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不動産

不動産会社にSalesforce・HubSpotは合うのか|汎用CRMを入れる前に確認する4つの前提

11分で読める

業種を問わないCRMの比較そのものは「中小企業向けCRM比較」で扱っています。この記事は不動産の業務構造に汎用CRMの形が合うかどうかだけに絞ります。ツール全体の見取り図は「不動産向け業務効率化ツール比較10選」が入口です。

この記事のポイント

汎用CRMは「顧客1件に商談1本がぶら下がる」構造を前提に作られている。不動産は物件が主語になり、同じ人が売主にも買主にもなり、追客が年単位になる。この形の違いを先に見ておくと、入れてから作り直す回数が減る。

不動産会社からCRMの相談を受けるとき、候補にSalesforceかHubSpotが挙がることがよくあります。名前が通っていて、情報も多く、価格も公開されている。検討の入口としては自然な流れです。

ただ、その先で「思ったのと違った」となる場合、原因が機能不足であることはあまりありません。多くは、汎用CRMが前提としているデータの形と、不動産の業務が持っているデータの形がずれていることのほうです。この記事では、その前提のずれを4つに分けて整理します。良し悪しの話ではなく、形が合うかどうかの話です。

まず、公開されている価格を確認しておく

判断の材料として、両社が公式に掲載している価格を先に置いておきます。以下は2026年8月11日時点で各社の公式ページに掲載されていた内容です。

製品・エディション掲載価格契約単位の記載
Salesforce Starter Suite3,000円/ユーザー/月月払いまたは年払い
Salesforce Pro Suite12,000円/ユーザー/月年間契約
Salesforce Enterprise21,000円/ユーザー/月年間契約
HubSpot Sales Hub 無料0円/月2ユーザーまで。決済情報の登録も不要と記載
HubSpot Sales Hub Starter2,400円/月/シート月額でのお支払いの場合。年額払いの案内は別途あり
HubSpot Sales Hub Professional12,000円/月/シート(年額払いは10,800円/月/シート)別途、必須で1回限りの導入支援 180,000円
HubSpot Sales Hub Enterprise18,000円/月/シートから別途、必須で1回限りの導入支援 420,000円

出典・一次情報

いずれも2026年8月11日に確認した掲載内容です。価格・プラン構成は改定されます。検討時は各社の公式ページで最新をご確認ください。

ここで確認したいのは金額の高低ではありません。両社ともユーザー(シート)単位の課金であるという点です。営業が10名いれば10人分かかります。そして不動産の現場では、物件件情報を見る事務スタッフ、金額を確認する経理、内容を確認する社長と、営業以外にも「見たい人」がいます。全員にシートを配ると想定より高くなり、配らないと結局その人たちはExcelを見続けることになります。これは価格表からは読み取れない部分です。

前提1: 汎用CRMの主語は「人」、不動産の主語は「物件」

汎用CRMの標準構造は、おおむね「取引先(会社)— 取引先責任者(人)— 商談」の3層です。1人の担当者に、1本の商談がぶら下がる。BtoBの営業はこの形にきれいに収まります。

不動産の場合、業務の中心にあるのは物件です。1つの物件に、売主がいて、媒介契約があって、問い合わせてきた複数の買主候補がいて、内見の履歴があって、最終的に1件の契約が成立する。逆に1人の顧客側から見ると、複数の物件を並行して検討している。人と物件が多対多で交差しているのが不動産で、これは標準の3層構造にそのままは載りません。

この差を埋める方法は2つあります。物件をカスタムオブジェクトとして自分で設計するか、物件は別のシステムに置いてCRMには顧客と接触履歴だけを持たせるか。前者は設計の自由度が高い代わりに、設計した人が辞めると触れなくなります。後者は割り切りが要りますが、維持は軽い。

スプレッドシートで顧客管理をしている段階からの移行を考えている場合は「不動産のCRMをスプレッドシートで作る」も合わせて見ると、どこまでを何に持たせるかの線が引きやすくなります。

前提2: 同じ人が売主にも買主にもなる

買い替えの顧客は、売主であり買主です。相続で受けた物件を売った人が、数年後に収益物件を買うこともあります。汎用CRMの取引先責任者は1レコードなので、同じ人に対して立場の違う商談が別々にぶら下がることになります。

問題は集計です。「今月の反響数」を数えるとき、売り反響と買い反響を分けずに1本の商談リストとして持っていると、数字の意味が混ざります。分けるなら、商談の種別を最初に定義しておく必要があります。あとから増やすと、過去分を全部入れ直すことになります。

実務で効くのは、レコードを分けるかどうかより「どの単位で数えるかを先に決める」ことです。反響を数えるのか、媒介契約を数えるのか、成約を数えるのか。ツールの機能の話に入る前にここが決まっていないと、どのCRMを入れても同じ場所で詰まります。

前提3: 追客の時間軸が年単位になる

BtoBのCRMは、数週間から数ヶ月で決着するパイプラインを前提にしています。停滞している商談を検知して促す機能も、その時間感覚で作られています。

不動産の売却検討は、相談から実際に売りに出すまで1年以上空くことが珍しくありません。相続や住み替えのタイミング待ちなので、こちらから短期で動かせるものではない。この案件を「停滞」として扱うと、アラートが鳴り続けて誰も見なくなります。

汎用CRMでこれを扱うなら、短期のパイプラインと長期の育成リストを分ける設計が要ります。標準の商談ステージだけで両方を表現しようとすると、ステージが増えすぎて入力されなくなる。追客の設計そのものは「複数人で顧客情報を共有する仕組み」でも扱っています。

前提4: ポータル・レインズ側にも同じ情報がある

不動産会社には、CRMを入れる前から物件情報が置かれている場所があります。ポータルサイトの掲載管理画面、指定流通機構、そして自社の物件台帳。汎用CRMはこれらと標準では接続していません。

つまり、汎用CRMを1つ増やすと、同じ物件情報を持つ場所がもう1つ増えるということです。反響メールを取り込む設定を作っておけば入口は減らせますが、物件そのものの情報は二重に持つことになります。この二重持ちが業務にどう効いてくるかは「ツールを増やすほど転記が増える」で具体的に整理しています。

合う場合と、合いにくい場合

ここまでの4つを踏まえると、線はわりとはっきりします。

合いやすい: 顧客との接触履歴を残すことが主目的のとき

誰がいつ誰に何を送ったか、紹介元がどこか、過去に何を提案したか。人を軸にした履歴は汎用CRMの得意領域です。物件管理は別システムのまま、顧客の記録だけをCRMに寄せる形なら、設計も軽く済みます。

合いやすい: 賃貸管理のオーナー対応や、法人向けの営業がある会社

オーナー(会社または個人)を主語にして、報告・提案・更新を管理する形は、標準構造とほぼ同じです。法人相手の仕入れ営業も同様です。

合いにくい: 物件を主語にした業務を全部載せようとするとき

物件の登録・掲載・更新・図面・成約までを1つに載せる想定なら、設計量が大きくなります。不動産特化のシステムが標準で持っている部分を、自分で作ることになるためです。作れないわけではなく、維持できるかどうかが判断軸になります。

合いにくい: 設定を触れる人が社内に1人もいないとき

汎用CRMは自由度が価値です。その自由度は、項目を足したり画面を変えたりできる人がいて初めて効きます。いない場合は、外部に頼み続ける前提の費用を最初から見込んでおくほうが安全です。

検討するなら、この順番で確認する

1. 顧客情報の正をどこに置くかを決める。CRMか、基幹システムか。両方を正にしない。

2. 数える単位を決める。反響・媒介・成約のどれを月次で追うか。ここが決まらないうちはツールを比べない。

3. シートを配る人数を数える。営業だけか、事務・経理・経営まで含めるか。ユーザー課金なので、ここで金額が2倍変わる。

4. 無料枠か短期契約で、実際の反響を1ヶ月だけ流してみる。HubSpotには2ユーザーまでの無料プランがあり、Salesforceには無料トライアルの案内があります。判断材料は自社のデータで作るのが一番早いです。

5. その1ヶ月で「入力されたか」を見る。機能ではなく、入力の継続だけを見ます。入らなければ、どのツールでも同じ結果になります。

まとめ

SalesforceもHubSpotも、不動産会社が使えないツールではありません。価格も公開されていて、小さく始める入口もあります。ただ、汎用CRMは人を主語にした構造で作られていて、不動産の業務は物件を主語にした構造で動いています。この差を埋める作業が、導入作業の実体になります。

だから比較で見るべきなのは機能一覧ではなく、自社のどの業務を載せるつもりなのかのほうです。顧客の履歴だけを載せるなら軽い。物件まで載せるなら重い。この線を先に引いてから価格を見ると、判断が短くなります。

そして、どちらを選んでも同じ場所で詰まります。入力されるかどうかです。

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よくある質問

不動産会社がSalesforceやHubSpotを使うことはできますか?

使えます。どちらも顧客・商談・活動履歴を管理する汎用のCRMで、業種を限定していません。ただし物件を主語にした管理機能は標準では持っていないため、物件台帳を別に持つか、カスタムオブジェクトとして自分で設計するかのどちらかになります。設計する場合は、その設計を維持できる人が社内に必要です。

Salesforceの料金はいくらですか?

セールスフォース・ジャパンの公式価格ページには、2026年8月時点で、Starter Suiteが3,000円/ユーザー/月(月払いまたは年払い)、Pro Suiteが12,000円/ユーザー/月(年間契約)、Enterpriseが21,000円/ユーザー/月(年間契約)と掲載されています。価格は改定されることがあるため、検討時は公式ページで最新をご確認ください。

不動産特化のシステムと汎用CRMはどちらを選ぶべきですか?

物件情報をポータルサイトへ出す業務が中心なら、ポータル連動を標準で持つ不動産特化システムのほうが必要な工程が短くなります。顧客との接触履歴を長期に残したいという目的が主なら、汎用CRMのほうが柔軟です。多くの会社では両方を持つことになるので、どちらを選ぶかより、顧客情報の正をどちら側に置くかを先に決めるほうが実務では重要になります。

泉 款太(いずみ かんた)

株式会社SalesDock 代表取締役

慶應義塾大学法学部卒。スタートアップ、ラクスル、リクルート(SUUMO)を経て2025年に独立。 中小企業の経営・営業・業務・データをつなぐ事業基盤の設計と実装を支援。 不動産・製造業・クリニックを中心に30社以上の業務改善に携わる。

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