SECURITY ACTIONの宣言手順|一つ星・二つ星の要件と、2026年4月から必須になったGビズID
詰まるのは対策ではなく、GビズIDと基本方針の公開
取引先から「セキュリティの対応状況を出してほしい」と言われて、何を出せばいいのか分からない。ISMSやPマークは費用も期間も重く、そこまでの話ではない。そこで名前が出てくるのがIPAのSECURITY ACTIONだが、調べると解説記事によって書いてあることが違う。
違って見えるのは、2026年に2つの変更があったからだ。情報セキュリティ5か条は6か条になり、申込にはGビズIDが必須になった。この記事はIPAの一次資料だけで、いま宣言するために何が要るのかを並べ直す。
社内ツールの閲覧範囲は社内ツールの権限設定、生成AIの扱いは生成AIの社内ルール、方針文書そのものの書き方は情報セキュリティ基本方針の作り方が扱う。この記事は宣言に到達するまでの手続きに絞る。
SECURITY ACTIONは審査ではなく自己宣言
SECURITY ACTIONは、中小企業が情報セキュリティ対策に取り組むことを自ら宣言する制度で、実施主体はIPA(独立行政法人情報処理推進機構)だ(IPA「SECURITY ACTION」、2026年8月26日に確認)。第三者が現地を見て認証する仕組みではないため、「取っている/取っていない」ではなく「宣言しているかどうか」になる。
この性質は弱点ではなく、使いどころを決めるものだ。取引先に示せる形が要るがISMSは重い、という段階で使う。逆に、宣言だけして中身を作らなければ、聞かれたときに答えられるものは何も増えない。
5か条ではなく6か条になっている
一つ星は「情報セキュリティ六か条」に取り組むことの宣言だ(IPA「一つ星を宣言する」、2026年8月26日に確認)。六か条は次の内容になっている。
OSやソフトウェアは常に最新の状態にしよう!
更新を止めている端末と、サポートが切れた機器を先に洗い出す
ウイルス対策ソフトを導入しよう!
導入済みかではなく、全端末で有効かを台帳で確認する
パスワードを強化しよう!
共有IDが残っていると強化しても意味が薄い。個人IDへの切替が先
共有設定を見直そう!
クラウドストレージの共有リンクと、社内ツールの閲覧範囲の両方を見る
バックアップを取ろう!
2026年3月の第4.0版で追加された項目。取得だけでなく復元を試したかまで含めて考える
脅威や攻撃の手口を知ろう!
担当者だけでなく、実際に添付を開く人へ届ける形にする
5番目のバックアップは、2026年3月27日に公開された「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン」第4.0版で追加された。同じ改訂でサプライチェーン評価制度の考え方も組み込まれている(IPA「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン」、最終更新2026年7月3日、2026年8月26日に確認)。「情報セキュリティ5か条」として説明している記事は、この改訂より前の内容だと考えてよい。
2026年4月1日から、申込にGビズIDが必要になった
実務で最初に詰まるのはここだ。IPAは自己宣言の申込方法について、GビズIDプライムまたはメンバーのアカウントが必須だと案内している(IPA「自己宣言の申込方法」、2026年8月26日に確認)。申込の流れは、取組目標の決定、GビズIDの取得、申込フォームの入力、完了メールの受信、ロゴマークの使用という5段階になる。
補助金の申請でGビズIDプライムを既に持っている会社なら、この段は飛ばせる。持っていない場合は、宣言そのものより先にアカウントの取得から始まる。「今日中に宣言する」を前提に予定を組まないのが実際的だ。IPAもシステムメンテナンスがあるため余裕を持った手続きを勧めている。
二つ星は「作る」だけでなく「公開する」まで
二つ星は、組織的な取り組みを開始したことの宣言になる。IPAが挙げている要件は次のとおり(IPA「二つ星を宣言する」、2026年8月26日に確認)。
- 「5分でできる!情報セキュリティ自社診断」を実施する。診断は25項目。
- 情報セキュリティ基本方針を策定する。理念、指針、原則、目標等を表した方針書・宣言書にあたる。
- 基本方針を外部に公開する。自社ウェブサイトへの掲載、会社案内やパンフレットへの掲載、その他の方法から選ぶ。
見落とされやすいのが3番目だ。方針を作って社内フォルダに置いた状態は、要件を満たしていない。公開する前提で書くかどうかで、方針の中身は変わる。実態と違うことを書けば、公開した文書と現場のずれが外から見える形で残ってしまう。
宣言までの5手順
1. GビズIDのアカウントを確認する
2026年4月1日以降、申込にGビズIDプライムまたはメンバーが必須。既に補助金申請などで持っていれば流用でき、無ければここが最初の作業になる
2. 一つ星か二つ星かを決める
一つ星は六か条に取り組む宣言。二つ星は自社診断と基本方針の公開まで済ませた宣言。取引先に示す目的なら二つ星まで行く
3. 二つ星なら自社診断を先に回す
「5分でできる!情報セキュリティ自社診断」は25項目。点数を出すことではなく、できていない項目を誰が担当するか決めることが目的になる
4. 基本方針を作り、外部へ公開する
公開方法は自社ウェブサイト、会社案内やパンフレット、その他から選ぶ。作るだけでは二つ星の要件を満たさない
5. 申込フォームを出し、ロゴマークを使う
取組目標決定、GビズID取得、申込フォーム入力、完了メール受信、ロゴマーク使用の5段階。フォームでは個人情報同意、ロゴマーク使用規約同意、事業者情報、取り組み内容の選択を行う
3の自社診断でつまずく項目は、たいてい技術ではなく持ち主の問題として出てくる。共有IDが残っている、退職者のアカウントが生きている、誰がバックアップを見ているか決まっていない、といった形だ。共有IDの整理は共有アカウントを廃止する移行手順、社内で動いているツールの把握は内製ツールの棚卸し手順が扱う。
来週できる一歩:診断25項目を先に1回通す
- GビズIDプライムを持っているか確認する。無ければ取得の手続きだけ先に始める。
- 「5分でできる!情報セキュリティ自社診断」の25項目を、宣言する前に1回通す。
- できていない項目を、技術で直すものと担当を決めれば済むものに分ける。
- 担当を決めれば済むものだけ、先に人を割り当てる。
- その状態を前提に基本方針を書く。実態より先に理想を書かない。
この順番で回すと、宣言は結果として付いてくる。逆に宣言を先に置くと、公開した方針と実態がずれたまま止まる。
宣言まで行っても残るもの
ここまでの手順を踏めば宣言には到達する。制度そのもの、つまり要件・申込・ロゴマークの扱いはIPAの案内が正確で、宣言は事業者本人が行う自己宣言なので、代行を頼む種類のものではない。
実際に止まるのは制度の外側だ。自社診断の25項目でできていない箇所は、たいてい技術ではなく持ち主の問題として出てくる。共有IDが残っている、退職者のアカウントが生きている、バックアップを誰が見ているか決まっていない。買って解決する話ではなく、誰の担当かを決める話になる。
件数は流れているのに、判断基準と責任者とデータのつながりが後回しになっている会社ほど、宣言のあとも同じ場所で止まり続ける。最後の確認が社長に集まっていると特にそうなる。心当たりがあれば、どの業務から手を付けるかを3分・8問の事業基盤診断で確認できる。要件だけ知りたい場合は上のIPAのページで足りる。
社内の仕組みづくりの事例は業務改善カテゴリで確認できる。
よくある質問
SECURITY ACTIONは審査を受ける制度ですか?
審査ではなく自己宣言の制度です。IPAが定めた取組目標に取り組むことを事業者自身が宣言し、ロゴマークを使えるようになります。第三者が現地を見て認証するものではありません。
対策が終わっていなくても一つ星を宣言できますか?
できます。IPAは一つ星を「これから『情報セキュリティ六か条』に取組むことを宣言するもの」と説明しており、対策実施前でも申込は可能です。二つ星は「組織的な取り組みを開始する」を実施したことの宣言なので、こちらは先に実施が要ります。
情報セキュリティは5か条ではないのですか?
2026年3月27日公開のガイドライン第4.0版で「バックアップを取ろう!」が追加され、6か条になりました。5か条として説明している記事は改訂前の内容です。
申込に何が要りますか?
2026年4月1日から、自己宣言の申込にGビズIDプライムまたはメンバーのアカウントが必須になりました。GビズIDの取得は別の手続きなので、宣言そのものより先に着手する項目になります。
泉 款太(いずみ かんた)
株式会社SalesDock 代表取締役
慶應義塾大学法学部卒。スタートアップ、ラクスル、リクルート(SUUMO)を経て2025年に独立。 中小企業の経営・営業・業務・データをつなぐ事業基盤の設計と実装を支援。 不動産・製造業・クリニックを中心に、累計40社以上の支援に携わる。
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