SalesDock ロゴSalesDock
不動産

不動産の電子契約サービスを比べる観点|宅建業法まわりで確認する6項目

11分で読める

この記事と「導入ガイド」の棲み分け

電子契約をこれから始める段取り(そもそも何ができるのか、準備・導入の3ステップ、費用感、つまずきやすい点)は「不動産の電子契約、何から始める?—導入手順と費用感」にまとめています。始め方を知りたい方はそちらが先です。

この記事はその次の段階、複数のサービスを並べて選ぶときに何を見るかだけを扱います。導入手順・費用相場の解説は繰り返しません。宅建業法まわりで確認する項目を6つに絞って書きます。

電子契約サービスの比較記事は世の中にたくさんあります。ただ、その多くは業種を問わない一般論で、機能一覧と価格の比較表で終わっています。不動産で使う場合に効いてくるのは、そこに載っていない部分です。

理由ははっきりしていて、不動産取引の書面には宅地建物取引業法施行規則で「電磁的方法で提供する際に適合すべき基準」が定められているからです。この基準を運用でどう満たすかが、サービス選定の実質的な論点になります。

まず、規則で何が決まったのかを確認する

国土交通省は令和4年4月27日、宅地建物取引業法施行規則等の改正を公布したと発表しています。背景は令和3年5月19日公布の「デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律」で、宅建業法関連では宅地建物取引士の押印廃止と、重要事項説明書・契約締結時書面・媒介契約締結時書面等を電磁的方法により提供できるようにする改正規定が令和4年5月18日から施行されました。

報道発表で示されている改正内容のうち、サービス選定に直結するのは次の4点です。

提供に用いる方法:電子メール、Webページからのダウンロード形式による提供、USBメモリ等の交付など。

適合すべき基準:書面に出力できること、電子署名等により改変が行われていないかどうかを確認できることなど。

承諾を得る際に示すべき内容:電磁的方法で提供する際に用いる方法、およびファイルへの記録形式。

承諾を得る方法:電子メール、Webページ上の回答フォーム、USBメモリ等の交付など。

出典・一次情報

2026年8月11日に確認しました。この報道発表では「重要事項説明書等の電磁的方法による提供及びITを活用した重要事項説明実施マニュアル」も公表されています。制度は改正されるため、実務判断の際は公表元の最新情報をご確認ください。

重要なのは、これらはサービスの機能要件ではなく、宅建業者側の義務だということです。サービスが対応していても、承諾を取らずに送れば運用として成立しません。逆に、承諾を取る手順が仕組みに組み込まれていないサービスを使うと、毎回手作業で管理することになります。ここが選定の分かれ目です。

観点1: 相手方の承諾を、記録として残せるか

承諾は、口頭で「メールでいいですよ」と言われただけでは後から確認できません。規則では承諾を得る方法として電子メールやWebページ上の回答フォームなどが挙げられており、いつ・誰から・どの方法で承諾を得たかが残る形にしておく必要があります。

比較で見るのは、承諾取得のステップがサービスのフローに入っているかどうかです。汎用の電子契約サービスは「署名依頼を送る」ところから始まるものが多く、その前段の承諾は自社で別途管理することになります。不動産特化のサービスは、この前段を持っていることがあります。持っていない場合、社内の運用手順書で埋めることになります。

観点2: 改変が行われていないかを確認できるか

適合基準に「電子署名等により改変が行われていないかどうかを確認できること」が挙げられています。電子契約サービスであれば通常は電子署名やタイムスタンプの仕組みを持っていますが、確認する側がどう確認できるのかは製品によって違います。

見るのは2点です。第一に、署名の検証結果を後から画面や証跡で確認できるか。第二に、サービスを解約したあともその確認ができるか。契約は解約後も残ります。ダウンロードしたPDF単体で検証できる形式かどうかは、意外と聞き逃されます。

なお、この適合基準の話と、各社が「立会人型」「当事者型」と呼び分けている署名方式の話は別の論点です。両者を分けて整理したものは重要事項説明書に電子署名は必須かにまとめてあります。比較表の署名方式の欄が読み解きづらいときは、先にそちらを見ておくと迷いにくくなります。

観点3: 書面に出力できるか(相手が紙を求めたとき)

これも適合基準に入っています。実務的には、相手方が高齢の売主で、結局紙が必要になったという場面で効いてきます。

多くのサービスはPDF出力できるので、機能としては満たします。確認したいのは体裁のほうです。署名欄や証跡ページが加わることで、印刷したときにページ数が増えたり、レイアウトが崩れたりすることがあります。金融機関や司法書士に渡す書類でもあるので、印刷結果は選定段階で一度実物を見ておくと安全です。

観点4: 不動産の書類テンプレートを持っているか

汎用の電子契約サービスは、PDFをアップロードして署名欄を配置する方式が基本です。毎回同じ位置に署名欄を置くなら、テンプレートとして保存できるかを確認します。

不動産特化のサービスは、重要事項説明書や契約締結時書面のひな形を持っていることがあります。これは便利な反面、自社の書式にこだわりがある場合は逆に窮屈になります。どちらが良いかは、自社の書式が固まっているかどうかで決まります。固まっているなら汎用+テンプレート、これから整えるなら特化型が近道です。

重要事項説明そのものの制度変更は「重要事項説明の変更点」で扱っています。書式を触る前に、記載事項側の変更を先に確認しておくほうが手戻りが少なくて済みます。

観点5: IT重説の運用とつながるか

国土交通省の報道発表では、電磁的方法による提供とIT重説をまとめた実施マニュアルが公表されています。実務でもこの2つは連続した工程です。事前に重要事項説明書を電子で送り、オンラインで説明し、その後に契約書を電子で締結する。

比較で見るのは、書類の送付・説明・締結が同じ案件として1つにまとまるかです。まとまらない場合、案件ごとにどの書類がどこまで進んだかを別途管理することになります。件数が少ないうちは気になりませんが、月に数十件動くようになると効いてきます。IT重説側の準備は「IT重説の進め方」にまとめています。

観点6: 料金が「基本料+従量」のどちらで効くか

電子契約サービスの料金は、月額の基本料と、送信1件ごとの従量課金の二層になっていることが多くあります。実例として、クラウドサインの公式料金ページには2026年8月11日時点で次のように掲載されていました。

プラン月額送信1件あたり
Light12,100円(税込)242円(税込)
Corporate30,800円(税込)242円(税込)
Business / Enterpriseお問い合わせ(ボリュームディスカウントあり と記載)同左
無料プラン0円月2件まで・ユーザー数1名まで

出典・一次情報

2026年8月11日に確認した掲載内容です。料金・プラン構成は改定されます。検討時は公式ページで最新をご確認ください。他社を推奨・非推奨する意図はなく、料金体系の形を示す例として挙げています。

この形が分かると、比較の仕方が決まります。月間の送信件数を先に見積もることです。賃貸の更新まで電子にするのか、売買だけなのかで件数は一桁変わります。基本料の安いプランでも、件数が多ければ従量で逆転します。逆に件数が少ないなら、基本料の差がそのまま年間コストの差になります。

もう1つ、ユーザー数の扱いも見ておきます。ユーザー数無制限のサービスと、人数課金のサービスがあります。不動産の場合、契約に関わるのは営業だけでなく事務や管理職も含まれるので、人数課金だと想定より増えます。

6観点をチェックリストにする

観点営業担当に聞く質問
1. 承諾電磁的方法による提供の承諾を取る工程は、サービス内で完結しますか。記録は残りますか
2. 改変検知解約後にダウンロード済みのファイルだけで、改変の有無を確認できますか
3. 書面出力締結済みの書類を印刷した実物を見せてもらえますか
4. テンプレート自社の書式を登録して繰り返し使えますか。ひな形は付いていますか
5. IT重説事前送付・説明・締結を同じ案件として追えますか
6. 料金月◯件のときの年間総額はいくらですか。ユーザー数の上限はありますか

締結後の書類をどう持つかは別の論点になります。保管・検索・期限の設計は「不動産の契約書管理システムは何を管理するのか」で整理しています。

まとめ

不動産の電子契約サービスを比べるときに効くのは、一般的な機能比較表に載っている項目ではありません。宅建業法施行規則で定められた「適合すべき基準」と「承諾の取り方」を、日々の運用としてどう回すかです。

承諾・改変検知・書面出力・テンプレート・IT重説との接続・料金体系。この6つを同じ質問で各社に聞くと、比較表よりも早く違いが出ます。特に承諾の工程と、解約後の検証可能性は、資料には書かれていないことが多い部分です。

そして繰り返しになりますが、これから電子契約を始める段取りそのものは「不動産の電子契約、何から始める?—導入手順と費用感」のほうが実務に近い内容です。順番としては、あちらを読んでから、この6観点で候補を絞るのがきれいだと思います。

関連記事

よくある質問

不動産の電子契約は、いつから何ができるようになったのですか?

国土交通省は令和4年4月27日に、宅地建物取引業法施行規則等の改正を公布したと発表しています。宅地建物取引士の押印廃止や、重要事項説明書・契約締結時書面・媒介契約締結時書面等を電磁的方法により提供できるようにする改正規定が、令和4年5月18日から施行されました。あわせて実施マニュアルも公表されています。

電子契約サービスを選ぶとき、宅建業法の観点では何を確認すればよいですか?

施行規則の改正では、電磁的方法で提供する際に適合すべき基準として、書面に出力できること、電子署名等により改変が行われていないかどうかを確認できることなどが規定されました。また、あらかじめ相手方から承諾を得る際に示すべき内容と、承諾を得る方法も定められています。サービス選定では、これらを満たす運用が機能として用意されているかを確認します。

電子契約サービスの費用はどのくらいかかりますか?

サービスによって大きく異なります。一例として、クラウドサインの公式料金ページには2026年8月時点で、Lightが月額12,100円(税込)+送信1件あたり242円(税込)、Corporateが月額30,800円(税込)+送信1件あたり242円(税込)と掲載されており、無料プランは月2件まで・ユーザー1名までとされています。基本料金と送信従量の二層構造のサービスが多いため、月間の契約件数を先に見積もると比較しやすくなります。

泉 款太(いずみ かんた)

株式会社SalesDock 代表取締役

慶應義塾大学法学部卒。スタートアップ、ラクスル、リクルート(SUUMO)を経て2025年に独立。 中小企業の経営・営業・業務・データをつなぐ事業基盤の設計と実装を支援。 不動産・製造業・クリニックを中心に30社以上の業務改善に携わる。

代表メッセージを読む →

NEXT STEP

比較する前に、判断の基準を持っておく

3ヶ月の業務改善ロードマップと支援事例2社をまとめた資料を、無料でお渡ししています。