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不動産

マイソク1件に70分かけている営業 — 物件資料作成が終わらない理由

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この記事のポイント

物件資料(マイソク・提案書)の作成は、テンプレート+データ自動流し込みで1件70分から10分に短縮できる。月間40件分なら月40時間の削減。デザインも統一され、営業の属人化も解消する。

不動産仲介の現場で、物件資料の作成にどれだけ時間を取られているか。マイソク、提案書、物件概要書。1件ごとにExcelやPowerPointを開いて、物件情報を手入力して、写真を貼って、レイアウトを整える。これを1日に何件もやっている営業担当は少なくない。1件あたり70分。月40件作れば、それだけで月46時間以上が資料作成に消えている計算になる。この時間、本来は顧客対応や内見同行に使えるはずの時間だ。

手作業の物件資料作成が抱える3つの問題

問題1:1件あたり70分、時間がかかりすぎる

典型的なマイソク作成の作業内訳を見てみる。物件情報の転記に15分、間取り図の取り込みと調整に10分、外観・内装写真の選定と配置に15分、周辺環境・交通アクセスの記載に10分、レイアウト調整とデザイン微調整に20分。合計で約70分。これが1件分。繁忙期に新着物件が10件入れば、資料作成だけで丸2日が潰れる。

問題2:デザインが人によってバラバラ

営業が5人いれば、マイソクのフォーマットも5種類ある。フォントサイズ、写真の配置、色使い、情報の並び順。同じ会社の資料なのに統一感がない。顧客から見ると「この会社、大丈夫かな」という印象になる。特に法人オーナーや投資家への提案書で、デザインの質が低いと信頼性に直結する。テンプレートを配布しても、結局各自がカスタマイズして崩れていく。

問題3:転記ミスが頻発する

手入力でいちばん怖いのは数字の転記ミス。賃料、面積、管理費、築年数。ひとつ間違えるだけで、顧客への信頼を損なう。実際に「提案書の賃料が間違っていた」ことが原因で商談が破談になったケースもある。ダブルチェックの工数まで含めると、資料作成にかかる実質的な時間はさらに増える。

資料作成を自動化する3つのステップ

ステップ1:テンプレートの標準化(1〜2週間)

まずやるべきは、物件資料のテンプレートを1種類に統一すること。マイソク用、提案書用、物件概要書用の3パターンがあれば十分。テンプレートは「どこに何を入れるか」が明確に決まっている状態を目指す。

テンプレートに含める定型要素

1. 物件名・所在地・交通アクセス(自動挿入エリア)

2. 間取り図(画像差し込みエリア)

3. 外観・内装写真(最大6枚、自動リサイズ)

4. 物件スペック表(面積・築年数・構造・階数など)

5. 賃料・価格・管理費・敷金礼金の一覧

6. 周辺施設情報(コンビニ・スーパー・学校・病院)

7. 会社ロゴ・担当者連絡先(フッター固定)

ポイントは、テンプレート上のすべてのテキスト領域に「変数名」を割り当てておくこと。たとえば物件名なら{property_name}、賃料なら{rent_price}。この変数に外部データを流し込むことで、手入力をゼロにする。

ステップ2:物件データベースとの連携(2〜3週間)

テンプレートに流し込むデータの元を整備する。多くの不動産会社はすでに物件管理システム(いえらぶ、ノマドクラウド、リアルターなど)を使っている。そこに入っている物件データをAPI経由またはCSVエクスポートで取得し、テンプレートの変数に自動マッピングする。

データ連携の構成イメージ

物件管理システム → CSV/API → データ変換スクリプト → テンプレートエンジン → PDF出力

写真データも同様に、物件管理システムの画像フォルダから自動取得する。外観写真、内装写真、間取り図をそれぞれ指定のスロットに差し込む。手動でやっていた「写真を探す→リサイズ→配置」の工程がまるごと消える。

ステップ3:ワンクリック生成の実装(2〜4週間)

最終的に目指す姿は、物件管理システムで物件を選んで「資料生成」ボタンを押すだけでPDFが出力される状態。具体的な実装方法は2通りある。

方法A:Googleスライド+GAS(コストほぼゼロ)

Googleスライドのテンプレートに、Google Apps Script(GAS)でスプレッドシートのデータを流し込む。初期構築は1〜2週間。月100件以下の中小仲介会社なら十分実用的。PDF変換もGAS内で完結する。

方法B:専用テンプレートエンジン+API連携(月3〜10万円)

Puppeteer(HTML→PDF変換)やDocuRain等のテンプレートエンジンを使い、物件管理システムのAPIと直接連携。月100件以上を処理する場合や、デザインの自由度が必要な場合はこちら。A4マイソクだけでなく、投資家向け提案書やオーナー向けレポートなど複数フォーマットに対応できる。

自動化で変わる具体的な数字

指標Before(手作業)After(自動化後)
1件あたりの作成時間70分10分(確認・微調整のみ)
月間作成件数40件40件
月間の資料作成工数約46時間約6.5時間
転記ミスの発生率月3〜5件ほぼゼロ(元データが正しければ)
デザインの統一性担当者ごとにバラバラ全件統一
月間の削減時間-約40時間/月

月40時間の削減は、営業担当1人の稼働日数でいうと約5日分に相当する。この5日分を内見対応や追客に回せば、成約数への直接的なインパクトがある。資料作成は「やらなきゃいけないけど売上に直結しない作業」の代表格。ここを圧縮する意味は大きい。

テンプレート設計で押さえるべき5つのポイント

ポイント1:情報の優先順位を固定する

マイソクで最初に目に入るのは物件写真と賃料(または価格)。この2つを最上部に大きく配置するのは鉄則。次に間取りと面積、その下に所在地・交通アクセス。詳細スペック(構造・築年数・管理費など)は下半分にまとめる。この順序をテンプレートで固定しておけば、誰が作っても「見やすい資料」になる。

ポイント2:写真は自動リサイズ+トリミング

物件写真のサイズや縦横比はバラバラ。テンプレートに「横4:縦3、幅600px」のスロットを用意しておき、流し込み時に自動でリサイズ・トリミングする仕組みにする。手動でリサイズしていた15分がゼロになる。

ポイント3:周辺施設は地図APIから自動取得

「最寄りのコンビニまで徒歩3分」「小学校まで500m」といった周辺施設情報は、Google Maps PlatformのPlaces APIで自動取得できる。物件の緯度経度から半径500m以内の施設を検索し、カテゴリごとに最寄りの施設名と距離を自動記載する。手作業で調べて入力していた10分がゼロになる。

ポイント4:条件分岐でテンプレートを出し分ける

売買物件と賃貸物件では載せるべき情報が違う。売買なら「土地面積・建ぺい率・容積率・用途地域」が必要だし、賃貸なら「賃料・管理費・敷金・礼金・更新料」が中心。物件種別に応じてテンプレートを自動で切り替える条件分岐を入れておくと、1つの仕組みで複数パターンに対応できる。

ポイント5:出力はPDFとURLの2形態

紙で渡す場面も、LINEやメールで送る場面もある。PDF出力に加えて、同じ内容をWebページとしても閲覧できるURL形式での出力に対応しておくと便利。Webページならスマホでそのまま見られるし、閲覧数のトラッキングもできる。どの物件資料が何回見られたかがわかれば、追客の優先順位づけにも使える。

導入時の注意点

注意点1:元データの品質がすべて

自動化の精度は、物件管理システムに入っているデータの正確さに完全に依存する。面積が平米なのか坪なのか、賃料が税込なのか税別なのか。データの入力ルールが曖昧だと、自動生成した資料にそのまま間違いが出る。自動化の前に「データ入力ルールの整備」を必ずやること。

注意点2:最初から完璧を目指さない

テンプレートの完成度は、使いながら上げていけばいい。最初のバージョンは「6割の出来」で構わない。実際に営業が使ってみて「ここの情報が足りない」「この写真の位置は変えたい」というフィードバックを2〜3週間集めてから改善する方が、結果的に早く実用レベルに到達する。

注意点3:人間の確認工程は残す

自動生成後に営業担当が1〜2分で目視チェックする工程は必ず残す。写真の選定が適切か、特記事項の追記が必要か、この物件に特有のアピールポイントはないか。完全無人化ではなく「70分→10分(うち確認2分+微調整8分)」が現実的なゴール。

まとめ:資料作成は「作る仕事」から「確認する仕事」に変わる

物件資料の自動化は、営業担当の仕事を「ゼロからExcelで作る」から「自動生成された資料をチェックして微調整する」に変える。1件70分が10分になり、月40件分で約40時間の削減。浮いた40時間は、内見対応・追客・オーナー訪問など、直接売上につながる業務に使える。デザインも全件統一されるので、会社としてのブランド品質も上がる。物件資料は毎日作るものだからこそ、自動化の効果が積み上がる。

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泉 款太(いずみ かんた)

株式会社SalesDock 代表取締役

慶應義塾大学法学部卒。スタートアップ、ラクスル、リクルート(SUUMO)を経て2025年に独立。 不動産・製造業・クリニックなど現場産業向けのAI業務効率化コンサルを提供。 30社以上の中小企業のAI活用・業務改善を支援。

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