受発注のデジタル化はどこから手を付けるか|順番を間違えない
紙をなくすことと、手を止めないことは別の話
執筆:泉 款太(株式会社SalesDock 代表取締役)累計40社以上の中小企業を支援

結論
デジタル化の相談で多い失敗は、一番目立つところ(紙)から手を付けて、一番詰まっているところが残ることです。
- 最初に触るのは受け口ではなく、いま人が手を動かしている場所です。紙をなくしても、入力の手間が別の場所へ移るだけのことがあります。
- 着手順は、件数が多く、間違えたときの影響が大きく、自社だけで変えられるところから。この3つが重なる場所が最初の1つです。
- 取引先に様式変更を求める施策は最後に回します。相手の都合で止まり、そこで全体が止まります。
この記事は受発注のデジタル化の着手順を扱います。FAX受注そのものの進め方はFAX受注を効率化する3ステップで扱っています。
受発注のデジタル化の相談で多いのは、一番目立つところから手を付けて、一番詰まっているところが残るという形です。
目立つのは紙です。FAXの束、印刷した注文書、綴じたファイル。ここを消せば進んだ気がします。ただし紙が消えても、人の手は止まっていないことがあります。
手が動いている場所を先に見る
紙で受けて画面に入力していたものが、画像で受けて画面に入力する形になっただけ。これはよく起きます。受け口を変えても、その先の入力が残っていれば、手は同じだけ動きます。
だから最初に見るのは、受け口ではなく、いま誰が何を打ち込んでいるかです。
着手順の決め方
3つが重なるところを最初の1つにします。
- 件数が多い:月に何件通るか。少ないところを直しても、時間は減りません
- 間違えたときの影響が大きい:出荷や請求に直結するか。影響が小さいなら急ぎません
- 自社だけで変えられる:取引先の合意が要るものは、ここでは選びません
1つでも欠けると、効果が小さいか、途中で止まります。
受発注のデジタル化を進める4ステップ
やることは4つに分けられます。順番は、現状を数える、同じ呼び名にそろえる、手が動く場所を1つ減らす、確かめるです。システム選びはこの後です。
| ステップ | やること | 終わったと言える状態 |
|---|---|---|
| 1 数える | FAX・電話・メール・取引先の画面など、注文が入る経路ごとに月の件数と、入力する人・所要時間を書く | 経路ごとの件数と担当が1枚の表になっている |
| 2 そろえる | 商品名・品番・取引先名の呼び名を1つに決める。取引先ごとに違う呼び方は対応表にする | 同じ商品を指す呼び名が1つに決まっている |
| 3 1つ減らす | 件数が多く、間違えたときの影響が大きく、自社だけで変えられる場所を1つ選び、手で打ち直している作業を1つなくす | 同じ情報を入れる回数が1回減っている |
| 4 確かめる | 変える前と後で、入力にかかる時間とやり直しの件数を同じ方法で測る | 時間かやり直しのどちらかが減ったと数字で言える |
システムを入れても残りやすい手間
受発注に限らず、システムを入れたあとに残りやすい手間として、次の3つが考えられます。
- 二重入力が残る:システムを入れれば同じ内容を打ち直す作業が消える前提で話が進みやすいものですが、入力先が複数あれば二重入力は残ります。受発注でも、受注を画面に入れたあと、別の台帳に同じ数字を入れ直していないかを見てください
- 呼び名が決まっていない:システムを導入しても、商品の呼び名が決まっていなければ現場で使われなくなることがあります。受発注でも、商品名と品番を先にそろえないと、取り込んでも照合できません
- 手前の入力が重い:同じ数字を2つのシステムへ手で入れていると、ズレたときの原因追跡に時間がかかります。このとき自動化の効果が大きいのは、目立つ照合作業よりも、その手前の入力です
取引先から届くデータでも、同じ意味の列が「会社名」「企業名」「勤務先名」のように送り元ごとに違う名前で届くことがあります。先方の都合で予告なく変わることもあるため、対応表を持っておくと取り込みが止まりにくくなります。
製品の比べ方は受発注システムの選び方、Excelで続けられるかの見極めは受発注管理をExcelで続けられる条件で扱っています。
取引先に頼む話は最後に回す
様式を揃えてもらう、専用の画面を使ってもらう。これらは効果が大きい一方で、相手の都合で止まります。そこで全体が止まると、自社だけで進められた改善まで進まなくなります。
1つ変えるたびに、手が減ったかを確かめてください。同時に変えると、うまくいかなかったときにどこが原因か分かりません。1つずつのほうが、結果として速く進みます。
受発注のデジタル化についてよくある質問
紙をなくすことが目的ではないのですか?
紙が減れば保管や検索は楽になりますが、それだけでは人の手は止まりません。紙で受けて画面に入力していたものが、画像で受けて画面に入力する形になっただけ、ということが起こります。手が動いている場所を先に見てください。
どこから手を付けるか、判断の基準はありますか?
件数が多い、間違えたときの影響が大きい、自社だけで変えられる。この3つが重なる場所です。1つでも欠けると、効果が小さいか、途中で止まります。
取引先に様式を揃えてもらうのは有効ですか?
有効ですが、最後に回してください。相手にとっては自社のためだけに手順が変わる話なので、断られることがあります。そこで全体が止まると、他の改善まで進まなくなります。
一度に全部やったほうが早くないですか?
同時に変えると、うまくいかなかったときにどこが原因か分かりません。1つずつ変えて、変えるたびに手が減ったかを確かめるほうが、結果として速く進みます。
受発注のデジタル化とは、何をすることですか?
受発注のデジタル化とは、注文・発注のやり取りや記録を電子データ化し、必要に応じて台帳や基幹システムと連携させることです。手で打ち直している入力を減らすのは、その取り組みの一つです。紙を電子化するのは、その入口の一部にすぎません。
システムを入れれば二重入力はなくなりますか?
なくなるとは限りません。システムを入れても、別の台帳や書類に同じ内容を打ち直す作業が残ることがあります。システムを入れる前に、どの情報をどこに一度だけ入れるかを決めておく必要があります。
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泉 款太(いずみ かんた)
株式会社SalesDock 代表取締役
慶應義塾大学法学部卒。スタートアップ、ラクスル、リクルート(SUUMO)を経て2025年に独立。 中小企業の経営・営業・業務・データをつなぐ事業基盤の設計と実装を支援。 不動産・製造業・クリニックを中心に、累計40社以上の支援に携わる。
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