現地調査の写真整理が40分→ほぼゼロに。スマホ撮影だけで物件フォルダ自動振り分け+チェックシート自動入力
この記事のポイント
現地調査後の写真整理とチェックシート転記は1物件40分。スマホの自動アップロード+GASによるフォルダ振り分け+シート自動入力で、月20件なら13時間を削減できる。
現地調査後の「地味な40分」が積み重なる
不動産の現地調査自体は15〜30分で終わる。問題はその後だ。
帰社してから始まる作業がこれだけある。
1物件あたり約40分。月に20件調査する会社なら、これだけで月13時間以上を使っている計算になる。年間で約160時間。営業担当が丸々1ヶ月分の営業時間を写真整理に費やしている状態だ。
しかも、この作業は「やらなきゃいけないけど、売上には直結しない」タイプの業務。忙しい時期ほど後回しになって、結局まとめて残業で片付ける——という会社は少なくない。
自動化の全体像:スマホで撮ったら終わり、にする
目指すのはシンプルな形だ。現地でスマホで写真を撮る。それだけで、以下が自動で完了する。
帰社後の事務作業はほぼゼロ。やることがあるとすれば、チェックシートを開いて内容を確認するくらいだ。
仕組みの作り方:3つのパーツを組み合わせる
パーツ1:スマホからクラウドへの自動アップロード
Google Driveアプリの「自動バックアップ」機能を使えば、撮影した写真は自動でDriveにアップロードされる。iPhoneでもAndroidでも設定可能だ。
ポイントは、撮影前にスマホのカメラ設定で「位置情報の記録」をオンにしておくこと。後述するGPS情報による物件の自動判別に使う。
パーツ2:物件フォルダへの自動振り分け
Google Apps Script(GAS)を使って、Driveにアップロードされた写真を自動で物件フォルダに移動させる。判別のロジックはいくつかある。
GPS座標で判別
写真のEXIF情報に含まれるGPS座標と、物件マスターの住所(緯度経度)を照合する。半径50m以内なら該当物件と判定。精度が高く、最もおすすめの方法
撮影時間で判別
Googleカレンダーに「○○物件 現地調査」と入れておけば、撮影時間とカレンダーの予定を突き合わせて物件を特定できる
QRコードで判別
物件ごとにQRコードを発行し、調査開始時に撮影する。最初の1枚で物件を特定し、以降の写真を同じフォルダに振り分ける
実務で最も手軽なのは「カレンダー連動」だ。調査予定をカレンダーに入れる運用は多くの会社で既にやっているので、追加の手間がほぼない。
パーツ3:チェックシートへの自動入力
振り分けが終わったタイミングで、GASがスプレッドシートのチェックシートに以下を自動入力する。
さらに一歩進めると、写真をAI(Google Cloud VisionやChatGPT Vision)に読み込ませて、チェック項目を自動判定することもできる。たとえば「外壁のひび割れの有無」「駐車場の台数」「接道状況」など、目視確認で判断する項目の一部はAIで自動入力が可能だ。
導入コストと削減効果
初期構築にかかるもの
ランニングコストはほぼゼロに近い。Google Workspaceの費用を除けば、月額数百円で運用できる。
削減効果のシミュレーション
| 項目 | 導入前 | 導入後 |
|---|---|---|
| 写真取り込み・リネーム | 10分/件 | 0分(自動) |
| フォルダ作成・振り分け | 10分/件 | 0分(自動) |
| チェックシート転記 | 15分/件 | 2分(確認のみ) |
| 写真リンク貼付 | 5分/件 | 0分(自動) |
| 合計 | 40分/件 | 2分/件 |
月20件の調査なら、40分×20件=800分(約13.3時間)が40分に短縮される。年間で約156時間の削減だ。
導入の進め方:3ステップで始める
写真の自動アップロードだけ始める(初日)
営業担当のスマホにGoogle Driveアプリを入れて、自動バックアップをオンにする。これだけで「PCに取り込む」作業がなくなる。まずここから始めるのがいい。
物件フォルダへの自動振り分けを設定する(1〜2週間)
物件マスター(スプレッドシート)を整備して、GASで撮影時間×カレンダー連動の振り分けスクリプトを組む。GASに詳しい人がいなければ、外注しても5〜15万円程度で作れる。
チェックシート連携とAI判定を追加する(2〜4週間)
振り分けが安定したら、チェックシートへの自動入力を追加する。AI画像判定は効果が大きいが、判定精度の検証に時間がかかるので、まずは「撮影日・枚数・リンク」の自動入力から始めて、段階的にAI判定を加えていくのが現実的だ。
注意点:完全自動化を目指さない
この仕組みで大事なのは、「100%の自動化」を目指さないことだ。
GPS座標がずれる物件がある。カレンダーに調査予定を入れ忘れることもある。AI判定が間違えることもある。そういうイレギュラーは必ず発生する。
だから「振り分けられなかった写真」の受け皿フォルダを用意しておいて、週に1回まとめて手動で整理する——くらいの運用設計がちょうどいい。8割を自動化して、残り2割は人間が見る。それだけで月13時間のうち10時間以上は削減できる。
完璧を目指して導入が遅れるより、まず写真の自動アップロードだけ今日から始めるほうが、結果的に大きな効果が出る。
まとめ
現地調査後の写真整理とチェックシート転記は、1物件40分×月20件で13時間以上を消費する「隠れた大型業務」だ。スマホの自動アップロード、GASによるフォルダ振り分け、チェックシート自動入力の3つを組み合わせれば、帰社後の事務作業はほぼなくせる。
初期費用は自社構築なら実質ゼロ、外注しても10〜30万円。ランニングコストは月額数百円。現地調査が多い会社ほど効果が大きい仕組みなので、まずは写真の自動アップロードから試してみてほしい。
泉 款太(いずみ かんた)
株式会社SalesDock 代表取締役
慶應義塾大学法学部卒。スタートアップ、ラクスル、リクルート(SUUMO)を経て2025年に独立。 不動産・製造業・クリニックなど現場産業向けのAI業務効率化コンサルを提供。 30社以上の中小企業のAI活用・業務改善を支援。
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