不動産会社の採用が難しい5つの構造的原因と打ち手
求人を出しても来ない。来ても続かない。その原因は「業界構造」にある
この記事は不動産会社の業務改善 完全ガイドの一部です。全体像を知りたい方はまず完全ガイドをご覧ください。
この記事のポイント
不動産会社の採用難は「求人の出し方」だけの問題ではなく、業界構造に5つの原因がある。歩合依存の訴求、社長面接一発勝負、採用ページの不在、教育体制の曖昧さ、リファラル経路の未設計。来週から始められる3つの打ち手で、採用の仕組みを変えられる。
「求人を出しても応募が来ない」「やっと採用しても半年で辞められる」—中小不動産会社の経営者から、この手の相談を本当によく受ける。人材紹介に年間200万〜300万円を払い続けているのに、定着しない。採用コストばかりが膨らんでいく。ただ、この問題の根っこは「求人広告の書き方」ではなく、もっと構造的なところにある。
なぜ不動産会社の採用は年々難しくなっているのか
業界の離職率データと求職者の本音
厚生労働省「雇用動向調査」によると、不動産業の離職率は約15%。全産業平均とほぼ同水準だが、中小企業に限ると実態はもっと厳しい。従業員30名以下の不動産会社では、年間2〜3名が入れ替わるのは珍しくない。求職者側のアンケートでも「不動産業界=長時間労働・ノルマがきつい」というイメージが根強く、そもそも応募の母集団が狭い。
「歩合で稼げる」が響かなくなった世代変化
かつて不動産営業の求人は「稼げる」が最強の訴求だった。しかし、いま転職市場の主力である20代後半〜30代前半は、収入よりも「安定」「働き方」「成長環境」を重視する傾向が強い。リクルートの調査でも、転職理由の上位は「ワークライフバランス」「スキルアップ」であり、「年収アップ」は3番目以降に下がっている。歩合で稼げることだけを前面に出しても、応募が集まりにくい時代になった。
採用が難しい会社に共通する5つの構造的原因
①求人票が「条件羅列」で仕事の中身が見えない
給与・休日・勤務地・福利厚生。求人媒体のフォーマットに沿って埋めただけの求人票は、他社と見分けがつかない。求職者が知りたいのは「入社したら毎日何をするのか」「どうやって成果を出すのか」という具体的なイメージ。それが伝わらない求人票は、スクロールで飛ばされる。
②社長面接一発勝負で候補者体験が悪い
中小不動産会社では「書類→社長面接→内定」という1ステップ選考が多い。社長の直感で決まるのは効率的に見えるが、候補者からすると「会社の雰囲気がわからないまま入社を決めなければいけない」状態になる。結果、入社後のミスマッチで早期離職につながりやすい。現場の先輩との面談や、オフィス見学を挟むだけで候補者の不安は大きく減る。
③自社HPに採用ページがない or 更新されていない
求人媒体で会社名を見た候補者は、ほぼ確実に自社HPを検索する。そのとき採用ページがなかったり、3年前の情報のままだったりすると「この会社、大丈夫かな」と思われる。HPは会社の第一印象そのものだ。採用ページに社員の顔写真と一言コメントがあるだけで、安心感はまったく違う。
④教育体制が「先輩に聞いて」で不安を与えている
「入社後の教育はどうなっていますか?」と聞かれて「OJTで先輩が教えます」としか答えられない会社は多い。候補者からすると「放置されるのでは」という不安につながる。入社1ヶ月目・3ヶ月目・6ヶ月目のざっくりしたステップを示すだけで、面接時の説得力が変わる。
⑤紹介・リファラル経路をそもそも設計していない
「いい人がいたら紹介して」と社員に言ったことはあっても、仕組みとして設計している会社は少ない。紹介のタイミング、謝礼のルール、紹介しやすい情報の用意—この3つが揃って初めてリファラル採用は機能する。求人媒体や人材紹介に頼り切りの状態は、採用コストを押し上げ続ける。
採用経路別のコストと定着率比較
| 採用経路 | 1人あたりコスト | 1年定着率 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 求人媒体 | 20万〜50万円 | 約60% | 母集団は広いがミスマッチも多い |
| 人材紹介 | 年収の30〜35% | 約65% | 即戦力が来やすいが高コスト |
| リファラル | 10万〜20万円 | 約80% | 社風マッチ◎。仕組み化が鍵 |
| 自社HP応募 | 実質0円(HP運用費のみ) | 約75% | 志望度が高い。ただし流入に時間がかかる |
来週からできる3つの打ち手
求人票に「入社3ヶ月のスケジュール」を書く
求人票に「入社1ヶ月目:座学研修+先輩同行、2ヶ月目:担当エリアで反響対応開始、3ヶ月目:独り立ち+週1回の1on1でフォロー」と書くだけで、候補者の安心感はまったく違う。現時点で研修制度がなくても問題ない。「こういう流れで一人前になる」という道筋を示すことが大事。実際に何社かの求人票にこの変更を加えたところ、応募数が1.5倍になったケースもある。
社員インタビュー1本をHPに載せる
「入社の決め手」「1日の流れ」「仕事のやりがい」の3つを、在籍2〜3年目の社員に15分ヒアリングして、500文字程度にまとめてHPに載せる。写真は笑顔のスマホ撮影で十分。プロのカメラマンに頼む必要はない。候補者は「この会社で働いている人の顔と声」を見たがっている。
退職者アンケートで「辞めた理由」を構造化する
過去2〜3年で退職した社員に、匿名のGoogleフォームで「辞めた理由」「改善してほしかったこと」を聞く。5問程度、所要時間3分のアンケートでいい。返ってきた回答を「業務量」「人間関係」「評価制度」「教育体制」「キャリアパス」の5カテゴリに分類すると、自社の構造的な問題が見える。感覚ではなくデータで課題を把握できるようになる。
採用を仕組みにしている会社がやっていること
採用がうまくいっている中小不動産会社に共通するのは、「採用を仕組みとして回している」こと。具体的には、以下の3つのサイクルを回している。
1. 退職理由の分析 → 職場環境の改善
なぜ辞めたのかを構造化し、改善を1つずつ実行する。「長時間労働」が原因なら業務効率化、「評価への不満」ならKPI設計の見直し。原因がわかれば打ち手は見える。
2. 社員が紹介したくなる状態を作る → リファラル経路の設計
「うちの会社、悪くないよ」と社員が言える状態を作ることが先。その上で、紹介のルールと謝礼を明文化し、四半期に1回「誰かいい人いない?」と全体で声をかける場を作る。
3. 採用ページの継続更新 → 自社HP経由の応募を増やす
社員インタビューを半年に1回追加する。社内イベントの写真を載せる。求人媒体に頼らない流入経路を少しずつ育てる。時間はかかるが、採用コストを構造的に下げる唯一の方法。
採用は「出して待つ」ものではなく、仕組みとして設計するもの。求人票を変え、HPを整え、紹介経路を作り、退職理由を分析する。この4つを回すだけで、1年後の採用コストと定着率は大きく変わる。
泉 款太(いずみ かんた)
株式会社SalesDock 代表取締役
慶應義塾大学法学部卒。スタートアップ、ラクスル、リクルート(SUUMO)を経て2025年に独立。 不動産・製造業・クリニックなど現場産業向けのAI業務効率化コンサルを提供。 30社以上の中小企業のAI活用・業務改善を支援。
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