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AI活用入門

AX(AIトランスフォーメーション)とは?DXとの違いと、中小企業が最初に着手する業務の選び方

言葉の意味より先に、最初の1業務をどう選ぶかを整理します。

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執筆:泉 款太(株式会社SalesDock 代表取締役)累計40社以上の中小企業を支援

AX(AIトランスフォーメーション)とは?DXとの違いと、中小企業が最初に着手する業務の選び方

結論

AXの最初の1業務は、実装のしやすさではなく、1件30分以上かかる・毎週発生する・手順を言葉にできる、の3条件が揃うかで選びます。実装しやすい業務から選ぶと、一番面倒な業務が後回しのまま残ります。

  • AXとは、AIを業務に足すだけでなく、AIがあることを前提に仕事の分担と手順を組み替えることです。
  • DXは業務をデジタルに置き換える取り組み、AXはそのうえでAIに下書きや振り分けを任せ、人は確認と判断に回る取り組みです。
  • 中小企業は全社で始めず、手間が大きく毎週繰り返す業務を1つ選び、任せる範囲と人が確認する範囲を決めて始めます。

この記事はAXという言葉の意味と、最初に着手する業務の選び方を扱います。AI導入の全体像は中小企業のAI導入 完全ガイド、つまずく原因は中小企業のAI導入は何から始めるべきかで扱っています。

「AXを進めよう」と言われても、何をすれば進んだことになるのかが曖昧なまま、ツールの契約だけが先に決まる会社は少なくありません。この記事では、言葉の意味を短く押さえたうえで、現場で止まりやすい場面と、最初の1業務の選び方に絞って書きます。

AX(AIトランスフォーメーション)とは

AXは、AIの活用によって業務や事業の進め方そのものを変える取り組みです。一般にAI Transformationの頭文字として使われ、DXになぞらえた呼び方です。DXは、経済産業省の資料で、データとデジタル技術を使って業務や事業を変えていく取り組みという趣旨で説明されています。一方、AXについては官公庁などの明確な公的定義を確認できておらず、企業や業界によって指す範囲に幅があります。ChatGPTのようなツールを個人が使うだけではAXと呼びません。メール、見積、問い合わせ対応といった業務の流れの中に、AIが担当する工程と人が担当する工程を決めて組み込むところまでが範囲です。

なお「AX」は展示会名や企業名にも使われます。この記事はAI Transformationの意味で扱います。

DX:デジタルに置き換える受け取る人が入力人が作成データが残るAX:分担を組み替える受け取るAIが下書き人が判断人の時間が確認と判断に移る
違いは道具ではなく、誰がどの工程を持つか。同じ業務でも、AXでは下書きまでをAIに渡し、人は判断に時間を使います。

次の表は、違いを分かりやすくするため、DXのうち紙・手作業をデジタルに置き換える段階に絞って比べています。DX全体は業務や事業の変革まで含みます。

観点DXAX
主な目的紙・手作業をデジタルにし、データを残すAIに任せる工程を決め、人の時間を判断に回す
変わるもの記録の場所と入力の方法工程の担当と確認の置き方
前提業務の流れが分かっている業務の流れと、確認する人が決まっている
効果の見方入力・探す時間の減少1件が終わるまでの時間と、確認で直した件数

DXが終わらないとAXができないわけではありません。ただ、業務の置き場所と手順が決まっていないと、AIに渡す材料も、出てきた結果を確認する人も決まりません。そのため、AXは業務を言葉にする作業と一緒に進めるものだと考えると、順番を間違えにくくなります。

AXで変わる業務の例と、AIに任せる範囲

AXの対象は、生成AIで文章を作る業務に限りません。受け取った情報を整理し、下書きを作り、人が確認して送るまでの流れであれば、部署を問わず対象になります。ここでは、中小企業で相談の多い業務を3つに分けて、AIに任せる工程と人が持つ工程を並べます。

営業・問い合わせ対応

問い合わせメールの内容を読み取り、過去の回答をもとに返信の下書きを作る工程はAIに任せやすい部分です。人が持つのは、価格の提示や例外対応の判断と、送信前の確認です。ここを人に残さずに送信まで自動にすると、誤った回答がそのまま顧客に届きます。

バックオフィス(経理・総務・人事)

請求書や領収書の読み取り、仕訳の候補出し、社内からの定型的な質問への一次回答は、AIに任せられる工程です。支払いの承認や、規程にない例外の判断は人が持ちます。AIエージェントのように複数の工程をつないで動かす場合も、承認の工程は人に残す設計にします。

現場・事務の報告と記録

議事録や日報の要約、案件ごとの進捗の整理は、手間のわりに毎週発生しやすい業務です。AIに要約させ、担当者が事実とのずれを直す形にすると、確認を前提に、記録にかかる時間を減らせる場合があります。

AXでAIに任せる業務は、営業・問い合わせ対応、バックオフィス、現場の報告と記録のどれでも、AIの出力を確認する人と、その人が確認する観点を先に決めておく必要があります。生成AIは、もっともらしい誤りを出すことがあるためです。確認の置き場所が決まっていないと、業務効率化どころか、直す手間が増えます。AI活用の国内動向を調べるときは、総務省が毎年発行する情報通信白書も参考になります。

AXが止まる3つの場面

AIを入れると決めた会社でも、止まる場面はおおよそ決まっています。支援の現場で見てきたものを、一般化した中小企業の例として並べます。

  • 決まっているのに誰も触っていない:会社として方針も決裁も予算も決まっているのに、個人で試している人が1人もいないことがあります。実物を開いた人がいないので、何ができて何ができないかを誰も語れません。
  • 決めることが多すぎて進まない:AI導入の相談で、データの置き場所とセキュリティの話に時間の大半を使ってしまう例があります。クラウドか自社サーバーか、外出中の社員はどう使うか。最初から確認事項が何項目も並ぶと、議論だけで終わります。
  • 一度に広げて、終わった業務がゼロ:初回に環境設定・メール確認・ファイル保管・日程調整・情報収集など多くのテーマを一度に触った例では、画面上はどれも動きました。それでも予定時間を超過し、終わったと言える業務は1つもありませんでした。

AXが止まる3つの場面(決まっているのに誰も触っていない、決めることが多すぎて進まない、一度に広げて終わった業務がゼロ)に共通する原因は、最初に決める範囲が広すぎることです。データの置き場所を全社で決める、多くのテーマを同時に触る、といった広げ方をすると、確認すべきことが増えて、どの業務も終わりません。

最初に着手する業務の選び方

業務自動化の場では、たいてい実装しやすいところから手が動きます。メールの下書き、日程の候補出し、一覧づくりなどです。どれも動かしやすい反面、一番面倒な業務は後回しになり、現場の負担はあまり減りません。

最初の1業務は、実装のしやすさではなく、手間の大きさと繰り返しの多さで選びます。次の3つが揃う業務が候補です。

  • 手間が大きい:1件に30分以上かかる、または担当者が嫌がっている。
  • 毎週発生する:月に1回では、効果が出たかを確かめるまで時間がかかる。
  • 手順を言葉にできる:誰かに口頭で説明できる。説明できない業務は、先に整理します。
1件30分以上かかる?毎週発生する?手順を言葉にできる?最初の1業務にするいいえの場合効果が小さい→ 後回し測れない→ 頻度の高い業務へ先に業務整理
3つの問いに全部「はい」と答えられる業務を1つだけ選びます。いいえが出た場合は、右の対応に回します。

AXの進め方:5つの手順

  1. 目的を決める:どの業務の、何を減らしたいのかを1文で書きます。
  2. 業務を選ぶ:手間が大きく、毎週繰り返し、手順を言葉にできる業務を1つ選びます。
  3. AIに任せる範囲を決める:下書きや整理はAI、判断と送信は人、と工程ごとに分けます。
  4. 確認の置き方を決める:AXの確認者と、確認する観点を先に決めます。
  5. 効果を測る:終わった件数と、1件あたりの所要時間を記録します。

最初の1か月の進め方

選んだ1業務について、1か月で確かめることを絞ります。環境設定の議論は、その業務に必要な範囲に限ります。全社のセキュリティ方針を先に決めるのではなく、その業務で扱うデータの種類を書き出し、入れてよいものと入れないものを分けるところまでで十分です。

週やること記録するもの
1週目業務の手順を書き出し、AIに任せる工程と人が確認する工程を分ける現状の1件あたりの時間
2週目実際の案件で試し、出てきた結果を担当者が直す直した箇所と件数
3週目指示文と確認の観点を直し、同じ業務をもう一度回す終わった件数
4週目1件あたりの時間を1週目と比べ、続けるかを決める時間の変化

効果は、終わった件数と1件あたりの時間で測ります。画面で動いたかどうかでは判断しません。終わった件数が増えていなければ、業務の選び方か、任せる範囲の切り方を見直します。

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SalesDockは、中小企業の経営管理・業務・データの整理から、AIを業務に定着させるところまでを月額で支援しています。診断では、現在地と最初に着手する業務の候補を確認できます。

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AX推進の課題:人材・社内ルール・効果の測り方

AXを進める中小企業が最初に当たる課題は、高度なAI人材の不足ではありません。多くは「誰が確認するか」「何を入力してよいか」「効果をどう測るか」が決まっていないことです。

人材:専門家より、業務を説明できる人

最初に必要なのは、AIを作れる人ではなく、担当業務の手順を言葉にできる現場の担当者です。業務を説明できる人がいれば、指示文の改善と結果の確認を回せます。社内に推進役を1人置き、使い方の相談を受ける形にすると、個人の試行が共有されます。人材育成の資料は、IPAのデジタル人材の育成のページ(スキル標準など)も参考になります。

社内ルール:入れてよい情報を先に分ける

顧客の個人情報や取引先の機密を、どのAIサービスに入力してよいかを決めます。全社の規程を整えてから始めるのではなく、選んだ1業務で扱う情報を書き出し、入力してよいものと入力しないものに分ける範囲から始めます。

効果:金額換算の前に、時間と件数で見る

効果の指標は、1件あたりの所要時間と、終わった件数の2つで足ります。人件費の削減額に換算するのは、数か月続けて数字が安定してからで遅くありません。

経営者や責任者が関わる範囲

AXは、現場だけで進めると途中で止まります。責任者が関わるのは、実装そのものではなく、次の3点を決める場面です。

  • 最初の1業務を何にするか。
  • AIが出した結果を、誰が確認して責任を持つか。
  • 1か月後に続けるか止めるかを、どの数字で決めるか。

この3点が決まっていれば、ツールの選定は後からでも間に合います。現在地を確認する10問はAI活用診断とはに、失敗しやすい型は中小企業のAI導入が失敗する3パターンにまとめています。

AXのよくある質問

AXとは何の略ですか。

一般にAI Transformation(AIトランスフォーメーション)の略として、AIの活用によって業務や事業の進め方を変えていく取り組みを指して使われます。官公庁などによる明確な公的定義は確認できておらず、企業や業界によって指す範囲に幅があります。DX(デジタルトランスフォーメーション)になぞらえた言い方です。展示会名や企業名などに同じ「AX」の表記が使われることもあるため、文脈で見分けてください。

AXとDXは何が違いますか。

DXは紙や手作業をデジタルに置き換え、データを残せる状態にする取り組みです。AXは、そのデータや文書を使ってAIが下書き・判断の補助・振り分けまで担う前提で、仕事の分担と手順を組み替える取り組みです。DXが済んでいなくてもAIは使えますが、業務の置き場所が決まっていないと定着しにくくなります。

中小企業でもAXに取り組めますか。

取り組めます。全社の変革として始める必要はなく、1つの業務を選び、AIに任せる範囲と人が確認する範囲を決めるところから始めます。経営者や部門責任者が関わり、効果を測る数字を1つ決めておくことが前提です。

AXは何から始めればよいですか。

手間が大きく、毎週繰り返し発生し、手順を言葉にできる業務を1つ選びます。実装しやすい業務から選ぶと、一番面倒な業務が残り続けます。最初の1か月は、選んだ1業務で終わった件数と、かかった時間の変化だけを記録してください。

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泉

泉 款太(いずみ かんた)

株式会社SalesDock 代表取締役

慶應義塾大学法学部卒。スタートアップ、ラクスル、リクルート(SUUMO)を経て2025年に独立。 中小企業の経営・営業・業務・データをつなぐ事業基盤の設計と実装を支援。 不動産・製造業・クリニックを中心に、累計40社以上の支援に携わる。

運営は株式会社SalesDock(大阪市中央区本町)。中小企業向けに、AI内製化(初期構築15万円+月額10万円・90日)と、 そのあとのAI顧問(月額5万円・6ヶ月契約から)を提供しています。価格は税別です。 大阪・関西を中心に、オンラインで全国からのご相談に対応しています。

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本文中に一次資料へのリンクがある数値は、リンク先を出典としています。 リンクのない業務設計、判断基準、実務上の目安は、SalesDockが累計40社以上の支援と自社運用で得た知見を一般化したものです。 個別企業での成果を保証する数値ではなく、条件によって変わります。

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