不動産会社の業務改善、外注vs内製どっちが得?判断基準と費用感
この記事のポイント
不動産会社の業務改善を「外注」か「内製」かで迷ったら、社員数・業務量・予算の3軸で判断する。外注の相場は初期10〜50万・月額3〜10万。内製は人件費・学習時間・属人化リスクという「隠れコスト」を見落としがち。記事後半のチェックリストで自社に合う選択肢がわかる。
「業務改善をやりたいけど、外注するか自分たちでやるか決められない」
不動産会社の社長や管理部門の方から、この相談をよく受ける。特に従業員30〜80名規模の会社に多い。
結論から言うと、「どっちが正解」という話ではない。自社の状況によって答えは変わる。ただ、判断するための軸は明確にある。今日はその軸と、それぞれの費用感を具体的に書いていく。
よくある失敗パターン
まず、外注・内製それぞれでよくある失敗を見ておく。
外注で失敗するケース
- 「作って終わり」の外注先を選んでしまう。システムやシートを納品されたけど、現場が使いこなせず3ヶ月で元のやり方に戻った
- 業務の構造を整理しないまま発注する。「とにかくDXしたい」で発注して、現場の実態と合わない仕組みができてしまった
- 費用対効果を測っていない。50万かけて作ったけど、削減できた時間は月2時間。回収に10年以上かかる計算
内製で失敗するケース
- 「できる人」に依存する。事務のAさんがExcelに詳しいからとお願いしたら、Aさんが退職して誰もメンテできなくなった
- 本業の時間を食う。営業担当がスプレッドシートの整備に毎週3時間使っていて、商談件数が減っている
- 「60点」で止まる。自分たちで始めたものの、専門知識がないため中途半端な状態で運用が続いている
判断の3軸—社員数・業務量・予算
外注か内製かを決めるとき、この3つの軸で考えるとすっきりする。
軸1: 社員数と体制
| 社員数 | 傾向 |
|---|---|
| 10名以下 | 改善に割ける人がいないことが多い。ピンポイントで外注するのが現実的 |
| 10〜30名 | 事務や管理部門に1人いれば内製も可能。ただし「その人が辞めたら終わり」のリスクあり |
| 30〜50名 | 業務量が増えて「仕組み化」が必要になるタイミング。外注で骨組みを作り、内製で運用するのがバランスいい |
| 50名以上 | 専任の情シスや管理部門があるなら内製。なければ外注+伴走型が安定する |
軸2: 改善したい業務の量と複雑さ
「スプレッドシートの集計を自動化したい」くらいなら内製でもいける。でも「物件情報の入力→ポータルサイト連携→反響管理→追客→契約書作成」のように、業務が複数部門にまたがる場合は、全体を俯瞰して設計できる外部の視点が必要になる。
目安として、改善したい業務が3つ以上の部署・担当者にまたがるなら外注を検討したほうがいい。1つの部署で完結するなら内製でも十分回る。
軸3: 予算と期間
外注にはお金がかかる。内製には時間がかかる。どちらも「タダ」ではない。ここを正直に比較する。
外注の費用相場
不動産会社の業務改善を外注する場合の費用感を、業務内容別にまとめた。
| 業務内容 | 初期費用 | 月額保守 |
|---|---|---|
| スプレッドシート再設計+ダッシュボード | 10〜20万円 | 3〜5万円 |
| 反響管理+追客フローの構築 | 20〜35万円 | 5〜8万円 |
| 複数業務の横断的な仕組み化 | 30〜50万円 | 5〜10万円 |
| 基幹システム連携・API開発 | 50万円〜 | 10万円〜 |
伴走型(3ヶ月で自走を目指す形式)の場合、初期構築+3ヶ月の保守で合計30〜50万円程度が多い。「作って終わり」ではなく、現場に定着するまで一緒に走るスタイルだと、結果的に費用対効果が高くなる。
内製の「隠れコスト」を見落とさない
「内製なら無料でしょ?」と思われがちだが、実際にはこんなコストがかかっている。
- 人件費。月給30万のスタッフが業務改善に週5時間使うと、月あたり約4万円。半年で24万円。外注の初期費用と変わらない
- 学習時間。関数の調べ方、ダッシュボードの設計、ツールの選定—ゼロから学ぶと数十時間はかかる。その間、本来の業務は止まる
- 属人化リスク。「作った人」が辞めたら、仕組みごと消える。引き継ぎ資料がなければ、ゼロからやり直し
- 機会損失。営業担当が改善に時間を使った分、商談件数が減る。月に2件商談が減れば、売上への影響は数十万円になることもある
内製が悪いわけではない。ただ、「無料」ではないという認識を持っておくことが大事だ。
あなたの会社はどっち向き?チェックリスト
以下の項目に当てはまる数で、外注・内製の向き不向きがざっくりわかる。
外注向きの会社
- ☐ 業務改善に割ける社内リソースが月10時間以下
- ☐ 改善したい業務が3部署以上にまたがっている
- ☐ スプレッドシートやExcelに詳しい社員がいない
- ☐ 過去に内製で改善を試みたが、途中で止まった経験がある
- ☐ 3ヶ月以内に成果を出したい
内製向きの会社
- ☐ ITに強い事務スタッフがいて、月20時間以上を改善に充てられる
- ☐ 改善したい業務が1つの部署で完結している
- ☐ 予算を初期投資に回すより、人件費として吸収したい
- ☐ 半年〜1年かけてじっくり進めて問題ない
- ☐ 社内にナレッジを溜めることを重視している
外注向きに3つ以上チェックがついたら外注を検討、内製向きに3つ以上なら内製で進めるのが妥当だ。両方に2〜3個ずつ入る場合は、「外注で骨組みを作って、内製で運用する」ハイブリッド型が一番うまくいくことが多い。
ハイブリッド型という選択肢
実は、僕が支援している不動産会社の多くはこのハイブリッド型を採用している。
具体的にはこういう流れだ。
- Month 1: 外注で業務の構造を整理し、シートやダッシュボードの骨組みを作る
- Month 2: 現場スタッフと一緒に運用しながら、微調整を重ねる
- Month 3: 運用が定着したら外部支援を終了。以降は社内で回す
初期構築は外部に任せて、運用は自分たちでやる。こうすれば、外注の「作って終わり」リスクも、内製の「属人化」リスクも減らせる。
外注先を選ぶときの3つのポイント
もし外注を選ぶなら、この3つは必ず確認したほうがいい。
- 1. 業務の構造化から入ってくれるか。いきなりツールの話をする外注先は要注意。まず「どの業務を、どう整理するか」を一緒に考えてくれる相手を選ぶ
- 2. 伴走期間があるか。納品して終わりではなく、現場に定着するまで一緒に走ってくれるか。最低2〜3ヶ月の伴走があると安心
- 3. 自走できる設計になっているか。外注先がいなくなっても、社内で運用・改善を続けられる仕組みになっているか。ブラックボックスなシステムを作る外注先は避ける
まとめ
外注か内製かは「どっちが正解」ではなく、自社の社員数・業務量・予算で決まる。
迷ったら、まずは今の業務フローを書き出してみることから始めるといい。どこに時間がかかっているのか、誰がどの作業をしているのか。これが見えるだけで、外注すべき部分と内製で回せる部分が自然と分かれてくる。
業務フローの書き出し方がわからない、という方は気軽に相談してほしい。一緒に整理するところから始められる。
よくある質問
Q. 不動産会社の業務改善を外注する場合、費用はどのくらいかかりますか?
業務の範囲や複雑さによるが、初期構築で10〜50万円、月額の保守・運用で3〜10万円が相場。たとえばスプレッドシートの再設計+ダッシュボード構築であれば初期15〜20万円、帳票の自動化や複数システム連携を含むと30〜50万円程度になる。
Q. 社員数が少ない不動産会社でも外注したほうがいいですか?
社員数だけでは判断できない。ポイントは「改善したい業務に詳しい人が社内にいるか」「その人が改善に割ける時間があるか」の2点。社員5名でも全員が営業で手が空かないなら外注のほうが早い。逆にITに強い事務スタッフがいて時間も確保できるなら内製で十分。
Q. 外注した業務改善が社内に定着しないリスクはありますか?
ある。外注先が「作って納品して終わり」のスタイルだと、現場が使いこなせずに元に戻るケースは多い。対策としては、3ヶ月程度の伴走期間を設けて、現場スタッフと一緒に運用しながら定着させる形式を選ぶこと。納品物だけでなく「運用の型」まで含めて依頼するのがポイント。
泉 款太(いずみ かんた)
株式会社SalesDock 代表取締役
慶應義塾大学法学部卒。スタートアップ、ラクスル、リクルート(SUUMO)を経て2025年に独立。 不動産・製造業・クリニックなど現場産業向けのAI業務効率化コンサルを提供。 30社以上の中小企業のAI活用・業務改善を支援。
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