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不動産

買取再販の仕入れ管理、まだ個人のExcelですか? — 属人化をなくす台帳設計の考え方

仕入れの「千三つ」を会社の資産に変える、台帳設計の実践ガイド

10分で読める

この記事のポイント:買取再販の仕入れ判断は属人的になりやすく、見送った物件のデータすら残らないケースが多い。1枚の台帳に集約し、判断基準を数値化し、振り返りの仕組みを作る — この3ステップで、仕入れのノウハウが会社に蓄積される体制を作れる。

買取再販の仕入れ、「社長の勘」に頼っていないか

買取再販業で最も重要な業務は「仕入れ」だ。どの物件を、いくらで買うか。この判断の精度が事業の利益率をほぼ決める。

ところが、仕入れの判断プロセスを仕組みとして管理できている会社は意外と少ない。私は前職で数百社の不動産会社を支援してきたが、仕入れ管理の実態を聞くと「社長の頭の中にある」「担当者が個人のExcelで管理している」という回答が大半だった。

業界では仕入れの成約率を「千三つ(せんみつ)」と呼ぶ。1,000件の物件情報を見て、実際に仕入れに至るのは3件程度。つまり997件は見送っている。この997件のデータがどこにも残っていない — これが買取再販会社に共通する構造的な課題だ。

ある買取再販会社の社長は「うちのベテラン営業が辞めたら、仕入れの基準が全部なくなる」と話していた。10年以上の経験で培った相場観や、エリアごとのリスク判断。それが特定の個人にしか蓄積されていない状態は、経営としてかなり危うい。

よくある3つの失敗パターン

失敗1:担当者ごとにExcelがバラバラ

仕入れ担当が3人いれば、Excelファイルも3つある。それぞれのフォーマットが微妙に違い、列の順番も項目名も統一されていない。月末に社長が「今月の仕入れ候補を一覧で見せて」と言っても、3つのファイルを手作業でマージするところから始まる。

この状態では、会社として「今、何件の仕入れ候補があるのか」すら即答できない。ある会社では、同じ物件を2人の担当者が別々に査定していたことが後から発覚した。情報が分散しているとこういう無駄が見えなくなる。

失敗2:判断基準が口頭伝承

「この立地で築30年なら坪○万まで」「このエリアは再建築不可が多いから要注意」。こうした判断基準は、日常の会話やOJTで断片的に伝えられているだけで、文書化されていない会社がほとんどだ。

結果、新人が独り立ちするまでに3年かかる。ベテランと同じ物件を見ても、チェックすべきポイントが分からない。仕入れミスが起きても「経験が足りない」で片付けられ、基準の言語化が進まない。

失敗3:過去の仕入れデータが残らない

仕入れた物件のデータは、売買契約書や決済資料として残る。しかし「見送った物件」のデータはほぼ残らない。997件の見送り理由こそが仕入れノウハウの本体なのに、それが消えていく。

半年前に見送った物件が再び市場に出てきたとき、「なぜ前回見送ったのか」が分からない。もう一度イチから査定をやり直す。この繰り返しが、仕入れ担当の工数を静かに圧迫している。

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仕入れ台帳に入れるべき項目リスト

台帳設計で最初に悩むのが「何を記録するか」だ。項目が多すぎると入力が面倒で運用が続かない。少なすぎると振り返りに使えない。以下は、実際に運用されている台帳をベースにした推奨項目だ。

カテゴリ項目備考
物件基本情報所在地市区町村まで。番地は任意
築年数築年月から自動計算が理想
土地面積 / 建物面積平米とともに坪数も併記
物件種別戸建・マンション・土地・一棟
仕入れ判断取得希望価格売主の提示額と自社の上限額
想定販売価格リフォーム後の再販価格
リフォーム概算ざっくりでOK。精度は後から上げる
進捗・結果ステータス情報収集中/査定中/交渉中/契約済/見送り
見送り理由選択式+自由記述。ここが最重要
担当者誰が判断したかを残す

特に重要なのは「見送り理由」の項目だ。選択式で「価格が合わない」「立地リスク」「再建築不可」「需要が読めない」などの選択肢を用意しつつ、自由記述欄も設けておく。この蓄積が半年後、1年後に仕入れ基準の精度を上げる財産になる。

台帳設計の3ステップ

ステップ1:まず1枚のシートに集約する

最初にやるべきことは、担当者ごとにバラバラになっている情報を1つの場所に集めることだ。Googleスプレッドシートでもいいし、使い慣れたExcelでもいい。ツールの選定に時間をかけるより、まず「全員が同じ台帳を見ている」状態を作ることが先決だ。

ここで大事なのは、過去のデータを完璧に移行しようとしないこと。過去分は「あったら入れる」くらいで十分で、今日以降の新規案件から台帳に記録するルールを徹底する方がずっと大切だ。完璧を目指すと移行期間が長引き、結局誰も使わなくなる。

実務のコツ:最初は10項目以内に絞ること。上の推奨項目リストから、まずは所在地・物件種別・取得希望価格・想定販売価格・ステータス・見送り理由の6項目だけで始めるのが現実的。入力に5分以上かかる台帳は定着しない。

ステップ2:判断基準を数値化する

台帳にデータが50件ほど溜まったら、次は判断基準の数値化に取り組む。ベテランが「この物件はいける」と感じている根拠を、できるだけ分解して点数にする作業だ。

例えば、こんなスコアリングシートを作る。

  • 想定利回り:15%以上=3点、10-15%=2点、10%未満=1点
  • 立地:最寄駅徒歩10分以内=3点、15分以内=2点、15分超=1点
  • 築年数:20年以内=3点、30年以内=2点、30年超=1点
  • リフォーム規模:表層のみ=3点、水回り含む=2点、構造含む=1点

合計8点以上なら「積極的に仕入れ検討」、6-7点なら「条件次第」、5点以下なら「原則見送り」といった目安を設定する。大事なのは、この基準が絶対ではないということ。あくまで共通言語として使い、ベテランの判断を否定するためのものではない。

ある会社ではこのスコアリングを導入した結果、新人の仕入れ判断のブレが明らかに減った。スコアが低い物件に時間をかけることがなくなり、担当者あたりの検討件数が月20件から35件に増えたという。

ステップ3:振り返りの仕組みを作る

台帳を作って基準を数値化しても、振り返りの機会がなければデータは溜まるだけで使われない。月に1回、30分でいいので「仕入れ振り返り会」を設ける。

振り返りで確認するのは3つだけ。

  1. 見送り理由の傾向 — 「価格が合わない」が8割なら、情報ソースの見直しが必要かもしれない
  2. スコアと実績の乖離 — スコアが高かったのに利益が出なかった物件があれば、基準の修正ポイントになる
  3. 仕入れまでのリードタイム — 情報入手から契約まで平均何日かかっているか。ここにボトルネックが隠れていることが多い

この振り返りを四半期ごとに続けると、半年後には「うちの会社はこのエリアのこの価格帯が得意」という型が見えてくる。それがそのまま仕入れ戦略になる。

まとめ — 仕入れのデータは「貯めるだけ」で価値がある

買取再販の仕入れ管理を属人化から脱却させるために、特別なシステムは必要ない。やることはシンプルだ。

  1. 担当者バラバラの管理を、1枚の台帳に集約する
  2. ベテランの判断基準を、スコアリングで見える化する
  3. 月1回の振り返りで、基準を磨き続ける

仕入れの「千三つ」は、裏を返せば997件分の判断データが毎月生まれているということだ。そのデータを捨て続けるか、資産として貯めていくか。この差が、3年後の仕入れ精度を大きく分ける。

まずは今週、担当者全員の仕入れ情報を1つのシートに集めるところから始めてみてほしい。完璧な台帳である必要はない。「全員が同じシートを見ている」という状態を作るだけで、属人化の解消は確実に前に進む。

泉 款太(いずみ かんた)

株式会社SalesDock 代表取締役

慶應義塾大学法学部卒。スタートアップ、ラクスル、リクルート(SUUMO)を経て2025年に独立。 不動産・製造業・クリニックなど現場産業向けのAI業務効率化コンサルを提供。 30社以上の中小企業のAI活用・業務改善を支援。

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