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不動産

ツールを増やすほど転記が増える|不動産会社でシステムが4つになったときに起きること

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システムの層構造そのものは「不動産会社が使うソフトの全体マップ」で整理しています。この記事はその層と層の間で何が起きるかに絞ります。

この記事のポイント

システムの数が増えると、つなぎ目の数は直線的には増えない。そして、そのつなぎ目を人が埋めている。減らす方法はシステムを減らすことではなく、同じ情報を編集できる場所を1つに絞ること。

業務改善の話で一番よく聞くのが「ツールを入れたのに、事務の仕事が減っていない」というものです。むしろ増えたように感じる、と言われることもあります。

これは気のせいではないことが多いです。ツールの中の作業は確かに減っています。減っていないのは、ツールとツールの間です。そして、その間は誰の担当でもないので、気づかないうちに事務スタッフが引き受けています。

つなぎ目は、システムの数より速く増える

システムが2つなら、その間は1本です。3つなら3本、4つなら6本の組み合わせができます。実際に全部の経路が使われるわけではありませんが、増え方が直線ではないのは事実です。1つ足したときの影響が、前回より大きくなります。

不動産会社で典型的な4つは、基幹(物件)、ポータル連動(掲載)、CRM(顧客)、会計(お金)です。ここに電子契約と、多くの場合スプレッドシートが加わります。実質6つになっている会社は珍しくありません。

そして重要なのは、導入したときには誰もつなぎ目の話をしていないことです。各ツールの検討は、そのツールが解決する課題の観点で進みます。つなぎ目は導入後に現れます。

実際に転記が起きる4つの場所

経路運ばれるもの起きやすい事故
反響メール → CRM氏名、連絡先、問い合わせ物件、希望条件忙しい日に入力が後回しになり、その日の反響が抜ける
基幹 → CRM(顧客)契約した顧客の氏名・住所・連絡先表記ゆれで同一人物が2件になる。あとから名寄せが必要になる
基幹 → 会計(金額)成約価格、仲介手数料、精算金値引きや精算の調整が片方にしか入らず、月次で合わなくなる
各システム → スプレッドシート月次の集計、KPI、進捗の一覧集計時点が揃わず、同じ数字が会議ごとに違う

この4つのうち、3つ目と4つ目は特にやっかいです。間違いに気づくのが遅れるからです。反響入力の抜けは翌日には分かりますが、金額のずれは月末まで、集計のずれは会議で指摘されるまで気づきません。

原因は「編集できる場所が2つあること」

転記が発生する条件は、実はシンプルです。同じ情報を、2箇所で編集できる状態になっていること。これだけです。

基幹にもCRMにも顧客の電話番号が入っていて、どちらでも書き換えられる。この状態だと、どちらが最新か分からないので、確認する作業が発生します。そして確認するくらいなら両方直そう、となって二重入力が定着します。

逆に、「電話番号を直していいのは基幹だけ、CRM側は表示専用」と決まっていれば、迷いも二重入力も起きません。情報を持つこと自体は問題ではなく、編集できる場所が複数あることが問題です。

業務ソフトを導入しても手作業が残る構造については「不動産の業務ソフトを入れても手作業が残る」でも扱っています。

3つの情報について、編集する場所を1つに決める

決めるのは3つだけです。不動産会社の場合、この3つで大半の転記が説明できます。

1. 顧客情報の編集場所

氏名、住所、電話番号、メール。契約の相手方として基幹に入り、見込み客としてCRMにも入る。どちらを編集場所にするか。多くの場合、契約前はCRM、契約後は基幹という時系列の切り方が実務に合います。切り替えの瞬間だけルールを決めておけば運用できます。

2. 物件情報の編集場所

これは基幹一択にするほうが安全です。ポータル側で直接直すと、次の連動で上書きされて元に戻ることがあります。「ポータルの管理画面で直さない」というルールを1本引くだけで、原因不明の巻き戻りが消えます。

3. 金額の編集場所

成約金額と手数料をどこで確定させるか。ここは会社によって分かれますが、決めていない会社が一番多い項目でもあります。基幹で確定させて会計に流すのか、請求書を作る側で確定させるのか。どちらでもよいので、1つに決めます。

この3つを決めて紙に書き、事務所に貼る。それだけで転記が減ります。システムの設定を変える必要はありません。

それでも残る転記は、自動化の候補になる

編集場所を1つに決めても、情報を別のシステムに渡す必要は残ります。ここが本来の自動化の対象です。

判断の順序としては、まず連携機能が標準で用意されていないかを確認します。各システムがCSV出力・取り込みに対応していれば、月次の作業ならそれで足ります。次に、日次で発生する経路だけを自動化の候補にします。月1回の作業を自動化しても、作った仕組みの保守のほうが高くつくことがあります。

Excel間の転記を減らす具体的な手立ては「Excelの転記作業を減らす」で扱っています。

1週間、転記のログを取る

やること:事務と営業に、1週間だけ「どの画面からどの画面へ、何を写したか」をメモしてもらう。所要時間も書く。フォーマットは紙でもチャットでも構いません。

見るもの:同じ経路が何回出てくるか。1回あたり何分か。この2つを掛けると年間の時間が出ます。

判断:上位3つのうち、編集場所を決めるだけで消せるものと、仕組みが要るものに分ける。前者は今週中に消せます。

やらないこと:この段階で新しいツールを探さない。転記の原因はツール不足ではなく、多くの場合ツールの多さです。

この1週間のログは、あとでツールを検討するときの見積もり根拠にもなります。「この作業に年間何十時間かかっている」という数字があると、費用対効果の議論が具体的になります。

まとめ

システムを増やすと、システムの中の作業は減り、システムの間の作業が増えます。そしてつなぎ目の数は、システムの数より速く増えます。これが「入れたのに楽にならない」の正体です。

転記が起きる条件は、同じ情報を2箇所で編集できることです。顧客・物件・金額の3つについて、編集していい場所を1つに決める。これは無料でできて、効果がすぐ出ます。

そのうえで残る経路が、自動化を検討する対象です。順番を逆にすると、混乱したままの状態を自動化することになります。

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よくある質問

システムを増やすと、なぜ作業が減らないのですか?

各システムの中の作業は減りますが、システムとシステムの間に人が運ぶ経路が生まれるためです。システムが2つなら間は1本ですが、4つになると理屈の上では最大6本の組み合わせができます。増え方が直線ではないことが、体感として「増やしたのに楽にならない」につながります。

転記をなくすには、システムを1つにまとめるしかないですか?

まとめるのは選択肢の1つですが、必須ではありません。転記が発生するのは、同じ情報を2箇所で編集できる状態のときです。どちらか一方を編集する場所、もう一方を見るだけの場所と決めれば、システムが分かれていても二重入力にはなりません。まず顧客・物件・金額について、編集していい場所を1つに絞ることです。

どの転記から手を付ければよいですか?

頻度×人数で一番大きいものからです。月1回の作業が30分かかっていても年6時間ですが、毎日5分の作業が3人分あれば年60時間を超えます。まず1週間、どの画面からどの画面へ何を写しているかをメモに取り、頻度と所要時間を書き出してから決めると、投資先を間違えません。

泉 款太(いずみ かんた)

株式会社SalesDock 代表取締役

慶應義塾大学法学部卒。スタートアップ、ラクスル、リクルート(SUUMO)を経て2025年に独立。 中小企業の経営・営業・業務・データをつなぐ事業基盤の設計と実装を支援。 不動産・製造業・クリニックを中心に30社以上の業務改善に携わる。

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