AIの利用方法|仕事での使い方を「聞く・下書き・任せる」の3段階で整理する
質問に答えてもらうだけで終わらせず、作業を渡すところまで進めます。
執筆:泉 款太(株式会社SalesDock 代表取締役)累計40社以上の中小企業を支援

結論
最初の1週間は、毎週くり返す作業を1つだけ選び、AIに渡す前と後の所要時間を比べます。質問は「これで合っていますか」だけにせず、目的・前提・見てほしい観点・出力の形を添えます。
- 仕事でのAIの利用方法は、質問に答えてもらう「聞く」、最初の版を作らせる「下書きを作らせる」、決まった手順を進めさせる「作業を任せる」の3段階に分けると整理できます。
- 調べ物に使っているだけの会社は、使えていないわけではなく、1段階目で止まっています。次は毎週くり返している作業を1つ選び、下書きから始めます。
- どの段階でも、事実の確認と、送信や確定のような取り返しのつかない操作は人が行います。AIの担当は候補の整理と下書きまでに限ると、任せる範囲を広げても安全です。
この記事は、AIを仕事でどう使うか、その使い方の種類と始め方を扱います。業種別の具体例は中小企業の生成AI活用事例、社内で使うときの決まりはAIの社内ルールにまとめています。
少人数のバックオフィス部門にAIの利用状況を聞いたところ、「調べ物には使っています」という答えでした。日々の仕訳や書類作成で使っている業務は、1つもありませんでした。AIを使っているつもりでも、仕事の作業そのものはこれまでと同じ、という会社は少なくありません。
この記事が担当するのは、AIの利用を「聞く・下書きを作らせる・作業を任せる」の3段階で整理することです。カスタム指示の書き方のような個別の設定は別の記事に譲り、ここでは3段階に分けて、いまどの段階にいて、次に何を試せばよいかが分かるように整理します。あわせて、質問の書き方、人が判断を残す範囲、最初の1週間の進め方を書きます。
AIの利用方法は「聞く・下書きを作らせる・作業を任せる」の3段階
AIの使い方は、人の手間をどこまで肩代わりさせるかで3つに分かれます。AIの利用方法は、質問に答えてもらう、下書きを作らせる、作業を任せる、の3段階に分けられ、段階が上がるほど減る手間が大きくなります。調べ物や言葉の意味を確かめるのは1段階目、メールや議事録の最初の版を作らせるのは2段階目、決まった手順を最後まで進めさせるのは3段階目です。
1段階目で止まっている会社が少なくありません。AIは質問に答えるもの、という認識が一般的で、作業そのものを任せられることは、あまり知られていないようです。
3段階それぞれの使い方と、人が見る箇所
段階ごとに、仕事での例と、人が確かめる箇所を並べます。人が見る箇所は、段階が上がっても消えません。
| 段階 | 使い方 | 仕事での例 | 人が見る箇所 |
|---|---|---|---|
| 1. 聞く | 調べ物、用語の意味、考えの整理など、質問に答えてもらう | 取引先の業界用語を調べる、メールの言い回しを相談する | 答えが正しいか。数字や制度は出典を確かめる |
| 2. 下書きを作らせる | 文章、表、要約など、成果物の最初の版を作らせる | 返信メールの下書き、議事録の要約、見積書の文面 | 事実の誤り、相手に合った言い方か、書かれていない条件 |
| 3. 作業を任せる | 決まった手順の作業を、AIが最後まで進める | 届いたメールを読み取って台帳に1行追加する、毎月の集計表を作る | AIが何をしたかの記録。確定と送信の操作 |
1段階目の「聞く」は、答えを確かめる前提で使う
調べ物や言葉の整理は、AIの使い方の中でいちばん手軽です。ただし、AIは事実と違うことも、もっともらしく返します。数字や制度、固有名詞が出てきたら、公的機関や元の資料で確かめてから使います。確かめる手間が大きい調べ物は、AIに探させるより、出典を示させて自分で開くほうが早く済みます。
2段階目の「下書き」は、いちばん効果が出やすい
返信メール、議事録の要約、提案書の文面のように、毎回ゼロから書くものは、AIに最初の版を作らせるだけで書き出しの時間がなくなります。返信メールの準備を自動化する場合も、AIの担当は候補の一覧と下書きまでに限り、どれに返すかを選ぶことと送信は人が行う形にしました。下書きを作らせる段階では、AIの担当は最初の版まで、選ぶことと確定は人、と線を引いておきます。メール返信の運用はメール返信をテンプレ化+AI下書き、議事録は議事録をAIに任せるで書いています。
3段階目の「任せる」は、手順が決まった作業から
届いたメールを読み取って台帳に1行追加する、毎月同じ形の集計表を作る、といった手順の決まった作業は、AIに最後まで進めさせられます。始めるときは、毎週くり返す・書き込む先の型がある・間違いに気づける・原本が残る、の4つがそろう作業を選びます。入力の出どころ別の進め方は手入力をAIで削減する方法にまとめています。
AIへの質問は「これで合っていますか」だけにしない
社内でAIを使い始めた担当者から、自分の設計に漏れがあるのか判断できない、と相談を受けたことがあります。投げている質問を見せてもらうと、毎回「これで合っていますか」だけでした。AIはこの質問に、おおむね「合っています」と返します。質問の書き方で変わるのは、答えの正しさより、答えが自分の確かめたい中身に向いているかどうかです。漏れを見つけたいなら、漏れを探してほしいと伝える必要があります。
質問には、次の4つを添えます。
- 目的:何のための作業か。「請求の漏れを減らすための手順書です」のように書きます。
- 前提:相手、状況、使える材料。担当者の人数や、使っている道具も伝えます。
- 見てほしい観点:漏れ、矛盾、抜けている手順など。「漏れがないか」ではなく「担当者が休んだ日に止まる箇所はどこか」と具体的に書くほど、使える答えになります。
- 出力の形:表、箇条書き、文字数。そのまま台帳や資料に貼れる形にしておくと、手直しが減ります。
作業を任せるときは、AIに確定させない工程を1つ決める
3段階目に進むときは、はじめに人が行う工程を決めておきます。決めておく工程は、候補から選ぶこと、取引先への送信、金額や契約の確定のように、間違えたときの影響が大きいものです。AIには、候補の一覧と下書きまでを任せます。
この線を引いておくと、任せる作業を増やしても、人の確認が抜ける箇所が見えます。確認を減らしていくときも、直した記録を見て、直しがほとんど出ない項目から抜き取りに切り替えます。承認を残す場所の考え方はAI業務自動化で人の承認をどこに残すかで書いています。
最初の1週間で試す手順
- 1日目:毎週くり返している作業を3つ書き出し、いまの1回あたりの所要時間を測ります。
- 2日目:3つのうち、書き込む先の型があり、間違いに気づける作業を1つ選びます。
- 3〜4日目:選んだ作業の材料(元のメールや資料)をAIに渡し、目的・前提・観点・出力の形を添えて、下書きを作らせます。
- 5日目:下書きを原本と見比べて直し、直した箇所と、確認と修正にかかった時間を記録します。
- 翌週:同じ作業をもう一度行い、所要時間が前より短くなったかを比べます。短くならなければ、渡す材料か指示を見直します。
効果は、1回あたりの所要時間と、直した件数で見ます。時間が減っていても、後の工程で間違いが見つかっているなら、確認の手順を戻します。使えそうな業務を探すところから相談したい方は、AI活用診断で現在地を確かめられます。
AIを仕事で使うときに気をつけること
入れてよい情報の範囲を先に決める
個人情報保護委員会は2023年6月2日付の注意喚起で、次の2点を示しています。
- 個人情報を含むプロンプトを入力する場合、特定された利用目的の達成に必要な範囲内かを確認する。
- 本人の同意なしに個人データを入力し、応答結果の出力以外の目的(機械学習など)で扱われると、個人情報保護法に違反する可能性があるため、機械学習に利用されないか等を十分に確認する。
顧客や取引先の情報を含む書類を扱うなら、入力内容が学習に使われない業務用プランか、個人プランで学習をオフにしたうえで、社内で入力してよい情報の範囲を決めてから使います。試す段階では、名前や社名を伏せた過去の書類でも、効果は確かめられます。社内ルールの作り方はAIの社内ルールにまとめています。
ツール選びより、渡す作業の選び方を先に
どのAIを使うかは、作業を決めてからでも遅くありません。ChatGPTとClaudeのような違いはChatGPTとClaudeの業務での使い分けで比べています。導入がうまくいかない会社の共通点は中小企業のAI導入が失敗するパターンが参考になります。
自社だけで進めにくいとき
SalesDockは、中小企業の業務を整理し、AIを使った仕組みの実装と定着まで月額で支援しています。どの作業を何段階目で使うかを決める前の、業務の洗い出しから一緒に進められます。全体像はAI活用の完全ガイドにまとめています。
一次情報・公式情報
制度やガイドラインは改定されます。最新の情報は公表元でご確認ください。
AIの利用方法のよくある質問
AIの利用方法は、何から覚えればよいですか?
まず「聞く」「下書きを作らせる」「作業を任せる」の3段階があることを知り、毎週くり返している作業を1つ選んで、いまの段階より1つ先の使い方を試してください。調べ物にだけ使っている会社なら、次は返信メールや議事録の下書きです。ツールの機能を順番に覚えるより、自社の作業を1つ渡してみるほうが早く身につきます。
AIに質問するとき、どう書けば答えが良くなりますか?
「これで合っていますか」だけでは、AIは合っているかどうかの感想しか返せません。何のための作業か、相手や状況、見てほしい観点(漏れ、矛盾、抜けている手順など)、返してほしい形(表、箇条書き、文字数)を一緒に書くと、確かめたい中身に沿った答えが返ってきます。1回で決めず、返ってきた内容を見て観点を足していく使い方が現実的です。
AIに任せてはいけない業務はありますか?
AIに任せてはいけない業務を一律に決めることはできませんが、間違えたときに取り返しがつかない操作は人が行ってください。たとえば取引先への送信、支払いや契約の確定、個人情報を含む情報の外部への提出です。AIの担当は候補の整理と下書きまでに限り、選ぶことと確定は人に残すと、任せる範囲を広げても事故を防げます。
無料のAIと有料のAIは、仕事ではどう使い分けますか?
調べ物や言い回しの相談など、社内の情報を入れない使い方なら、無料のサービスでも試せます。顧客や取引先の情報を含む書類を扱うときは、入力内容が学習に使われない業務用プラン(既定で学習に使われないもの)か、個人プランで学習をオフにしたうえで使ってください。学習をオフにする手順は、関連記事「ChatGPTに学習させない設定の手順」で解説しています。どちらを使うかより、社内で入力してよい情報の範囲を先に決めておくことが大切です。 ChatGPTに学習させない設定の手順
AIの答えが間違っていたときは、どう防げばよいですか?
AIは事実と違う内容も、もっともらしい文章で返してきます。数字、制度、固有名詞は出典を開いて確かめ、下書きは原本と見比べてから使います。間違いを見つけたら、どの種類の誤りだったかを記録しておくと、次に人が見る箇所を決められます。
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泉 款太(いずみ かんた)
株式会社SalesDock 代表取締役
慶應義塾大学法学部卒。スタートアップ、ラクスル、リクルート(SUUMO)を経て2025年に独立。 中小企業の経営・営業・業務・データをつなぐ事業基盤の設計と実装を支援。 不動産・製造業・クリニックを中心に、累計40社以上の支援に携わる。
運営は株式会社SalesDock(大阪市中央区本町)。中小企業向けに、AI自走プラン(初期構築15万円+月額10万円・90日)と、 そのあとのAI顧問(月額5万円・6ヶ月契約から)を提供しています。価格は税別です。 大阪・関西を中心に、オンラインで全国からのご相談に対応しています。
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