RPAツールの選び方|中小企業が比べる5つの観点と、主要ツールの違い

RPAツールを探している中小企業の方向けに、ツールの型の違い、主要ツールの特徴、比べる5つの観点をまとめました。読み終えると、製品名を比べる前に何を決めればよいか、そもそもRPAから入れるべきかを判断できます。

 

執筆:泉 款太(株式会社SalesDock 代表取締役)累計40社以上の中小企業を支援

結論

RPAツールは、パソコンの画面操作を代わりに行うデスクトップ型、複数のロボットをまとめて管理するサーバー型、SaaS同士をつなぐ連携ツール(厳密にはRPAと別の仕組みで、代替の選択肢)の3つに分けて考えられます。WinActor、UiPath、Power Automate、BizRobo!、Yoomのように製品名はたくさんありますが、中小企業が最初に決めるのは、どれを使うかではなく、どこで動かし、止まったときに誰が直すかです。

  • 製品名より先に、動かす場所と、止まったときに直す人を決める
  • 比べる観点は、動かす場所・作る人・画面が変わったとき・気づき方・費用の形の5つ
  • 二重入力が元の悩みなら、RPAを入れる前に入力の置き場所を一つに決める

RPAツールは3つの型に分かれる

RPA(Robotic Process Automation)は、人がパソコンで行う入力・転記・ファイル操作などの定型作業を、ソフトウェアのロボットが決めた手順どおりに代行する仕組みです。判断を伴わず、手順が毎回同じ作業に向きます。

RPAツールを比べるときは、製品の一覧を並べる前に、型で分けると選びやすくなります。型によって、動かす場所と運用の手間が変わるためです。

型できること注意点
デスクトップ型自分のパソコンの画面操作を、人の代わりに実行する。ExcelやWindows上の業務ソフトの転記に向く担当者が使っているパソコンで動かす場合は、使用中に実行しにくい。動かす場所が担当者ごとに分かれやすく、棚卸しが必要になる
サーバー型サーバー上でロボットをまとめて動かし、実行の予定や履歴を一元で管理する最初の設定と運用に手間がかかり、少人数の会社には重くなりやすい
クラウド型(RPAではなくSaaS連携ツール)ブラウザで設定し、SaaS同士をつないでデータを受け渡す。画面操作の代行ではなく連携が中心で、厳密にはRPAと別の仕組み。RPAの代替の選択肢として並べている対応していないSaaSや、画面操作しかできない古いソフトは扱えない
自動化したい作業パソコン上の転記・入力多数の作業をまとめて管理SaaS同士の受け渡しデスクトップ型が候補サーバー型が候補クラウド型が候補少人数ならまず左か右から
作業の置き場所で型が決まる。製品名はそのあとに比べる。

主要なRPAツール比較|種類別の違い

代表的なツールを、型と向く場面で並べました。順位は付けていません。機能や料金は更新されるため、導入前に各社の公式ページで最新の内容を確認してください。

ツール特徴向く会社注意点
WinActor国内のデスクトップ型。パソコン上の操作を手順として組み、自動で実行させるパソコン上の転記・入力が中心の会社実行するパソコンの管理と、画面が変わったときの直しを誰が持つかを決める
UiPath海外発。デスクトップ型に加え、複数のロボットを管理する仕組みも用意されている対象業務が多く、管理をまとめたい会社機能が広い分、設定を決める人が要る。小さく始めるなら必要な範囲だけ選ぶ
Power AutomateMicrosoftのツール。Microsoft 365との連携に強く、Windows向けのデスクトップ版もあるMicrosoft 365中心で業務を回している会社無料で使える範囲と有料の範囲が分かれる。条件は公式で確認する
BizRobo!国内のサーバー型。Webサイト上の情報収集や操作を、まとめて自動で動かす用途に使われるブラウザ上の定型作業が多い会社サイト側の画面や利用規約が変わると動かなくなる。自動操作を禁じるサイトもある
YoomSaaS連携ツール(RPAとは別の仕組み)。SaaS同士の連携を、ブラウザで設定して動かす使っているSaaSが対応している会社画面操作しかできない業務ソフトは対象外。詳細は別記事で整理している

SaaS連携型のYoomは、画面操作を代わりに行うRPAとは仕組みが違い、RPAの代替として比べる位置づけです。使い方はYoomの使い方と、向く業務・向かない業務で整理しています。

比べる5つの観点

機能の一覧表を見比べても、自社に合うかは分かりません。次の5つを書き出すと、候補が自然に絞れます。記入例をそのまま書き換えて使えます。

観点確かめること記入例
動かす場所自分のパソコン上か、サーバーか、クラウドか経理の入力はWindowsのパソコン1台
作る人現場の担当者が組むのか、外部の人に頼むのか経理担当が組み、止まったら自分で直す
画面が変わったとき直すのは誰か。直す頻度はどれくらいか取引先のサイトが年に数回変わる
止まったことへの気づき止まったとき、誰がどうやって知るか毎朝8時に実行結果の一覧を確認する
費用の形月額か、台数ごとか、作る手間はどれだけか公式の料金表と、作成にかかる人の時間の両方を書く

RPAツールを比べる5つの観点のうち、見落とされやすいのは「止まったことへの気づき」です。RPAは決めた手順を繰り返すだけなので、画面が変わると、気づかないまま止まっていることがあります。止まったときの連絡先と、直す人を先に決めておくことが、運用が続くかどうかを分けます。

RPAのメリットと、つまずきやすい点

RPAのメリットは、手順が決まった繰り返し作業を、人の手を離れて同じ品質で実行できることです。月末の転記や、毎朝の一覧の取り込みのように、件数が多くて間違いが許されない作業ほど効果が見えやすくなります。

一方で、デメリットになりやすい点もあります。画面の項目や並びが変わると手順が合わなくなり、ロボットが止まります。作った人しか中身が分からない状態(属人化)になりやすく、担当者が異動すると誰も直せなくなることもあります。作業の例外が多い業務は、手順を決め切れずに導入後も人の確認が残ります。

  • 向く作業:入力の形が決まっていて、手順が毎回同じで、件数が多い転記・入力・集計
  • 向かない作業:書式が揺れる、例外が多い、担当者の判断が混じる、画面が頻繁に変わる

RPAの費用の見方と、無料で試す範囲

無料で試せるRPAツールとして、MicrosoftのPower Automateには、Windowsで使えるデスクトップ版があります。ただし、使える機能や台数、実行の条件は有料版と分かれるため、公式の最新の説明で自社の使い方が無料の範囲に入るかを確認してください。

RPAの費用は、ツールのライセンス料だけでは決まりません。ライセンス(月額か買い切りか、ロボット1台ごとか)、ロボットを作る人の時間や外部への依頼費、そして止まったときに直す保守の時間の3つを分けて見積もります。ライセンス料が安くても、作成と保守に人の時間がかかれば、総額は大きくなります。

金額はプランや契約条件で変わるため、この記事では数字を載せていません。各社の公式の料金ページと見積もりで確認してください。本契約の前に、選んだ1つの作業だけを動かして、作る手間と止まる頻度を確かめると、費用の見立てがずれにくくなります。

RPA導入で失敗しやすい3つの型

  1. 対象を広げすぎる。最初から多くの業務に手を付けると、作る人も直す人も足りなくなります。1つの作業で、止まったときの流れまで回してから増やします。
  2. 手順の見直しをしないまま自動化する。二重入力や不要な確認が残った手順をそのまま写すと、無駄な作業が速くなるだけです。先に業務の流れを書き出して減らします。
  3. 運用の持ち主が決まっていない。止まったことに気づく人と、直す人がいないと、止まったまま放置されます。導入前に担当と連絡先を決めます。

対象を広げすぎる、手順を見直さずに自動化する、運用の持ち主が決まっていない、という3つの失敗は、どのRPAツールを選んでも起きます。結果を左右するのは製品の機能差より、運用の決めごとが続くかどうかです。

RPAを入れる前に確かめる順番

ツールを選ぶ前に、自動化したい作業が本当にRPAで解決するかを確かめます。次の順で進めると、入れてから気づく失敗を減らせます。

1. 作業の流れを書き出す2. 二重入力の元を確かめる3. 1つの作業で試す4. 止まったときを決める2で原因が見つかれば、RPAの前に直す
ツール選びは4段階のうち3番目以降。先の2つで、そもそもRPAが要るかが分かる。

2番目の確認は、特に大切です。2つの台帳の照合を自動化しようとしても、本当に大変なのは照合の手前だったというケースがあります。同じ数字を2つのシステムに手で入れていると、ズレたときの原因を追う時間が大きくなるためです。このような会社では、照合や入力をRPAで速くしても、ズレの原因は残ります。先に入力の置き場所を一つに決めるほうが効果的です。進め方は脱エクセルの進め方にまとめています。

RPAとAIのどちらから入れるか

経理の入力を減らしたいという中小企業からは、RPAとAIのどちらから入れればよいか、入れる前にAIでルーティンを組む選択肢も比べたい、という相談があります。RPAとAIのどちらから入れるかは、入力の形が決まっているかで分けます。入力の形が決まった転記はRPA、書式が揺れる文書の読み取りや下書きはAIが向きます。詳しい分け方はAIエージェントとRPAの違いで整理しています。

PC操作型のAIで、複数のソフト間の転記を自動化する試みが出てきています。ただ、そうした場合でも業務を熟知した設計者は必要です。道具が変わっても、何をどの順で自動化するかを決める人が要るという点は、RPAでもAIでも同じです。

ブラウザ操作の自動化には、限界もあります。当社の執筆時点の実務での観察では、ブラウザ操作型のAIエージェントが途中で止まって復旧が必要になり、手で入力したほうが早い場面がありました。公式データによる裏付けではないため、一般的な傾向としては受け取らず、各社の公式ドキュメントにある制限事項も確認してください。入力先のサイトが自動操作を制限していることもあるため、情報の抜き出しや入力項目の洗い出しまでをAIに任せ、サイトへの入力は人が行う形にする選択肢があります。RPAでも同じで、相手のサイトが自動操作を制限していないかは、導入前に確かめる項目です。

手入力を減らす方法を広く比べたいときは、AIで手入力を減らす進め方も参考になります。製造業の請求書処理のように、読み取りにAI-OCR、入力にRPAを組み合わせる例はAI-OCR+RPAで自動化する3ステップにあります。

試す手順と、効果の測り方

  1. 毎週・毎月くり返している入力作業を1つ選び、手順を画面ごとに書き出す。
  2. その作業の入力元が1か所か、同じ内容を別の場所にも打っていないかを確かめる。
  3. 上の5つの観点の表を埋め、候補を型で絞る。
  4. 無料の体験や試用の範囲で、選んだ1作業だけを自動化する。
  5. 1か月、手作業の時間と、止まった回数、直した時間を記録する。

効果は、1回あたりの作業時間と、止まって直した時間の合計で測ります。直した時間が節約した時間を上回るなら、その作業はRPA向きではありません。手順や入力元を見直すほうが先です。

まとめ

RPAツール選びは、製品名を比べる前に、動かす場所、作る人、止まったときの直し方を決めるところから始まります。SalesDockは、成長に経営管理・業務・データ・仕組みが追いつかない中小企業に、コードの前に業務構造を整理するところから、経営管理基盤の実装と定着を支援しています。RPAを入れるかどうかも、この業務の整理の中で判断します。

よくある質問

RPAツールは、どれを選べばよいですか?

最初に決めるのは製品名ではなく、動かす場所(パソコン・サーバー・クラウド)と、止まったときに直す人です。パソコン上の転記が中心ならデスクトップ型、使っているSaaSが連携に対応しているならクラウド型が候補になります。料金や機能は変わるため、各社の公式ページで確認してください。

無料で使えるRPAツールはありますか?

無料で使える範囲を用意しているツールはあります。たとえばMicrosoftのPower Automateには、Windowsで使えるデスクトップ版があります。ただし、使える機能や台数、実行の条件は有料版と分かれているため、公式の最新の説明で、自社の使い方が無料の範囲に入るかを確認してください。

RPAとAIは、どちらから入れるのがよいですか?

入力の形が決まっていて、同じ手順を繰り返す作業はRPAが向きます。書式が揺れる文書の読み取りや下書きのように、判断が混じる作業はAIが向きます。どちらも、まず業務の流れを書き出してから決めます。違いの詳しい整理は、AIエージェントとRPAの違いの記事にまとめています。

RPAを入れたのに、動かなくなりました。何が原因ですか?

RPAが動かなくなる原因として最も多いのは、画面の見た目や項目の位置が変わり、記録した手順が合わなくなることです。止まったことに気づく人と直す人を、導入前に決めておくと、止まったまま気づかない状態を防げます。

RPAを入れる前に、やっておくことはありますか?

同じ内容を2か所に入力していないか、入力の元になる表が1つに決まっているかを確認します。二重入力の元を残したままRPAで自動化すると、ズレの原因は残ったまま、速く入力されるだけになります。

自動化の前に、業務の流れの整理から一緒に考えます

今の入力作業の流れを聞いたうえで、RPAが向くのか、AIか、入力の置き場所を変えるのが先かを整理します。特定のツールの導入を前提にした相談ではありません。

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