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不動産

不動産会社が使うソフトの全体マップ|基幹・ポータル連動・CRM・会計の役割分担を整理する

10分で読める

個別の製品の比較は「不動産向け業務効率化ツール比較10選」にまとめています。この記事は製品を並べる前の地図です。どの層の話をしているのかを揃えるために書いています。

この記事のポイント

不動産会社のシステムは、物件・掲載・顧客・お金の4層に分かれる。ツール選定でもめる原因のほとんどは、層をまたいだ比較をしていること。層を揃えると、比べる対象が一気に減る。

不動産会社でシステムの話をすると、机の上に並ぶ候補の層がバラバラなことがよくあります。物件管理システムと、CRMと、電子契約と、会計ソフトが同じ土俵で比較されている。それぞれ役割が違うので、そのままでは優劣を付けられません。

比べる前に必要なのは地図です。不動産会社が使うソフトは、何を持っているかで4つに分けると整理できます。物件を持つ層、外に出す層、人を持つ層、お金を持つ層です。

4層のマップ

持っているデータ主な作業
1. 基幹(物件)物件、間取り、図面、価格、権利関係、成約履歴物件登録、更新、書類出力、成約処理
2. ポータル連動(掲載)掲載中の物件、掲載枠、画像、掲載ステータス各サイトへの公開・更新・取り下げ
3. CRM(人)顧客、反響、接触履歴、担当者、紹介元反響対応、追客、内見手配、引き継ぎ
4. 会計・請求(お金)仕訳、請求、入金、経費、月次の数字請求発行、消込、月次締め、決算

この分け方の利点は、1つの製品が複数の層を持つことがあるという事実をそのまま扱えることです。不動産特化のオールインワンシステムは1・2・3を持ちます。汎用CRMは3だけ。電子契約は1と3の間にある工程を担います。会計ソフトは4だけ。

検討中の製品がどの層をカバーしているかを塗り分けると、いま何が足りないのか、何が重複しているのかが見えます。

層1: 基幹—ここが物件の正になる

基幹は、物件情報の正を持つ層です。所在地、面積、価格、権利関係、設備。ここが決まらないと他の層が動きません。

小さい会社では、この層がExcelやスプレッドシートであることも珍しくありません。それ自体は問題ではなく、正が1箇所にあるかどうかのほうが重要です。営業ごとに自分のExcelを持っている状態だと、この層が存在していないのと同じことになります。

賃貸管理をやっている会社は、この層に契約・入退去・オーナー情報も乗ってきます。売買仲介中心の会社より扱う項目が多くなるので、専用システムを使う理由が強くなります。

層2: ポータル連動—物件を外に出す経路

基幹にある物件を、外に見せるための層です。ポータルサイト各社は、不動産会社が使っているシステムからデータを受け取る公式の経路を用意しています。

この層で決まるのが、1回入力して複数サイトに出せるか、サイトごとに入力するかです。ここが業務時間に直結します。仕組みそのものは「ポータル連動(コンバート)はどう動いているのか」で分解しています。

注意点は、この層が基幹システムに強く依存することです。連動できるかどうかは、使っているシステムとポータル側の対応状況で決まります。基幹を替えると連動も見直しになるので、この2層はセットで考えることになります。

層3: CRM—人と接触履歴を持つ

反響が来てから成約するまでの、人の側の記録を持つ層です。誰がいつ問い合わせて、誰が対応して、何を提案したか。

この層を独立して持つ価値が出るのは、営業が複数人いて、引き継ぎが起きるときです。1人で全部やっている段階では、記憶とメールで足りてしまいます。人が増えて「あの件どうなってる?」が発生し始めたら、この層の出番です。

汎用CRMを使うか、不動産特化のものを使うかの判断は「不動産会社にSalesforce・HubSpotは合うのか」で整理しました。要点は、物件まで載せるなら重く、顧客の履歴だけなら軽い、ということです。

層4: 会計・請求—遅れて効いてくる層

お金の層です。仲介手数料の請求、賃貸管理の家賃送金、経費、月次の締め。

この層が他と違うのは、問題が起きても当日には気づかないことです。物件が掲載されていなければすぐ分かりますが、請求が漏れているのは月末か、下手をすると数ヶ月後に分かります。だから優先順位が下がりやすく、下がった結果あとで大きく効いてきます。

経理側の効率化については「不動産会社の経理を効率化する」で扱っています。

重なりが生まれる3つの場所

層に分けると、問題が起きる場所も特定できます。多くはつなぎ目です。

1. 基幹とポータル連動の間

基幹の項目とポータルの項目が1対1で対応しないことがあります。片方にしかない項目は、連動しても埋まりません。結果、連動後にポータル側で追記する作業が残ります。

2. 基幹とCRMの間(顧客が二重になる)

基幹にも取引の相手方として顧客が入り、CRMにも顧客が入る。どちらを正にするかを決めていないと、住所変更や連絡先の更新が片方にしか入らず、しばらくして食い違いが露見します。

3. 基幹と会計の間(金額が二重になる)

成約の金額は基幹にあり、請求の金額は会計にあります。手で転記していると、値引きや精算の調整が片方に反映されないことがあります。月次の売上と請求台帳が合わない原因のほとんどがここです。

この3つが、ツールを増やすほど作業が増える理由の正体です。詳しくは「ツールを増やすほど転記が増える」で扱っています。業務ソフトを入れたのに手作業が残る構造については「不動産の業務ソフトを入れても手作業が残る」も合わせて読むと立体的になります。

自社のマップを1枚書いてみる

1. 紙に4つの箱を書く。基幹・ポータル連動・CRM・会計。

2. いま使っているものを箱の中に書く。Excelもスプレッドシートも紙の台帳も、全部書く。

3. 箱と箱の間に矢印を引く。人が手で運んでいるところは実線、システムがつないでいるところは点線にする。

4. 実線の矢印それぞれについて、週に何回・1回何分かかっているかを書く。

5. 数字が一番大きい実線から手を付ける。それが投資先です。

この作業は1時間で終わります。そして、たいていの場合「一番時間がかかっているのはシステムの機能不足ではなく、箱と箱の間だった」という結論になります。機能比較表からは絶対に出てこない結論です。

まとめ

不動産会社のシステムは、基幹(物件)・ポータル連動(掲載)・CRM(人)・会計(お金)の4層に分かれます。1つの製品が複数の層を持つことがあるので、製品名ではなく層で塗り分けると全体像がつかめます。

問題が起きるのは層の中ではなく、つなぎ目です。基幹とポータルの項目のずれ、基幹とCRMの顧客の二重持ち、基幹と会計の金額の二重持ち。この3箇所を見れば、いま何に時間が溶けているかが分かります。

製品を比べるのは、そのあとで十分です。

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よくある質問

不動産会社は、どの順番でシステムを入れるべきですか?

業務量が多い層からです。多くの仲介会社では、物件を外に出す作業(ポータル連動)と会計が先に効きます。顧客管理は、営業が複数人いて引き継ぎが発生している場合に効いてきます。順番を決める基準は機能の多さではなく、いま何時間かかっているかです。

オールインワンの不動産システムと、個別のツールを組み合わせるのはどちらがよいですか?

判断軸は、社内に設定を触れる人がいるかどうかです。オールインワンは層をまたぐ転記が少ない代わりに、個別機能の使い勝手を選べません。組み合わせは各層で最適なものを選べますが、層と層のつなぎ目を自社で管理することになります。つなぎ目を管理できる人がいない場合、組み合わせ型は転記作業として跳ね返ってきます。

顧客情報はどのシステムに置くのが正しいですか?

正しい置き場所は会社によって違いますが、正しくないのは「2箇所に置くこと」です。基幹システムにもCRMにも顧客が入っている状態だと、どちらが最新か分からなくなり、確認の手間が増えます。どちらか一方を正と決め、もう一方は参照だけにする。この線引きだけで、日々の確認作業がかなり減ります。

泉 款太(いずみ かんた)

株式会社SalesDock 代表取締役

慶應義塾大学法学部卒。スタートアップ、ラクスル、リクルート(SUUMO)を経て2025年に独立。 中小企業の経営・営業・業務・データをつなぐ事業基盤の設計と実装を支援。 不動産・製造業・クリニックを中心に30社以上の業務改善に携わる。

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