需要予測システムの費用|Excel・買い切り・SaaS・個別開発の価格と、見積もり前に測る数字
高いシステムを比べる前に、今の見込みがどれだけ外れているかを測ります。
需要予測システムの費用:結論
見積もりを取る前に、10〜20品目に絞ってExcelで予測を出し、担当者の見込みと実績とのずれを4週間で比べてください。ずれによる欠品や余剰在庫を金額にすると、システムにかけてよい費用の上限が見えます。
- 需要予測システムの費用は方式で桁が変わります。Excelの予測関数なら追加費用はなく、買い切りソフトは税抜29,800円の例、店舗単位のSaaSは1店舗あたり月4,900円〜7,900円(税抜)の例があります。発注まで自動化するサービスでは、企業単位で初期費用100万円の例もあります。
- 大手向けの製品や個別開発は、多くが価格を公開しておらず見積もりです。見積もりの金額は、予測の仕組みよりも、データの整備、既存システムとの連携、保守で大きく変わります。
- どの方式が合うかは、品目数、そろっている販売実績の期間、予測を見て誰が何を決めるかで決まります。
この記事は、需要予測の仕組みにかかる費用と選び方を扱います。AI導入全体の費用の相場はAI導入費用の相場と、見積もり前に決める3つのことにまとめています。
「需要予測システム 費用」で調べると、上位には開発会社の紹介やサービスの一覧が並びます。ところが、一覧に載っている製品の多くは「料金はお問い合わせください」で、比べようにも数字がありません。この記事では、提供元が価格を公開しているものだけを拾い、方式ごとの費用の目安と、見積もりを取る前に自社で測っておく数字を整理します。
需要予測システムの費用は、方式によって追加費用なしから初期費用100万円以上まで変わる
需要予測の仕組みは、大きく6つの方式に分かれます。同じ需要予測でも、買い切りソフトのチェス「簡単らくらく需要予測One」は税抜29,800円、ソフトバンク「サキミル」のAI自動発注は初期費用だけで税抜100万円(別に月額)と、30倍以上の差があります。下の表の価格は、2026年10月時点で提供元が公開しているものです。
| 方式 | 公開されている価格の例 | 向いている状態 | 気をつけること |
|---|---|---|---|
| Excelの予測関数 | FORECAST.ETS関数はExcel 2016以降とMicrosoft 365に標準で入っており、追加費用はかからない | 品目が数十までで、月別の販売実績がExcelにある | 品目が増えると、シートの管理と更新が担当者の手作業になる |
| 買い切りのPCソフト | チェス「簡単らくらく需要予測One」は税抜29,800円(1台のPCに1ライセンス) | Excelより多くの予測方法を試したいが、毎月の費用はかけたくない | Windows専用。データの取り込みと結果の配布は人が行う |
| 店舗単位のSaaS | ソフトバンク「サキミル」の来店・売上予測は1店舗あたり月7,900円(API連携版は4,900円)、初期費用は1店舗3,000円(いずれも税抜) | 飲食店や小売店で、来店客数や売上を日ごとに知りたい | 予測するのは来店客数または売上のどちらかで、14日先まで。品目別の発注数は別のプランになる |
| 発注まで含むSaaS | 同じく「サキミル」のAI自動発注は月10万円/企業+2.5万円/店舗、初期費用100万円/企業+3,000円/店舗(税抜) | 店舗数が多く、発注担当の時間と廃棄・欠品が数字で見えている | 初期費用が企業単位でかかるため、店舗数が少ないと1店舗あたりの負担が重い |
| 従量課金のクラウド | AWSのSageMaker Canvasは、画面を開いている時間が1時間1.9ドルで、モデルの学習は別料金。5GB以下の表形式データを数値予測するバッチ処理は追加料金がかからない一方、需要予測向けの時系列モデルでは予測にも料金がかかる | 社内にデータを扱える人がいて、使った分だけ払いたい | 円安や使い方で月の請求額が変わる。後片付けを忘れると費用が続く |
| 個別開発・大手向けパッケージ | 公開価格は無く、見積もりになる。見積もりの内訳は要件定義・データ整備・既存システムとの連携・画面開発・保守 | 基幹システムや発注の仕組みと予測をつなぎたい | 金額を左右するのは予測モデルより、データ整備と連携の量。散らばった実績データをそろえる手間と、つなぐシステムの数で見積もりが大きく変わる |
店舗単位のSaaSは、店舗数が増えるほど月額が積み上がります。ソフトバンク「サキミル」の来店・売上予測を5店舗で使うと、ダッシュボード版で月39,500円(税抜、1店舗7,900円×5)です。同じサキミルのAI自動発注は、企業単位の初期費用が100万円(税抜)かかるため、店舗が少ない会社ほど1店舗あたりの負担が重くなります。
需要予測システムの価格表に出ない費用
月額やライセンス料は比べやすい数字ですが、需要予測で費用が膨らむのは、その外側です。見積もりを読むときは、次の3つが含まれているかを確かめます。
販売実績をそろえる費用
予測の材料になるのは、品目ごと・月ごと(または日ごと)の販売実績です。販売管理システムの入れ替えで品目のコードが途中から変わっている、返品が売上と相殺されている、店舗ごとのExcelで形がばらばら、といった状態はめずらしくありません。この整理を開発会社に頼むと、予測の部分より工数がかかることがあります。進め方はデータ整備の進め方で詳しく書いています。
既存の仕組みとつなぐ費用
予測の結果を発注書や生産計画に反映するには、販売管理や在庫管理のシステムとデータをやり取りする必要があります。CSVを人が出し入れするなら連携の費用はかかりませんが、毎回の作業時間が残ります。自動でつなぐ場合は、つなぐ先の数だけ費用が増えます。
運用と、サービスが変わるリスク
新商品や販促、天候の急変は、過去の実績から予測できません。予測の数字を誰が見て、どこまで手で補正するかを決めておかないと、システムを入れても発注担当の判断は変わりません。また、サービスの提供条件が変わることもあります。AWSは2024年7月29日にAmazon Forecastの新規受付を終え、既存の利用者にはSageMaker Canvasへの移行を案内しています。月額の安さだけでなく、データを取り出して別の方式に移れるかも、費用の一部として見ておきます。
需要予測システムの方式は、データの期間と品目数で選ぶ
方式を選ぶときに最初に見るのは、製品の機能ではなく自社のデータです。季節の波がある商品なら、同じ月を2回以上比べられる2年分の月別実績があると、予測が当たっているかを確かめやすくなります。
品目が数十までで、予測を見るのが社長か発注担当1人なら、Excelか買い切りソフトで十分なことが多いです。飲食店や小売店で、仕込みやシフトのために日ごとの客数を知りたいなら、店舗単位のSaaSが合います。品目が数百を超え、発注担当が複数いて、予測を発注書まで自動でつなぎたい段階になって、初めて企業単位の初期費用がかかる方式を比べます。製造業で在庫の持ち方から見直したい場合は在庫管理の見える化を、スプレッドシートで始める手順も参考になります。
見積もり前に、4週間で予測のずれを測る
需要予測システムにいくらまでかけてよいかは、今の見込みがどれだけ外れていて、その外れでいくら損しているかで決まります。これは製品を比べる前に、Excelで測れます。
1週目:品目を10〜20に絞り、実績を月別にそろえる
売上の大きい品目と、欠品や余りでよく困る品目から10〜20品目を選びます。販売管理システムやExcelから、品目ごとの月別の販売数を2年分抜き出し、1枚のシートに縦に月、横に品目の形で並べます。返品やコードの付け替えはこの段階で直します。
2週目:担当者の見込みとExcelの予測を並べる
直近の6か月を「まだ分からない期間」とみなし、それより前の実績だけを使ってFORECAST.ETS関数で6か月分を予測します。同じ6か月について、発注担当や社長がふだんどう見込んでいたかを、発注の記録や本人への聞き取りで書き出します。
3週目:実績とのずれを品目ごとに計算する
品目ごとに「予測と実績の差の絶対値 ÷ 実績」を月ごとに計算し、6か月の平均を出します。担当者の見込みとExcelの予測の両方で計算し、どちらが実績に近いかを比べます。Excelの予測のほうが外れる品目は、販促や取引先の都合など、データに無い事情で動いている可能性が高い品目です。
4週目:ずれが大きい品目の欠品と在庫を金額にする
- 欠品:欠品した回数と、その間に断った受注や失った売上の見込みを品目ごとに出します。
- 余剰在庫:実績を上回って仕入れた分の在庫金額と、保管費や廃棄の金額を出します。
- 作業時間:発注担当が見込みを立てるのに使っている時間を、月あたりで出します。
この3つを足した1年分の金額が、需要予測システムにかけてよい費用の上限の目安です。Excelの予測だけでずれが小さくなる品目が多ければ、まずはExcelのまま運用し、品目を広げてから次の段に進みます。費用対効果の計算はAI導入のROIの計算式と計算例にまとめています。
どこからデータをそろえるか決めたい方へ
3分の診断で、いまの業務の回し方と、仕組みを入れる順番の目安が分かります。販売実績や在庫の記録をどう整えるかから相談したい場合も、診断の結果から予約できます。
3分の診断を受ける需要予測システムの費用に使える補助金
中小企業がソフトウェアやクラウドサービスを入れるときは、デジタル化・AI導入補助金2026(旧IT導入補助金)の通常枠が候補になります。公式サイトに載っている主な条件は次のとおりです。
- 補助額:業務プロセスが1つ以上で5万円以上150万円未満、4つ以上で150万円以上450万円以下です。
- 補助率:原則2分の1以内です。令和6年10月〜令和7年9月の間に3か月以上、令和7年度改定の地域別最低賃金未満で雇っていた従業員が全従業員の30%以上いる事業者は、3分の2以内になります。
- 対象の経費:ソフトウェアの購入費、クラウドの利用料(最大2年分)、機能拡張やデータ連携のオプション、導入の設定や研修、保守サポートです。
対象の業務プロセスには「供給・在庫・物流」が含まれます。ただし補助の対象になるのは事務局に登録されたITツールだけなので、検討しているサービスが登録されているかを、申請の前に提供会社へ確かめてください。補助金を前提に高いプランを選ぶと、補助が終わった3年目以降の利用料が自社の負担として残ります。ほかの補助金も含めた整理は中小企業向けAI補助金の3制度と申請手順にまとめています。
需要予測システムを入れるときに気をつけること
予測の数字を見て決める人を先に決める
予測の数字が出ても、発注量を決める人がこれまでどおり勘で発注していれば、在庫も欠品も変わりません。予測を見て発注量を決める人と、予測から外れた発注をしたときに理由を残すルールを、システムを選ぶ前に決めておきます。
新商品と販促は、人が補正する前提にする
過去の実績が無い新商品や、値引き・キャンペーンの月は、どの方式でも予測が外れやすくなります。販促の予定を同じシートに書き込み、その月だけ担当者が数字を上書きする運用にしておくと、外れた理由を後から確かめられます。
見積もりは、予測以外の作業に分けて出してもらう
個別開発やパッケージの見積もりを取るときは、データ整備、連携、画面の開発、保守を別々の行に分けて出してもらいます。予測の仕組みそのものより、データ整備と連携が見積もりの多くを占めていることがあり、その部分は自社で進めて費用を下げられる場合があります。
一次情報・公式情報
- Microsoft サポート「予測関数 (リファレンス)」
- 株式会社チェス「簡単らくらく需要予測One」
- ソフトバンク「人流・気象データを活用したAI需要予測サービス サキミル」
- Amazon Web Services「Amazon SageMaker Canvas pricing」
- AWS Machine Learning Blog「Transition your Amazon Forecast usage to Amazon SageMaker Canvas」
- デジタル化・AI導入補助金2026「通常枠」
価格と制度は2026年10月3日に各公式ページで確認したものです。改定されることがあるため、最新の情報は提供元・公表元でご確認ください。
需要予測システムの費用のよくある質問
需要予測システムの費用は、いくらくらいかかりますか?
方式によって大きく変わります。Excelの予測関数なら追加費用はかからず、店舗単位のSaaSでは1店舗あたり月数千円から使える例があります。発注まで自動で行うサービスや個別開発では、企業単位で初期費用100万円以上の例もあり、大手向けの製品は多くが見積もりです。方式ごとの公開価格は本文の表にまとめています。
需要予測システムは、中小企業でも元が取れますか?
元が取れるかどうかは、予測が外れたときの損失の大きさで決まります。欠品で失った売上、余った在庫の保管費や廃棄、発注担当の作業時間を1か月分の金額にし、それがシステムの年間費用を上回るかで判断します。まずExcelの予測関数で今の見込みとのずれを測ると、高いシステムに進むべきかどうかが分かります。
過去のデータがどのくらいあれば、需要予測を始められますか?
季節の波がある商品なら、同じ月を2回以上比べられる2年分の月別の販売実績があると、予測の当たり外れを確かめやすくなります。データが1年分に満たない場合や、品目のコードが途中で変わっている場合は、システムを選ぶ前に販売実績を同じ形でそろえる作業から始めます。
需要予測システムの導入に、補助金は使えますか?
デジタル化・AI導入補助金の通常枠では、事務局に登録されたソフトウェアやクラウドの利用料、導入の支援費用が補助の対象になり、補助率は原則2分の1以内です。検討しているサービスが登録されているかを、申請の前に提供会社へ確かめてください。
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泉 款太(いずみ かんた)
株式会社SalesDock 代表取締役
慶應義塾大学法学部卒。スタートアップ、ラクスル、リクルート(SUUMO)を経て2025年に独立。 中小企業の経営・営業・業務・データをつなぐ事業基盤の設計と実装を支援。 不動産・製造業・クリニックを中心に、累計40社以上の支援に携わる。
運営は株式会社SalesDock(大阪市中央区本町)。中小企業向けに、AI自走プラン(初期構築15万円+月額10万円・90日)と、 そのあとのAI顧問(月額5万円・6ヶ月契約から)を提供しています。価格は税別です。 大阪・関西を中心に、オンラインで全国からのご相談に対応しています。
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