名寄せをエクセルでやる手順|法人番号を突合キーにして同名の別会社を潰さない
会社名の一致で寄せる前に、無料で配られている13桁を取りに行く
顧客リストの名寄せをエクセルでやろうとすると、たいてい2回つまずく。1回目は「株式会社」の有無や中黒で同じ会社が別行に割れているところ。ここは関数で寄せられる。2回目は、寄せた結果として別の会社が1行に潰れているところで、こちらは関数では気づけない。この記事は2回目のつまずきを前提に、会社名ではなく法人番号を突合キーにして、既存のリストへ後から13桁を付ける手順を書く。
表記ゆれのパターン分けと、重複行を統合するときの順番はNotion顧客DBの「同じ会社が3行ある」を直す名寄せ設計で扱っている。付けた番号を誰が維持するかは取引先マスタの責任者設計、そもそもの項目の決め方はCRM構築前のデータ定義書が近い。ここでは、すでに手元にある数百〜数千行へ番号を付ける作業だけを扱う。
会社名が完全一致しても、同じ会社とは限らない
同じ商号の別法人は存在する。会社名だけでは同一法人と確定できないため、完全一致した行でも自動統合せず、法人番号と本店所在地を照合する。
この手順は登記や税務の判断を代替するものではない。法人番号を取得できない行や所在地が一致しない行は、既存の請求先・契約先情報も確認し、それでも決められなければ「未判定」のまま人へ戻す。
ここが効いてくるのは、名寄せを「掃除」だと思っているときだ。掃除のつもりで会社名の完全一致をまとめると、請求先が違う2社の売掛が1行に混ざる。統合はリレーションを巻き込むので、気づいたときには元に戻しにくい。
突合キーは法人番号にする。データは無料で全件配られている
国税庁の法人番号公表サイトは、法人番号を指定した法人等の基本3情報(商号又は名称/本店又は主たる事務所の所在地/法人番号)を公表している。法人番号は13桁で、同サイトは「利用範囲の制約がなく、誰でも自由に利用できます」と明記している。マイナンバーと違って使途の制限がないので、自社の顧客リストに持たせてよい。
取り方は3つあり、やりたいことで選ぶものが変わる。
| 機能 | 取れるもの | 使う場面 |
|---|---|---|
| 全件データ | 前月末時点で公表している法人等の最新情報。全国分または都道府県・国外の単位別。CSV(Shift-JIS/Unicode)とXML(Unicode)。zip形式 | 手元のリスト数百〜数千件へ、まとめて法人番号を付けるとき |
| 差分データ | 新たに法人番号を指定した情報や、商号変更などの更新情報を日別に提供 | 一度付けた後、商号変更・所在地変更を追い続けるとき |
| Web-API | 名称や期間などの条件を指定して該当する法人等の情報を取得。アプリケーションIDの発行が必要(費用はかからない)。全件データの取得はできない | 自社のシステムから1件ずつ照会するとき |
エクセルで一括付番をするなら全件データを使う。全国分は2026年8月26日時点でzip 239MBあり、そのまま開くとエクセルの行上限に当たる。都道府県単位でダウンロードできるので、自社の取引先が集まっている県から順に落とすほうが早い。全件ファイルは毎月末に作成され、翌日0時までに提供される(月末が休祝日や12月29日〜31日に当たる場合は直前の平日)。Web-APIは1件ずつの照会向けで、全件データの取得はできない。
正規化は順番を固定し、元の表記を上書きしない
突合用の列は、元の会社名の列とは別に作る。元の表記は請求書や契約書と揃っている「正」なので、掃除した文字列で置き換えない。作業は毎回この順番でやる。
- 自社リストの会社名を別列にコピーし、そこに対して処理する。
- 前後の法人格を落とす(株式会社、有限会社、合同会社、(株)などの略記も含める)。
- 記号と空白を落とす(中黒、ハイフン、全角半角スペース)。
- 英数字とカナの全角半角を片方に寄せる。
- 国税庁データ側にも、同じ2〜4の処理をした列を作る。
- 突合用の列どうしで照合し、一致した件数を数える。
5を飛ばす人が多い。片側だけ正規化すると、掃除したはずの「カ)」と「株式会社」が一致しないまま残り、原因が自分の関数にあるのか相手のデータにあるのか分からなくなる。両側に同じ処理を通してから照合する。
一致した件数で3つに分ける
照合の結果を「一致した/しなかった」の2つで見ると、次にやることが決まらない。一致した件数で3つに分けると、行ごとに処理が決まる。
| 一致件数 | 起きていること | 処理 |
|---|---|---|
| 1件 | その県内で同じ商号は1つしかない | 法人番号を確定して書き込む |
| 0件 | 屋号・個人事業主、支店や事業所名で登録、旧商号のまま、会社名の欄に担当者名が入っている、県を間違えている | 原因の種類で分けて置く。個人事業主は法人番号を持たない場合があるので、別系統のIDを用意する |
| 2件以上 | 同じ商号の別法人が実在する | 所在地(市区町村まで)で絞る。それでも残るなら人が判断し、判断できないものは未判定のまま残す |
0件と2件以上の行を消したり、いちばん近そうな番号を入れて埋めたりしない。付いていない行が何件あるかを数えられる状態が、次の月の作業リストになる。埋めてしまうと、間違った番号が入ったことにも気づけなくなる。
付けた後に何をするか
番号は付けて終わりではない。商号変更と本店移転は起きるし、そのたびに手元の会社名は古くなる。差分データが日別に出ているので、自社が持っている法人番号の一覧と突き合わせれば、名称や所在地が変わった取引先だけを拾える。月に一度でも十分に追いつく。
新しく取引先を登録するときに法人番号を入れる運用へ切り替えるのは、この一括付番が終わってからでいい。先に運用だけ変えても、過去の行が空のままなので集計は合わない。作成・変更・統合・廃止を誰が判断するかは取引先マスタの責任者設計で先に決めておく。システムを乗り換える予定があるなら、移行前にデータ構造の棚卸しを通しておくと、どのテーブルに番号を持たせるかで迷わない。
取引先が適格請求書発行事業者かどうかは、国税庁の適格請求書発行事業者公表サイトで確認できる。登録番号は「T」を除くと13桁の半角数字で、サイト上では一度に10件まで検索できるほか、公表情報のダウンロードとWeb-APIも用意されている。経理側で登録番号を持っているなら、営業側のリストと突き合わせる材料が1つ増える。
来週やる一歩:1県ぶんだけ通す
- 自社リストを本店所在地の都道府県で並べ替え、いちばん件数が多い県を選ぶ。
- その県の全件データをCSVでダウンロードして開く。
- 両側に同じ正規化を通した突合用の列を作る。
- 照合して、1件/0件/2件以上の件数を数える。
- 2件以上の行だけを見て、所在地で絞れるかどうかを確かめる。
ここまでで、自社のリストが会社名だけで寄せられる状態なのかどうかが分かる。他のデータ整備の記事は業務改善カテゴリにまとめている。
よくある質問
名寄せをエクセルでやるとき、会社名の一致だけで判定してはいけないのはなぜですか?
同じ商号の会社が別法人として実在するためです。会社名の完全一致だけでは同一法人と確定できません。法人番号に加え、本店所在地や既存の取引情報を照合し、判定できない行は統合せず未判定として残します。
法人番号のデータは有料ですか。どこで手に入りますか?
無料です。国税庁の法人番号公表サイトが、法人番号を指定した法人等の基本3情報(商号又は名称、本店又は主たる事務所の所在地、法人番号)を公表しています。前月末時点の全件データを全国分または都道府県単位でダウンロードでき、形式はCSV(Shift-JIS/Unicode)とXML(Unicode)です。日別の差分データもあります。同サイトは法人番号について「利用範囲の制約がなく、誰でも自由に利用できます」と説明しています(2026年8月26日確認)。
突合しても一致しなかった行は捨ててよいですか?
捨てません。0件一致は屋号や個人事業主、支店名での登録、旧商号、会社名の欄に担当者名が入っているといった原因に分かれ、原因ごとに処理が変わります。2件以上一致した行も、所在地で絞れるものと人が判断するしかないものに分かれます。判定できなかった行には「未判定」の印を残し、件数を数えられる状態にしておくと、次の月に何から手をつけるかが決まります。
泉 款太(いずみ かんた)
株式会社SalesDock 代表取締役
慶應義塾大学法学部卒。スタートアップ、ラクスル、リクルート(SUUMO)を経て2025年に独立。 中小企業の経営・営業・業務・データをつなぐ事業基盤の設計と実装を支援。 不動産・製造業・クリニックを中心に、累計40社以上の支援に携わる。
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