不動産業の営業利益率の平均【2024年度】仲介・売買・賃貸管理の業態別に見る
公的統計の数字の読み方と、自社のP/Lと比べる手順
執筆:泉 款太(株式会社SalesDock 代表取締役)累計40社以上の中小企業を支援
この記事は不動産会社のDX・業務改善 完全ガイドの一部です。不動産業の効率化を体系的に知りたい方はまず完全ガイドをご覧ください。
結論
出典は中小企業庁の中小企業実態基本調査(令和7年確報、2026年6月29日公表)です。記事内の率は、公表された売上高と営業利益の合計額から計算しました。
- 中小法人の営業利益率は、仲介・売買の「不動産取引業」が7.2%、貸家・管理の「不動産賃貸業・管理業」が11.6%です(全産業は3.7%)
- どちらも2023年度より下がりました。取引業は7.8%から、賃貸業・管理業は12.1%から下がっています
- 「不動産代理業・仲介業」「貸家業」など細かい区分だけの数字は、この統計では公表されていません
- 平均と比べる前に、自社のP/Lを業態ごとに分けてください。兼営のままでは、どの区分と比べればよいか決まりません
「うちの利益率は業界平均と比べてどうなのか」を調べると、業種の呼び方がばらばらで、どの数字と比べればよいか迷います。この記事では、2024年度の決算を集計した最新の公的統計から不動産業の営業利益率を取り出し、仲介・売買・貸家・管理がどの区分に入るかを整理します。そのうえで、自社のP/Lと比べて改善点を見つける手順を説明します。
2024年度の不動産業の営業利益率は、取引業7.2%・賃貸業・管理業11.6%
中小企業実態基本調査の産業中分類別表(法人企業)から、不動産の2区分と全産業を並べました。数字は中小企業に当たる法人の合計額から計算した値で、1社ずつの率の平均ではありません。売上の大きい会社の影響が大きく出ます。
| 区分(中小法人) | 営業利益率 2024年度 | 営業利益率 2023年度 | 粗利率 2024年度 | 販管費率 2024年度 |
|---|---|---|---|---|
| 不動産取引業 代理業・仲介業、建物・土地売買業 | 7.2% | 7.8% | 26.4% | 19.2% |
| 不動産賃貸業・管理業 貸家業・貸間業、不動産管理業など | 11.6% | 12.1% | 61.9% | 50.4% |
| 全産業 | 3.7% | 3.3% | 25.2% | 21.5% |
出典:中小企業庁「中小企業実態基本調査」令和7年確報(2024年度決算実績)・令和6年確報(2023年度決算実績)の「売上高及び営業費用 産業中分類別表 法人企業」。率は売上高に対する営業利益・売上総利益・販売費及び一般管理費の割合を当社で計算。
不動産取引業:粗利率が下がり、1社あたりの売上は増えた
不動産取引業は、粗利率が32.7%から26.4%へ下がり、販管費率も24.9%から19.2%へ下がりました。取引業の1社あたり売上高は約2.9億円から約3.8億円に増えています。売上に占める仕入原価の比率が高い取引、つまり物件の売買が増えた可能性がありますが、統計からは内訳までは分かりません。広告宣伝費の比率は1.5%から1.1%に下がっています。
不動産賃貸業・管理業:物件を持つ会社の費用が数字に出る
不動産賃貸業・管理業は粗利率が6割を超え、その分だけ販管費も売上の5割を占めます。減価償却費(原価と販管費の合計)が売上の10.4%、支払利息が1.96%あり、自社で物件を持って貸している会社の費用がこの区分の数字に表れています。管理受託が中心の会社がこの11.6%を目標にすると、物件を持つ会社との違いを見落とします。
不動産代理業・仲介業、貸家業、不動産管理業はどの区分の数字を見るか
「不動産代理業・仲介業」「建物売買業,土地売買業」「貸家業,貸間業」「不動産管理業」は、日本標準産業分類の小分類の名前です。中小企業実態基本調査は不動産業を中分類の「不動産取引業」「不動産賃貸業・管理業」までで集計しているため、小分類ごとの営業利益率は出ていません。自社の業態を、次の図のように中分類へ読み替えて数字を見ます。
現場の業態との対応
売買仲介・賃貸仲介は「不動産代理業・仲介業」、買取再販や分譲は「建物売買業,土地売買業」で、どちらも不動産取引業の数字を見ます。賃貸管理の受託は「不動産管理業」、自社保有物件の賃貸は「貸家業,貸間業」などで、どちらも不動産賃貸業・管理業の数字を見ます。
区分の対応は日本標準産業分類に基づく目安です。自社の区分は公表元の分類定義で確認してください。複数の業態を兼ねている会社は、統計上は主な事業の区分に入ります。
「2026年度の平均」を探している場合、その数字はまだありません。この調査の確報は、2024年度の決算分が2026年6月29日、2023年度の決算分が2025年7月30日に公表されています。決算の年度から約2年後に出るため、2026年度分は2028年ごろになる見込みです。
出典・一次情報
- 中小企業実態基本調査(中小企業庁/e-Stat 政府統計の総合窓口)
- 同調査 統計表一覧(e-Stat)|令和7年確報(2024年度決算実績、2026年6月29日公表)の「3.売上高及び営業費用(2)産業中分類別表 1)法人企業」
- 中小企業実態基本調査の概要(中小企業庁)
統計は改定されます。最新の数値は公表元でご確認ください。
自社の営業利益率を平均と比べる手順
平均との差を見るだけでは、何を直せばよいかは分かりません。差がどの費用から出ているかまで分けると、次に打つ手が決まります。
- 業態ごとにP/Lを分ける:仲介と管理、仲介と買取再販を兼ねている場合は、売上と直接かかる費用を業態別に分けます。共通の人件費・家賃は、担当の工数や面積の割合で配ります。
- 同じ式で率を出す:営業利益÷売上高、売上総利益÷売上高、販管費÷売上高を計算します。統計と同じく、営業外の収益(受取利息など)は含めません。
- 費用の比率を並べる:2024年度の取引業では広告宣伝費が売上の1.1%、販管費の人件費が6.8%でした。自社の比率を横に並べ、差の大きい費目から見ます。
- 同じ数字を毎月追う:年1回の比較では原因がつかめません。反響数・成約数・担当者別粗利・管理戸数など、費目の差を生む数字を月次で記録します。
業態別に確認する利益率とP/Lのポイント
仲介と買取再販では、売上の立ち方も資金の回り方も違います。どちらに寄せるかを検討している段階なら、収益モデルの違いを先に押さえたほうが早いです。4つの軸で並べた比較は仲介と買取再販どっちが儲かる?収益モデルを4つの軸で比較するにあります。
不動産会社の業態別P/L確認項目
| 業態 | 売上・原価で確認すること | 販管費で確認すること | 月次で追う指標 |
|---|---|---|---|
| 売買仲介 | 仲介手数料・紹介料・値引き | 広告費・人件費・追客コスト | 反響から成約までの歩留まり、担当者別粗利 |
| 賃貸仲介 | 仲介手数料・付帯収入・キャンセル | 広告費・人件費・店舗運営費 | 反響・来店・成約、1件あたりの粗利 |
| 買取再販 | 売却額・取得費・工事費・諸経費 | 金利・在庫関連費・販売費 | 案件別粗利、保有日数、想定と実績の差 |
| 賃貸管理 | 管理料・更新料・付帯収入 | 担当人員・システム・移動コスト | 管理戸数、解約、担当者あたりの収支 |
| 不動産開発 | 売却予定額・土地・建設・諸費用 | 資金調達・販売・プロジェクト管理費 | 案件別の資金計画、保有日数、実績差異 |
利益率を下げる3つの要因
1. 広告費の垂れ流し
広告費を「必要経費」として払い続けると、何が利益を圧迫しているか見えなくなります。広告費、反響、初回応答、来店、成約を月次でつなげ、成果が見えない掲載や運用を見直します。
2. 人件費の固定費化
人件費は、売上だけでなく担当者あたりの粗利、追客・事務の分担、採用・教育コストも含めて見ます。給与制度を変える前に、どの業務が利益につながり、どこで確認や手戻りが発生しているかを把握します。
3. 在庫の滞留(買取再販の場合)
買取再販では、在庫の保有日数が伸びるほど、金利・販売費・値下げ・資金拘束の影響を受けます。案件ごとに仕入時の想定、工事費、販売予定、実績、保有日数を記録し、差が出た理由を確認します。
利益率が伸びない原因を3分で切り分け
価格ではなく、業務のどこで利益が漏れているかを整理します
利益率を上げる3つのレバー
1. 集客チャネルの多角化
ポータル、自社サイト、紹介などのチャネルを同じ指標で測り、広告費だけでなく来店・成約・粗利まで比較します。自社チャネルを育てる場合も、問い合わせ対応や情報更新の運用を一緒に整えます。
2. 成約率の改善
成約率を改善するには、反響後の初回応答、追客の記録、来店前後の確認事項を一貫して管理します。改善の効果は、反響から初回応答、来店、成約までの歩留まりを導入前後で比較して判断します。
3. 管理収入の積み上げ
管理収入は、仲介とは異なる継続収益の要素を持ちます。ただし、戸数だけでなく、担当人員、解約、クレーム対応、システム費などを含めて収支を見ます。仲介・管理それぞれの収支を分けて把握することが重要です。
「売上増えたのに利益出ない」の診断
売上が増えても営業利益が伸びない場合は、原因をP/Lと案件データで分けて確認します。
- 広告費が売上以上に増えている:売上を上げるために広告費を増やしたが、反響単価が悪化している。反響あたりのコストを月次で追跡します。
- 人員増で固定費が増えている:売上を上げるために人を採用したが、1人あたり生産性が下がっている。人員あたり売上・粗利を月次で追跡します。
- 低単価案件の比率が増えている:件数は増えているが、1件あたりの手数料が下がっている。案件の単価分布を確認します。
- 在庫が増えている(買取再販):仕入は増やしたが、販売が追いつかず在庫コストが膨らんでいる。在庫回転率を計算します。
利益率が改善しても、手元の資金が回らなければ意味がありません。買取再販のように仕入れが先行する業態では、利益が出ている月ほど現金が減ることもあります。入金と支払いのタイミングをどう管理するかは不動産会社のキャッシュフロー改善策で扱っています。仲介の手数料構造から利益率を見直す場合は不動産仲介の利益率が低い原因—不動産屋の利益の仕組みをP/L構造から見直すを、賃貸管理の損益分岐を知りたい場合は賃貸管理の収益モデルと損益分岐を読んでください。
よくある質問
2024年度の不動産代理業・仲介業の営業利益率の平均はいくつですか?
中小企業実態基本調査(令和7年確報)では、不動産代理業・仲介業だけの数値は公表されていません。代理業・仲介業と建物売買業・土地売買業を合わせた「不動産取引業」の中小法人の営業利益率は7.2%(2024年度)です。前年度の2023年度は7.8%でした。
貸家業や不動産管理業の営業利益率の平均は?
貸家業・貸間業、不動産管理業、駐車場業などを合わせた「不動産賃貸業・管理業」の中小法人の営業利益率は、2024年度が11.6%、2023年度が12.1%です。管理受託が中心の会社と、自社で物件を持って貸している会社が同じ区分に入っているため、管理会社が目安にするときは粗利率や人件費の比率も並べて見てください。
2026年度の不動産業の営業利益率の平均は、もう分かりますか?
まだ分かりません。中小企業実態基本調査の確報は、2024年度の決算分が2026年6月29日、2023年度の決算分が2025年7月30日に公表されており、決算の年度から約2年後に出ています。2026年度の決算分は2028年ごろの公表になる見込みです。
売上は増えているのに利益が出ないのはなぜですか?
よくあるのは4つです。売上以上に広告費が増えて反響単価が悪化している、人員増で固定費が増えて1人あたり生産性が下がっている、低単価案件の比率が増えて1件あたりの手数料が下がっている、買取再販では仕入に販売が追いつかず在庫コストが膨らんでいる。反響あたりのコスト、人員あたり売上・粗利、案件の単価分布、在庫回転率をそれぞれ確認すると切り分けられます。
不動産会社の利益率を上げるには、何から手をつければいいですか?
レバーは3つです。ポータル・自社サイト・紹介などのチャネルを同じ指標で測り、広告費だけでなく来店・成約・粗利まで比較すること。反響後の初回応答、追客の記録、来店前後の確認事項を一貫して管理し、歩留まりを導入前後で比較すること。管理収入を積み上げる場合は、戸数だけでなく担当人員・解約・クレーム対応・システム費まで含めて収支を見ることです。
泉 款太(いずみ かんた)
株式会社SalesDock 代表取締役
慶應義塾大学法学部卒。スタートアップ、ラクスル、リクルート(SUUMO)を経て2025年に独立。 中小企業の経営・営業・業務・データをつなぐ事業基盤の設計と実装を支援。 不動産・製造業・クリニックを中心に、累計40社以上の支援に携わる。
運営は株式会社SalesDock(大阪市中央区本町)。中小企業向けに、AI自走プラン(初期構築15万円+月額10万円・90日)と、 そのあとのAI顧問(月額5万円・6ヶ月契約から)を提供しています。価格は税別です。 大阪・関西を中心に、オンラインで全国からのご相談に対応しています。
代表者情報を読む →この記事の数値について
本文中に一次資料へのリンクがある数値は、リンク先を出典としています。 リンクのない業務設計、判断基準、実務上の目安は、SalesDockが累計40社以上の支援と自社運用で得た知見を一般化したものです。 個別企業での成果を保証する数値ではなく、条件によって変わります。
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