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不動産

不動産の電子契約、何から始める?—導入手順と費用感をわかりやすく解説

7分で読める

この記事は不動産業界のAI活用・業務効率化 完全ガイドの一部です。全体像を知りたい方はまず完全ガイドをご覧ください。

この記事のポイント

2022年の法改正で不動産の電子契約が全面解禁。導入は「ツール選定→社内ルール整備→顧客への説明体制」の3ステップで進める。月額1〜3万円で始められ、印紙税の削減だけで投資回収できるケースが多い。

「電子契約、うちもそろそろやらないと」。同業者がオンラインで契約を回し始めているのを見て、そう感じている不動産会社の経営者は多いと思う。ただ、いざ始めようとすると「何のツールを使えばいいのか」「法的に本当に大丈夫なのか」「お客さんに嫌がられないか」と疑問が次々に出てくる。

この記事では、不動産の電子契約をこれから始める方向けに、法的な背景・導入ステップ・費用感・よくあるつまずきポイントを整理した。「とりあえず全体像を知りたい」という方は、まずこの記事を読んでから検討を始めると、迷わず進められるはず。

そもそも不動産の電子契約とは

電子契約とは、紙の書類に押印する代わりに、電子署名を使ってオンラインで契約を締結する方法のこと。不動産業界では、2022年5月の宅建業法改正により、重要事項説明書(35条書面)や売買契約書(37条書面)の電子交付が正式に認められた。

改正前は「書面の交付」が義務だったため、電子契約を使えるのは社内の業務書類だけだった。それが今は、お客様への重説や契約書もPDFと電子署名で完結できる。これは不動産業界にとってかなり大きな変化で、契約業務のデジタル化を進める上での法的なハードルがなくなったことを意味する。

電子契約を導入する3つのメリット

1. 印紙税がゼロになる

紙の売買契約書には契約金額に応じた印紙税がかかる。例えば1,000万〜5,000万円の売買なら1万円、5,000万〜1億円なら3万円。電子契約は課税文書に該当しないため、この印紙税が丸ごと不要になる。月に3〜5件の売買契約がある会社なら、年間で数十万円の削減になるケースもある。

2. 契約のリードタイムが短くなる

紙の契約書は、製本→郵送→返送で1〜2週間かかることが珍しくない。遠方の顧客であればさらに時間がかかる。電子契約なら、メールで署名依頼を送って当日〜翌日に完了することも多い。契約までのスピードが上がれば、キャンセルリスクの低減にもつながる。

3. 書類の保管・検索が楽になる

締結済みの契約書がクラウド上に自動保存されるため、ファイルキャビネットを漁る必要がない。物件名や顧客名で検索すればすぐに見つかる。電子帳簿保存法への対応もしやすくなる。

導入の3ステップ

ステップ1:電子契約サービスを選ぶ

不動産向けの電子契約サービスは複数ある。選ぶときのチェックポイントは以下の通り。

  • 宅建業法に対応しているか—重説や37条書面の電子交付に正式対応しているサービスを選ぶ。汎用の電子署名サービスだと、不動産特有の要件を満たさない場合がある
  • 操作が簡単か—営業担当やお客様がITに不慣れでも使えるかどうか。無料トライアルで実際に触って確かめるのが一番確実
  • 費用体系が自社の契約件数に合っているか—月額固定のプラン、従量課金のプランがある。月の契約件数が少ないなら従量課金、多いなら固定のほうが有利になりやすい
  • 既存の業務システムと連携できるか—顧客管理や物件管理のシステムと連携できると、二重入力を減らせる

ステップ2:社内ルールを整備する

ツールを契約しただけでは運用は回らない。最低限、以下のルールを決めておく必要がある。

  • どの契約類型から電子化するか—いきなり全部を電子化しようとすると現場が混乱する。まずは賃貸の契約更新や管理委託契約など、比較的シンプルなものから始めて、慣れてきたら売買契約に広げるのがおすすめ
  • 紙との併用ルール—お客様が紙を希望された場合の対応フローを決めておく。「基本は電子、希望があれば紙」とすることが多い
  • 承認フロー—誰が契約書を作成し、誰が最終チェックし、誰が送信するか。既存の決裁フローを電子契約に落とし込む

ステップ3:顧客への説明体制を整える

電子契約を嫌がるお客様は一定数いる。特に高齢の方や、初めてのマイホーム購入で慎重になっている方は「紙のほうが安心」と感じやすい。だからこそ、事前の説明が大切になる。

  • 「メールで届くリンクをクリックして署名するだけ」と簡潔に伝える
  • 操作手順のリーフレット(A4で1枚程度)を用意する
  • 不安な方には対面で一緒に操作して見せる
  • 法的に紙と同じ効力があることを丁寧に説明する

こうした準備をしておくだけで、お客様の抵抗感はかなり下がる。実際に導入した不動産会社からは「思ったより嫌がる人は少なかった」という声が多い。

費用感の目安

代表的な電子契約サービスの費用帯をざっくりまとめると、こんなイメージになる。

項目費用目安
月額基本料金1万〜3万円
送信料(1件あたり)100〜300円(従量課金の場合)
初期設定・導入サポート0〜10万円(サービスによる)
削減できる印紙税1万〜6万円/件(売買の場合)

売買を月に2〜3件扱う会社なら、印紙税の削減分だけで月額費用をカバーできるケースが多い。賃貸メインの会社でも、郵送費・製本費・保管スペースの削減まで含めると、コストメリットは十分にある。

導入でよくあるつまずきポイント

「相手方の承諾」を取り忘れる

宅建業法上、電子交付を行うには相手方(買主・借主)の事前承諾が必要。口頭だけでなく、書面やメールで記録を残しておくことが重要になる。多くの電子契約サービスには承諾取得の機能が組み込まれているので、それを活用する。

テンプレートの整備を後回しにする

電子契約サービスを契約したものの、自社の契約書テンプレートをシステムに登録する作業を後回しにして、結局使わないまま月額料金だけ払っている—という話は実際にある。導入を決めたら、最初の1〜2週間でテンプレート登録とテスト送信まで終わらせてしまうのがコツ。

まとめ—まずは賃貸の更新契約から始めてみる

電子契約の導入は、正直なところ「やるかやらないか」だけの話で、技術的に難しいことはほとんどない。法的な整備も終わっている。費用も月1万円程度から始められる。

最初のおすすめは、賃貸の契約更新。件数が多く、相手方(既存の入居者)との関係も構築済みで、電子化のハードルが低い。ここで社内の運用を固めてから、売買契約や新規賃貸契約に広げていくのが無理のない進め方だと思う。

電子契約は単なるペーパーレス化ではなく、契約業務全体のスピードと正確性を底上げする取り組み。不動産業界の業務効率化を進める上で、避けて通れないテーマになっている。

よくある質問

不動産の電子契約に法的な有効性はありますか?

はい。2022年5月の宅建業法改正により、重要事項説明書・売買契約書・賃貸借契約書などの書面交付が電子化可能になった。電子署名法に基づく電子署名を付与すれば、紙の契約書と同等の法的効力を持つ。ただし、相手方の承諾を事前に得ることが条件。

電子契約の導入費用はどれくらいですか?

クラウド型の電子契約サービスの場合、月額1万〜3万円程度が相場。送信1件あたり100〜300円の従量課金が加わるサービスもある。紙の契約にかかっていた印紙税(売買契約で1万〜6万円/件)が不要になるため、月に数件の契約があれば十分に元が取れる。

お客様が電子契約に慣れていない場合はどうすればいいですか?

事前に「メールで届くリンクをクリックして署名するだけ」と簡単に説明し、操作手順書を1枚用意しておくと安心。高齢のお客様など、どうしても紙を希望される場合は紙で対応し、社内の管理書類だけ電子化するところから始めるのも一つの方法。

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泉 款太(いずみ かんた)

株式会社SalesDock 代表取締役

慶應義塾大学法学部卒。スタートアップ、ラクスル、リクルート(SUUMO)を経て2025年に独立。 不動産・製造業・クリニックなど現場産業向けのAI業務効率化コンサルを提供。 30社以上の中小企業のAI活用・業務改善を支援。

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