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業務改善

エクセル業務をシステム化する方法—いきなりSaaSを入れる前にやるべき3つの整理

8分で読める

この記事のポイント

「Excelが限界だからシステムを入れたい」——その前に、業務フロー・データの流れ・仕分けの3つを整理するだけで、本当に必要なシステムが見えてくる。Excelのまま改善できる範囲も解説。

「Excelが限界だからシステムを入れたい」——これは本当によく聞く相談。

製造業の在庫管理、不動産の物件管理、クリニックの予約管理。業種は違っても、相談の入り口はだいたい同じ。「Excelがぐちゃぐちゃで、もう限界です」。

気持ちはよくわかる。ただ、Excelの何が限界なのかが整理されていないままシステムを入れると、「Excelのほうが使いやすかった」になる。実際にそうなった会社を何社も見てきた。

今日は、Excelからシステムに移行する前にやるべき3つの整理と、そもそもExcelのまま改善できる範囲について書いてみる。

Excelが限界になる4つのサイン

まず、「Excelが限界」と感じるときに起きていることを整理する。大体この4つに集約される。

サイン1:ファイルが重くて開くのに30秒かかる

データが数万行になって、関数やピボットテーブルが大量に入っている。開くたびにフリーズして、保存にも時間がかかる。「開くのが怖い」と言われるExcelファイルが社内に1つはある。

サイン2:同じデータを複数ファイルに入力している

顧客情報を営業管理表にも、請求管理表にも、報告書にも手入力している。1箇所変更したら他も変更しないといけないのに、忘れる。結果、ファイルごとに数字が違う。

サイン3:関数が壊れて誰も直せない

VLOOKUPやIF関数がネストしまくって、作った本人しか理解できない。その本人が退職したら、誰も触れない「聖域ファイル」になる。行を挿入しただけで関数が壊れる。

サイン4:バージョン管理ができない

「売上管理_最新.xlsx」「売上管理_最新_v2.xlsx」「売上管理_最新_v2_修正済.xlsx」——最新版がどれかわからない。メールで添付して回しているから、誰かが古いバージョンを上書きしてしまうこともある。

この4つのうち2つ以上に心当たりがあるなら、何らかの改善が必要。ただし、改善=システム導入とは限らない。

システム化の前にやるべき3つの整理

いきなりSaaSの比較表を作り始める前に、この3つをやる。これをやらずにシステムを選ぶと、「機能は多いけど自社の業務に合わない」「結局Excelと併用している」という状態になる。

整理1:業務フローを書き出す

「どの業務で、どのExcelファイルを、誰が使っているか」を一覧にする。紙でもスプレッドシートでもいい。やってみると、同じ目的のファイルが部署ごとに別々に存在していたり、もう誰も使っていないファイルが残っていたりする。まずは現状の棚卸し。

整理2:データの流れを整理する

各Excelファイルについて「入力元→加工→出力先」を書く。たとえば「営業が受注情報を入力→関数で売上集計→月次報告書にコピペ」のように。この流れを書くと、どこで手作業が発生しているか、どこでデータが二重入力になっているかが見える。

整理3:「Excelでいい業務」と「Excel以外にすべき業務」を仕分ける

全部をシステム化する必要はない。月に1回しか使わない集計表はExcelのままでいい。毎日複数人が同時に使うデータ、承認フローが必要な業務、1万行を超えるデータ——こういうものだけをシステム化の対象にする。

Excelのまま改善できる範囲

意外と見落とされているのが、「Excelのまま改善できること」の多さ。

たとえば、Googleスプレッドシートに移行するだけで、同時編集とバージョン管理の問題は解決する。ファイルはクラウドに1つだけ。誰がいつ何を変更したかも履歴で追える。「最新版どれ?」問題がなくなる。

さらにGAS(Google Apps Script)を使えば、データの転記や集計を自動化できる。「毎週月曜に先週の売上を集計してSlackに通知」のような処理が、無料で組める。

実際、支援先の製造業では、Excelで管理していた在庫表をGoogleスプレッドシートに移行しただけで、「在庫数が合わない」問題の8割が解決した。原因はバージョン違いのファイルを見ていただけだった。

システム移行が必要な判断基準

では、どういう場合にシステムへの移行を検討すべきか。判断基準は3つ。

データ量が1万行を超えている。Googleスプレッドシートでも1万行を超えると動作が重くなる。検索やフィルタリングのレスポンスが落ちて、業務のボトルネックになる。データベースを持つシステムに移行すべきタイミング。

複数部門でリアルタイム共有が必要。営業・製造・経理など、複数部門が同じデータを参照・更新する場合。スプレッドシートでもできなくはないが、権限管理やデータの整合性を考えると、専用システムのほうが安全。

承認フローが必要。見積もり→上長承認→発注、のようなワークフローが必要な場合。スプレッドシートでステータス列を作って管理する会社もあるが、承認漏れ・対応遅れが頻発するなら、ワークフロー機能を持つシステムを検討する。

「Excelで十分」と言われたときの対処法

現場から「Excelで十分」と言われることは多い。ここで「システムの方が便利ですよ」と返すのはNG。相手の立場を否定してしまう。正しいアプローチは、Excelの運用コストを「見える化」すること。

具体的には、Excelへのデータ入力時間、月次レポート作成時間、データ修正・不整合の対応時間を計測し、関わる人数と時給を掛ける。ある従業員50名の製造業で計測したところ、Excel運用にかかっている時間は月80時間(4人×20時間)、時給2,500円で換算すると月20万円、年240万円だった。同社が導入したクラウド型の業務管理システムは月額5万円(年60万円)。年間180万円のコスト削減を実現している。

段階的に移行する3ステップ

いきなりシステムに移行すると、現場が混乱して「やっぱりExcelがいい」と逆戻りする。以下の3ステップで段階的に進める。

Step 1:まずExcelを整える(1〜2ヵ月)

1シート1テーブル、1行1レコード、列名統一、日付書式統一、入力規則(ドロップダウン)の設定。これだけでも集計の手間が大幅に減る。「Excelを整える」ことは「Excelを否定しない」メッセージにもなるため、現場の抵抗が少ない。

Step 2:共有データベース化する(2〜3ヵ月)

整理したデータを、複数人が同時にアクセスできる環境に移行する。Googleスプレッドシート(無料)、Airtable(月額$20〜/人)、kintone(月額1,500円/人)など、Excelに近い操作感のツールを使うのがコツ。

Step 3:業務システム化する(3〜6ヵ月)

共有データベースの運用に慣れてから、業務に特化したシステムに移行する。この段階では業務フローが整理されているため、要件定義がスムーズに進む。

移行判断チェックリスト

5項目中3つ以上で移行推奨

- 同じデータを2つ以上のExcelに入力している

- Excelの「最新版がどれかわからない」問題が月2回以上起きる

- 特定の人しか触れないExcelファイルがある

- 月次集計・レポート作成に4時間以上かかっている

- Excelのデータを使って判断したいが、データの信頼性に不安がある

効果をどう測るか

指標BeforeAfter(目標)
月次集計にかかる時間丸1日(8時間)1時間以内
データの二重入力3箇所以上に手入力入力は1箇所のみ
「最新版どれ?」の問い合わせ週に数回ゼロ
関数エラーによる数字の不一致月に1〜2回発覚ゼロ

この表の数字が改善されれば、整理の効果が出ている。逆に、システムを入れてもこの数字が変わらないなら、整理が足りなかった可能性が高い。

最後に

あなたの会社のExcelファイル、いくつあるか即答できるだろうか。

「重要なのは5つくらい」と答えられるなら、まだ整理できている。でも「正直、把握しきれていない」なら、まずは棚卸しから始めてほしい。

システムを入れるのはその後でいい。整理ができていれば、「何のシステムが必要か」「どの業務から移行するか」が自然と見えてくる。整理ができていなければ、どんなシステムを入れても使われない。

泉 款太(いずみ かんた)

株式会社SalesDock 代表取締役

慶應義塾大学法学部卒。スタートアップ、ラクスル、リクルート(SUUMO)を経て2025年に独立。 不動産・製造業・クリニックなど現場産業向けのAI業務効率化コンサルを提供。 30社以上の中小企業のAI活用・業務改善を支援。

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