SalesDock ロゴSalesDock
業務改善

営業パイプライン管理の作り方|段階の入口条件と、着地見込みが足りないときの埋め方

商談一覧を、今月いくら入るかが読める形にする

12分で読める

商談の一覧はある。担当ごとの報告も上がってくる。それでも社長が「今月いくら入るのか」を知るには、誰かに聞かないと分からない。聞いた答えも人によって幅がある。案件を並べただけでは、合計は出ても判断には使えない。

パイプライン管理は、並べた案件を段階と金額と確度の3つで読めるようにして、足りないときに何をするかまでを決める仕組みだ。ツールを入れる話ではなく、段階の定義と、足し算の仕方と、不足の埋め方の順番を決める話になる。

1件ずつの案件表に何列持つかは営業の案件管理シートを1枚で回す、担当者が増えたときの管理設計は営業担当が増えたときの案件管理、段階に入ったまま動かない案件の扱いは商談停滞の理由コード設計で扱っている。1件をどの確度に置くかの基準は受注確度の決め方が扱うので、この記事では決まった確度を使う側に立つ。

段階を「自社の作業」で切ると、動いていない案件が進んで見える

多くの会社の商談段階は、訪問した・提案した・見積を出した、で並んでいる。これは全部こちら側の作業で、相手が動いた証拠が1つも入っていない。見積を出したまま3か月動かない案件が「見積提出」の段階に居座り、パイプラインの総額を膨らませる。

参考になるのは、CRMの既定段階に確率がどう振られているかだ。HubSpotの既定パイプラインは7段階で、それぞれに勝率が紐づいている。Appointment scheduled が20%、Qualified to buy が40%、Presentation scheduled が60%、Decision maker bought-in が80%、Contract sent が90%、Closed won が100%、Closed lost が0%となっている(HubSpot Knowledge Base「Set up and manage object pipelines」、2026年8月26日に記載を確認)。

並びを見ると、40%から80%へ跳ねているのは「Decision maker bought-in(決裁者が納得した)」で、ここだけ相手側で何が起きたかで書かれている。提案の実施や見積の送付は、こちらの作業なので確率をあまり動かさない。自社の段階を作るときも、この切り方をまねる。

  • 自社の作業で切った段階

    訪問した / 提案した / 見積を出した。全部こちらが動いただけで、相手が動いた証拠が入っていない

  • 相手側の確定で切った段階

    課題と時期を相手の言葉で確認した / 決める人と直接話した / 社内で予算の話が始まった / 契約書を先方の法務が見ている

  • 切り分けの目印

    その段階へ入ったことを、相手からの言動で説明できるか。説明できないなら、それは自社の作業ログであって段階ではない

段階の数は、自社の営業が実際に止まる場所の数でいい。増やすほど1段階あたりの案件が減り、滞留しているのか通常なのかが分からなくなる。

着地見込みは3つを別々に足す

今月の着地は、確定済み実績と、受注済みでまだ売上になっていない受注残と、進行中の商談に確度をかけたものを足して出す。この3つを1つの数字にまとめない。まとめると、翌週に数字が動いたときにどこが動いたのか分からなくなる。

着地の出し方には他にもやり方があるので、自社の商材で選ぶ。

  • 単純按分

    月初からの実績を経過日数で割って月末まで伸ばす。件数と単価のばらつきが小さいかを過去月で検証してから使う。少数の大型案件がある場合は1件で大きく振れる

  • 加重平均

    直近数か月の平均を今月に当てる。季節変動が小さく、営業体制を変えていない期間にだけ使える。人が増減した直後は当たらない

  • パイプライン積み上げ

    確定済み実績+受注残+商談ごとの金額×確度。少数の大型案件がある場合に候補となるが、案件表の金額・時期・確度を継続更新できることが前提

選ぶ基準は月間の件数と単価のばらつきだ。件数が少なく1件が大きいBtoBでは、按分も平均も1件の受注で吹き飛ぶので、積み上げ以外に選択肢がない。積み上げを選んだ時点で、予測の精度は案件表の入力精度と同じになる。案件表が2週間更新されていなければ、その予測は2週間前のものだ。

出した見込みが実際とどれだけずれたかを次の判断へ戻す手順は営業予測の精度を案件別に検証する方法で扱っている。売上の着地が読めたあと、入金の時期まで含めて資金を見るなら13週資金繰り予測の作り方へつなぐ。

不足額に打ち手を当てるとき、順番を間違えない

着地が目標に足りないと分かったとき、最初に出やすいのは「新規をもっと積もう」と「値引きしてでも今月中に」の2つだ。自社のリードタイムや粗利条件を確認せずに選ばず、各施策が売上へ反映した過去の日数で並べ直す。

  1. 相手側の期限を動かせないか確認する効くのは今週から。相手にとって前倒しする理由(決算、契約更新、担当者の異動)があるかを聞く。理由がないのに急かすと、判断そのものを後ろへ倒される
  2. 保留・失注の再開過去に再開した案件の所要日数を見て判断する。止まった理由が相手側の条件だった案件に絞り、自社側の未解決条件が残る案件は除く
  3. 既存顧客の追加・更新既存顧客の過去の決裁日数と更新時期を確認する。新規より早いと決めつけず、今月の不足へ間に合う案件だけを積む
  4. 新規の掘り起こし自社の平均リードタイムから、売上へ反映する月を逆算する。今月に間に合わない場合は翌月以降の不足を埋める施策として分ける
  5. 値引きによる前倒し相手側の判断期限が動くかを確認し、粗利の下限と承認者を決めてから個別に判断する。今月に効くと決めつけない

今月へ反映できる施策は、会社の商材と案件状況によって変わる。相手側の期限、過去の再開日数、既存顧客の決裁日数を確認し、間に合うものだけを当月施策として残す。着地を早く出す目的は、選択肢が残っている時点で判断することにある。

値引きを使った場合、その案件の粗利だけでなく、同じ顧客との次回取引の基準価格が下がる。前倒しの代償がどこに出るかは顧客別採算の計算方法で確認できる。

月に1回、パイプラインを掃除する

段階の入口条件を決めても、案件は放っておくと溜まる。相手からの連絡が半年止まっている案件が「提案中」に残り、総額だけが積み上がる。総額が大きいほど安心してしまい、新規の手が緩む。

掃除の対象は、金額の大きい順ではなくその段階に入った日が古い順にする。金額が大きい案件は誰も忘れないが、中くらいの案件が最も長く残る。閉じるときは失注理由と再開条件を残しておくと、後で再開の候補を探すときに使える。

数字が出ても打ち手が決まらないとき

着地は出せるようになったのに、毎月同じ不足が出て同じ値引きで埋めている場合、詰まっているのはパイプラインの外側にある。案件が入るところ(引き合いの量)か、受注してから納品・請求までの詰まりのどちらかだ。

件数は流れていて粗利もあるのに、最後の判断が社長へ集まっている会社ほど、営業の数字を直しても他の場所が追いつかない。営業・判断・データのどこから整えるかを見たい場合は3分・8問の事業基盤診断で現在地を確認できる。

来週できる一歩:溜まっている段階を1つだけ直す

  1. 段階ごとの案件数と金額を出す件数だけ、金額だけでは読めない。同じ1,000万円でも、100万円が10件と1,000万円が1件では打ち手が違う
  2. いちばん案件が溜まっている段階を1つ選ぶ全段階を同時に直さない。溜まっている場所が、いま自社の営業が止まっている場所になる
  3. その段階の入口条件を相手側の言葉で書き直す「提案した」を「相手が社内で共有すると言った」に置き換える。書き直した条件で仕分け直すと、前の段階へ戻る案件が出る
  4. 実績+受注残+商談×確度で今月を出す3つを別の行に分けて足す。合計だけ出すと、どこが足りないのか翌週に分からなくなる
  5. 不足額に打ち手を当て、期限で並べる打ち手ごとに効き始める時期を書く。今月中に効かない打ち手は、今月の不足の答えにしない

手順3で前の段階へ戻る案件が出たとき、パイプラインの総額は下がる。下がった数字のほうが本当の数字なので、そこを出発点にする。総額が下がるのを避けるために条件を緩めると、また同じ月末が来る。

営業と経営判断をつなぐ記事は業務改善カテゴリで確認できる。

よくある質問

パイプライン管理と案件管理は違うものですか?

案件管理は1件ずつの案件を追う仕組み、パイプライン管理は並べた案件の全体を金額と段階で読む仕組みです。案件表がないとパイプラインは作れませんが、案件表があるだけでは今月いくら入るかは出ません。1件ずつの列を決める作業と、合計を読む作業は分けて考えます。

商談段階はいくつに分けるべきですか?

自社の営業で、相手側の状態と次の行動が変わる境目だけを置きます。既定の段階数を正解にせず、直近案件を並べ、同じ段階の中で扱いが分かれる場所だけを追加します。

着地見込みは毎週出す必要がありますか?

自社の受注リードタイムと会議で判断できる頻度に合わせます。最初は現在の会議周期で更新し、見込みの変化を意思決定へ戻せないほど間隔が空いている場合だけ短くします。

不足額を埋めるのに値引きは使ってよいですか?

粗利の下限、承認者、値引き後の条件を先に決めたうえで個別に判断します。相手側の期限、保留案件、既存顧客の追加提案も並べ、値引きだけを既定の打ち手にしません。

泉 款太(いずみ かんた)

株式会社SalesDock 代表取締役

慶應義塾大学法学部卒。スタートアップ、ラクスル、リクルート(SUUMO)を経て2025年に独立。 中小企業の経営・営業・業務・データをつなぐ事業基盤の設計と実装を支援。 不動産・製造業・クリニックを中心に、累計40社以上の支援に携わる。

代表者情報を読む →

この記事の数値について

本文中に一次資料へのリンクがある数値は、リンク先を出典としています。 リンクのない業務設計、判断基準、実務上の目安は、SalesDockが累計40社以上の支援と自社運用で得た知見を一般化したものです。 個別企業での成果を保証する数値ではなく、条件によって変わります。

NEXT STEP

営業・判断・データの詰まりを整理する

パイプラインだけでなく、自社が先に整える場所を3分で確認できます。