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AI活用入門

物流のAI活用|中小の運送・倉庫会社が最初に任せる業務と効果を測る数字

ロボットや自動倉庫の前に、受注・配車・荷待ちの記録から考えます。

10分で読める

物流のAI活用:結論

AIの道具を選ぶ前に、受注から請求までの流れを1枚に書き、どこに時間がかかっているかを1週間測ってください。そこで一番時間を食っている業務が、最初にAIを試す場所です。

  • 中小の運送会社・倉庫会社がAIを最初に使うなら、受注の入力、配車案のたたき台、荷待ち時間の集計、請求漏れの洗い出しのような、事務と判断の下準備が向いています。
  • 需要予測やロボットのような大手の事例は、大量のデータと設備投資が前提です。受注や運行の記録が紙やExcel、配車担当の頭の中に分かれている段階では、先に記録をそろえるほうが効果が出ます。
  • 2024年4月からドライバーの時間外労働は年960時間が上限になり、2025年4月からは規模にかかわらず荷待ち時間の短縮などの努力義務がかかっています。荷待ちや付帯作業の時間を数字で示せる会社ほど、取引先と話を進めやすくなります。

この記事は、運送会社・倉庫会社の業務でAIをどう使うかを扱います。業種を問わないAI導入の進め方は中小企業のAI導入 完全ガイドにまとめています。

「物流 AI」で調べると、配送ルートの最適化や自動倉庫、ピッキングロボットの事例がたくさん出てきます。どれも大手の物流会社や大きな荷主の話で、トラック20台の運送会社や、地場の倉庫会社がそのまま取り入れられるものは多くありません。この記事では、社長や配車担当がまだ多くの判断を抱えている規模の会社を想定し、AIをどこから使うと効果を測りやすいかを整理します。

物流のAI活用は、受注・配車・記録・請求の下準備から始める

中小の物流会社でAIが役に立ちやすいのは、人が最終判断をする前の「下準備」です。受注をFAXから受注表に起こす、配車案のたたき台を出す、運行記録から荷待ち時間を集計する、請求の記載漏れを探す。どれも毎日発生し、入力と出力の形がある程度決まっていて、最後は配車担当や事務担当が確認できる作業です。

物流のAI活用でも、配車の確定、取引先との条件交渉、事故や遅延が起きたときの判断は人に残します。ドライバーの拘束時間・休息期間には改善基準告示で上限があり、荷物と車両の相性や、取引先ごとの暗黙の約束は、データに残っていないことがほとんどだからです。

業務AIに任せる範囲人が残す判断測る数字
受注の受付FAX・メール・電話メモの内容を受注表の形に起こす届け先・時間指定・付帯作業の読み違いがないかの確認1件あたりの入力時間、入力ミスの件数
配車計画過去の配車表と当日の受注から、配車案のたたき台を出すドライバーの拘束時間・休息、車両と荷物の相性を見て確定する配車表を作り終える時刻、組み直しの回数
荷待ち・荷役時間の記録日報やデジタコのデータを、荷主・拠点ごとに集計する荷主へ改善を相談するかどうかの判断1回の受渡しごとの荷待ち時間、記録が取れている運行の割合
問い合わせ・到着確認よくある質問への返信や、遅延連絡の文面の下書き送る前の事実確認と、謝罪や補償が絡む連絡一次返信までの時間、同じ質問の件数
請求・運賃計算運行記録と請求書を突き合わせ、付帯作業や待機料の記載漏れ候補を出す請求するかどうか、取引先との条件の確認請求漏れの件数、締め作業にかかる時間
倉庫の入出荷・在庫出荷実績から翌週の物量の見込みや、人員配置の案を出す急な受注変更や欠品への対応見込みと実績の差、残業時間

受注の入力から始める場合、FAXの読み取り精度には限界があります。手書きや罫線のずれで読み違いが出る前提で、確認の手順を先に決めておくと安全です。読み取りでつまずきやすい点はFAXをOCRで読む前に知っておくことで詳しく書いています。

物流でAIが求められている背景:2024年問題と物流効率化法

物流でAIや効率化の話が増えた直接のきっかけは、ドライバーの働き方の規制と、荷主・物流事業者に対する新しい義務です。数字で押さえておくと、自社がどこまで対応を迫られているかが見えます。

  • 2024年4月:トラックドライバーの時間外労働に年960時間の上限がかかりました。あわせて改善基準告示も改正され、1年の拘束時間は原則3,300時間以内になっています。
  • 輸送力の見通し:国の検討会の最終取りまとめ(2023年8月)は、何も対策をしなければ2024年度に輸送能力の14.2%、2030年度には34.1%が不足する可能性があると試算しています。
  • 2025年4月:改正物流効率化法で、規模にかかわらず荷主と物流事業者に、荷待ち・荷役時間の短縮や積載効率の向上の努力義務がかかりました。国の基本方針は、荷主等に対し、1回の受渡しごとの荷待ち・荷役等時間の目標を原則1時間以内とし、業界特性などでやむを得ない場合を除いて2時間を超えないよう短縮することを求めています。
  • 2026年4月:一定規模以上の事業者が「特定事業者」に指定され、中長期計画の作成などが義務になりました。目安は、荷主が取扱貨物9万トン以上、トラック事業者が保有車両150台以上、倉庫業者が保管量70万トン以上です。
2024年4月時間外労働の上限ドライバーは年960時間まで2025年4月改正物流効率化法全事業者に荷待ち短縮の努力義務2026年4月特定事業者の義務化車両150台以上は中長期計画中小の現場記録と数字で話す荷待ち・付帯作業の時間
特定事業者でなくても、努力義務は2025年4月からかかっています。中小の会社にとっての備えは、時間を記録して示せることです。

保有車両が150台に満たない運送会社は、特定事業者としての計画づくりは求められません。それでも、荷主側は荷待ち時間を把握して短くする努力義務を負っているため、取引先から待機時間の実績や改善の相談を受ける場面は増えると見ています。国土交通省が2025年度に行った調査でも、荷主側の改善が進まず荷待ちが5時間を超える現場がまだある、という声が出ています。荷待ちや付帯作業の時間を荷主ごとに数字で出せるかどうかが、運賃や条件の交渉で効いてきます。AIはこの集計を楽にする道具として使えます。

大手の物流AI事例を、中小がそのまま真似しにくい理由

大手の事例で多いのは、需要予測、配送ルートの最適化、倉庫のロボット、画像による検品です。これらは、何年分もの出荷データ、システム化された倉庫管理、まとまった設備投資がそろって初めて効果が出ます。

中小の物流会社は、記録と集計から始める

中小の会社では、受注はFAXと電話、配車は配車担当がホワイトボードやExcelで組み、荷待ち時間は日報に手書きで残っている、という状態がめずらしくありません。受注がFAXと電話、配車がホワイトボードやExcel、荷待ち時間が手書きの日報という状態では、AIに配車の最適化を頼んでも学ばせるデータがそろっていません。中小の物流会社がAIを使う順番は、記録する、集計する、下書きさせる、提案させる、の4段です。上の段ほど多くのデータが要るため、まず記録と集計から始めます。記録と集計をそろえるだけでも、配車担当の残業や請求漏れの原因が見えるようになります。

上の段ほどデータが要る中小はまず1〜2段目から1. 記録する受注・運行を同じ形で2. 集計する荷主・曜日ごとに見る3. 下書きさせる受注表・配車案・返信4. 提案させる配車や人員の案
下の段の記録がそろうほど、上の段のAIの精度が上がります。いきなり4段目の配車最適化から入ると、学ばせるデータが足りません。

AIの効果はデータの量と形に左右されるため、物流のAI導入で成果が出ている会社ほど、ツールより先に業務とデータの形を整えています。データの整え方はデータ整備の進め方、業種をまたいだ事例は人手不足をAIで補った公的事例5選も参考になります。

最初の4週間でAIの効果を測る進め方

期間は4週間で区切ります。1週目に今の数字を取って対象を決め、2〜3週目に試し、4週目に同じ数字で比べます。長く取るほど「そのうちやる」に流れ、短すぎると比べる材料が集まりません。

1週目流れを1枚に書き、時間を測る1週目末一番時間を食う業務を1つ選ぶ2〜3週目AIの下書きを人が確認して使う4週目1週目と同じ数字で比べる
比べるのは1週目と4週目の同じ数字です。使った感想だけで続けるかどうかを決めません。

1週目:受注から請求までの流れを1枚に書き、時間を測る

受注の受付、配車、出発前の準備、運行、帰着後の日報、請求までを、担当者の名前つきで1枚に書きます。そのうえで1週間、配車表を作り終えた時刻、受注1件の入力にかかった時間、荷主ごとの荷待ち時間、月末の請求作業の時間を記録します。紙でもスプレッドシートでも構いません。

1週目の週末:一番時間を食っている業務を1つだけ選ぶ

記録を見て、時間が一番かかっている業務か、特定の人しかできない業務を1つ選びます。配車担当が毎晩遅くまで受注を打ち込んでいるなら受注の入力、月末に待機料の請求漏れが見つかるなら請求の突き合わせが候補です。同時に複数の業務へ広げると、どれが効いたのか分からなくなります。

2〜3週目:AIの下書きを、人が確認してから使う

選んだ業務について、AIに任せる範囲と人が確認する箇所を決めて試します。受注の入力なら、AIが起こした受注表を事務担当が原本と見比べてから配車に回します。どこを直したかを毎回1行で残しておくと、入力の形を変えるべきか、確認の手順を変えるべきかが判断できます。社内で確認の手順を決めるときはAI業務自動化で人の承認をどこに残すかも参考にしてください。

4週目:1週目と同じ数字で比べる

  • 受注の入力:1件あたりの入力時間と、配車後に見つかった入力ミスの件数を比べます。
  • 配車:配車表を作り終える時刻と、当日の組み直しの回数を比べます。
  • 荷待ちの記録:記録が取れている運行の割合と、荷主ごとの平均の荷待ち時間を見ます。
  • 請求:待機料や付帯作業の請求漏れの件数と、締め作業にかかった時間を比べます。

時間が減っていても、ミスが増えていれば確認の手順を見直します。費用に見合うかどうかの計算はAI導入のROIの計算式と計算例にまとめています。

どの業務からAIを試すか決めたい方へ

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物流でAIを使うときに気をつけること

配車担当の判断を、AIで置き換えようとしない

配車担当は、ドライバーの体調や得意な道、荷主ごとの細かい約束まで含めて組んでいます。AIの配車案は、その判断の一部をデータにする手伝いと考えてください。拘束時間や休息期間の上限を守れているかは、AIの案でも必ず人が確認します。社長や1人の配車担当に判断が集まっている会社の進め方は、社長が全部の業務を見ている会社の仕組み化でも書いています。

届け先の住所や荷主の情報を入れるルールを先に決める

個人宅の住所や氏名は個人情報で、荷主名や物量は取引先との守秘義務の対象になることがあります。業務用に契約し、入力内容が学習に使われない設定のサービスを選んだうえで、入力してよい情報の範囲を決めてから使い始めます。試す段階では、住所や社名を伏せた過去の受注データでも効果は確かめられます。

法令で決まった手続きは、AIの対象から外す

点呼や運転日報、実運送体制管理簿のように、法令で記録や保存の方法が決まっているものは、AIで下書きを作る場合でも、記録の要件を満たしているかを担当者が確認します。迷ったら、運輸支局や所属するトラック協会に確認してから進めてください。

一次情報・公式情報

制度・統計は改定されます。最新の情報は公表元でご確認ください。

物流のAI活用のよくある質問

物流でAIを使うと、具体的に何ができますか?

大手では需要予測、配送ルートの最適化、倉庫のロボット制御、画像による検品などに使われています。中小の運送会社や倉庫会社で取り組みやすいのは、FAXやメールで届く受注を受注表に起こす、過去の配車表をもとに配車案のたたき台を出す、運行記録から荷待ち時間を集計する、請求の記載漏れを洗い出す、といった事務と判断の下準備です。

物流効率化法の特定事業者でなければ、対応しなくてよいですか?

2026年4月から中長期計画の作成などが義務になった特定事業者は、トラック事業者なら保有車両150台以上、倉庫業者なら貨物の保管量70万トン以上が目安です。ただし2025年4月からは、規模にかかわらず荷主・物流事業者に荷待ち時間の短縮や積載効率の向上の努力義務がかかっています。中小の事業者も、荷待ち時間などを記録して取引先と話せる状態にしておくと、交渉の材料になります。

配車をAIに任せても大丈夫ですか?

配車案のたたき台を出させるところまでにとどめ、確定は配車担当が行うのが安全です。ドライバーの拘束時間や休息期間は改善基準告示で上限が決まっており、荷物と車両の相性や、取引先ごとの暗黙の条件はデータに残っていないことが多いためです。AIの案と実際に組んだ配車の違いを記録していくと、どの条件をデータとして足せばよいかが見えてきます。

届け先の住所や荷主名を、ChatGPTなどの生成AIに入れてもよいですか?

個人宅の住所や氏名は個人情報にあたり、荷主名や物量は取引先との守秘義務の対象になることがあります。業務用に契約し、入力内容が学習に使われない設定のサービスを選び、社内で入力してよい情報の範囲を決めてから使ってください。試す段階では、住所や社名を伏せた過去データで十分に効果を確かめられます。

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泉

泉 款太(いずみ かんた)

株式会社SalesDock 代表取締役

慶應義塾大学法学部卒。スタートアップ、ラクスル、リクルート(SUUMO)を経て2025年に独立。 中小企業の経営・営業・業務・データをつなぐ事業基盤の設計と実装を支援。 不動産・製造業・クリニックを中心に、累計40社以上の支援に携わる。

運営は株式会社SalesDock(大阪市中央区本町)。中小企業向けに、AI自走プラン(初期構築15万円+月額10万円・90日)と、 そのあとのAI顧問(月額5万円・6ヶ月契約から)を提供しています。価格は税別です。 大阪・関西を中心に、オンラインで全国からのご相談に対応しています。

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