不動産会社の社長が毎月見るべき数字5つ — 売上だけ追っていると利益が消える
この記事のポイント
不動産会社の経営者が毎月30分で確認すべき5つの数字を整理した。粗利益率・反響単価・反響→成約率・在庫回転期間・営業1人あたり粗利。売上だけを追っていると、利益がどこで漏れているかに気づけない。各指標の計算方法と業態別の目安を表にまとめたので、自社の数字を当てはめてみてほしい。
売上が増えても利益が残らない不動産会社の共通点
「売上は去年より伸びてるのに、なぜか手元にお金が残らない」。こういう相談は少なくない。
売上だけを見ていると、この問題は発見できない。売上が上がっている以上、「順調だ」と思ってしまう。ところが中身を分解すると、広告費が1.5倍に膨らんでいたり、成約までの営業コストが跳ね上がっていたり、在庫物件が長期化して金利負担が増えていたりする。
こうした会社に共通しているのは、売上以外の数字を定期的に追っていないということだ。月に1回、30分でいい。5つの数字を確認するだけで、利益が消えている原因は大体つかめる。
前回の記事「スプレッドシートで始める不動産KPI管理」では、数字を「見える化」する仕組みの作り方を書いた。今回はその発展版として、経営者が判断に使える5つの指標を掘り下げる。
毎月30分で確認できる5つの数字
以下の5指標は、仲介でも買取再販でも管理でも共通して使える。ただし業態によって目安の数値が変わるので、後半のテーブルで整理する。
1. 粗利益率 — 売上の何%が手元に残っているか
計算式: 粗利益 / 売上 x 100
売買仲介の場合、仲介手数料がほぼそのまま粗利になるので70〜85%は確保できる。一方、買取再販では仕入れ値と販売価格の差額が粗利なので、15〜25%が一般的だ。
大事なのは絶対値ではなく推移だ。3ヶ月連続で粗利率が下がっているなら、何かが起きている。仕入れ判断が甘くなっている、値引きが増えている、リフォームコストが膨らんでいる。原因を探るための最初のアラートになる。
2. 反響単価 — 1件の反響にいくらかかっているか
計算式: 月間広告費合計 / 月間反響件数
ポータルサイトへの掲載料、リスティング広告、チラシ印刷費。これらを合計して、その月に獲得した反響の件数で割る。
ここで重要なのは、チャネル別に計算することだ。SUUMOからの反響単価が1万5,000円、自社HPからの反響単価が3,000円、チラシは2万円—こうやって並べると、どこに予算を寄せるべきかが見えてくる。
反響単価が月ごとに上がっているなら、競合が増えて広告効率が悪化しているか、掲載する物件情報の質が落ちている可能性がある。「反響が減った」と感じたとき、単価を見れば原因の切り分けができる。
3. 反響→成約率 — 来た反響のうち何%が成約するか
計算式: 月間成約件数 / 月間反響件数 x 100
反響を集めても、成約につながらなければ広告費は回収できない。売買仲介であれば反響→成約率は3〜8%が一つの目安。賃貸であれば15〜25%くらいになることが多い。
成約率が低い場合、原因は大きく2つある。反響の質が悪い(ターゲットと合わない広告を出している)か、追客の仕組みが弱い(初回対応が遅い、フォローが属人的)か。どちらが原因かによって打ち手がまるで違うので、この数字を見ずに「もっと反響を増やそう」と広告費を積むのは危険だ。
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4. 在庫回転期間 — 買取物件が何ヶ月で売れるか(買取再販向け)
計算式: 在庫物件数 / 月間販売件数
買取再販を手がけている会社にとって、在庫回転期間は資金繰りに直結する。仕入れた物件を3ヶ月で売るのと6ヶ月で売るのとでは、金利負担が倍になる。
目安として、買取再販では3〜4ヶ月以内が健全とされている。6ヶ月を超える在庫が複数ある場合は、仕入れ基準の見直しか、価格改定のタイミングを前倒しする必要がある。
仲介専業の会社でも、媒介物件の掲載期間を「在庫」として捉えると同じ考え方が使える。3ヶ月以上動きがない物件は、価格設定か販売手法を見直すシグナルだ。
5. 営業1人あたり粗利 — 人を増やすべきかの判断基準
計算式: 月間粗利益 / 営業社員数
「人が足りない」という声は現場からよく上がる。ただ、採用する前にこの数字を確認してほしい。1人あたり粗利が低いまま人を増やしても、固定費が増えるだけで利益は改善しない。
目安として、営業1人あたり月間粗利が150万円以上であれば、増員しても固定費を十分に回収できる。100万円を下回っている場合は、採用よりも先に追客の効率化や業務フローの見直しに投資したほうがいい。
この指標は、営業メンバー個人の評価に使うものではない。経営者が「人を増やすか、仕組みを変えるか」を判断するための数字だ。
5指標の目安テーブル
業態別にざっくりとした目安を整理した。あくまで参考値なので、まずは自社の直近12ヶ月の数字を出して比較してほしい。
| 指標 | 売買仲介 | 買取再販 | 賃貸管理 |
|---|---|---|---|
| 粗利益率 | 70〜85% | 15〜25% | 40〜60% |
| 反響単価 | 5,000〜15,000円 | 10,000〜30,000円 | 3,000〜8,000円 |
| 反響→成約率 | 3〜8% | 5〜15% | 15〜25% |
| 在庫回転期間 | — | 3〜4ヶ月 | — |
| 1人あたり粗利 | 150〜250万円/月 | 100〜200万円/月 | 80〜120万円/月 |
数字が目安より悪くても、すぐに問題というわけではない。大事なのは推移だ。先月より良くなっているのか、悪くなっているのか。悪化しているなら、何が原因か。この5つの数字を毎月追うだけで、「なんとなく忙しいけど利益が出ていない」という状態から抜け出せる。
まとめ — 数字が見えれば「判断」が変わる
経営判断の質は、見ている数字の質で決まる。売上だけを見ていると、「もっと売ろう」としか考えられない。でも粗利率が見えていれば「利益が薄い案件を減らそう」と考えられるし、反響単価が見えていれば「このチャネルは費用対効果が悪い」と判断できる。
特別なツールは要らない。スプレッドシート1枚に、今回紹介した5つの数字を毎月入力する。それだけで経営の解像度はかなり変わる。
ただ、「数字を出す作業」自体に時間がかかるのが現実だと思う。営業管理システムから数字を引っ張って、Excelに貼り付けて、電卓で計算して—この手間が面倒で続かない会社は多い。
SalesDockでは、スプレッドシートに数字を入れるだけで5指標が自動計算されるダッシュボードパックを提供している(初期構築10万円、月額保守3万円)。「数字を出す作業」をゼロにして、「数字を見て判断する」ことに集中できる仕組みだ。
不動産会社の数字管理について詳しくは、スプレッドシートで始める不動産KPI管理もあわせてどうぞ。
泉 款太(いずみ かんた)
株式会社SalesDock 代表取締役
慶應義塾大学法学部卒。スタートアップ、ラクスル、リクルート(SUUMO)を経て2025年に独立。 不動産・製造業・クリニックなど現場産業向けのAI業務効率化コンサルを提供。 30社以上の中小企業のAI活用・業務改善を支援。
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