2026年10月、受付帳DM営業が終わる—不動産会社が今すぐ始めるべき仕入れルートの転換
登記規則改正の中身と、半年で準備できる5つの代替ルート
この記事は不動産会社のDX・業務改善 完全ガイドの一部です。不動産業の効率化を体系的に知りたい方はまず完全ガイドをご覧ください。
この記事のポイント
2026年10月の登記規則改正で受付帳DM営業が不可能に。買取再販・仲介会社の仕入れモデルに大きな影響。今から準備できる5つの代替ルートを具体的に解説する。
不動産の買取再販や仲介に携わっている人なら、「受付帳」という言葉を聞いたことがあるだろう。法務局に備え付けられた登記の受付記録。ここから相続登記や売買の情報を拾い、所有者にDMを送る—この手法は、何十年も不動産業界の仕入れの「定石」として機能してきた。
2026年10月1日、この定石が消える。不動産登記規則の改正により、受付帳の記載事項から「登記の目的」と「不動産の所在事項」が削除される。残るのは受付年月日と受付番号だけ。つまり、どんな登記が、どの物件に対して行われたのかが、受付帳からは一切わからなくなる。
そもそも受付帳とは何か
受付帳は、法務局(登記所)が登記申請を受け付けた際に作成する帳簿だ。これまで以下の4項目が記載されていた。
受付帳の記載事項(改正前)
登記の目的:相続、売買、抵当権設定など
申請の受付年月日:登記が受け付けられた日付
受付番号:一連の管理番号
不動産の所在事項:所在地・地番など
不動産会社はこの受付帳を定期的に閲覧し、「相続」や「売買」といった目的が記載された物件を特定。登記情報から所有者の住所を取得し、DMを送るという流れで営業活動を行ってきた。
特に買取再販業者にとっては、相続が発生した直後の物件を素早くキャッチするための重要な情報源だった。相続人が「この家どうしよう」と考え始めるタイミングでアプローチできれば、仕入れの確度は格段に上がる。
2026年10月に何が変わるのか
改正後の受付帳に記載されるのは、以下の2項目だけになる。
改正後の受付帳(2026年10月1日〜)
申請の受付年月日
受付番号
「登記の目的」と「不動産の所在事項」は削除
受付帳を見ても、それが相続なのか売買なのか抵当権設定なのかわからない。どの物件に関する登記かもわからない。事実上、受付帳から営業リストを作ることは不可能になる。
この改正の背景には、個人情報保護の強化がある。相続登記の直後にDMが届く現象は、遺族にとって「なぜ知っているのか」という不信感を生んでいた。法務省としては、登記制度が営業目的で利用されている状態を是正する狙いだ。
もう一つの波—住所・氏名変更登記の義務化(2026年4月)
10月の受付帳改正と合わせて押さえておきたいのが、2026年4月から施行されている住所・氏名変更登記の義務化だ。
これまで、不動産所有者が引っ越しや結婚で住所・氏名が変わっても、登記簿の情報を更新する義務はなかった。その結果、登記簿上の住所が古いまま放置され、所有者不明土地の原因の一つになっていた。
住所変更登記義務化のポイント
期限:住所・氏名の変更から2年以内に変更登記を申請
罰則:正当な理由なく怠った場合は5万円以下の過料
スマート変更登記:法務局が住基ネットと連携し、職権で住所変更を反映する仕組みも開始
不動産取引の現場で注意すべきこと
実務で最も注意すべきは、登記簿の住所・氏名と、本人確認書類(免許証等)の不一致だ。義務化によって登記簿の更新が進む過渡期では、「登記簿は旧住所のまま、本人確認書類は新住所」というケースが頻発する。この不一致は、売買の決済時に登記を受け付けてもらえないリスクにつながる。
対応としては、売主との早い段階での登記簿確認と、必要に応じて変更登記を先行して行う段取りが重要になる。2026年の法改正全般については「2026年の不動産関連法改正まとめ」で整理しているので、あわせて確認してほしい。
仕入れルートの見直しが急務な理由
受付帳DM営業は、特に以下のような会社にとって主要な仕入れ手段だった。
受付帳DM営業に依存しやすい業態
買取再販業者:相続物件の早期キャッチが生命線
地場の仲介会社:エリア内の動きをウォッチして売却依頼を獲得
任意売却を扱う会社:差押・抵当権設定の情報から案件を発掘
これらの会社が受付帳に依存していた度合いが大きいほど、10月以降の影響は深刻になる。一方で、大手や一部の先進的な会社は、すでに受付帳以外の仕入れルートを複数持っている。今回の法改正は、仕入れルートの多様化に遅れていた会社ほど打撃が大きいという構図だ。
仕入れのネットワーク構築については「物件仕入れの情報源と人脈の作り方」で詳しく書いている。
今から準備できる5つのこと
10月の施行まで約半年。今から動けば十分に間に合う。
1. 自社ホームページのSEO強化
「○○市 不動産売却」「相続 不動産 相談」といったキーワードで検索上位に表示されれば、売主から自然にお問い合わせが来る仕組みになる。受付帳DMは「こちらから探しに行く」営業だったが、SEOは「向こうから来てもらう」仕組みだ。
費用対効果でいえば、DMの印刷・郵送コスト(1通あたり100〜200円 x 数百通)と比べても、中長期的にはWebの方がコストパフォーマンスが良い。ホームページの活用法は「不動産会社のSEO・HP活用」を参照してほしい。
2. 士業・金融機関との紹介ネットワーク構築
相続案件は、まず税理士・司法書士・弁護士に相談が行くことが多い。彼らとの関係を作っておけば、受付帳がなくても相続案件の情報が入ってくる。
銀行の支店長や信用金庫の担当者も、取引先の事業承継や相続の情報を持っている。定期的な情報交換の場を作ることが、受付帳に代わる「人のネットワーク」になる。
3. 一括査定サイトの活用
一括査定サイトは、売却意思のある所有者からの反響が来る。1件あたりの反響単価は高いが、受付帳DMのような「まだ売る気がない人」へのアプローチと比べれば、確度は高い。自社の得意エリア・得意物件種別に絞って活用すれば、費用対効果のバランスは取れる。
4. 空き家バンク・自治体との連携
空き家特措法の改正で、管理不全空家の固定資産税特例が外れるようになった。「放置するより売った方がいい」と考える所有者が増えている。自治体の空き家バンクへの登録や、空き家相談窓口との連携を進めておくと、受付帳に頼らない物件情報の入口になる。空き家ビジネスの始め方は「空き家ビジネスの可能性と始め方」で解説している。
5. 既存顧客データベースの整備
意外と見落とされがちなのが、過去に取引した顧客のデータベース活用だ。5年前に物件を購入したお客様が、そろそろ住み替えを検討しているかもしれない。定期的なニュースレターや、固定資産税の時期に合わせた情報提供で、売却相談を受けるきっかけを作れる。
顧客管理のExcel運用に限界を感じている方は「不動産会社の顧客管理、Excelの限界」も参考になるはずだ。
まとめ—法改正はチャンス
受付帳DM営業が使えなくなることは、一見すると「仕入れの手段が減る」マイナスに見える。しかし逆に言えば、受付帳に依存していた競合も同じ条件になるということだ。
今のうちにWeb集客・紹介ネットワーク・既存顧客活用の仕組みを整えた会社は、10月以降、他社が慌てている間にリードを取れる。法改正は、早く動いた会社にとってはチャンスになる。
不動産の仕入れや集客の仕組み化に興味がある方は、まず御社の現状を整理するところから始めてみてほしい。
この記事は2026年4月時点の情報に基づいています。法改正の詳細は法務省の公式発表をご確認ください。
泉 款太(いずみ かんた)
株式会社SalesDock 代表取締役
慶應義塾大学法学部卒。スタートアップ、ラクスル、リクルート(SUUMO)を経て2025年に独立。 不動産・製造業・クリニックなど現場産業向けのAI業務効率化コンサルを提供。 30社以上の中小企業のAI活用・業務改善を支援。
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