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不動産

宅建士の採用単価は50〜150万円—中小不動産会社が取るべき確保戦略を解説

採用コストだけでなく「定着」と「育成」の視点が重要

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この記事は不動産会社のDX・業務改善 完全ガイドの一部です。不動産業の効率化を体系的に知りたい方はまず完全ガイドをご覧ください。

この記事のポイント

宅建士の採用単価は50〜150万円が相場。求人媒体・人材紹介・リファラルのコスト比較と、社内育成・未経験者採用で採用難を乗り越える具体策を解説。

宅建士(宅地建物取引士)は不動産会社にとって必須の人材。事務所ごとに従業員5人に1人以上の割合で専任の宅建士を設置する義務がある。ところが宅建士の有資格者は転職市場で引く手あまたで、中小不動産会社が採用するのは年々難しくなっている。この記事では、チャネル別の採用コストを整理した上で、「採用」だけに頼らない宅建士確保の戦略を解説する。

宅建士不足の現状

宅建試験の合格率は例年15〜17%前後。合格者は年間約3〜4万人いるが、全員が不動産業界で働くわけではない。金融・建設・保険業界でも宅建資格は評価されるため、不動産会社への就職は合格者の一部にとどまる。

特に地方の中小不動産会社は厳しい。大手仲介会社や管理会社の方が給与・福利厚生で優位に立つため、宅建士の取り合いでは不利になりやすい。「宅建士がいなくて事業所を増やせない」「退職した宅建士の後任が見つからない」という声は珍しくない。

チャネル別の採用コスト比較

宅建士の採用チャネル別コスト(2026年時点の目安)

チャネル採用単価採用期間特徴
求人媒体(Indeed等)50〜80万円2〜4ヶ月応募数は多いが質のばらつきが大きい
人材紹介(エージェント)100〜150万円1〜3ヶ月年収の30〜35%が手数料。質は高い
リファラル(社員紹介)10〜30万円不定紹介報奨金のみ。定着率が高い
ハローワーク0円1〜6ヶ月コストゼロだが応募が少ない傾向
SNS採用(自社発信)0〜20万円3〜6ヶ月時間はかかるが会社の魅力が伝わりやすい

人材紹介は確実性が高いが、年収400万円の宅建士を採用すると手数料だけで120〜140万円かかる。中小企業にとっては大きな出費。しかも「採用できた」時点ではコストの半分。本当の問題は「定着するかどうか」。

定着が本当の問題—採用コストの無駄遣いを防ぐ

採用単価100万円かけて入社した宅建士が1年以内に辞めた場合、採用コスト+教育コスト+機会損失で200〜300万円の損失になる。「採用」と「定着」はセットで考える必要がある。

宅建士が辞める理由(多い順)

1. 給与への不満:宅建手当が月1〜3万円では物足りない。資格の市場価値に見合った報酬かどうか。

2. 業務の偏り:重要事項説明の「ハンコ係」としてしか使われない。やりがいが感じられない。

3. 労働環境:長時間労働、休日出勤が常態化。特に売買仲介で多い。

4. キャリアパスが見えない:5年後、10年後に自分がどうなっているかイメージできない。

採用する前に、自社の労働環境と報酬水準が「宅建士が3年以上働き続けたい会社」になっているかを点検する。採用に100万円かけるより、定着施策に50万円かける方がROIは高い。

社内育成で宅建士を増やす4つの施策

1. 資格取得支援制度を整備する

既存社員の宅建合格を支援する。具体的には、受験費用の会社負担(約8,000円)、テキスト・模試費用の補助(2〜5万円)、合格時の一時金(10〜30万円)を制度化する。年間の投資額は1人あたり5〜35万円程度で、外部から宅建士を採用するより圧倒的に安い。

2. 勉強時間を業務時間内に確保する

「勉強は自己責任」では合格率は上がらない。週2〜3時間の勉強時間を業務時間内に確保する会社は、社員の合格率が明らかに高い。試験直前の1ヶ月は残業を減らす配慮も効果的。

3. 社内勉強会・先輩宅建士によるサポート

既に宅建士資格を持つ社員が、受験予定の社員に勉強法を教える。週1回30分の勉強会でもいい。一人で勉強するより、仲間がいた方が継続しやすい。

4. 合格後の待遇改善を明確にする

「宅建に受かったら何が変わるか」を事前に明示する。宅建手当の金額、担当できる業務の幅、昇進への影響を具体的に伝える。目標が明確な方が、勉強のモチベーションは維持しやすい。

未経験者+資格支援という選択肢

「宅建士を採用する」のではなく「未経験者を採用して宅建士に育てる」という発想の転換も有効。異業種からの転職者は、不動産業界の固定観念がない分、新しい取り組みに柔軟。

未経験者採用+資格支援の経済性

宅建士経験者を人材紹介で採用:120万円(手数料)+ 年収450万円

未経験者を求人媒体で採用+資格支援:30万円(採用)+ 35万円(支援)+ 年収350万円

初年度の差額:約155万円。2年目以降は給与差のみ

未経験者採用のリスクは「宅建に合格しない」こと。ただし、適切な支援制度があれば合格率は30〜40%まで上がる(一般の合格率は15〜17%)。2年以内に合格すれば、経済的には十分にペイする。

まとめ:「採用」と「育成」の両面で宅建士を確保する

宅建士の確保は、外部から採用するか、社内で育てるかの二択ではない。両方を並行して進めるのが現実的。短期的には人材紹介やリファラルで即戦力を確保しつつ、中期的には社内の資格取得支援で宅建士の数を増やす。

採用戦略全体の見直しについては「不動産会社の人材定着戦略」、人手不足への対応については「不動産会社の採用難対策」も参考にしてほしい。

泉 款太(いずみ かんた)

株式会社SalesDock 代表取締役

慶應義塾大学法学部卒。スタートアップ、ラクスル、リクルート(SUUMO)を経て2025年に独立。 不動産・製造業・クリニックなど現場産業向けのAI業務効率化コンサルを提供。 30社以上の中小企業のAI活用・業務改善を支援。

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