わる物件スクリーニング

8分で読める

この記事のポイント

買取再販の仕入れ判断に1件60分かけているなら、まず「どこに時間がかかっているか」を分解してみてほしい。周辺相場の調査やハザード情報の確認だけで30分近く使っているケースが多く、ここは国交省の不動産情報ライブラリAPIで自動化できる。「全件を60分かけて精査」するのではなく「5分で足切り→有望案件だけ30分で精査」に変えるだけで、同じ人数で4倍の案件を捌ける。

買取再販の仕入れ業務。業者やポータルから物件情報が来て、レインズを確認して、Googleマップで周辺を見て、都市計画図を確認して、Excelに転記して—1件の物件を精査するのに60分かかる。月に20件精査すれば20時間。仕入れ担当が「調べる作業」に埋もれて、本来やるべき「判断する仕事」に時間が割けていない。

ある買取再販会社では、火曜日にチャットワークに目線の物件を投入し、水曜の定例で候補を抜粋。そこから賃貸相場・生活保護の相場を入れて採算を確認し、現地調査に行き、リフォーム見積もりを取り、希望金額を出して稟議にかけて交渉—この一連のフローで、1物件あたり半日近くかかっていた。

この記事では、この「60分」をどう分解して、どこから仕組み化するかを整理する。

60分を分解する—どこに時間がかかっているか

仕入れ判断の60分を分解すると、だいたいこうなる:

  • 周辺相場の調査(レインズ・SUUMO・過去の自社事例を手動で検索):15〜20分
  • ハザード・用途地域の確認(自治体のHP、都市計画図をひとつずつ巡回):10〜15分
  • 利回り・再販価格のシミュレーション(Excel手入力、関数が属人化):15〜20分
  • 稟議資料の体裁整え(コピペで体裁を整える):10分

前半の「調べる」だけで30分。でもこれ、人がやる必要があるだろうか?

周辺の取引事例は公開データがある。ハザード情報も用途地域も、地図に紐づいたデータベースとして公開されている。つまり「住所を入力したら自動で取ってこれる」情報だ。ここに時間をかけるのは、正直もったいない。

Excelでの管理が限界を迎えるタイミングについては、こちらの記事でも詳しく書いた。物件が増えるほど、手動転記の負荷は加速度的に上がっていく。

国交省「不動産情報ライブラリAPI」で前半30分を消す

2024年4月に国交省がリリースした「不動産情報ライブラリ」。月間400万リクエストを超えるアクセスがあるが、実際にAPIとして業務に組み込んでいる中小不動産会社はまだ少ない。

住所を入れると取れる情報:

  • 不動産取引価格情報(周辺の成約事例)
  • 地価公示・都道府県地価調査
  • 洪水浸水想定区域・土砂災害警戒区域・津波浸水想定
  • 用途地域
  • 都市計画道路(2025年10月追加)
  • 人口集中地区(2025年8月追加)
  • 災害履歴(2025年12月〜2026年1月追加)

仕入れ判断に必要な情報の半分以上が、この1つのAPIで取れる。

実装イメージとしては:住所を入力→APIで自動取得→1次スクリーニングシートに反映。スプレッドシートのGoogle Apps Scriptで組めば、エンジニアがいなくても実装できる。

ポイントは、このAPIで取れるデータだけで「仕入れるかどうか」を判断するわけではないこと。あくまで1次スクリーニング—「精査する価値があるかどうか」の判断を高速化するために使う。

「全件精査」から「足切り→深掘り」に変える

今のフロー:

20件 × 60分 = 20時間

変えた後のフロー:

20件 × 5分で1次スクリーニング → 有望な5件 × 30分で精査 = 4時間10分

同じ人数で、4倍の案件を捌ける計算になる。

冒頭の買取再販会社では、スプレッドシートに仕入れ基準をチェックリスト化して、APIから自動取得した情報と突き合わせる仕組みを試験的に導入した。たとえば「浸水リスクのある物件は除外」「最寄り駅から徒歩20分以上は除外」といった足切り条件をあらかじめ設定しておくことで、そもそも精査する必要がない物件を自動で弾ける。

結果、精査にかける時間は半分以下になり、その分を「交渉」や「現地確認」に充てられるようになった。

ここで重要なのは、足切りの基準は会社ごとに違うということ。千葉の空き家を1,000万以下で仕入れる会社と、都心の区分マンションを5,000万で仕入れる会社では、見るべきポイントがまったく違う。だからこそ、汎用的なツールを導入するより、自社の仕入れ基準をデータ化して「自社専用のスクリーニングシート」を作る方が効果が出やすい。

買取再販の利益率を改善するための打ち手はこちらの記事でも解説している。スクリーニングの精度が上がれば、自然と利益率も改善する。

属人化を崩す副次効果

仕入れ判断を仕組み化すると、副次的に「属人化」が解消される。

ベテランの仕入れ担当が持っている「この土地はなんとなくダメ」「この間取りは賃貸つきにくい」という暗黙知。これをチェックリスト+データで言語化すると、新人でも1次判断ができるようになる。

仕入れのボトルネックが「人」から「プロセス」に移る。ベテランが抜けても回る。増員しても即戦力になる。

これは事業の拡大やバイアウトを見据える上でも大きい。「仕組みで回っている状態」は、それ自体が企業価値になる。属人的に回っている会社より、プロセスが標準化されている会社の方が、買い手にとって安心だ。

まず来週やれること

  1. 過去に仕入れた物件を10件並べて、判断基準を書き出してみる(「なぜこの物件を仕入れたか」を言語化する)
  2. 国交省の不動産情報ライブラリを一度触ってみる。無料で、住所を入れるだけで周辺情報が出てくる
  3. 仕入れ精査にかけている時間を1週間計測してみる。「調べる時間」と「考える時間」を分けて記録する

この3つをやるだけで、自社の仕入れ業務のどこに無駄があるかが見えてくる。

よくある質問

国交省の不動産情報ライブラリAPIは無料で使えますか?

はい、無料で使える。利用登録(メールアドレスの登録)をすればAPIキーが発行され、すぐに使い始められる。月間のリクエスト数に制限はあるが、中小不動産会社の仕入れ判断に使う分には十分な量。

エンジニアがいなくてもAPIを業務に組み込めますか?

Googleスプレッドシートの「Google Apps Script」を使えば、プログラミングの専門知識がなくても実装可能。住所を入力するセルを指定し、APIから取得したデータを隣のセルに自動入力するスクリプトは、数十行で書ける。ただし、初期設定には多少の技術サポートがあると安心。

レインズの情報もAPIで取れますか?

レインズの情報はAPIでは取得できない。レインズは会員制のクローズドなデータベースであり、外部からの自動取得は許可されていない。国交省のAPIで取れるのは公示地価・取引事例・ハザード情報などの公開データ。レインズの確認は引き続き手動になるが、それ以外の情報収集を自動化することで、レインズの確認に集中できるようになる。

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泉 款太(いずみ かんた)

株式会社SalesDock 代表取締役

慶應義塾大学法学部卒。スタートアップ、ラクスル、リクルート(SUUMO)を経て2025年に独立。 不動産・製造業・クリニックなど現場産業向けのAI業務効率化コンサルを提供。 30社以上の中小企業のAI活用・業務改善を支援。

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