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不動産

不動産業の営業利益率・粗利率を業態別に見る|業界平均の正しい使い方

「売上は増えているのに利益が出ない」の原因を構造的に理解する

9分で読める

この記事は不動産会社のDX・業務改善 完全ガイドの一部です。不動産業の効率化を体系的に知りたい方はまず完全ガイドをご覧ください。

この記事のポイント

不動産会社の利益率は、業態・エリア・在庫・集客方法で大きく変わります。外部の一律な相場と比べるのではなく、自社のP/Lを広告費・人件費・在庫・管理収入へ分解して改善点を確認します。

「うちの利益率は業界的にどうなのか」と考えるとき、外部の一律な目安だけでは判断できません。業態によって売上の作り方、在庫の有無、集客費用、管理収入の比率が異なるためです。この記事では、業態ごとにP/Lを見るポイントを整理し、利益率が下がる原因を自社データから確認する方法を解説します。

業界平均を調べるときの一次情報

中小企業実態基本調査では、産業中分類別に売上高・営業費用の実数を公表しています。本記事では業態別の平均値を断定せず、自社と同じ業種区分の数値を確認する手順を示します。

業態別に確認するP/Lのポイント

仲介と買取再販では、そもそも売上の立ち方も資金の回り方も違う。どちらに寄せるかを検討している段階なら、収益モデルの違いを先に押さえたほうが早い。4つの軸で並べた比較は仲介と買取再販どっちが儲かる?収益モデルを4つの軸で比較するにある。

不動産会社の業態別P/L確認項目

業態売上・原価で確認すること販管費で確認すること月次で追う指標
売買仲介仲介手数料・紹介料・値引き広告費・人件費・追客コスト反響から成約までの歩留まり、担当者別粗利
賃貸仲介仲介手数料・付帯収入・キャンセル広告費・人件費・店舗運営費反響・来店・成約、1件あたりの粗利
買取再販売却額・取得費・工事費・諸経費金利・在庫関連費・販売費案件別粗利、保有日数、想定と実績の差
賃貸管理管理料・更新料・付帯収入担当人員・システム・移動コスト管理戸数、解約、担当者あたりの収支
不動産開発売却予定額・土地・建設・諸費用資金調達・販売・プロジェクト管理費案件別の資金計画、保有日数、実績差異

統計で自社の数字と比べるときの業種区分

現場で使う業態の呼び方は、統計上の区分名と一致しません。中小企業実態基本調査では、不動産業が「建物売買業」「土地売買業」「不動産代理業・仲介業」「貸家業」「不動産管理業」などの区分で集計されています。売買仲介・賃貸仲介は「不動産代理業・仲介業」、買取再販は「建物売買業」「土地売買業」、賃貸管理は「不動産管理業」、自社保有物件の賃貸は「貸家業」が近い区分です。

区分の対応は目安です。自社がどの区分に当たるかは、公表元の分類定義で確認してください。複数業態を兼営している場合、統計上は主たる事業の区分に含まれるため、単一区分の数値と自社のP/Lは直接比較できません。

外部の利益率をそのまま自社の目標にするのは危険です。同じ業態でも、エリア・規模・集客方法・在庫条件で大きく変わります。まずは自社の数字を業態と案件単位で分け、変化した原因を特定します。

出典・一次情報

制度・統計は改定されます。最新の情報は公表元でご確認ください。

利益率を下げる3つの要因

1. 広告費の垂れ流し

広告費を「必要経費」として払い続けると、何が利益を圧迫しているか見えなくなります。広告費、反響、初回応答、来店、成約を月次でつなげ、成果が見えない掲載や運用を見直します。

2. 人件費の固定費化

人件費は、売上だけでなく担当者あたりの粗利、追客・事務の分担、採用・教育コストも含めて見ます。給与制度を変える前に、どの業務が利益につながり、どこで確認や手戻りが発生しているかを把握します。

3. 在庫の滞留(買取再販の場合)

買取再販では、在庫の保有日数が伸びるほど、金利・販売費・値下げ・資金拘束の影響を受けます。案件ごとに仕入時の想定、工事費、販売予定、実績、保有日数を記録し、差が出た理由を確認します。

利益率が伸びない原因を3分で切り分け

価格ではなく、業務のどこで利益が漏れているかを整理します

診断する

利益率を上げる3つのレバー

1. 集客チャネルの多角化

ポータル、自社サイト、紹介などのチャネルを同じ指標で測り、広告費だけでなく来店・成約・粗利まで比較します。自社チャネルを育てる場合も、問い合わせ対応や情報更新の運用を一緒に整えます。

2. 成約率の改善

成約率を改善するには、反響後の初回応答、追客の記録、来店前後の確認事項を一貫して管理します。改善の効果は、反響から初回応答、来店、成約までの歩留まりを導入前後で比較して判断します。

3. 管理収入の積み上げ

管理収入は、仲介とは異なる継続収益の要素を持ちます。ただし、戸数だけでなく、担当人員、解約、クレーム対応、システム費などを含めて収支を見ます。仲介・管理それぞれの収支を分けて把握することが重要です。

「売上増えたのに利益出ない」の診断

売上が増えても営業利益が伸びない場合は、原因をP/Lと案件データで分けて確認します。

  • 広告費が売上以上に増えている:売上を上げるために広告費を増やしたが、反響単価が悪化している。反響あたりのコストを月次で追跡すること
  • 人員増で固定費が増えている:売上を上げるために人を採用したが、1人あたり生産性が下がっている。人員あたり売上・粗利を月次で追跡すること
  • 低単価案件の比率が増えている:件数は増えているが、1件あたりの手数料が下がっている。案件の単価分布を確認すること
  • 在庫が増えている(買取再販):仕入は増やしたが、販売が追いつかず在庫コストが膨らんでいる。在庫回転率を計算すること

まとめ:利益率は「管理するもの」

利益率は結果ではなく、管理対象です。広告費・反響・来店・成約・人件費・在庫・管理収入を月次で追い、変化した理由を案件単位で確認します。外部の一律な目安ではなく、自社の実績を比較できる形にするところから始めましょう。

なお利益率が改善しても、手元の資金が回らなければ意味がありません。買取再販のように仕入れが先行する業態では、利益が出ている月ほど現金が減ることもあります。入金と支払いのタイミングをどう管理するかは不動産会社のキャッシュフロー改善策で扱っています。

よくある質問

不動産会社の利益率は、業界平均と比べればいいですか?

外部の一律な目安をそのまま自社の目標にするのは危険です。同じ業態でも、エリア・規模・集客方法・在庫条件で利益率は大きく変わります。業界平均を調べるなら中小企業実態基本調査などで自社と同じ業種区分の実数を確認したうえで、自社の数字を業態と案件単位に分け、変化した原因を特定するほうが実務的です。

売上は増えているのに利益が出ないのはなぜですか?

よくあるのは4つです。売上以上に広告費が増えて反響単価が悪化している、人員増で固定費が増えて1人あたり生産性が下がっている、低単価案件の比率が増えて1件あたりの手数料が下がっている、買取再販では仕入に販売が追いつかず在庫コストが膨らんでいる。反響あたりのコスト、人員あたり売上・粗利、案件の単価分布、在庫回転率をそれぞれ確認すると切り分けられます。

不動産会社の利益率を上げるには、何から手をつければいいですか?

レバーは3つです。ポータル・自社サイト・紹介などのチャネルを同じ指標で測り、広告費だけでなく来店・成約・粗利まで比較すること。反響後の初回応答、追客の記録、来店前後の確認事項を一貫して管理し、歩留まりを導入前後で比較すること。管理収入を積み上げる場合は、戸数だけでなく担当人員・解約・クレーム対応・システム費まで含めて収支を見ることです。

泉 款太(いずみ かんた)

株式会社SalesDock 代表取締役

慶應義塾大学法学部卒。スタートアップ、ラクスル、リクルート(SUUMO)を経て2025年に独立。 中小企業の経営・営業・業務・データをつなぐ事業基盤の設計と実装を支援。 不動産・製造業・クリニックを中心に30社以上の業務改善に携わる。

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