2026年版 重要事項説明の変更点完全まとめ|省エネ説明義務・ハザードマップ・電子化の実務
記載事項の改正と、中小不動産会社の実務フロー対応
この記事は2026年の宅建業法・不動産関連法改正まとめのスピンオフ記事です。法改正全体を俯瞰したい方はまず親記事をご覧ください。
この記事のポイント
2024年以降に加わった省エネ性能説明義務、ハザードマップ説明の実務、IT重説の定着、記載漏れによる行政処分事例。2026年時点で中小不動産会社が押さえておくべき重要事項説明の変更点を、業務フロー別に整理した。
重要事項説明は宅建業法第35条で定められた説明事項だが、対象となる項目は毎年のように増えている。ここ数年だけでも、水害ハザードマップの説明義務化(2020年)、IT重説の本格運用(2022年)、省エネ性能の説明努力義務化(2024年)と変化が続いている。この記事では、2026年時点で中小不動産会社の実務に影響する重要事項説明の変更点を、記載項目・説明方法・業務フロー別にまとめる。
省エネ性能説明義務化—建築物省エネ法の改正
2024年4月から、建築物省エネ法の改正に伴い、宅建業者には売買・賃貸の重要事項説明時に建築物の省エネ性能に関する情報提供が求められるようになった。これは当初は努力義務として運用されているが、実務では事実上「説明していないとクレームにつながる項目」として扱われている。
重要事項説明で触れる省エネ関連情報
省エネ基準適合の有無:2025年4月以降の新築は省エネ基準適合が義務化。既存住宅は適合状況を確認し説明する。
断熱等性能等級:等級4が従来の基準、等級5・6・7は上位等級。住宅性能評価書や設計図書から確認する。
一次エネルギー消費量等級:等級4が基準、等級5以上がZEH水準。
省エネ性能ラベル:2024年4月から表示制度が開始。広告・重説で統一的な表記が推奨される。
注意したいのは、中古住宅の場合は性能評価書が無い物件も多く、正確な断熱等級が不明なケースがあること。「不明」と正直に書くことが求められる。推測で等級を記載するとトラブルの原因になる。
ハザードマップ説明の義務化と2026年の運用
2020年8月から、水害ハザードマップにおける対象物件の所在地を説明することが重要事項説明の義務になった。対象は売買・賃貸の全取引で、市町村が作成した洪水・雨水出水(内水)・高潮ハザードマップのいずれかに物件所在地が記載されている場合に説明が必要となる。
2024年以降は、水害だけでなく土砂災害・津波・地震の各ハザードマップも「該当する場合は説明することが望ましい」とされている。実務上は、最低限以下の3点を確認して重要事項説明書に添付するのが標準運用になっている。
ハザードマップ説明の標準運用
1. 市町村の水害ハザードマップ:物件所在地にマーカーを打って提示。浸水想定水深を数字で伝える。
2. 土砂災害警戒区域の該否:都道府県ポータルで確認。警戒区域・特別警戒区域のどちらに該当するかまで伝える。
3. 津波・高潮:沿岸部の物件では津波浸水想定区域を、沿岸部・河口部では高潮浸水想定区域を確認する。
説明漏れが後から発覚すると、契約解除や損害賠償に発展する事例がある。チェックリストを使い、担当者ごとの説明品質のばらつきを減らすことが重要。
IT重説の運用定着—本人確認とトラブル事例
2022年5月の宅建業法改正により、売買・賃貸のIT重説(オンラインでの重要事項説明)が全面解禁された。2026年時点では、大手仲介会社を中心に標準運用化が進み、中小会社でも導入が広がっている。
IT重説で押さえるべきは以下の4点。特に本人確認と記録の保存は行政指導の対象になりやすい。
本人確認:事前に運転免許証等の画像を受領し、IT重説の冒頭で画面越しに再確認する運用が一般的。公的個人認証(マイナンバーカード)を使う方法もある。
通信環境の確認:音声・映像が途切れずに届くかを事前にテスト。トラブル時の再説明ルールも合意しておく。
記録の保存:IT重説の録画は義務ではないが、トラブル時の証拠として録画・保管している会社が増えている。保管期間は宅建業法の重要書類と同等(5年)が目安。
書面の事前送付:重要事項説明書は事前に電子またはPDFで送付し、お客様が目を通してから説明に入る。紙面と画面を同時に追える状態を作る。
IT重説の詳細な実施手順は「不動産会社のIT重説ガイド」で解説している。
賃貸の重要事項説明で増えた説明事項
賃貸の重要事項説明でも、ここ数年で説明すべき事項が増えている。特に以下の3つは実務で押さえておきたい。
原状回復の範囲:国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」に沿った特約の明示。経年劣化・通常損耗と借主負担の区分を事前に説明する。
孤独死・事故物件の告知:2021年策定の「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」に基づき、告知対象と告知期間を整理して説明する。
家賃保証会社:利用が必須の場合、保証会社名・保証料・更新料を契約前に開示する。
記載漏れ・説明ミスによる行政処分事例
重要事項説明の記載漏れは、単なる「事務ミス」では済まされない。業務停止処分や免許取消しにつながるケースがある。近年の行政処分事例から見える傾向を整理する。
重要事項説明関連の行政処分パターン
| 違反類型 | 典型例 | 処分の目安 |
|---|---|---|
| 重要事項の不告知 | ハザードマップの未説明、事故物件の告知漏れ | 業務停止(数日〜30日) |
| 虚偽記載 | 実測面積と異なる面積の記載、未確認の法令制限を「無し」と記載 | 業務停止(30日〜)、悪質な場合は免許取消 |
| 説明義務違反 | 宅建士以外による説明、書面交付のみで口頭説明を省略 | 指示処分または業務停止 |
記載漏れを防ぐ現実的な方法は、チェックリストの徹底と、宅建士以外の担当者による一次チェックの仕組み化。ベテラン営業ほど「いつもの説明」で省略してしまう項目があるため、標準化が重要になる。
業務フロー別の対応チェックリスト
フローごとの対応事項
| 業務フロー | 押さえるポイント | よくある漏れ |
|---|---|---|
| 物件調査 | ハザードマップ・法令制限・省エネ性能の調査 | 土砂災害区域の確認漏れ |
| 書面作成 | 記載事項チェックリストの運用 | 面積表記の齟齬、特約の記載ミス |
| 説明実施 | 宅建士による口頭説明、質問への回答記録 | 省エネ性能・事故物件の説明省略 |
| 書面保管 | 紙・電子それぞれで5年保存 | IT重説の録画データの紛失 |
まとめ:記載漏れを防ぐのは「仕組み」
重要事項説明の変更点は、担当者の記憶や経験則に頼るとどうしても漏れが出る。チェックリストをGoogleドライブで共有する、物件調査時にハザードマップを自動取得する、重説書面は雛形から外れた箇所を必ずレビューする—こうした「仕組み化」が、処分リスクを下げつつ担当者の負担も減らす。
同じ2026年の動きとして、不動産登記規則の改正で受付帳の記載事項が削減される予定があり、仕入れ側の実務にも影響が出る。「受付帳DM営業が終わる—仕入れルートの転換」もあわせて確認してほしい。
泉 款太(いずみ かんた)
株式会社SalesDock 代表取締役
慶應義塾大学法学部卒。スタートアップ、ラクスル、リクルート(SUUMO)を経て2025年に独立。 不動産・製造業・クリニックなど現場産業向けのAI業務効率化コンサルを提供。 30社以上の中小企業のAI活用・業務改善を支援。
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