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製造業

製造業の工程フロー図の作り方—受注から出荷までの業務を見える化する手順

15分で読める

この記事のポイント

製造業の工程フロー図・業務フロー図を作る具体的な手順を、受注→生産→出荷の流れに沿って解説する。フローチャートの記号の使い方、Excel・PowerPointでの作り方、見える化で見つかるボトルネックの実例、Before→Afterの改善効果まで。

「業務を改善したい」と思ったとき、最初にやるべきことは業務フローを図にすることだ。頭の中では「わかっている」つもりの業務も、フロー図に落とし込むと想像以上に複雑で、どこに時間がかかっているのかが初めて見えてくる。この記事では、従業員30〜100名規模の中小製造業を想定して、業務フロー図(フローチャート)の作り方を実践的に解説する。

「工程フロー図」と「業務フロー図」はどう違うのか

現場では両方の呼び方が使われるが、指している範囲が少し違う。工程フロー図は、材料が製品になるまでの製造工程そのもの(切断→加工→溶接→検査→梱包)を並べた図。業務フロー図は、そこに営業の受注処理や生産管理の指示、出荷手配といった事務作業まで含めた、部門をまたぐ仕事全体の図だ。改善のためにボトルネックを探すなら、工程だけを見ても部門間の受け渡しで詰まっている箇所が出てこないので、この記事では業務側まで含めて書く。

なぜ製造業に工程フロー図・業務フロー図が必要なのか

製造業は工程が多く、部署をまたぐ作業が日常的に発生する。受注から出荷まで、営業・生産管理・製造現場・品質管理・出荷担当と、5つ以上の部門が絡むことも珍しくない。各部門が「自分の範囲」しか把握していないと、部門間の受け渡しで情報が抜け落ちたり、同じデータを何度も手入力したりする。

業務フロー図を作ることで得られるのは、大きく3つ。

1. 全体像が1枚で見える

部門ごとにバラバラだった業務の流れが、1枚の図で俯瞰できる。「自分の前工程」「自分の後工程」が明確になる。

2. ボトルネックが見つかる

どこで作業が滞っているのか、どこで手戻りが発生しているのかが視覚的にわかる。感覚ではなくデータで議論できるようになる。

3. 引き継ぎ・教育に使える

新人教育や担当者の異動時に、フロー図があると説明コストが大幅に下がる。「この人が辞めたら回らない」という属人化のリスクも減る。

フローチャートの基本記号—まず4つだけ覚える

業務フロー図に使う記号は、JIS規格(JIS X 0121)で定義されている。ただし、全部を覚える必要はない。製造業の業務フローを書くなら、まず以下の4つで十分だ。

出典・一次情報

制度・統計は改定されます。最新の情報は公表元でご確認ください。

記号意味使用例
端子角丸の四角形開始・終了「受注」「出荷完了」
処理長方形作業・処理「生産指示書を作成」「材料を発注」
判断ひし形分岐・判断「在庫あり?」「検査OK?」
矢印流れの方向工程間のつながり

慣れてきたら「データ入出力(平行四辺形)」や「手作業(台形)」を追加すると、より正確なフロー図になる。ただし最初から記号にこだわりすぎると進まない。まずは4つの基本記号でざっくり書いて、後から精度を上げるほうが実践的だ。

受注→生産→出荷の工程フロー図—具体例で見る

従業員60名の金属加工メーカーを例に、受注から出荷までの工程フローを見てみる。

ステップ1:受注処理

① 顧客から注文(FAX・メール・電話)を受ける

② 営業担当が受注内容を確認する

【判断】 標準品か特注品か?

→ 標準品:在庫を確認 → 在庫あれば出荷手配へ

→ 特注品:設計部門に仕様確認 → 見積作成 → 顧客承認後、生産へ

④ 受注管理システムに入力する

ステップ2:生産計画・製造

⑤ 生産管理が生産指示書を作成する

【判断】 材料の在庫は足りるか?

→ 足りない場合:材料を発注(納期を確認し生産日程を調整)

⑦ 製造現場で加工・組立を行う

⑧ 工程内検査を実施する

ステップ3:検査・出荷

⑨ 品質管理が最終検査を行う

【判断】 検査OK?

→ NG:製造に差し戻し(手戻り発生)

→ OK:梱包・出荷手配へ

⑪ 出荷伝票を作成し、配送手配を行う

⑫ 出荷完了を営業・顧客に連絡する

こうして書き出すと、一見シンプルな「受注→生産→出荷」の中に、3つの判断分岐と1つの手戻りループがあることがわかる。実際の現場では、ここにさらに「過去の類似案件を探す」「特定の取引先だけ別手順」といった例外が加わり、工程数は倍以上に膨らむ。

Excel・PowerPointでフローチャートを作る手順

専用ツールがなくても、ExcelやPowerPointの図形機能で十分実用的なフロー図が作れる。

Excelで作る場合

1. セルの幅を揃える:列幅を2〜3cmに統一し、方眼紙のようにする

2. 「挿入」→「図形」:フローチャート用の記号が用意されている。角丸四角形・長方形・ひし形を選ぶ

3. 図形の中にテキストを入力:作業名を短く書く(「受注入力」「在庫確認」など)

4. 矢印コネクタで接続:「挿入」→「図形」→「コネクタ:矢印」を使うと、図形を移動しても矢印がついてくる

5. 部門ごとに列を分ける:「スイムレーン」として、営業・生産管理・製造・品管の列を作ると、担当が明確になる

PowerPointで作る場合

1. スライドサイズを変更:「デザイン」→「スライドのサイズ」→「ユーザー設定」でA3横など大きめに設定

2. SmartArtは使わない:SmartArtは見た目はきれいだが、分岐や手戻りが表現できない。「図形」を使う

3. 色で区別する:通常の工程は青、判断は黄、手戻りは赤、のように色を使い分けると見やすい

4. グリッドに合わせる:「表示」→「グリッド線」をオンにして、図形を揃える

どちらで作っても構わないが、複数人で編集・共有するならGoogleスプレッドシートやGoogleスライドを使うと、リアルタイムで共同編集できる。フロー図は「1回作って終わり」ではなく、現場の変化に合わせて更新し続けるものなので、編集のしやすさは重要だ。

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業務フロー図を作るときの落とし穴と対策

フロー図を作ろうとすると、多くの場合つまずくポイントがある。事前に知っておくと回避しやすい。

落とし穴1:会議室のヒアリングだけで作ってしまう

現場の担当者に「業務フローを教えてください」と聞くと、スムーズに流れるケース(正常系)だけが出てくる。しかし改善余地が大きいのは、例外対応や手戻りのほうだ。正常系だけでなく、例外が起きる条件・対応する担当・所要時間を記録すると、見落としを減らせる。

対策:現場に入って実際の作業を観察する「観察型ヒアリング」を組み合わせる。担当者の横に座り、1作業ごとに「今、何をしましたか?」「なぜそうしましたか?」と聞く。2〜4時間、実際の作業を見ることで、言語化されない業務を拾い上げられる。

落とし穴2:手戻り・差し戻しを書かない

フロー図は一方向に描きがちだが、実際の業務では「検査NG→製造に戻す→再検査」のような手戻りが起こる。案件ごとに発生回数と再作業時間を記録すると、どの工程を先に改善すべきかを判断できる。

対策:フロー図に手戻りの矢印(赤色で描くとわかりやすい)を必ず入れる。手戻りの発生頻度と1回あたりの所要時間も記載すると、改善の優先順位がつけやすくなる。

落とし穴3:属人的な工程が「普通の作業」に見えてしまう

「この材料の発注は田中さんじゃないとわからない」「図面の解釈は鈴木さんに聞く」。こうした属人的な知識は、フロー図には「発注」「図面確認」としか書かれない。しかし田中さんが休むと発注が止まる。

対策:フロー図の各工程に「担当可能人数」を書き添える。1人しかできない工程には赤いマークをつける。この「人依存ポイント」が、優先的に標準化すべき工程になる。

落とし穴4:システム間の手作業が抜け落ちる

「受注管理システムに入力→生産管理システムに転記」。この「転記」が手作業なのか自動なのかで、工数もミスの発生率もまったく違う。ヒアリングでは「システムに入力します」としか出てこないが、実際には「受注システムからCSVを出力→Excelで加工→生産管理システムに手入力」という3ステップが隠れている。

対策:フロー図にシステム名を併記し、システム間の接続方法(自動連携/CSV/手入力)を明示する。手作業の転記は、改善効果が大きいポイントとしてマークしておく。

見える化で発見できるボトルネック—改善の考え方

業務フロー図を作って終わりではなく、図から見えたボトルネックを実際に改善するところまでが目的だ。以下は、改善案を考えるときの例であり、削減効果は各社の件数・作業時間・運用設計によって変わる。

フロー図が形骸化するのは、5S活動が続かなくなるのと同じ理由による。作った時点で満足してしまい、更新する担当と頻度を決めていないからだ。仕組みとして残す進め方は製造業の5S活動が続かない理由—形骸化しない5Sの仕組み化3ステップが参考になる。

ボトルネックBeforeAfter確認する指標
受注データの二重入力FAX→手入力→生産管理に再入力Web受注フォーム→連携方法を検討1件あたりの入力時間・転記ミス
検査NGの手戻り最終検査で不良発覚→製造に差し戻し工程内検査の追加・基準の明確化を検討手戻り回数・再作業時間
見積作成の属人化ベテラン1人だけが対応(休むと止まる)過去見積を検索できる形に整理し、複数人で対応できるようにする担当可能人数・見積回答までの時間

いずれも、業務フロー図を作ったことで「どこに時間がかかっているか」「どこが人に依存しているか」が可視化され、改善の打ち手が具体的に見えた事例だ。

改善の優先順位をつける—4つの評価基準

フロー図からボトルネックが複数見つかったとき、全部を同時に改善するのは現実的ではない。以下の4つの基準でスコアリングして、優先順位をつける。

評価基準内容配点
頻度その業務が発生する頻度日次=3 / 週次=2 / 月次=1
工数1回あたりの所要時間2時間超=3 / 1〜2時間=2 / 1時間未満=1
属人性特定の人しかできないか1人だけ=3 / 2〜3人=2 / 誰でも=1
ミス率手戻りやエラーの発生頻度週1回以上=3 / 月数回=2 / まれ=1

4項目の合計が10点以上の業務から着手する。製造業では「見積作成」「受注処理」「出荷指示」がこのスコアで上位に来ることが多い。まずは1つだけ改善して成果を出し、その実績をもとに次の改善に進むのが、社内の協力を得やすい進め方だ。

まとめ:業務フロー図は「発見」のための道具

業務フロー図は、きれいな図を描くことが目的ではない。「今、実際に何が起きているか」を発見するための道具だ。受注から出荷まで、各工程を洗い出し、判断分岐と手戻りを書き込み、属人的な工程にマークをつける。それだけで、どこから手をつけるべきかが見えてくる。

まずはExcelやPowerPointで、自社の主要な業務を1つ選んでフロー図にしてみてほしい。完璧を目指す必要はない。ざっくりでも図にすることで、「ここが問題だったのか」という気づきが必ず出てくる。

よくある質問

製造業の業務フロー図はどうやって作ればいいですか?

まず対象業務(受注・生産・出荷など)を選び、現場で実際の作業を観察しながら各工程を洗い出します。次に「開始・終了」「作業」「判断(分岐)」の記号を使ってフローチャートに落とし込みます。ExcelやPowerPointの図形機能で十分作成可能です。大事なのは、会議室でのヒアリングだけでなく現場観察を組み合わせること。

業務フローの見える化で製造業のどんなボトルネックが見つかりますか?

よく見つかるのは、システム間の手作業での転記、特定の人しかできない属人的な工程、検査NGによる手戻り、例外対応の多さなどです。フロー図上で頻度・所要時間・担当可能人数を記録すると、改善の優先順位を決めやすくなります。

フローチャートの記号にはどんな種類がありますか?

基本的な記号は4つです。角丸の四角形が「開始・終了」、長方形が「作業・処理」、ひし形が「判断・分岐」、矢印が「流れの方向」を表します。製造業の場合はこれに加えて、平行四辺形で「データ入出力」、台形で「手作業」を表すこともあります。まずは4つの基本記号だけで十分実用的なフロー図が作れます。

業務フロー図を作っても現場で使われないのはなぜですか?

多くの場合、会議室でのヒアリングだけで作ったフロー図が現場の実態と乖離しているのが原因です。現場の担当者が「自分の仕事と違う」と感じた時点で使われなくなります。現場を観察しながら作成し、完成後に担当者と一緒に内容を確認するプロセスを入れることで定着率が大きく変わります。

泉 款太(いずみ かんた)

株式会社SalesDock 代表取締役

慶應義塾大学法学部卒。スタートアップ、ラクスル、リクルート(SUUMO)を経て2025年に独立。 中小企業の経営・営業・業務・データをつなぐ事業基盤の設計と実装を支援。 不動産・製造業・クリニックを中心に30社以上の業務改善に携わる。

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