不動産の成約率を改善する方法|売上が伸びない原因を4つの数字で特定する
「頑張っているのに数字が伸びない」を、反響から契約までの数字で解きほぐす
成約率を改善する前の結論
営業も頑張っている、反響も来ている、なのに売上が横ばい。この状態では、どこを直すべきかがまだ定まっていません。
- 売上は反響数×来店率×成約率×客単価に分けられます。まず、4つのうちどこで落ちているかを自社の過去3ヶ月と比べて特定します。
- 成約率は分母(反響か来店か)を決めて数えます。来店後は「来店→案内→申込→契約」に分けると、止まっている工程が見えます。
- 直すのは一度に1か所です。初回連絡の速さ、ヒアリング項目、提案の絞り方、追客の型、案件の台帳のうち、詰まりに当たるものから手を付けます。
この記事は不動産営業の業務効率化と自動化の一部です。反響・日報・物件情報まで含めた全体像はこちらをご覧ください。
「営業は頑張っている。反響もそれなりに来ている。なのに売上が横ばい」—こういう状況にいる不動産会社の経営者は多い。売上が伸びないとき、多くの会社がまず考えるのは「反響を増やそう」「広告費を上げよう」だ。でも、本当にそこがボトルネックなのかを確認しないまま投資しても、お金が出ていくだけで成果は変わらない。この記事では、成約率を改善する前に、反響から契約までのどこで落ちているかを数字で特定する手順をまとめる。
不動産の成約率とは—分母で意味が変わる
成約率は「成約件数÷何か」で出す。問題は、この「何か」が会社や担当者によって違うことだ。反響を分母にする人もいれば、来店や案内を分母にする人もいる。分母が違う数字を並べても、改善したかどうかは判断できない。
成約率の主な数え方
| 呼び方 | 計算式 | 分かること |
|---|---|---|
| 反響ベースの成約率 | 成約÷反響 | 集客から契約までの全体の歩留まり |
| 来店率 | 来店÷反響 | 初回連絡から来店につなげる力 |
| 来店ベースの成約率 | 成約÷来店 | 来店後の提案・追客の力 |
この記事では、来店率と来店ベースの成約率を分けて扱う。反響ベースの成約率だけを見ていると、来店前で落ちているのか来店後で落ちているのかが分からず、打ち手を選べないからだ。
売上が伸びない不動産会社に多い2つのパターン
「反響は来ている」のに成約が増えないケース
仮に、ポータルから月30件の反響が来て、来店が6件、成約が1件だったとする。この場合、反響を50件に増やしても、来店率と成約率が変わらなければ来店は10件、成約は1〜2件にしかならない。広告費だけが膨らみ、売上はほとんど動かない構造だ。先に直すべきは反響数ではなく、来店率か成約率になる。
「件数は回している」のに利益が残らないケース
成約件数はそこそこあるのに、月末に数字を締めると利益が薄い。このパターンは客単価の問題であることが多い。賃貸仲介で件数を稼いでいるが、1件あたりの手数料が低い。売買に誘導する導線がない。あるいは、値引き交渉に弱くて手数料を満額もらえていない。件数を追いかけるだけでは利益は増えない。
不動産の売上を4つの数字に分解する
売上を構造的に理解するために、以下の4つの数字に分解する。シンプルだが、この4つを「数字で」把握できている不動産会社は意外と少ない。
売上の因数分解シート
| 数字 | 自社の現状値 | 取り方 | 低いときに見るポイント |
|---|---|---|---|
| 反響数(月) | ___件 | 入口(ポータル・自社HP・紹介など)別に数える | 1つの入口への依存 |
| 来店率 | ___% | 来店÷反響 | 初回連絡までの時間 |
| 成約率 | ___% | 成約÷来店 | 来店後のどの工程で止まるか |
| 客単価 | ___万円 | 仲介手数料などの売上÷成約 | 値引きの頻度・売買と賃貸の比率 |
まずはこのシートを埋めてみてほしい。「自社の現状値」が書けない項目があるなら、そこが最初に取り組むべきポイントだ。数字を把握していない変数は改善しようがない。毎月の記録の列設計は不動産仲介の営業KPIをスプレッドシートで追う方法にまとめている。
反響数:集客の入口の依存度を確認する
反響の大半が1つのポータル経由という会社では、掲載費や掲載ルールが変わるたびに売上が揺れる。自社HP、Googleビジネスプロフィール、SNS、紹介など、複数の入口から反響が入る状態を作ることで、1つの入口に依存するリスクを減らせる。
来店率:反響から来店までの歩留まりは何%か
反響が来てから最初に電話をかけるまで、何分かかっているか。これを計測している会社は意外と少ない。ポータルの反響は複数社に同時に届くことが多く、初回連絡が遅れるほど他社に先を越されやすい。まずは初回連絡までの時間を記録し、来店率と並べて自社の数字で関係を確かめる。仕組みの作り方は反響対応のスピードと成約率の関係で詳しく書いた。
成約率:来店10組中何組が契約しているか
来店10組のうち契約に至るのが2組なら、来店ベースの成約率は20%。この数字を過去の自社と比べて下がっているなら、来店後のどこかで止まっている。どこで止まっているかは、次の章の「工程別の数え方」で特定する。
客単価:仲介手数料の平均額はいくらか
仲介手数料の上限は国土交通省の告示で決まっており、それを超えて受け取ることはできない。そのうえで、値引き交渉に応じる頻度はどのくらいか、賃貸と売買の比率はどうかを見る。客単価を上げるには「売買比率を高める」「手数料を正当に満額もらう交渉力を上げる」「付帯サービス(リフォーム紹介・保険など)の提案を増やす」の3つがある。件数を増やすより、客単価を上げる方が効率的なケースは多い。
不動産の成約率が上がらない原因は来店後の工程にある
成約率が低いと分かっても、「営業力が足りない」で止めてしまうと打ち手が決まらない。来店から契約までを工程に分け、工程ごとに件数を数えると、止まっている場所が見えてくる。
来店から契約までの工程別チェック
| 止まる工程 | よくある原因 | まず確かめること |
|---|---|---|
| 来店→案内 | ヒアリングが浅く、条件に合う物件を出せていない | 初回に聞く項目が担当者ごとに違わないか |
| 案内→申込 | 候補が多すぎて決めきれない/次の約束をせずに帰している | 案内の最後に次回の日時を決めているか |
| 来店後の連絡 | 追客が担当者任せで、連絡が途切れる | 次回連絡日が台帳に入っているか |
| 申込→契約 | ローン・審査・書類の段取りが遅れる | 申込後の手続きの担当と期限が決まっているか |
ここで大事なのは、全員の成約率を一律に見るのではなく、担当者別・工程別に並べることだ。特定の担当者だけが案内→申込で落ちているなら、その人の提案の進め方を見直せばいい。全員が同じ工程で落ちているなら、仕組みの問題になる。
不動産の成約率を改善する5つの方法
工程別に数えて詰まりが分かったら、当てはまる方法から1つずつ手を付ける。5つを同時に始めると、どれが効いたのか分からなくなる。
1. 反響への初回連絡を当番制にして速くする
来店率が低いときの方法。反響が入ったらチャットやLINEに通知が飛ぶ仕組みを作り、担当者が外出中でも折り返せるよう電話の当番を決める。メール返信は「物件リンク+来店日時の候補」を入れたテンプレートを用意しておけば、担当者によって返信の速さと中身がぶれにくくなる。反響の受け取りから担当の振り分けまでは不動産の反響対応を自動化する方法を参照してほしい。
2. 初回ヒアリングで聞く項目をそろえる
来店→案内で落ちているときの方法。予算・エリア・入居や購入の時期・家族構成・譲れない条件の優先順位など、初回に必ず聞く項目を1枚のシートにする。営業トークのスクリプトを作る前に、聞く項目をそろえる方が先だ。聞く項目がそろえば、提案する物件もぶれにくくなる。
3. 提案する物件を絞り、次の約束を決めて帰す
案内→申込で落ちているときの方法。候補を多く見せるほど、お客様は比べることに疲れて決めきれなくなる。ヒアリングの優先順位に沿って候補を絞り、案内の最後に「次にいつ、何を決めるか」を約束してから帰す。約束がないまま帰すと、次の連絡は営業側から追いかけるしかなくなる。
4. 追客の型を決め、次回連絡日を必ず入れる
来店後に連絡が途切れているときの方法。追客メールのテンプレートを用途別(新着物件の案内・条件の再確認・時期の確認)に用意し、どの案件にも次回連絡日を入れる。次回連絡日が空欄の案件は放置されている、と一目で分かる状態にするのが目的だ。仕組みの作り方は追客の仕組み化で成約率を上げる方法に書いた。
5. 案件を1つの台帳で管理し、トップ営業の型を共有する
担当者によって成約率の差が大きいときの方法。案件が担当者ごとのメモやExcelに散っていると、誰がどの工程で止まっているかが見えない。CRMでもスプレッドシートでもよいので、全案件を1つの台帳に載せ、工程と次回連絡日を同じ列で持つ。そのうえで、成約率の高い担当者が各工程で何をしているかを言語化し、A4用紙1枚にまとめて共有する。進め方は営業の属人化を解消する方法を参考にしてほしい。
低い数字別・来週からの打ち手
4つの数字のうち、過去3ヶ月と比べて下がっているものが今の詰まりだ。下がった数字ごとに、来週から始められる打ち手を整理する。
反響数が足りない → 入口の組み合わせを見直す
まずは現在の反響がどの入口から来ているかを円グラフにしてみる。1つのポータルに偏っているなら、Googleビジネスプロフィールの整備(口コミへの返信・写真の追加・投稿の更新)から始める。広告費をかけずに始められる施策だ。
来店率が低い → 初回連絡の仕組みを変える
前の章の方法1を使う。通知・当番・返信テンプレートの3つをそろえ、初回連絡までの時間を毎月記録する。
成約率が低い → 止まっている工程の型をそろえる
工程別チェックで止まっている工程を1つ決め、方法2〜5のうち当てはまるものから始める。ヒアリング項目・提案の絞り方・次回の約束・追客の型を、A4用紙1枚にまとめて全営業に共有する。
客単価が低い → 値引きと商品の組み合わせを見直す
値引きに応じた案件を1ヶ月分書き出し、どの場面で応じているかを確かめる。売買の相談につながる導線や、リフォーム・保険などの付帯サービスの提案を、ヒアリング項目に組み込む。
「数字で語れる会社」への第一歩
売上が伸びないときに「もっと頑張れ」「反響を増やせ」では、何も変わらない。必要なのは、どの数字がボトルネックかを特定し、そこに集中して改善すること。
やることはシンプルだ。スプレッドシートを1枚開いて、先月の反響数・来店数・成約数・売上金額を記入する。来店率と成約率を計算する。何かを変えたら、変えた日も同じシートに書いておく。3ヶ月分のデータが溜まれば、打ち手が効いたかどうかも数字で判断できる。
「数字で語れる会社」になることは、経営者だけでなく営業担当者にとってもメリットがある。自分のどの行動が成果につながっているかがわかるから、改善の方向が見える。感覚に頼った営業から、再現性のある営業に変わる。その積み重ねが、売上の頭打ちを突破する力になる。
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資料を無料でダウンロードよくある質問
不動産の成約率はどう計算すればいいですか?
成約件数を、どこから数えるかを決めた分母で割ります。反響を分母にすると「反響から成約まで」、来店を分母にすると「来店から成約まで」の率になります。どちらを使っても構いませんが、月ごとの比較では分母を変えないことが大切です。
不動産会社の売上が伸びない原因はどこから見ればいいですか?
売上を「反響数×来店率×成約率×客単価」の4つに分け、自社の過去3ヶ月と比べて下がっている数字を探すのが最初の手順です。感覚では「反響が足りない」と考えがちですが、数字を並べると来店率や成約率で落ちていることがあります。
不動産仲介の来店率や成約率に目安はありますか?
公的な統計で決まった目安はありません。売買か賃貸か、反響の入口、数え方で値が大きく変わるため、他社の数字より自社の過去の値を基準にするほうが判断を誤りにくくなります。
成約率を上げるには何から始めるべきですか?
来店から契約までを「来店→案内→申込→契約」の工程に分け、どの工程で止まっているかを数えることから始めます。止まっている工程が分かれば、ヒアリング項目・提案の絞り方・追客の型など、直す対象を1つに絞れます。
売上の因数分解は小規模な不動産会社でもできますか?
できます。スプレッドシート1枚で足ります。月ごとの反響数・来店数・成約数・売上金額を記録し、来店率(来店÷反響)と成約率(成約÷来店)を計算します。3ヶ月分並べれば、どの数字が詰まりになっているかが見えてきます。
泉 款太(いずみ かんた)
株式会社SalesDock 代表取締役
慶應義塾大学法学部卒。スタートアップ、ラクスル、リクルート(SUUMO)を経て2025年に独立。 中小企業の経営・営業・業務・データをつなぐ事業基盤の設計と実装を支援。 不動産・製造業・クリニックを中心に、累計40社以上の支援に携わる。
運営は株式会社SalesDock(大阪市中央区本町)。中小企業向けに、AI自走プラン(初期構築15万円+月額10万円・90日)と、 そのあとのAI顧問(月額5万円・6ヶ月契約から)を提供しています。価格は税別です。 大阪・関西を中心に、オンラインで全国からのご相談に対応しています。
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