SalesDock ロゴSalesDock
業務改善

CRM構築の進め方|導入前に作るデータ定義書の7項目

ツールを設定する前に、現場が迷わない言葉とデータの型を揃える

10分で読める

この記事の対象

顧客情報がExcel、名刺、メール、担当者の記憶に分かれ、CRMを入れても入力や集計が続かない会社。ツール選定前に、会社・担当者・商談を同じ言葉で扱う方法を整理します。

CRM導入の相談では、製品比較と管理画面の設定から始めた結果、「顧客名」「案件」「確度」の意味が担当者ごとに違うケースがあります。この状態では入力が止まり、同じ項目が増え、経営会議の数字を再びExcelで作ることになります。

先に必要なのはデータ定義書です。難しい設計書ではありません。何を、どの名前と形式で、いつ入力し、何に使うかを1行ずつ決めた表です。

CRM構築は「業務→データ→ツール」の順で進める

  1. 営業の流れと判断を整理する
  2. 必要なデータと更新タイミングを定義する
  3. 必要条件を満たすCRMを選び、設定する
  4. 小さな範囲で入力と出力を一巡する
  5. 実測を見て項目と運用を直す

IPAも要件定義では、利用企業と開発側が合意し、業務要件とシステム要件を文書化すること、実際の業務利用者を参加させることを重視しています。CRMも同じで、設定担当だけでは業務上の意味を決められません。

最初に分ける3つの箱

最小構成では、データを「会社」「担当者」「商談」に分けます。CRMではこれらをオブジェクトなどと呼び、その中の項目をプロパティやフィールドと呼びます。

1行が表すもの主な項目
会社取引先の組織会社名、業種、所在地、担当営業
担当者会社に所属する個人氏名、部署、役職、連絡先
商談具体的な提案・契約機会商談名、金額、段階、次回行動、予定日

会社と商談を同じ表にすると、同じ会社の2回目の提案で会社情報が重複します。担当者が異動したときも、過去商談との関係が崩れます。まず箱を分け、箱同士を関連付けます。

データ定義書に入れる7項目

項目決めること
1|対象の箱どのデータに属するか商談
2|表示名現場に見せる名前商談段階
3|内部名連携や移行で使う一意のキーdeal_stage
4|型・形式文字、数値、日付、単一選択など単一選択
5|選択肢・入力規則許可する値と必須条件初回接触/提案/見積/受注/失注
6|入力元・更新時点誰が、いつ、どこから更新するか担当営業が商談終了時に更新
7|利用目的・責任者何の判断・出力に使い、誰が管理するか週次案件会議/営業責任者

HubSpotの公式資料でも、プロパティはレコード上の情報を格納するフィールドとされ、既定項目の確認、ラベル、フィールドタイプ、ルールやアクセスの設定が案内されています。製品固有の画面は違っても、「名前・型・規則を先に決める」という原則は共通です。

7項目を決める実践手順

1|毎週使う出力から逆算する

最初に「何を入力できるか」ではなく、「何を判断したいか」を決めます。たとえば週次会議で、案件数、金額、停滞日数、次回行動を確認したいなら、その4つを作るための項目が優先です。誰も見ない情報は後回しにします。

2|現物の表・メール・報告を集める

現在使っているExcel、見積書、日報、メール件名を集め、同じ意味の言葉をまとめます。「案件」「商談」「引合」が同じ意味なのか、段階が違うのかを現場へ確認します。ここを推測で統一すると、導入後に別項目が復活します。

3|選択肢を業務上の判断へ結び付ける

「確度A・B・C」だけでは、人により意味が変わります。Aは「見積提出済みかつ決裁者と面談済み」のように、確認できる条件で定義します。自由入力を減らしつつ、選択肢を増やしすぎないことも重要です。

4|入力する瞬間を業務の中へ置く

「空いた時間に入力」は運用ルールになりません。「商談終了後、次回予定を入れるとき」「見積送付時」のように、既存業務へ結び付けます。自動連携できる情報は人に再入力させません。

5|10件だけ入れて、出力まで試す

全件移行の前に、実在する10件程度で入力、検索、一覧、週次会議の出力まで一巡します。空欄が多い項目、判断に使えない選択肢、二重入力を記録し、定義書を直してから範囲を広げます。

構築前に避ける4つの失敗

  • 既存Excelをそのまま移す:使われていない列や重複まで持ち込む
  • 役職者だけで項目を決める:入力のタイミングと現場の言葉が合わない
  • 自由入力を増やす:表記揺れで集計と自動化が止まる
  • 全項目を必須にする:分からない値が仮入力され、信頼できない数字になる

すでにCRMが使われていない場合は、入力されない5つの構造と直す順番を先に確認してください。乗り換えだけでは同じ問題が再発します。

無料CRMを比較する前にも使える

データ定義を作ると、必要なオブジェクト、項目、権限、連携、レポートが明確になります。その条件で製品を比較すれば、知名度や機能数ではなく、自社の業務に必要な条件で選べます。候補を探す段階では、中小企業向け無料CRMの比較も参照できます。

構築後に測る5つの数字

  • 必須項目の入力率:必要な情報が期限内に入った割合
  • 不統一値の件数:同じ意味で別表記になった数
  • 重複率:同じ会社・担当者が複数登録された割合
  • 停滞レコード数:一定期間更新されていない商談数
  • 集計時間:会議用の数字を出すまでの時間

入力件数だけをKPIにすると、使われないデータが増えます。判断に必要なデータが揃い、集計時間が減ったかを見ます。

来週やること

  1. 週次会議で見たい数字を3つ選ぶ
  2. 会社・担当者・商談の3シートを作る
  3. 各シートに7つの列を作り、必要項目を10行以内で定義する
  4. 営業担当と責任者に、項目の意味と更新時点を説明してもらう
  5. 実在する10件で入力から会議用出力まで試す

ツールの契約前でもスプレッドシートで実施できます。この一巡で、必要な機能と不要な機能が見えるようになります。

まとめ

CRM構築は、製品選定より先にデータの意味を揃える仕事です。対象の箱、表示名、内部名、型、選択肢、入力元と時点、利用目的と責任者の7項目を定義すれば、入力者の迷いと集計側の手直しを減らせます。小さく一巡してから設定と移行を広げることが、現場で使われるCRMへの近道です。

よくある質問

CRMのデータ定義書は、誰が作るべきですか?

システム担当だけで作らず、実際に入力する営業、数字を見る責任者、設定担当の3者で作ります。入力者が意味を説明できず、責任者が利用目的を説明できない項目は、必須にしないのが基本です。

最初から全項目を定義する必要がありますか?

必要ありません。会社・担当者・商談の3つから始め、毎週の会議や次の行動に使う項目を優先します。使い道が確認できた後に追加すれば、入力負担と設計変更を抑えられます。

無料CRMでもデータ定義は必要ですか?

必要です。無料か有料かに関係なく、同じ意味の項目が複数ある、選択肢が担当者ごとに違う、更新タイミングが決まっていない状態では、集計に使えません。ツール比較の前に定義すると選定基準も明確になります。

泉 款太(いずみ かんた)

株式会社SalesDock 代表取締役

慶應義塾大学法学部卒。スタートアップ、ラクスル、リクルート(SUUMO)を経て2025年に独立。 中小企業の経営・営業・業務・データをつなぐ事業基盤の設計と実装を支援。 不動産・製造業・クリニックを中心に30社以上の業務改善に携わる。

代表メッセージを読む →

関連記事

NEXT STEP

手順の次に効くのは、着手する順番

個別の手順をつなげて成果にするまでの3ヶ月ロードマップを、無料資料にまとめています。