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スタッフがすぐ辞めるクリニック—離職率を下げるために院長ができる3つのこと

給与を上げるだけでは解決しない。仕組みで「辞めない職場」を作る方法

8分で読める

この記事はクリニックのDX・業務効率化 完全ガイドの一部です。クリニック経営の効率化を体系的に知りたい方はまず完全ガイドをご覧ください。

この記事のポイント

クリニックの離職原因TOP3は「業務負担の偏り」「人間関係」「給与・待遇」。給与を上げるだけでは根本解決にならない。業務の棚卸し→仕組み化→コミュニケーション設計の3ステップで、離職の構造的な原因を潰すのが現実的な対策。

「また辞めた」—クリニックの院長にとって、スタッフの離職は最も頭の痛い問題の一つ。求人広告を出して、面接して、研修して、やっと一人前になったと思ったら退職届が出てくる。採用コストは1人あたり30万〜50万円。教育期間中の生産性低下まで含めると、1人辞めるたびに100万円近い損失になる。

この記事では、クリニックでスタッフが辞める構造的な原因を整理し、「仕組み」で定着率を上げるための具体策を3つ紹介する。

クリニックの離職率の実態

厚生労働省の調査によると、医療・福祉分野の離職率は約11%(令和4年)。ただし、これは大病院も含めた平均値。スタッフ10名以下の小規模クリニックに限ると、15〜25%に達するケースも珍しくない。5人のスタッフのうち、1年で1人は辞める計算。

特に離職が多いのは入職後6ヶ月以内。「思っていた業務と違った」「業務量が多すぎる」「雰囲気が合わない」—この3つが初期離職の典型的な理由。

スタッフが辞める原因TOP3

1

業務負担の偏り

受付・電話対応・会計・カルテ入力・在庫管理・レセプト業務—これらが「できる人」に集中する。特に経験の長いスタッフほど負担が増え、不公平感から「これだけやって、なぜ給料が同じなのか」という不満が溜まる。新人は「先輩が忙しすぎて質問できない」と感じ、放置されていると思って辞める。

2

人間関係(院長との距離感を含む)

少人数の職場だからこそ、人間関係の問題が逃げ場なく直撃する。院長が忙しくてスタッフと会話する時間がない、指示が一方的、感謝の言葉がない—こうした「小さな不満」の積み重ねが退職のきっかけになる。

3

給与・待遇への不満

クリニックの医療事務の平均年収は280万〜320万円。同じエリアの他院と比較されやすく、「隣のクリニックの方が月1万円高い」だけで転職されることもある。ただし、給与だけが原因で辞めるケースは実は少数。業務負担や人間関係の不満がある上で、給与が「最後の一押し」になるパターンが多い。

院長ができる3つのこと

1. 業務の棚卸しと再配分

まず「誰が、何の業務を、1日何時間やっているか」を可視化する。方法はシンプルで、1週間だけ各スタッフに業務内容と所要時間を記録してもらう。Googleスプレッドシートの共有シートで十分。

これだけで「Aさんに電話対応が集中している」「Bさんはレセプト業務で残業が常態化している」といった偏りが見える。偏りが見えたら、業務の再配分を行う。全員が全業務をできる必要はないが、主要業務を2人以上が対応できる体制にすると、属人化と不公平感の両方が緩和される。

2. 仕組みで業務負担を減らす

業務の棚卸しで「量が多すぎる」ことがわかったら、次はその業務自体を減らす仕組みを入れる。

すぐに効果が出る効率化施策

業務施策費用目安削減効果
電話予約対応Web予約システム導入月1万〜3万円電話対応を50〜70%削減
会計・精算自動精算機(リース)月3万〜5万円会計待ち時間を80%削減
問い合わせ対応FAQ+チャットボット月3,000〜1万円よくある質問の70%を自動回答
シフト管理クラウドシフト管理ツール月3,000〜5,000円シフト調整の手間を90%削減

全部入れても月額5万〜10万円程度。スタッフ1人の採用コスト(求人広告30万円+教育期間3ヶ月分の生産性低下)を考えれば、離職を1人防ぐだけで年間のコストは十分に回収できる。

3. 「5分面談」でコミュニケーションの仕組みを作る

人間関係の問題は「コミュニケーション不足」が根っこにあることが多い。とはいえ、院長は診療で忙しく、スタッフとゆっくり話す時間は取れない。

おすすめは「週1回、5分の1on1面談」。診療前の5分、または昼休みの5分で十分。聞くことは3つだけ。

5分面談で聞く3つの質問

①「今週、困ったことはあった?」—業務上の課題を早期に拾う

②「何か変えたいことはある?」—改善提案のきっかけを作る

③「体調は大丈夫?」—心身の不調を見逃さない

大事なのは「聞く姿勢」を見せること。5分で解決できなくてもいい。「院長は自分のことを気にかけてくれている」という実感が、離職を踏みとどまらせる最も強い力になる。

離職コストの試算—1人辞めるといくらかかるか

スタッフ1人の離職コスト(クリニックの場合)

求人広告費:10万〜30万円

面接・選考の工数:院長の時間5〜10時間 × 時給換算

教育期間(3ヶ月)の生産性低下:月給の50% × 3ヶ月 = 約40万〜50万円

既存スタッフの負担増による士気低下:定量化困難だが影響大

合計:1人あたり80万〜120万円

年に2人辞めれば160万〜240万円。これは「見えないコスト」として経営を圧迫し続ける。逆に言えば、月5万〜10万円の業務効率化投資で離職を年1人防げれば、十分にペイする計算。

まとめ:給与を上げる前に、仕組みを見直す

スタッフが辞める原因は、給与だけではない。むしろ「業務負担の偏り」と「コミュニケーション不足」が根本にあるケースが多い。給与を月1万円上げても、業務が変わらなければ離職は止まらない。

まずは業務の棚卸しから始める。1週間の記録で偏りを可視化し、仕組みで減らせる業務をデジタル化する。そして週1回5分の面談でコミュニケーションの土台を作る。この3つを3ヶ月続ければ、職場の空気は確実に変わる。

泉 款太(いずみ かんた)

株式会社SalesDock 代表取締役

慶應義塾大学法学部卒。スタートアップ、ラクスル、リクルート(SUUMO)を経て2025年に独立。 不動産・製造業・クリニックなど現場産業向けのAI業務効率化コンサルを提供。 30社以上の中小企業のAI活用・業務改善を支援。

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