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業務改善

社長が全部の業務を見ている会社の仕組み化—最初に手放す業務と相談先

社長が全部の業務を見ていて回らない会社は、作業、基準を書けば渡せる判断、例外の判断の順に手放します。最初の1週間で社長に来た依頼を書き出す方法、最初に手放す業務の見分け方、最後まで社長が持つ仕事、詰まり方ごとの相談先(よろず支援拠点、IT経営サポートセンター、顧問の士業、伴走型の支援会社)と効果の測り方を解説します。

公開: ・ 最終更新: ・ 読了目安 10分

社長が全部の業務を見ている会社の仕組み化—最初に手放す業務と相談先の結論

社長が全部の業務を見ていて回らない会社は、誰がやっても結果が同じ作業、基準を書けば渡せる判断、例外の判断の順に手放します。最初の1週間は、社長に来た依頼と確認を全部書き出し、この3つに分けるところから始めます。売上や粗利を見ることと例外の判断は、最後まで社長が持ちます。相談先は、何から手をつけるか分からない段階ならよろず支援拠点、IT化の方針ならIT経営サポートセンター、業務の整理から社員が回せるまでなら伴走型の支援会社が合います。

  • 最初の1週間は、社長に来た依頼と確認を全部書き出し、作業と判断と例外に分けます。
  • 最初に手放すのは作業で、次に社長の過去の答えから基準を書ける判断を渡します。
  • 相談は無料の公的窓口から始め、業務の整理から一緒に進める部分だけを民間に頼むと費用を抑えられます。

最初に置く業務場面

社員が10〜50名ほどに増え、見積もり、請求、クレーム、採用まで最後は社長が見ている会社を想定します。社長が外出すると承認が止まり、人を増やしても楽にならない。仕組み化したいが、何から手放せばよいか、誰に相談すればよいかが分からない場面です。

ツール名から始めず、対象業務、入力、完了条件、判断者、例外時の戻し先を先に決めます。この順番は、SalesDockの支援記録から顧客固有情報を除き、複数の現場で再利用できる形に一般化したものです。

社長が全部を見ている会社では、社長の予定が会社の処理速度になります

見積もりの金額、請求書の確認、クレームの返事、採用の可否、備品の発注まで、最後は社長が見ている。創業から10年ほどで社員が増えてきた会社では、よくある形です。社長が外出している日は承認が止まり、社員は社長の戻りを待ってから動きます。

この状態で人を1人増やしても、社長に来る確認の件数が増えるだけで、忙しさは変わりません。止まっている原因は人手ではなく、判断の基準が社長の頭の中にしかないことだからです。仕組み化の最初の仕事は、ツールを入れることでもマニュアルを揃えることでもなく、社長が毎日何を見ているかを書き出すことになります。

最初の1週間は、社長に来た依頼と確認を全部書き出します

何を手放すかを頭で考えると、「全部自分がやったほうが早い」という結論に戻りがちです。先に1週間だけ、社長に来たものを記録します。紙でもスマホのメモでも構いません。1件ごとに、誰から来たか、何の件か、何分かかったかだけを書きます。

書き出したら、1件ずつ次の3つのどれに当たるかを印をつけます。社長が気にするのは件数よりも、自分が何時間をどの種類に使っていたかです。

  • 作業: 請求書の作成、日程の調整、見積もりへの数字の入力など、誰がやっても結果が同じになるもの。
  • 基準を書けば渡せる判断: 一定額までの値引き、決まった取引先への発注、よくある問い合わせへの返事など、社長の過去の答えに共通の線があるもの。
  • 例外の判断: 初めての取引、大きなクレーム、採用、大きな価格の変更など、前例がないか、会社への影響が大きいもの。

最初に手放すのは、社長がやっても社員がやっても結果が同じ作業です

記録のうち「作業」に印がついたものから手放します。社長が手を離しても品質が変わらず、失敗しても翌日に直せるからです。週に何度も来る作業から選ぶと、戻ってくる時間が大きくなります。

渡すときは、完璧な手順書を先に作らなくて大丈夫です。社長が1回やって見せ、受け手が1回やり、社長が1回だけ確認する。この3回で動き出す作業がほとんどです。手順書は、受け手が2回目にやるときに自分で書いてもらうと、現場の言葉で残ります。書き方は関連記事の「事務の業務マニュアルの作り方」にまとめています。

  • 請求書や見積書を、決まった形式で作る作業。
  • 打ち合わせの日程を調整し、予定表に入れる作業。
  • 打ち合わせの録音やメモから、議事録と次にやることを書き出す作業。
  • 毎月の売上や入金を、表に転記して集計する作業。

次に手放すのは、社長の過去の答えから基準を書ける判断です

作業を渡して時間が空いたら、「基準を書けば渡せる判断」に進みます。ここで役に立つのが、1週間の記録に残った社長の答えです。たとえば値引きの相談なら、過去10件ほどの答えを並べると「既存の取引先で、発注額が50万円以下なら5%まで」のような線が見えてきます。

線が書けたら、その範囲の判断は社員が決め、社長には週に1回まとめて報告してもらう形にします。事前に承認するのをやめて、あとから見る形に変えるのがこの段階のねらいです。どの判断をどの役職まで降ろせるかを文書にする方法は、関連記事の「職務権限規程の作り方」で整理しています。

  • 一定額までの値引きや、支払い条件の調整。
  • 決まった取引先への、一定額までの発注や経費の支払い。
  • よくある問い合わせやクレームへの、最初の返事。
  • 標準の価格表で出せる見積もりの金額。

数字を見ることと例外の判断は、最後まで社長が持ちます

仕組み化のゴールは、社長が何も見なくてよい会社ではありません。売上や粗利、手元のお金の動きを見ること、採用、初めての取引、大きな価格の判断は、会社の規模が大きくなっても社長の仕事に残ります。

手放す目的は、社長の時間をこの残す仕事に使えるようにすることです。1週間の記録で「例外の判断」に印がついた件数が週に数件に収まり、その分の時間を数字を見ることや営業に使えていれば、仕組み化はうまく進んでいます。

任せた仕事を社長がやり直すと、元に戻ります

手放したはずの仕事が社長の机に戻ってくる会社には、共通の場面があります。任せた見積もりを社長が毎回開いて直す、社員が決めた値引きを後から覆す、といった場面です。社員は「結局社長が直すなら最初から聞こう」と考え、確認の件数が元に戻ります。

任せた範囲の仕事は、1件ごとに直さず、週に1回まとめて見ます。直したい点が出たら、その件を直すのではなく基準の文言を書き換えます。もう1つ、ツールを先に入れるのも戻りやすい順番です。誰が何を決めるかが決まっていないまま承認の仕組みを入れると、承認者がすべて社長になり、確認が画面に移っただけになります。

受け手がいない会社は、作業を外に出し、判断を社員に渡します

「渡したくても社員も手一杯」という会社もあります。その場合は、作業と判断で渡し先を分けて考えます。作業は、事務の外注やAIへの下書き、会計ソフトなどのツールに出せます。判断は社内にしか渡せないので、作業を外に出して空いた社員の時間を、判断を受け取る時間に回します。

事務の担当者がいない会社では、社長の手元の作業をAIに下書きさせるだけでも週に数時間が戻ることがあります。どの作業から試すかは、関連記事の「業務棚卸しのやり方」の手順で選べます。

相談先は、どこで詰まっているかで選びます

社長が全部を見ている状態を1人で抜け出すのは難しく、外に相談すると進みが早くなります。ただ、相談先ごとに受け持つ範囲が違うため、自社がどこで詰まっているかで選びます。下の表にまとめたとおり、無料の公的窓口から始めて、足りない部分だけ民間に頼む順番がお金をかけずに済みます。

  • 何から手をつければいいか分からない: 都道府県ごとのよろず支援拠点が、経営の相談に何度でも無料で応じています。1週間の記録を持って行くと、話が具体的になります。
  • IT化やツール選びの方針を決めたい: 中小機構のIT経営サポートセンターで、専門家のオンライン相談を1回60分、無料で受けられます。
  • 権限の規程や、任せたあとの労務の扱いを整えたい: 顧問の社会保険労務士や税理士に、規程の文面や手当の扱いを確認します。
  • 業務の整理から、社員が自分で回せるまで一緒に進めてほしい: 伴走型の支援会社に頼みます。助言だけでなく、記録の整理や基準づくり、ツールの設定まで受け持つ範囲かを見積もりの前に確かめます。

当社が伴走するときは、最初の1か月を記録と整理だけに使います

SalesDockも、社長が全部を見ている会社の業務整理を伴走で支援しています。最初の1か月は、ツールを入れる前に、社長に来ている依頼と社員の業務を書き出す時間に充てています。支援が始まったあとでは、手放す前の社長の時間を測れなくなるからです。

記録ができたら、手放す業務ごとに、誰がやるか、誰が最後に責任を持つか、誰に相談するかを1枚の表にします。この表の形は、下の無料テンプレートでそのまま使えます。

効果は、1週目の記録と同じ数字を4週後と12週後に比べます

手放せたかどうかは、社長の感覚ではなく、最初の1週間と同じ数え方で確かめます。1週目の記録は、始める前にしか取れない比較の元になります。

  • 社長に来た依頼と確認の週の件数: 1週目と同じ記録を4週後と12週後にもう1度取り、件数と種類の内訳を比べます。
  • 社長の承認待ちで止まっている案件の日数: 見積もりや発注が、社長の確認を待って何日止まっているかを見ます。
  • 社長が作業に使っている週の時間: 減った時間を、数字を見ることや営業に使えているかも一緒に書きます。使えていなければ、次に手放す作業を選び直します。

判断を止めない比較表

詰まっていること相談先費用と受け持つ範囲
何から手をつければいいか分からないよろず支援拠点(各都道府県)無料で何度でも。経営全般の助言が中心です
IT化やツール選びの方針を決めたいIT経営サポートセンター(中小機構)無料のオンライン相談(1回60分)。設定や作業は含みません
権限の規程や労務の扱いを整えたい顧問の社会保険労務士、税理士顧問契約の範囲内か個別見積もり。規程の文面や手当の確認です
業務の整理から社員が回せるまで進めたい伴走型の支援会社有料。記録の整理、基準づくり、ツールの設定まで受け持つ会社もあります

来週までに確認するチェックリスト

  • 社長に来た依頼と確認を、1週間分書き出しました。
  • 書き出した1件ずつに、作業、基準を書けば渡せる判断、例外の判断の印をつけました。
  • 週に何度も来る作業を1つ選び、受け手を決めました。
  • 基準を書く判断について、社長の過去の答えを10件ほど並べました。
  • 任せた範囲は、1件ごとに直さず週1回まとめて見ると決めました。
  • 4週後と12週後に、同じ記録を取り直す日を予定に入れました。

全部を一度に決める必要はありません。空欄が多い場合は、開発や契約を進めず、対象業務を一つに戻します。例外の担当者が決まらない場合も停止条件です。

確認した一次情報

制度、会計処理、法令、セキュリティの最終判断は、各分野の専門家と最新の公式資料で確認してください。本記事は個別の税務・法務・投融資判断を代行するものではありません。

全体の位置づけは中小企業が業務・権限・証跡を整える進め方で確認できます。

次に決めることを一つに絞る

手放す業務ごとに、実行する人、最後に責任を持つ人、相談先、報告先と、不在時の扱いまで1枚で書けるExcelテンプレートです。記入例が付いています。

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よくある質問

社長が全部の業務を見ていて回らないとき、最初に何をすればいいですか?

1週間だけ、社長に来た依頼と確認を全部書き出します。書き出したものを、誰がやっても結果が同じ作業、基準を書けば渡せる判断、例外の判断に分けると、最初に手放すものが見えてきます。

社長が最初に手放すべき業務は何ですか?

請求書の作成や日程の調整など、社長がやっても社員がやっても結果が同じ作業です。失敗しても翌日に直せ、週に何度も来る作業から選ぶと、戻ってくる時間が大きくなります。

社長が全部見ている会社の仕組み化は、どこに相談すればいいですか?

何から手をつけるか分からない段階なら、都道府県ごとのよろず支援拠点に無料で相談できます。IT化の方針なら中小機構のIT経営サポートセンター、規程や労務なら顧問の社会保険労務士や税理士、業務の整理から社員が回せるまで一緒に進めてほしいなら伴走型の支援会社が合います。

任せたのに、結局社長に確認が戻ってきてしまいます。

任せた仕事を社長が1件ずつ直していると、社員は最初から確認するようになります。任せた範囲は週に1回まとめて見て、直したい点があれば、その件ではなく基準の文言を書き換えます。

泉 款太(いずみ かんた)

株式会社SalesDock 代表取締役

慶應義塾大学法学部卒。スタートアップ、ラクスル、リクルート(SUUMO)を経て2025年に独立。 中小企業の経営・営業・業務・データをつなぐ事業基盤の設計と実装を支援。 不動産・製造業・クリニックを中心に、累計40社以上の支援に携わる。

運営は株式会社SalesDock(大阪市中央区本町)。中小企業向けに、AI内製化(初期構築15万円+月額10万円・90日)と、 そのあとのAI顧問(月額5万円・6ヶ月契約から)を提供しています。価格は税別です。 大阪・関西を中心に、オンラインで全国からのご相談に対応しています。

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この記事の数値について

本文中に一次資料へのリンクがある数値は、リンク先を出典としています。 リンクのない業務設計、判断基準、実務上の目安は、SalesDockが累計40社以上の支援と自社運用で得た知見を一般化したものです。 個別企業での成果を保証する数値ではなく、条件によって変わります。