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製造業

棚卸しで帳簿と実数が合わない — 原因の9割は「記録のタイミング」

8分で読める

この記事のポイント

在庫差異の原因は盗難でも数え間違いでもなく、9割が「記録のタイミング」。入庫時に即記録、仕掛品の中間記録、廃棄・不良の都度記録——この3つを仕組み化するだけで、在庫差異率は5%→1%以下に改善できる。

「また合わない」。期末の棚卸しで、帳簿上の在庫と実際の在庫が合わない。差異率3〜5%。金額にして数十万〜数百万円分の「どこかに消えた在庫」。

毎回「次はちゃんと管理しよう」と言う。でも半年後の棚卸しでまた合わない。このループを繰り返している工場は多い。

在庫差異の原因は、盗難でも数え間違いでもない。9割は「記録のタイミング」の問題。この記事では、在庫が合わなくなる3つの構造的原因と、来週から始められる改善ステップを解説する。

在庫が合わなくなる3つの原因

1. 入庫時に記録しない — 後でまとめて入力→抜け漏れ

材料が届く。倉庫に置く。忙しいから記録は後回し。夕方にまとめて入力しようとするが、午前中に届いた分の数量が思い出せない。納品書を探すが見つからない。「だいたいこのくらいだったはず」で入力する。

この「だいたい」が積み重なると、月末には帳簿と実数が大きくずれる。1日1件の入力ミスが、月20日で20件。1件あたり5個ずれれば、100個の差異になる。

2. 仕掛品の管理がない — 工程間で在庫が「消える」

材料を倉庫から出した。出庫記録をつけた。製品が完成した。入庫記録をつけた。——では、加工中の仕掛品はどこに記録されているか?

多くの工場では、仕掛品の管理をしていない。材料は出庫済み、製品は未完成。帳簿上は「材料も製品もない」状態になる。棚卸しで現場を見ると、加工途中の部品が山積みになっている。これが在庫差異の正体。

3. 廃棄・不良の記録がない — 帳簿上は「在庫あり」

不良品が出た。廃棄した。でも在庫システムからは引いていない。帳簿上は100個あるのに、実際は95個。この5個分の差異は、棚卸しまで誰も気づかない。

不良率が3%の製品を月1,000個作っている場合、月30個の廃棄が記録されない。半年で180個。単価500円の部品なら9万円分が「帳簿上だけ存在する在庫」になる。

原因典型的な症状差異への影響改善の難易度
入庫記録の後回し帳簿より実数が多い差異の40〜50%低(ルール変更のみ)
仕掛品の未管理材料も製品も「ない」差異の30〜40%中(工程間の記録追加)
廃棄・不良の未記録帳簿より実数が少ない差異の10〜20%低(記録用紙の追加のみ)

在庫差異を減らす3つの改善ステップ

ステップ1:入庫は「届いたその場で」記録するルールにする

「後でまとめて入力」を禁止する。材料が届いたら、その場で数量を確認して記録する。紙の記録でもスマホのメモでもいい。ポイントは「その場で」やること。

倉庫の入り口にバインダーとペンを置くだけでいい。品名・数量・日時を書く欄があるA4の紙1枚。これを毎日の終業時にシステムに入力する。「その場で記録→終業時にシステム反映」の2段階にすると、記録漏れが激減する。

ステップ2:仕掛品の「中間記録」を1つだけ追加する

全工程の仕掛品を管理する必要はない。まずは「加工開始時」の1ポイントだけ記録する。材料を出庫して加工を始めるときに、「何を何個、加工開始した」を記録する。

これだけで、棚卸し時に「出庫済みだけど完成していない」分を把握できる。差異の30〜40%がこれで説明できるようになる。

ステップ3:不良・廃棄の「都度記録」を現場に仕組み化する

不良品の廃棄ボックスの横に記録用紙を置く。不良品を入れるときに、品名と数量を書く。それだけ。月末にこの用紙を集計して、在庫から引く。

ある樹脂成形の工場では、この3ステップを導入して3ヶ月後に在庫差異率が4.2%から0.8%に改善した。かかったコストは記録用紙の印刷代だけ。

改善にかかるコスト

0円
入庫記録用紙の設置
0円
廃棄記録用紙の設置
3ヶ月
効果が出るまでの目安

※ 高額な在庫管理システムは不要。紙とペンで始められる

来週からできること

まずは入庫記録から。倉庫の入り口にバインダーを1つ置いて、「届いたらその場で書く」ルールを始める。それだけでいい。

在庫管理システムの導入を検討する前に、記録の「タイミング」を変える。システムに正しいデータが入っていなければ、どんなに高いシステムを入れても在庫は合わない。まずは「正しい記録を正しいタイミングで取る」仕組みを作る。それが最初のステップ。

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泉 款太(いずみ かんた)

株式会社SalesDock 代表取締役

慶應義塾大学法学部卒。スタートアップ、ラクスル、リクルート(SUUMO)を経て2025年に独立。 不動産・製造業・クリニックなど現場産業向けのAI業務効率化コンサルを提供。 30社以上の中小企業のAI活用・業務改善を支援。

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