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不動産

不動産会社の経理業務を整理する—仲介手数料の管理・入金確認・請求書処理を仕組み化する方法

10分で読める

この記事のポイント

不動産会社の経理は、仲介手数料の計算パターン・入金タイミングのズレ・案件別の経費按分の3つで複雑になる。スプレッドシートでの管理からfreee連携まで、段階的な仕組み化の方法を解説。

不動産会社の経理は独特だと思う。

売買と賃貸で仲介手数料の計算が違う。入金タイミングは決済日だったり引渡日だったりでバラバラ。案件ごとの収支を出そうにも、広告費や業務委託費をどの案件に紐づけるかが曖昧——こういう状態で月末を迎えている会社は少なくない。

支援先の不動産会社で経理まわりを整理した経験をもとに、何が複雑さの原因で、どう仕組み化していけばいいかを書いてみる。

不動産会社の経理が複雑になる3つの原因

①仲介手数料の計算パターンが多い

売買仲介の手数料は「成約価格×3%+6万円(税別)」が上限。賃貸仲介は「家賃1ヶ月分(税別)」が上限。ここまでは知っている人が多い。

ただ実際には、両手取引か片手取引かで受け取る額が変わる。400万円以下の物件は計算式が別。賃貸でもAD(広告料)が付く案件と付かない案件がある。新築の売主代理と中古の媒介でも違う。

これを案件ごとに手計算していると、ミスが出るし、月の売上予測も立てにくい。

②入金が決済時・引渡時でズレる

売買仲介の場合、契約時に手数料の半額、決済時に残りの半額——という分割払いが一般的。でも実際には、売主側は決済時に一括、買主側は契約時に全額、みたいにバラバラなこともある。

賃貸は入居開始日の前後で入金されるけど、法人契約だと月末締め翌月払いになることもある。「契約は決まったけど、いつ入金されるか」が案件ごとに違うので、キャッシュフローの見通しが立てにくい。

③広告費・業務委託費の案件別按分ができていない

ポータルサイトへの掲載料、物件撮影の外注費、内覧時の交通費。これらを案件ごとに紐づけている会社は意外と少ない。

「SUUMOの掲載料は月額いくら」と把握していても、その月に動いていた物件が10件あったら、1件あたりいくらかかっているかは計算していない。結果、「成約したけど、この案件トータルで見たら赤字だった」ということが後から判明する。

仲介手数料の管理をスプレッドシートで整理する

まずは案件×手数料×入金ステータスの一覧表を作る。スプレッドシート1枚でいい。

案件名種別成約価格/家賃手数料(税別)入金ステータス
A物件(売買)両手3,000万円192万円半額入金済
B物件(賃貸)片手家賃12万円12万円入金済
C物件(売買)片手4,500万円141万円未入金

手数料の計算は関数で自動化できる。売買なら 成約価格 × 3% + 6万円、賃貸なら 家賃 × 1ヶ月分 をIF関数で切り替える。両手か片手かのフラグを入れておけば、片手の場合は自動で半額になる。

ポイントは「入金ステータス」の列。未入金・半額入金済・全額入金済の3段階で管理する。これがあるだけで、月末に「今いくら入ってきていて、あといくら入ってくる予定か」がすぐ出せる。

入金確認を自動化する

月に10件以上の成約がある会社だと、入金確認だけで半日かかっているケースがある。通帳やネットバンキングの入出金明細を見ながら、案件一覧と1件ずつ突き合わせる作業。

これは銀行のCSVダウンロード機能を使えば自動化できる。

入金確認の自動化ステップ

  1. 銀行のネットバンキングからCSVをダウンロード(週1回)
  2. スプレッドシートにインポートし、案件一覧の「入金予定額」とVLOOKUPで突合
  3. 一致したら入金ステータスを自動で「入金済」に更新
  4. 未入金が契約日から30日を超えたら、Slackに自動通知

Google Apps Scriptを使えば、CSVの取り込みから突合・通知までを自動化できる。最初の設定に2〜3時間かかるけど、一度作ってしまえば毎月の確認作業が数分で終わる。

未入金の自動検出は地味に大きい。「あの案件、入金まだだったっけ?」と手帳を見返す時間がゼロになる。特に売買の分割入金は忘れやすいので、リマインダーがあるだけで回収漏れを防げる。

freee・マネーフォワードとの連携

スプレッドシートで管理が回るようになったら、次のステップとしてクラウド会計との連携を考える。

freeeもマネーフォワードも、銀行口座と自動連携する機能がある。入出金データが自動で取り込まれるので、仕訳の手入力がなくなる。不動産仲介の場合、勘定科目は「売上(仲介手数料)」「広告宣伝費」「外注費」あたりがメインなので、自動仕訳ルールを設定しておけば、ほぼ自動で仕訳が完了する。

ただし、案件別の収支レポートはクラウド会計の標準機能だけでは出しにくい。freeeの場合は「タグ」機能、マネーフォワードの場合は「部門」機能を使って、仕訳に案件名を紐づける。これで案件ごとの売上・経費・粗利が一覧で見えるようになる。

freee連携で自動化できること

  • 銀行入出金の自動取り込み・自動仕訳
  • 案件タグによる案件別損益レポート
  • 請求書の自動作成・送付(freee請求書機能)
  • 消費税の自動計算(課税売上・非課税売上の区分)

不動産会社の場合、仲介手数料は課税売上だけど、賃貸の家賃収入(自社物件がある場合)は住居用なら非課税。この区分も仕訳ルールで自動化しておけば、消費税の計算で悩まなくなる。

効果テーブル

指標BeforeAfter(目標)
手数料計算にかかる時間案件ごとに手計算(10〜15分/件)自動計算(入力のみ1分/件)
入金確認の作業時間月末に半日週1回・数分
案件別の収支把握把握できていないリアルタイムで確認可能
入金漏れの発見月末にまとめて気づく30日超過で自動通知
月次決算の締め翌月15日以降翌月5日以内

最後に

今月成約した案件の仲介手数料、いつ・いくら入金される予定か、即答できるだろうか。

案件ごとの広告費を引いた粗利がプラスかマイナスか、把握できているだろうか。

不動産会社の経理が複雑になるのは、ある意味仕方がない。取引の種類が多く、入金タイミングがバラバラで、案件ごとに条件が違う。でも、だからこそ仕組みで整理する効果が大きい業界でもある。

まずはスプレッドシート1枚、案件×手数料×入金ステータスの一覧表から始めてみてほしい。

泉 款太(いずみ かんた)

株式会社SalesDock 代表取締役

慶應義塾大学法学部卒。スタートアップ、ラクスル、リクルート(SUUMO)を経て2025年に独立。 不動産・製造業・クリニックなど現場産業向けのAI業務効率化コンサルを提供。 30社以上の中小企業のAI活用・業務改善を支援。

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