社内ツールの権限設定、顧客情報が全社員に見えていませんか—3つの典型パターンと棚卸しの手順
見えていても誰も困らない。だから、探しに行かないと見つからない
この記事はAIで作った社内ツール、本番導入前チェックリスト12項目の観点2(誰が見られるか)を詳しく扱ったものです。
この記事のポイント
権限が緩い状態は、誰も困らないので発覚しない。典型は3つ—認証をかけていないURL、範囲の広い共有リンク、管理者権限の配りすぎ。棚卸しは「ツールを並べる → 誰が見られるか出す → 業務上不要な人を外す」の3手順で、多くは管理画面だけで完結する。

社内ツールを作るとき、権限設定は後回しになる。動作確認のときに権限で弾かれると面倒なので、いったん全員が見られる状態にする。動いた。配る。——この「いったん」が、そのまま運用に入る。情報が見えていても誰の業務も止まらないので、指摘する人が現れない。この記事では、実際によくある3パターンと、非エンジニアでもできる棚卸しの手順を整理する。
典型パターン1|認証をかけていない
ログイン画面がないツール。URLを開けば誰でも中身が見える。作った側は「社内の人しかURLを知らない」と考えているが、URLは簡単に共有される。チャットに貼る、メールに転送する、資料に載せる。一度外に出れば、取り消す手段はない。
さらに、公開されたURLは検索エンジンに拾われることがある。社内向けのつもりのページが検索結果に出てくる事故は、実際に起きている。
判定方法:ログアウトした状態、あるいはシークレットウィンドウでURLを開いてみる。中身が見えたら認証はかかっていない。これは誰でも1分でできる。
典型パターン2|共有リンクの範囲が広い
スプレッドシートやクラウドストレージを使ったツールで多い。「リンクを知っている全員」に設定すると、共有が楽なので選ばれやすい。
この設定の問題は、誰がアクセスしたか記録が残らず、後から範囲を確認できないこと。誰に渡ったか分からないまま、退職者の手元にもリンクが残る。
扱う情報が顧客情報・個人情報・取引条件のいずれかを含むなら、リンク共有ではなくアカウント単位の権限付与に変える。手間は増えるが、誰が見られるかを一覧で確認できるようになる。
典型パターン3|管理者権限を配りすぎている
「編集できないと不便だろう」という配慮で、全員に編集権限や管理者権限を渡してしまうケース。閲覧だけで足りる人にも編集権限があると、次の問題が起きる。
- 誤操作でデータが消える。しかも誰が消したか分からない
- 権限設定そのものを変更できてしまう。管理していたつもりの状態が崩れる
- 退職時に外す対象が増え、外し忘れる
原則は「その人の業務に必要な最小限」。閲覧だけで仕事が回る人には閲覧権限だけを渡す。
| 典型パターン | 何が起きるか | 確認のしかた |
|---|---|---|
| 認証をかけていない | URLを開けば誰でも中身が見える。URLはチャットやメールで簡単に共有され、検索エンジンに拾われることもある | ログアウトした状態、あるいはシークレットウィンドウでURLを開く。中身が見えたら認証はかかっていない |
| 共有リンクの範囲が広い | 誰がアクセスしたか記録が残らず、後から範囲を確認できない。退職者の手元にもリンクが残る | 共有範囲が「リンクを知っている人」か「指定したアカウント」かを管理画面で見る。顧客情報・個人情報・取引条件を含むならアカウント単位の権限付与に変える |
| 管理者権限を配りすぎている | 誤操作でデータが消えても誰が消したか分からない。権限設定そのものを変更できてしまう。退職時に外す対象が増え、外し忘れる | 編集・管理者権限を持っている人が誰かを一覧で出す。閲覧だけで仕事が回る人には閲覧権限だけを渡す |
なぜ発覚しないのか
権限が緩いことによる不具合は起きない。むしろ緩いほど快適に動く。だから使っている人からは何の報告も上がらない。
発覚するのは、たいてい次のいずれかのタイミングだ。
- 退職者が情報を持ち出したことが分かったとき
- 本来知らないはずの情報が社内で話題になったとき
- 取引先や監査で「アクセス管理はどうなっていますか」と聞かれたとき
いずれも、問題が起きてから発覚している。事前に見つけるには、探しに行くしかない。
棚卸しの手順(3ステップ)
ステップ1|動いているツールを並べる
まず一覧を作る。ツール名、作った人、何をするもの、扱う情報、この4列で十分。ここで「そんなの動いてたのか」というものが出てくることが多い。
ステップ2|それぞれ誰が見られるかを出す
各ツールの管理画面で共有設定・メンバー一覧を開き、そのまま書き出す。技術知識は要らない。見るのは3点。
- 認証がかかっているか(かかっていなければ「全世界」と書く)
- 共有範囲は「リンクを知っている人」か「指定したアカウント」か
- 編集・管理者権限を持っている人は誰か
ステップ3|業務上不要な人を外す
一覧を見ながら「この人はこれを見る必要があるか」を1行ずつ判断する。迷ったら外す。必要なら本人から申請が来るので、それから戻せばいい。
あわせて、退職・異動時に権限を外す手順を決めておく。誰が外すのか、どのタイミングで、どのツールを確認するのか。この3つが決まっていないと、実際には外されない。ステップ1で作った一覧が、そのままチェックリストになる。
権限まわりだけ、第三者に見てもらう
テクミルは、社内で作ったAIツールについて、第三者のエンジニアが懸念点と対応方針を整理するサービスです。「このツールは誰から見えているのか」の確認だけ、といった範囲を指定した相談もできます。月額8万円(税別)から、初回の相談は30分無料。
テクミルのサービス内容を見る →まとめ
権限の問題は、技術的には難しくない。管理画面を開いて設定を見るだけで、大半は判定できる。難しいのは「見に行こう」と決めることのほうだ。不具合として現れない以上、意識的に棚卸しの時間を取らないと永遠に手が付かない。まずは動いているツールを紙に書き出すところから始めるといい。
よくある質問
社内ツールの権限設定が緩いと、具体的に何が問題ですか?
本来アクセスできてはいけない人が情報を見られる状態になります。人事情報・取引条件・顧客リストなどが典型です。厄介なのは、見えていても誰も困らないため発覚しないこと。退職者が持ち出す、社内で噂が広まる、といった形で表面化したときには、すでに長期間その状態だったというケースがほとんどです。
「リンクを知っている人だけ」の共有は安全ですか?
安全とは言えません。URLはチャットやメールで簡単に転送され、追跡できません。退職者の手元にも残ります。検索エンジンに拾われる場合もあります。扱う情報が顧客情報や個人情報なら、リンク共有ではなくアカウント単位の権限付与に変えてください。
権限の棚卸しはどのくらいの頻度でやるべきですか?
最低でも半年に1回。加えて、退職・異動が発生したタイミングでその都度確認します。棚卸しの実務は「ツール一覧を出す」「それぞれ誰が見られるか一覧を出す」「業務上必要ない人を外す」の3手順で、技術知識がなくても管理画面から実行できるものがほとんどです。
泉 款太(いずみ かんた)
株式会社SalesDock 代表取締役
慶應義塾大学法学部卒。スタートアップ、ラクスル、リクルート(SUUMO)を経て2025年に独立。 中小企業の経営・営業・業務・データをつなぐ事業基盤の設計と実装を支援。 不動産・製造業・クリニックを中心に30社以上の業務改善に携わる。
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