不動産業界の離職率は高い?公的統計と若手定着の3つの見直し点
年間離職率と新卒3年以内の離職率を分けて確認する
結論:不動産業界の離職率は統計を分けて確認します
業界全体を一括りにせず、年間の離職と新卒入社後3年間の離職を別の指標として読みます。その上で、自社の若手がどの工程で迷い、時間を使っているかを記録します。
- 年間離職率では、不動産業・物品賃貸業は産業計を下回ります。
- 新卒3年以内の離職率では、高卒・大卒とも調査産業計を上回ります。
- 自社では、業務負担・評価・教育を分け、負担の大きい1工程から見直します。
この記事は不動産会社の業務改善 完全ガイドの一部です。全体像を知りたい方はまず完全ガイドをご覧ください。
不動産業界の離職率は、参照する統計によって印象が異なります。年間離職率は産業計を下回る一方、新卒3年以内の離職率は平均を上回ります。まずは数字を分けて捉え、その上で自社の業務負担・評価・教育を点検することが大切です。
不動産業界の離職率データ
「不動産は離職率が高い業界」と言われることが多いので、まず数字を確認しておきたい。厚生労働省「令和6年雇用動向調査」で1年間の離職率を見ると、不動産業・物品賃貸業は13.5%、産業計は14.2%。不動産のほうが低い。令和5年は不動産16.3%・産業計15.4%で逆転していて、年によって振れる程度の差でしかない。
ただし新卒に限ると話が変わる。厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(令和4年3月卒業者)」では、不動産業・物品賃貸業の就職後3年以内離職率は大卒36.5%・高卒43.1%。調査産業計の大卒33.8%・高卒37.9%を上回る。つまりこの業界の課題は「全員が辞めやすい」ことではなく、入って3年の若手が抜けやすいことにある。
出典・一次情報
- 令和6年雇用動向調査結果の概況(厚生労働省) — 1年間の離職率(表4-2)。2026年8月12日に概況PDFで確認
- 新規学卒就職者の離職状況(令和4年3月卒業者)/厚生労働省 — 新卒の3年以内離職率。2026年8月12日に資料PDFで確認
この2つは別の統計です。「雇用動向調査」は在職者の年間離職率、「新規学卒就職者の離職状況」は新卒コホートの3年累積で、取り違えると数字の意味が変わります。制度・統計は改定されます。最新の情報は公表元でご確認ください。
不動産業界の離職に関する特徴
| 指標 | 不動産業 | 全産業平均 |
|---|---|---|
| 1年間の離職率 令和6年 雇用動向調査 | 13.5% | 14.2% |
| 新卒3年以内離職率(大卒) 令和4年3月卒 | 36.5% | 33.8% |
| 新卒3年以内離職率(高卒) 令和4年3月卒 | 43.1% | 37.9% |
厚生労働省は、産業別と事業所規模別を掛け合わせた値を公表していません。そのため、全産業の規模別データを「中小の不動産会社の離職率」と読み替えないことが重要です。規模別データは、自社の状況を確認する補助線として使います。
| 事業所規模(全産業) | 高卒 | 大卒 |
|---|---|---|
| 5人未満 | 63.2% | 57.5% |
| 5〜29人 | 54.6% | 52.0% |
| 1,000人以上 | 26.3% | 27.0% |
若手の定着に向けて見直す3つの領域
領域1:営業以外の業務負担
物件案内、追客、事務作業、物件入力を同じ人が担うと、どの工程が負担になっているか見えにくくなります。まずは物件情報の入力、チラシ作成、反響メール、追客管理を分け、頻度・所要時間・判断が必要な箇所を記録します。
領域2:売上だけに偏った評価
不動産営業は成約までに複数の工程があります。月単位の売上だけでは、反響対応、追客、案内など途中の行動を確認できません。成果指標と行動指標を分け、本人が次に改善する工程を判断できるようにします。
領域3:「見て覚える」に偏った教育
先輩への同行だけでは、確認すべき項目や例外時の判断が新人に残りません。初回対応、物件案内、追客、クロージングを分け、最低限の確認項目と相談先を言葉にします。
業務棚卸しで負担の大きい工程を見つける
最初に行うのは、営業担当者が担う業務を分け、所要時間と判断箇所を記録することです。記録を取る前にツールを選ぶと、負担の大きい工程ではなく、置き換えやすい作業だけを自動化してしまうことがあります。
報酬制度は業務負担と分けて確認します。支給額だけでなく、何を評価し、どの条件で歩合を計算するかを本人へ説明できる状態にします。役割・粗利・案件経路をどう反映させるかは不動産営業の歩合率・相場と報酬制度で整理している。
業務棚卸しで記録する項目
| 業務 | 記録すること | 判断箇所 | 見直し例 |
|---|---|---|---|
| 物件情報入力 | 件数・所要時間 | 入力元と確認者 | 項目と正本を統一 |
| 反響メール返信 | 件数・初動までの時間 | 個別対応が必要な条件 | 定型文と個別判断を分離 |
| チラシ・図面作成 | 件数・差し戻し回数 | 素材と承認者 | 様式と確認項目を固定 |
| 追客リスト管理 | 更新頻度・未対応件数 | 次回行動の決め方 | 担当・期限・状態を統一 |
1〜2週間記録すると、件数が多い作業、差し戻しが多い作業、判断待ちが長い作業を分けられます。最初の改善対象は、想像ではなくこの記録から1工程だけ選びます。
KPI設計の見直し—「売上だけ」の評価をやめる
もう一つ重要なのがKPI設計の見直しだ。月の売上金額だけで評価する仕組みは、短期的には数字を作れても、長期的には営業マンを消耗させる。
売上と分けて確認するKPIの例
成果KPI: 売上金額、契約件数
行動KPI: 反響対応率、追客継続率、案内件数
成長の確認: 資格取得、ロープレ参加、後輩指導
行動KPIを使うと、成約前でもどの工程まで進んでいるかを確認できます。特に新人は、売上だけでなく次に改善する行動を週次で振り返れるようにします。
教育体制の整備—マニュアルは「最低限」でいい
教育プログラムを一度に作り込まず、新人が判断に迷いやすい工程から最低限の型を整えます。
1. 営業トークスクリプト
初回電話対応、物件案内時のヒアリング項目、クロージングの流れをA4用紙2〜3枚にまとめる。完璧でなくていい。ベテラン営業の「いつも言っていること」を文字にするだけで十分。
2. 1週間の業務フロー
月曜は追客リスト確認、火〜金は反響対応+案内、土日は案内集中—という週間スケジュールの型を示す。「何をしていいかわからない時間」を減らすだけで新人のストレスは大きく下がる。
3. 週1回の15分1on1
上司と部下で週1回、15分だけ話す場を設ける。議題は「今週困ったこと」「来週の目標」の2つだけ。これだけで「放置されている感」が消え、問題の早期発見にもつながる。
まとめ:統計を分け、業務負担から1工程ずつ見直す
不動産業界を一概に「離職率が高い」とまとめず、年間離職率と新卒3年以内の離職率を区別して把握することが出発点です。自社では、業務負担、評価、教育の3領域を分けて確認します。
3領域を同時に変えようとせず、まず事務作業を記録した上で、着手する工程を1つ決めます。変更前後で所要時間、差し戻し、未対応件数を同じ条件で比べれば、次の見直しも判断しやすくなります。
よくある質問
不動産業界の離職率はどのくらいですか?
厚生労働省「令和6年雇用動向調査」では、不動産業・物品賃貸業の年間離職率は13.5%で、産業計14.2%を下回ります。一方、「新規学卒就職者の離職状況(令和4年3月卒業者)」では、不動産業・物品賃貸業の3年以内離職率は大卒36.5%・高卒43.1%で、調査産業計の大卒33.8%・高卒37.9%を上回ります。年間離職率と新卒3年以内の離職率は別の統計として確認する必要があります。
若手の定着に向けて何を見直せばよいですか?
業務負担、評価、教育の3領域を分けて確認します。営業以外の作業時間、成果が出るまでの行動指標、新人が判断に迷う手順を記録し、最も負担の大きい工程から1つずつ見直します。
不動産会社の離職防止は何から始めればよいですか?
まずは営業担当者が営業以外の作業に費やしている時間を記録します。物件情報の入力、チラシ作成、反響メール、追客管理などに分類し、頻度・所要時間・判断が必要な箇所を確認します。その後に、評価指標と教育手順を見直します。
不動産会社のKPI設計はどう見直すべきですか?
売上金額と、反響対応率・追客継続率・案内件数などの行動指標を分けて確認します。新人には、成果が出るまでにどの行動を改善するかが分かる指標を設定し、週次の振り返りで使います。
泉 款太(いずみ かんた)
株式会社SalesDock 代表取締役
慶應義塾大学法学部卒。スタートアップ、ラクスル、リクルート(SUUMO)を経て2025年に独立。 中小企業の経営・営業・業務・データをつなぐ事業基盤の設計と実装を支援。 不動産・製造業・クリニックを中心に、累計40社以上の支援に携わる。
運営は株式会社SalesDock(大阪市中央区本町)。中小企業向けに、AI自走プラン(初期構築15万円+月額10万円・90日)と、 そのあとのAI顧問(月額5万円・6ヶ月契約から)を提供しています。価格は税別です。 大阪・関西を中心に、オンラインで全国からのご相談に対応しています。
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本文中に一次資料へのリンクがある数値は、リンク先を出典としています。 リンクのない業務設計、判断基準、実務上の目安は、SalesDockが累計40社以上の支援と自社運用で得た知見を一般化したものです。 個別企業での成果を保証する数値ではなく、条件によって変わります。
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