1物件の入力に45分 — SUUMO・アットホーム・自社サイトへの多重入力がムダな理由
この記事のポイント
SUUMO・アットホーム・自社サイトへの物件入力を「1回入力→複数サイトに反映」に変えるだけで、1物件45分の作業が12分に短縮。月20件で年間132時間、営業担当0.7ヶ月分の工数が浮きます。
不動産売買仲介の営業担当が「一番めんどくさい」と感じている業務。それは物件のポータルサイト入力ではないだろうか。1つの物件を預かるたびに、SUUMO、アットホーム、HOME'S、自社サイト、場合によってはチラシやマイソクまで。同じ物件情報を何度も何度も入力する。しかも各サイトでフォーマットが微妙に違うから、コピペも効かない。この「入力地獄」から抜け出す方法を解説する。
※ この記事は「不動産売買仲介の業務効率化ロードマップ」のStep 2を詳しく解説したものです。
物件入力に45分かかる内訳
まず「なぜ45分もかかるのか」を分解してみよう。ある仲介会社(従業員12名、月間新規物件20件)で実測したところ、以下の内訳だった。
| 作業内容 | 所要時間 | 備考 |
|---|---|---|
| 物件概要の確認・整理 | 5分 | 図面・登記情報の読み取り |
| SUUMOへの入力 | 12分 | 入力項目が最も多い |
| アットホームへの入力 | 10分 | SUUMOと項目が微妙に違う |
| 自社サイトへの掲載 | 8分 | 写真のリサイズ含む |
| 写真の選定・加工 | 10分 | 各サイトの推奨サイズに合わせる |
| 合計 | 45分 | — |
月20件の新規物件なら月15時間。年間180時間。営業担当が「入力」だけに丸1ヶ月分の稼働を使っている計算になる。しかもこの時間は1円の売上も生まない。
解決策:「1回入力→複数サイトに反映」を実現する3つの方法
方法1:物件マスターシートを作る(コスト0円)
一番手軽なのは、Googleスプレッドシートで「物件マスターシート」を作ること。すべての物件情報をここに1回だけ入力し、各ポータルサイトにはここからコピペする。
物件マスターシートに必要な列
1. 物件名称 / 所在地 / 最寄駅・徒歩分数
2. 価格 / 管理費・修繕積立金
3. 間取り / 専有面積 / バルコニー面積
4. 築年月 / 構造 / 総戸数 / 階数
5. 土地面積 / 権利形態 / 用途地域
6. 引渡し時期 / 現況 / 取引態様
7. 設備情報(駐車場・オートロック・宅配ボックス等)
8. セールスポイント(フリーテキスト)
9. 写真ファイル名(Googleドライブのリンク)
これだけで入力時間が30〜40%削減できる理由は、「各ポータルの入力画面を見ながら情報を探す」時間がなくなるから。マスターシートに全情報が揃っていれば、あとは「見ながら転記するだけ」になる。所要時間は45分→28分程度。
方法2:業務支援ツールを導入する(月1〜5万円)
もう一段踏み込むなら、不動産業務支援ツールを導入する。1回の入力でSUUMO・アットホーム・HOME'Sなど複数のポータルサイトに一括出稿できるサービスがある。
代表的なツールと特徴
いえらぶCLOUD
物件入力→複数ポータル一括出稿に対応。CRM機能も内蔵。導入社数14,000社以上で、中小仲介会社の利用も多い。
速いもんシリーズ(iimon)
他社サイトの物件情報をワンクリックで自社サイトに取り込み。全国3,500店舗で利用。物件入力の時間を大幅に削減できる。
Facilo
不動産仲介特化のコミュニケーションクラウド。物件提案書の自動生成、顧客への物件紹介を効率化。
ツール導入の場合、入力時間は45分→12分程度まで短縮できる。初期設定に1〜2週間かかるが、一度設定すれば毎日の入力作業が劇的に楽になる。
方法3:AIで物件情報を自動抽出する(月5〜15万円)
さらに進んだ方法として、AIを使って物件図面(マイソク・販売図面)から情報を自動抽出する仕組みがある。PDFやスキャン画像の図面をアップロードすると、AIが物件名・所在地・面積・価格などを読み取って、データ化してくれる。
これにより「図面を見ながら手入力する」工程がほぼゼロになる。精度は90〜95%程度なので、最終確認は人間がやるが、ゼロから入力するのと比べると作業時間は80%以上削減できる。ただし、この方法はカスタム開発が必要になるケースが多く、月5〜15万円程度のコストがかかる。月の新規物件数が50件を超える会社であれば費用対効果が合う。
方法別のBefore/After比較
| 項目 | 現状 | 方法1 マスターシート | 方法2 業務支援ツール | 方法3 AI自動抽出 |
|---|---|---|---|---|
| 1物件の入力時間 | 45分 | 28分 | 12分 | 5分 |
| 月間削減時間(20件) | — | 5.7時間 | 11時間 | 13.3時間 |
| 年間削減時間 | — | 68時間 | 132時間 | 160時間 |
| 月額コスト | 0円 | 0円 | 1〜5万円 | 5〜15万円 |
| IT知識の必要性 | — | 不要 | 不要 | 導入時のみ必要 |
| おすすめの会社規模 | — | 全社 | 月10件以上 | 月50件以上 |
導入でよくある失敗と対策
失敗1:ツールを入れたのに誰も使わない
新しいツールを導入しても、ベテラン営業が「前のやり方のほうが慣れてるから」と使わないケースは非常に多い。対策は、まず1人だけ「先行ユーザー」を決めて2週間使ってもらい、「こんなに楽になった」という実体験を社内に共有すること。上から「使え」と指示するより、同僚の「これ便利だよ」の方が100倍効く。
失敗2:写真の取り扱いが統一されていない
物件情報のテキストデータは一元管理できても、写真がバラバラの場所に保存されているケースがある。スマホの写真フォルダ、PCのデスクトップ、USBメモリ。対策は、物件ごとにGoogleドライブのフォルダを作り、撮影したらすぐにそこにアップロードするルールを決めること。フォルダ名は「物件名_所在地」で統一する。
失敗3:入力ルールがないため表記がバラバラ
「3LDK」と「3LDK」、「徒歩5分」と「徒歩5分」。入力する人によって全角・半角、表記のルールがバラバラだと、検索やフィルタリングが効かなくなる。マスターシートを作る段階で「入力ルール表」を1枚作り、全員が見える場所に貼っておく。ルール項目は10個もあれば十分。
まとめ:入力時間を減らすだけで営業時間が月11時間増える
物件入力は「やらなければいけないが、売上に直結しない」作業の代表格。ここに1物件45分かけている現状を放置すると、営業担当の時間がどんどん削られていく。まずは方法1のマスターシートから始めて、効果を実感したら方法2のツール導入に進む。段階的に進めれば、ITに詳しいスタッフがいなくても着実に効率化できる。浮いた月11時間を内見案内や商談に回せば、それだけで成約数に差が出てくるはずだ。
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不動産の物件入力の効率化でお悩みの方は、不動産のポータル入稿をAIで効率化する方法もご覧ください。
泉 款太(いずみ かんた)
株式会社SalesDock 代表取締役
慶應義塾大学法学部卒。スタートアップ、ラクスル、リクルート(SUUMO)を経て2025年に独立。 不動産・製造業・クリニックなど現場産業向けのAI業務効率化コンサルを提供。 30社以上の中小企業のAI活用・業務改善を支援。
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