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業務改善

データ整備の進め方|1件の数え方・寄せるキー・記録の続け方

データ整備は全件をきれいにする作業ではありません。何を1行として数えるか、どの番号で寄せるか、翌日からの記録をどう続けるかを決める順番と、整ったかどうかの測り方を、現場で見た例をもとに解説します。

公開・最終更新: ・ 読了目安 11分

データ整備の進め方の結論

データ整備は全件をきれいにする作業ではなく、何を1行として数えるか、どの番号で寄せるか、翌日からの記録をどう続けるかを決める作業です。この3つを決めてから、足りない列だけを足します。

  • 1件を何で数えるかを先に決めないと、集計も名寄せもやり直しになります。
  • 寄せるキーは揺れる名前ではなく、法人番号のような変わらない番号で持ちます。
  • 一度そろえても、翌日からの記録が続かなければ数か月で元に戻ります。

最初に置く業務場面

AIやシステムを入れたいが「うちはデータが汚いので」と止まっている場面を想定します。表記ゆれの修正から手をつけたくなりますが、何を1件と数えるかが決まっていないと、直した先からまた崩れます。

ツール名から始めず、対象業務、入力、完了条件、判断者、例外時の戻し先を先に決めます。この順番は、SalesDockの支援記録から顧客固有情報を除き、複数の現場で再利用できる形に一般化したものです。

最初に決めるのは、何を1行として数えるかです

データ整備というと、表記を直したり空欄を埋めたりする作業を思い浮かべがちです。ただ、その前に決めていないと全部やり直しになる項目があります。1件を何で数えるか、という粒度です。

ある酒類小売の在庫を見たときが分かりやすい例でした。ワインは同じ銘柄でも年ごとに値段が変わり、年が違えば別の商品として売られます。日本酒は同じ名前でも生酒と火入れで別物です。ところが注文する顧客は銘柄名しか言わないので、どちらを指しているかは担当者の記憶で補われていました。この状態のまま在庫表を作っても、数えた本数と棚の本数は合いません。

  • 現場が名前で呼び分けているものは、別の行として持ちます。
  • 値段・置き場所・仕入れ先のどれかが違えば、別の行にします。
  • 誰も区別していない違いを列にすると、更新されずに残ります。

粒度は、現場の呼び分けに合わせます

決め方は単純で、現場が呼び分けているなら別の行にします。値段が違う、置き場所が違う、仕入れ先が違うのどれかに当てはまるときも別の行です。

逆に、誰も区別していないものを細かく分けると、入力する人が選べなくなって更新が止まります。粗すぎても数が合わず、細かすぎても続きません。判断の基準は現場の言葉です。

寄せるキーは、名前ではなく変わらない番号で持ちます

同じ相手のデータが複数の表に散っているとき、それを1つに寄せる作業を名寄せと呼びます。ここで会社名をキーにすると、件数が増えたところで行き詰まります。同じ商号で法人番号が違う会社は実在します。系列会社や事業承継の前後では珍しくありません。

法人相手の場合は、国税庁が公開している法人番号を第一のキーにします。商号や所在地は変わりますが、法人番号は変わりません。公表サイトでは過去の商号・所在地の変更履歴も確認できるので、古い名前で入っているデータを現在の法人へ寄せ直せます。

  • IDは箱ごとの接頭辞に4〜5桁のゼロ埋めを付けます。連番で「COMP1」のように振ると、10件を超えた時点で桁が揃わず、並べ替えも前方一致検索も崩れます。
  • 全角文字を混ぜないでおくと、あとから機械に読ませるときに手が止まりません。

表記ゆれは、入口で防がずに月末にまとめて直します

入力時に完全に防ごうとしないほうがうまくいきます。カタカナの「ヴ」と「ブ」のように、書いた本人は正しいつもりで揺れる字があるからです。

現実的なのは、月末に正式名称ではなさそうな行だけを一括で抜き出して、人が直す時間を取る運用です。毎日やる必要はありません。

一度そろえる作業より、翌日から記録が続く形を先に作ります

データ整備で一番多い失敗は、一度きりの棚卸しで終わらせてしまうことです。さきほどの酒類小売では、2月末に店を3日間閉めて全在庫を数えていました。それでも半年後には合っていません。数えたあとの出入りが記録されなかったので、初日からずれ始めていました。

システムが無いから記録できないわけでもありません。この会社には在庫管理システムが既に入っていました。足りなかったのは、何を1行と数えるかの取り決めと、毎日の記録と、探せる程度の置き場所の区分だけでした。

  • 在庫なら、入荷・販売・預かり・移動の4つを、その場で、動かした本人が、決めたコードで残します。
  • 顧客データなら、接触・提案・受注・解約が同じ役割を果たします。
  • あとでまとめて入力する形にすると、記憶に頼る部分が増えて結局合わなくなります。

置き場所の区分は、粗くしないと更新が止まります

その会社は在庫を3箇所に分けて置いていて、「あるのは分かっているのに探せない」状態でした。かといって棚の段まで細かく決めると、今度は動かすたびの更新が面倒で誰も直さなくなります。

店頭・店奥・隣の倉庫・離れた倉庫くらいの粗さが、更新され続ける限界でした。探せる程度に粗く分けるのが、続く条件です。

列は、見たい数字から逆算して足りない分だけ足します

「あとで使うかもしれない」で列を増やすと、埋まらない列が並びます。先に、出したい数字を1つ書き出してから、それを計算するのに足りない列だけを足します。

営業の記録を1つのデータベースに寄せたときは、各段階の歩留まりを割り算で出したいという要望から始めました。そのためには、出会った日・初回設定日・初回実施日・決着日のように、どの段階にいつ到達したかが日付として入っている必要があります。現在のステータスだけを1列持っていても、過去の通過率は計算できません。

日付と抽出ロジックで作れるものは、列にしません

当初は「再提案すべき先」を選択式のタグで持つ案でした。ただ、いつかは再提案する相手ばかりなので、そのタグはほぼ全件に付きます。欲しかったのは「今がその時だ」という合図のほうでした。再商談の期限を日付で持てば、その手前で通知を出し、当日に該当する会社を並べられます。タグは消えました。

判定の条件も変わる前提で組んでおきます。見込みのランク分けを1年間同じ定義で運用しきった会社に、まだ出会ったことがありません。だいたい3か月で現場の感覚とずれます。判定結果そのものより、判定の材料になる日付と金額を持たせておきます。

投入は、箱ごとに全件を出し切ってから始めます

案件を1件ずつ取り上げて、その関係者や会社を都度追加していく進め方は、一見早く始められます。ただ同じ会社や同じ人が別の案件から二度追加され、あとで統合する作業が発生します。

会社なら会社、人なら人と、1つの箱の全レコードを出し切ってから入れるほうが結局は速く終わります。列が埋まっていない行があっても構いません。行が確定していれば、あとから列を埋める作業は分担できます。

  • 既存の案件と人が正しく結び付いているかは、投入の途中ではなく最初に確認します。
  • ここが抜けると、案件の一覧はあるのに担当した人がひも付かず、打ち合わせ記録や問い合わせ履歴が集まりません。

見える形になるのは、データが入ったあとです

ダッシュボードはデータが入ったあとにしか作れません。この案件でも、可視化の公開予定を当初の目標から3週間ほど後ろへ引き直しました。

先に画面の完成日を約束すると、データを入れる工程が削られます。順番を逆にしないほうが、結果的に早く見えるようになります。

整ったかどうかは、検索と再現の2つで測ります

データ整備は終わりの見えにくい作業なので、判定の仕方を先に決めておくと途中でやめずに済みます。難しい指標は要りません。抜き取りで測れるもので十分です。

  • 検索: 現物や相手を10件ほど無作為に選び、それぞれデータ上で1分以内に見つけられるかを試します。見つからなかった件は、名前の揺れか、登録が無いか、置き場所が分からないかを記録します。この内訳が次にやる作業になります。
  • 再現: 普段その業務を担当していない人に、決めた手順で記録を1件入れてもらいます。途中で聞かないと進めない箇所が、まだ人の記憶に残っている部分です。
  • 合わせて、同じ相手が2行に分かれている件数と、週ごとの記録件数の推移を見ます。件数が先週より減っていたら、記録が続かない形になっているサインです。

判断を止めない比較表

進め方向く条件先に確認すること
全件をいま整える件数が数千行までで、止められる期間を取れる整え終わったあとの記録が続く形になっているか
使う範囲だけ整える出したい数字や試したい業務が1つ決まっている対象外のデータと混ざったときの見分け方
新規分からルールを適用する過去データが多く、当面は直近しか使わない過去分を参照する業務が本当に無いか

来週までに確認するチェックリスト

  • 何を1行として数えるかを、現場の呼び分けに合わせて決めました。
  • 寄せるキーを決め、法人番号など変わらない値を第一に置きました。
  • IDの接頭辞と桁数を決め、桁を揃えました。
  • 日々の記録を、その場で・本人が・コードで残す形にしました。
  • 出したい数字を1つ書き出し、必要な日付列が揃っているか確認しました。
  • 10件の抜き取り検索と、担当外の人による再現で測る日を決めました。

全部を一度に決める必要はありません。空欄が多い場合は、開発や契約を進めず、対象業務を一つに戻します。例外の担当者が決まらない場合も停止条件です。

確認した一次情報

制度、会計処理、法令、セキュリティの最終判断は、各分野の専門家と最新の公式資料で確認してください。本記事は個別の税務・法務・投融資判断を代行するものではありません。

全体の位置づけはデータ設計・システム連携・要件定義の全体像で確認できます。

次に決めることを一つに絞る

入力、確認、人の判断、停止条件を架空の業務例で確認し、自社のデータをどの粒度で持つか整理できます。

架空の設計例で比べる

よくある質問

データ整備は何から始めればいいですか?

表記ゆれの修正ではなく、何を1行として数えるかを決めるところからです。現場が名前で呼び分けているもの、値段や置き場所や仕入れ先が違うものは別の行にします。ここが決まっていないと、直した先からまた崩れます。

名寄せのキーは何を使えばよいですか?

法人が相手であれば法人番号を第一のキーにします。同じ商号で法人番号が違う会社は実在するため、会社名だけでは寄せられません。法人番号は商号や所在地が変わっても変わらず、国税庁の公表サイトで変更履歴も確認できます。

一度きれいにしたのに、しばらくすると合わなくなるのはなぜですか?

そろえたあとの出入りが記録されていないからです。棚卸しのように一度数える作業は、その日の状態を写し取るだけで、翌日からの動きは別に記録し続ける必要があります。整備の前に、記録が続く形になっているかを確かめます。

データ整備が終わったかどうかは、どう判断しますか?

10件ほど無作為に選んで1分以内に見つけられるかという検索と、普段その業務を担当していない人が手順どおりに1件記録できるかという再現の2つで測ります。同じ相手が2行に分かれている件数と、週ごとの記録件数の推移も合わせて見ます。

泉 款太(いずみ かんた)

株式会社SalesDock 代表取締役

慶應義塾大学法学部卒。スタートアップ、ラクスル、リクルート(SUUMO)を経て2025年に独立。 中小企業の経営・営業・業務・データをつなぐ事業基盤の設計と実装を支援。 不動産・製造業・クリニックを中心に、累計40社以上の支援に携わる。

運営は株式会社SalesDock(大阪市中央区本町)。中小企業向けに、AI内製化(初期構築15万円+月額10万円・90日)と、 そのあとのAI顧問(月額5万円・6ヶ月契約から)を提供しています。価格は税別です。 大阪・関西を中心に、オンラインで全国からのご相談に対応しています。

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この記事の数値について

本文中に一次資料へのリンクがある数値は、リンク先を出典としています。 リンクのない業務設計、判断基準、実務上の目安は、SalesDockが累計40社以上の支援と自社運用で得た知見を一般化したものです。 個別企業での成果を保証する数値ではなく、条件によって変わります。