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不動産

レントロールで最初に見る5項目|収益物件の資料を受け取ったときの確認手順

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この記事のポイント

レントロールには法定の様式がありません。作成元ごとに項目が違うので、読むときは書いてある数字を追う前に「書かれていない項目はどれか」を先に確認します。抜けている項目こそ、あとで金額に効いてきます。

収益物件の資料が届いて最初に開くのがレントロールです。ここで数字を合計して利回りを出す前に、5分だけ使ってほしい確認があります。

レントロールは、法令で様式が決まっている書類ではありません。管理会社が作るものもあれば、売主側の仲介が作るものもあり、載っている項目が毎回違います。合計欄だけが同じ形をしているので、つい同じ書類だと思って読んでしまう。ここに落とし穴があります。

実務で困るのは、書いてある数字が間違っているケースではありません。必要な項目がそもそも書かれていないケースです。この記事では、受け取った1枚を見るときの確認順を整理します。

1. 現況か、満室想定か

最初に確認するのはここです。表の上部に「現況」「満室想定」と明記されていれば早いのですが、書かれていないこともよくあります。

判別のしかたは単純で、空室の行に賃料が入っているかどうかを見ます。全ての行に賃料が入っていて空室欄が空白なら、満室想定の可能性が高い。入居者の欄が空欄なのに賃料だけ入っている行があれば、そこが想定賃料です。

満室想定であること自体は責める話ではありません。売却資料としては普通の形です。確認したいのは、空室に置かれた賃料の根拠です。

同じ建物の既存契約の平均:比較的妥当。ただし既存契約が古いと、現在の募集相場より高いことがあります。

新規募集の想定賃料:募集を出してみないと実現性が分かりません。周辺の募集事例と突き合わせる必要があります。

過去に埋まっていたときの賃料:いつの時点かによります。空室期間が長い部屋ほど、この賃料は実現しにくいと見ておくのが安全です。

ここで置いた前提が、そのまま利回りの分子になります。表面利回りと実質利回りの定義の違いについては「表面利回りと実質利回りがズレる理由」で整理しました。想定と現況の混在は、その中でも最も頻繁に起きるずれ方です。

2. 契約の種別と、残っている期間

賃料の合計が同じでも、その賃料がいつまで続くかは契約ごとに違います。レントロールに契約種別(普通借家か定期借家か)と契約期間が載っていない場合、この情報はゼロです。

特に確認したいのは、契約の満了が近い部屋がどれだけあるかです。取得直後に複数の退去が重なると、想定していたキャッシュフローが数ヶ月で変わります。契約開始日だけでも分かれば、更新のタイミングは推測できます。

法人契約の社宅がまとまって入っている物件では、この確認の重要度がさらに上がります。1社の異動時期に合わせて複数戸が同時に空くことがあるためです。名義が同じ行が複数あるときは、その名義でまとめて何戸あるかを数えておきます。

3. 賃料のばらつき — 既存契約と募集相場の差

同じ間取りの部屋の賃料を縦に並べて見ます。ここに大きな差があるとき、その差は時間の差です。

見え方考えられていること確認すること
古い契約ほど賃料が高い募集相場が下がっている。退去のたびに賃料が下がる可能性がある直近1年で成約した部屋の賃料はいくらか
新しい契約ほど賃料が高い相場が上がっているか、リフォームで賃料を上げている上がった部屋にいくらの工事費をかけたか
同じ間取りでばらばら階数・向き・改装の有無で差が付いている。あるいは値引き交渉の履歴フリーレントや広告料の条件が付いていないか

ここで見たいのは「今の合計賃料」ではなく「入れ替わったあとの合計賃料」です。取得後3年で全戸が1回転すると仮定したときに、収入がどちらに動くのか。この向きが分かるだけで、値付けの根拠がだいぶ変わります。

4. 敷金・保証金などの預り金

レントロールに預り金の欄がない資料は珍しくありません。ただ、預り金は買主が引き継ぐ債務にあたるので、金額の話に直接効いてきます。

確認したいのは、各戸の預り金額と、それが売買時にどう精算されるかです。精算の方法は契約条件で決まる話なので一般化できませんが、「レントロールに書かれていないから存在しない」ということはありません。書かれていなければ、必ず別途確認します。

古い物件では、償却の定めがある保証金や、更新時に据え置かれた敷金など、戸ごとに条件が違うことがあります。合計額だけでなく、条件が特殊な戸がないかを見ておくと、後で説明に困りません。

5. 名義の偏りと、共益費・駐車場の扱い

最後に、収入の内訳を見ます。ここで確認するのは2つです。

1つ目は名義の偏り。同一名義が複数戸ある場合、その名義が抜けたときの影響が大きくなります。関係会社や親族が入居しているケースもあるので、名義がまとまっている行があれば理由を確認します。サブリース(一括借上げ)が入っている場合は、レントロールに載っているのが実際の入居者の賃料なのか、借上げ賃料なのかで意味がまったく変わります。

2つ目は、賃料以外の収入がどう扱われているか。共益費が賃料に含まれているのか別立てなのか、駐車場・自販機・アンテナ基地局などの収入が合計に入っているのか。ここが揃っていないと、他の物件と利回りを比べたときに比較が成立しません。

社内で決めておくこと:利回りの分子に、共益費・駐車場収入・その他収入を含めるかどうか。物件ごとに判断を変えると、社内で物件を並べて比較できなくなります。含める/含めないを1回決めて、全物件で統一します。

5項目を「確認手順」に落とす

ここまでの5項目は、知識として知っていても、忙しい日には飛ばされます。実際に効くのは、資料を受け取ったときに必ず通る場所に置くことです。

支援先でやってもらっているのは、物件の検討シートに5行のチェック欄を足すだけです。凝ったものは要りません。

□ 現況か満室想定か(満室想定なら、空室の賃料根拠を記入)

□ 契約種別と、1年以内に満了する戸数

□ 同一間取りの賃料の最高と最低

□ 預り金の合計(記載がなければ「要確認」と記入)

□ 同一名義でまとまっている戸数/サブリースの有無

この5行が埋まっていない物件は次の工程に進めない、というルールにすると、一次判断の質が担当者によらず揃います。仕入れ判断の一次スクリーニングをどう組むかは「買取再販の仕入れスクリーニングを速くする」と「仕入れ判断のチェックリスト」で扱っています。収益物件の場合は、そのチェック項目の中にレントロールの5項目が入る形になります。

規模別に見た、つまずきどころ

規模起きていること対処
中小(〜30人)社長やベテランが目視で判断していて、他の人が同じ判断をできない判断している本人に、直近3件で何を見たかを聞いて5行に書き起こす。ゼロから作らない
準大手(50〜300人)チェック項目が20項目以上あり、形だけ埋められている一次判断用と契約前用に分ける。一次は5項目まで削り、残りは買付後の工程に移す

まとめ

レントロールは様式が決まっていない書類です。だから読むときは、書いてある数字を追う前に、書かれていない項目を探します。現況か満室想定か、契約種別と残存期間、賃料のばらつき、預り金、名義の偏り。この5つです。

そして、この5項目を知識ではなく5行のチェック欄にする。担当者が替わっても同じ一次判断ができる状態にすることが、実際の効果としては一番大きいと思います。

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※ 本記事は一次判断の確認手順を整理したもので、個別の取引における法的・税務的な判断を示すものではありません。契約条件や精算方法は取引ごとに異なります。実際の取引にあたっては、賃貸借契約書の原本や入金実績とあわせて、必要に応じて専門家にご確認ください。記述は当社が支援している会社の事例をもとに一般化したものです。

よくある質問

レントロールに決まった様式はありますか?

法令で定められた様式はありません。管理会社や仲介会社がそれぞれの形で作っているため、同じ物件でも作成元によって載っている項目が変わります。だからこそ、受け取った側は「何が書いてあるか」より「何が書かれていないか」を先に確認する必要があります。現況か満室想定か、契約種別が入っているか、共益費が賃料に含まれているか。この3点は書かれていないことが多いので、書かれていなければ確認する、と手順に組み込んでおくのが安全です。

満室想定のレントロールは信用できませんか?

満室想定であること自体は問題ではありません。売却時の資料としては一般的な形です。確認が必要なのは、空室部分にどの賃料が入っているかです。同じ建物の既存契約の平均を置いているのか、新規募集の想定賃料を置いているのか、あるいは過去に埋まっていたときの賃料なのかで、実現性がまったく変わります。空室に置かれた賃料の根拠を1度確認しておくと、後の値付けの議論が早くなります。

レントロールの確認はどこまでやれば十分ですか?

一次判断の段階では、この記事で挙げた5項目で十分だと考えています。この段階の目的は正確な評価ではなく、検討を進めるか止めるかを決めることだからです。買付を入れる段階に進んだら、賃貸借契約書の原本、入金の実績、預り金の残高との突き合わせが必要になります。一次判断と契約前の確認は目的が違うので、同じ深さでやると一次判断が遅くなり、機会を落とします。

泉 款太(いずみ かんた)

株式会社SalesDock 代表取締役

慶應義塾大学法学部卒。スタートアップ、ラクスル、リクルート(SUUMO)を経て2025年に独立。 中小企業の経営・営業・業務・データをつなぐ事業基盤の設計と実装を支援。 不動産・製造業・クリニックを中心に30社以上の業務改善に携わる。

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