IT重説、導入したけど現場が使いこなせない—不動産会社がつまずく3つのポイントと対策
この記事のポイント
IT重説は法的に認められているが、導入しても現場で使われないケースが多い。つまずくポイントは「ツール」ではなく「運用」にある。
IT重説(ITを活用した重要事項説明)は2022年5月に完全解禁された。賃貸・売買ともにオンラインでの重要事項説明が法的に認められている。
ところが、導入したものの「結局対面でやってる」という会社が多い。ツールは入れた。アカウントも作った。でも、現場では使われていない。
「ツールを入れた」だけでは定着しない。現場のつまずきを一つひとつ解消しないと、IT重説は絵に描いた餅で終わる。
IT重説、なぜ使われないのか
法改正で解禁されて3年以上。それでも活用率はまだ低い。理由はいくつかある。
- 営業マンが「対面のほうが早い」と感じている
- 顧客側も「画面越しで大丈夫?」という不安がある
- 社内にITリテラシーの差がある。使える人と使えない人の温度差
共通しているのは、問題が「ツール」ではなく「運用」にあるということ。ツールの機能が足りないのではなく、使い方・進め方が整っていない。
つまずきポイント①—接続トラブルで信頼を失う
IT重説で最もよくあるトラブルが、接続の問題。Zoom、Teams、Google Meet—どれを使うかの選定ミスもあるが、それ以前の問題が多い。
- 事前の接続テストをしていない
- 当日つながらず、お客さんを待たせる
- 画面共有で書類が見えない(文字が小さい、PDFが映らない)
重要事項説明という大事な場面で接続トラブルが起きると、お客さんの信頼は一気に落ちる。「やっぱり対面のほうがよかった」と思われたら、次からIT重説を提案しづらくなる。
対策: 接続チェックリストをつくる。
- 前日にお客さんとテスト接続を実施する(5分で終わる)
- バックアップ手段を用意する(Zoomがダメならスマホで電話しながら画面共有)
- 重説書類はPDF化して事前に送付する(画面共有が見えなくても手元で確認できる)
つまずきポイント②—説明の「間」が取れない
対面の重説なら、お客さんの表情で理解度が分かる。眉をひそめたら「ここ、もう少し詳しく説明しますね」と補足できる。
オンラインではそれが難しい。画面越しだと表情が読みにくい。結果、一方的に読み上げて終わりになりがち。お客さんは「よく分からなかったけど、まあいいか」で終わる。
対策: 区切りを明確にする。
- セクションごとに「ここまでで質問ありますか?」を必ず入れるルールにする
- 画面上で該当箇所をハイライト(マーカー・ポインター)しながら説明する
- 重要な項目では「ここが一番大事なポイントです」と明示する
対面と同じ感覚でやろうとすると失敗する。オンラインにはオンラインの「間」の取り方がある。
つまずきポイント③—社内の温度差
「うちのベテランが『対面じゃないと失礼だ』って言うんですよ」
この話、本当によく聞く。若手はIT重説を使いたいが、上が動かない。結果、会社として導入したのに誰も使わない。
対策: 全件IT重説にする必要はない。
- まず遠方の顧客・忙しい顧客に限定して始める
- 「お客様の利便性」として提案する(来店不要で日程調整が楽になる)
- ベテランに強制しない。まず若手が実績をつくり、結果で示す
「全部変える」のではなく「一部から始める」。これだけで社内の抵抗は大幅に減る。
IT重説で得られる本当のメリット
つまずきを乗り越えた先には、具体的なメリットがある。
| メリット | 具体的な効果 |
|---|---|
| 移動時間の削減 | 営業1人あたり月10〜20時間の移動時間を削減 |
| 成約スピード向上 | 日程調整が楽になり、契約までのリードタイムが短縮 |
| 遠方顧客の取り込み | 商圏が広がる。転勤客・投資用物件の顧客に有効 |
| 録画による品質管理 | 説明内容を録画→トラブル防止、新人教育に活用 |
来週からできること
大がかりな仕組みは要らない。まずこの3つから。
- 来週の重説1件をIT重説でやってみる—まず1件だけ。遠方のお客さんや、忙しくて来店が難しいお客さんに提案する
- 接続チェックリストを作る—A4 1枚でいい。前日テスト、バックアップ手段、書類の事前送付の3点だけ
- 録画して振り返る—自分の説明を見返すと改善点が一目で分かる
IT重説、「導入した」で止まっていませんか? まず1件、やってみるところから始めてみてほしい。
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SalesDockでは、IT重説の運用設計から接続チェックリストの作成、社内への定着支援まで一気通貫でお手伝いしています。「導入したけど使われていない」という状態を一緒に解消しましょう。
泉 款太(いずみ かんた)
株式会社SalesDock 代表取締役
慶應義塾大学法学部卒。スタートアップ、ラクスル、リクルート(SUUMO)を経て2025年に独立。 不動産・製造業・クリニックなど現場産業向けのAI業務効率化コンサルを提供。 30社以上の中小企業のAI活用・業務改善を支援。
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