物件写真の撮り方で反響が変わる—スマホでできる不動産写真の基本
写真の枚数と質で問い合わせ率は2〜3倍変わる
この記事は不動産会社のDX・業務改善 完全ガイドの一部です。不動産業の効率化を体系的に知りたい方はまず完全ガイドをご覧ください。
この記事のポイント
物件写真の枚数・質と問い合わせ率の関係、スマホ+広角レンズで十分な理由、必須カットのチェックリスト、賃貸と売買の違い、写真加工の適正ラインまで。
ポータルサイトの物件情報で、ユーザーが最初に見るのは写真。間取り図でも設備情報でもなく、写真の第一印象で「この物件を詳しく見るか」が決まる。にもかかわらず、物件写真に手を抜いている不動産会社は多い。暗い、枚数が少ない、何を撮っているか分からない—こうした写真は反響の機会損失を生んでいる。この記事では、スマホで撮れる物件写真の基本テクニックと、反響を上げるためのチェックリストを解説する。
写真の枚数・質と反響率の相関
ポータルサイトの反響データを分析すると、写真枚数と反響率には明確な相関がある。
写真枚数と反響率の関係(一般的な傾向)
| 写真枚数 | 反響率の傾向 | 備考 |
|---|---|---|
| 5枚以下 | 基準値 | 「写真が少なすぎて判断できない」と敬遠される |
| 10〜15枚 | 基準値の1.5倍 | 最低限のラインをクリア |
| 20〜25枚 | 基準値の2倍 | 「この物件はしっかり紹介されている」という印象 |
| 30枚以上 | 基準値の2.5〜3倍 | 周辺環境まで網羅すると信頼感が高まる |
もちろん写真の質も重要。暗い写真が30枚あっても逆効果。「明るく、何を撮っているか分かる写真を20枚以上」が最初の目標。
機材—スマホ+広角レンズで十分
一眼レフや360度カメラがあればベストだが、スマホのカメラで十分な品質が出せる。ただしスマホの標準レンズは画角が狭く、室内が狭く写りがち。スマホ用の広角レンズ(クリップ式、2,000〜5,000円)を使うと、部屋全体を1枚に収められる。
推奨機材
スマホ:iPhone 13以降、Pixel 6以降(超広角レンズ内蔵モデルが便利)
広角レンズ:0.6x程度のクリップ式レンズ(2,000〜5,000円)
三脚:スマホ用三脚(手ブレ防止。1,500〜3,000円)
照明:不要。自然光+室内照明全点灯で十分
撮影の4つのテクニック
1. 全ての照明を点ける+カーテンを開ける
物件写真で最も多い失敗は「暗い」こと。撮影前に全ての部屋の照明を点け、カーテンを全開にする。これだけで写真の印象が大きく変わる。曇りの日でも、室内照明+窓からの自然光で十分明るくなる。
2. 部屋の角から対角線に撮る
部屋の中央から撮ると、奥行きが出ない。部屋の角に立ち、対角線方向に向かって撮ると、部屋全体が広く写る。高さは胸の位置(120〜130cm)がベスト。目線の高さだと天井が近く見え、圧迫感が出る。
3. 水平を保つ
写真が傾いていると、無意識に「不安定」「雑」という印象を与える。スマホのグリッド表示をONにして、壁や窓枠の線をグリッドに合わせて撮る。三脚を使うとさらに安定する。
4. 生活感のあるものを片付ける
空室であっても、チラシ・工事の残材・ゴミ袋が写り込むことがある。居住中の物件では、洗濯物・個人の写真・生活用品をできる範囲で片付けてから撮影する。完璧に片付ける必要はないが、「これは撮影用に整えた」と分かる程度で十分。
よくある失敗写真と、その直し方
上の4つは「こう撮る」側の話。実際の現場では、撮り終わってから見返して「これは使えない」となるほうが多い。撮影の場で気づいて撮り直せるように、失敗の型と直し方をセットで覚えておく。
失敗写真の型と、その場での直し方
| 症状 | 起きている原因 | その場での直し方 |
|---|---|---|
| 全体が暗い | 照明が一部しか点いていない。窓を背にして撮っている | 全灯+カーテン全開に戻す。それでも暗いなら、窓が画面の正面に来ない角度に立ち位置を変える |
| 窓の外が真っ白(白飛び) | 窓の明るさに露出が引っ張られている | 画面の窓以外の場所をタップして露出を合わせる。HDRをONにする。眺望を見せたいなら窓だけ別カットで撮る |
| 手前が暗く、窓側だけ明るい(逆光) | 部屋の奥から窓に向かって撮っている | 窓を背にするか、窓が画面の端に来る角度に変える。時間帯を変えるのも有効 |
| 壁や柱が傾いている | カメラを上下に振っている(あおり/うつむき) | 端末を床と垂直に構える。グリッド表示をONにして、縦の線をグリッドに合わせる |
| 鏡や窓に自分が写り込む | 水回り・玄関の鏡、夜の窓ガラス | 鏡の正面に立たず、斜めから撮る。洗面台は鏡の映り込みを避けた高さから |
| 色がおかしい(黄色い・青い) | 電球色の照明と自然光が混ざっている | 昼間は照明を消して自然光だけで撮るカットも1枚残しておき、後で見比べて選ぶ |
| 狭く見える | 部屋の中央から、壁に正対して撮っている | 角に立って対角線方向へ。超広角に切り替える |
なお、後から加工で直せるのは傾きと明るさくらいで、白飛びした窓の外や、写り込んでしまったものは戻せない。撮り直しに戻る移動時間を考えれば、現地でその場で確認するほうが圧倒的に速い。1部屋撮り終わるごとに画面で見返す習慣をつけたい。
必須カットのチェックリスト
物件写真の必須カット
| カテゴリ | 必須カット | 推奨枚数 |
|---|---|---|
| 外観 | 建物正面、エントランス | 2〜3枚 |
| リビング | 全体(2方向から)、窓からの眺望 | 3〜4枚 |
| キッチン | 全体、コンロ・シンク、収納 | 2〜3枚 |
| 水回り | 浴室、洗面台、トイレ | 3〜4枚 |
| 居室 | 各部屋の全体(角から対角線) | 部屋数x2枚 |
| 収納 | クローゼット、シューズボックス | 2〜3枚 |
| バルコニー | 広さ、眺望 | 1〜2枚 |
| 周辺環境 | 最寄り駅、スーパー、学校、公園 | 3〜5枚 |
このチェックリストに沿って撮れば、1物件あたり20〜30枚は自然に撮れる。撮影時間は慣れれば15〜20分で収まる。
媒体別の掲載仕様と、掲載できない写真
何枚撮るかを決める前に、載せる先が何枚受け付けるかを知っておきたい。ここは媒体によって違い、しかも一般公開されている情報とそうでない情報がある。
掲載枚数の上限(各社の公開情報)
| 媒体 | 枚数 | 出典 |
|---|---|---|
| アットホーム(ATBB) | 1物件につき48点まで | アットホーム公式のサービス紹介ページ |
| LIFULL HOME'S | 最大30枚(別途パノラマ画像の掲載機能あり) | LIFULL公式の掲載案内ページ |
| SUUMO | 一般公開の資料では確認できず | 掲載中の担当者または営業担当に確認する |
2026年8月時点で公開されている情報。推奨サイズ・推奨比率は、いずれの媒体も一般公開されておらず、掲載契約後の管理画面や案内資料で確認する必要がある。
枚数の上限が48点や30枚である以上、前章のチェックリストで撮る20〜30枚は、どの媒体でもそのまま載せられる。逆に言えば、上限まで撮るために質を落とすのは本末転倒で、20〜30枚を確実に良い状態で揃えるほうが効く。
媒体が受け付けない写真
アットホームは、登録できない画像の条件を公開資料で示している。以下は同社が公開している画像登録ルールの資料(2007年〜2010年に公開されたもの)に挙げられている内容で、掲載する画像を選ぶときの目安になる。ファイル形式や容量の上限は当時の仕様なので現行の値としては使えないが、「何が載せられないか」の考え方は変わっていない。
- •PRなどの文字が入っている画像、文字のみの画像
- •社名・ロゴ・ホームページアドレスが入っている画像
- •価格・賃料・敷金・礼金・手数料・取引態様など、金額に関わる記載がある画像
- •住人・通行人・車両ナンバー・他の部屋の洗濯物・表札など、プライバシーに関わるものが写っている画像
- •登録物件と無関係な画像、虚偽・紛らわしい画像、判別できない画像
- •チラシやファクトシートをそのまま画像にしたもの
- •同一物件に対して同じ画像を複数枚公開すること
現場で一番引っかかるのは、車のナンバーと表札だ。外観カットを撮るときに、隣家の表札や路上駐車が入り込みやすい。撮る位置をずらすか、その場でぼかしをかけてから入稿する。
他の物件の写真を使えるのはどんなときか
写真は、取引するその物件のものを使うのが原則になっている。不動産の表示に関する公正競争規約では、建物が建築工事の完了前であるなど、その建物の写真や動画を使えない事情がある場合に限って、施工する会社が過去に施工した建物の写真を使うことが認められている。ただし条件があり、外観であれば構造・階数・仕様が同一で規模や形状が類似していること、内部であれば写る部分の規模・仕様・形状が同一であること、そして他の建物である旨を写真に接する位置に明示することが求められる。動画も同じ扱いになる。
CG・見取図・完成図・完成予想図も、その旨を明示して使う。周囲の状況を表示するときに現況と違う描写をしないことも定められている。「イメージです」と書いておけば何でもよい、ということではない点に注意したい。
写真より先に問題になる「消し忘れ」
掲載後の話になるが、成約済みの物件を消し忘れたまま広告が残っていると、おとり広告に該当する。不動産公正取引協議会連合会が公開しているおとり広告のガイドラインでは、掲載後に契約済みとなった物件を削除せず更新を繰り返す行為が、まさにこの類型として挙げられている。更新する期間は最長でも2週間とし、その期間の到達前でも、契約済みと判明した物件はすみやかに削除することが求められている。
良い写真を撮る手間をかけたぶん、掲載の運用も揃えておきたい。写真の差し替えと成約物件の削除を、同じ担当・同じタイミングでやる運用にしておくと漏れにくい。
出典・一次情報
- ATBB(不動産業務総合支援サイト)(アットホーム株式会社)—「写真は1物件につき48点まで掲載できます」
- 画像登録のルールについて(アットホーム株式会社/2007年)、画像情報の取り扱いについて(同/2009〜2010年)—登録できない画像の条件
- LIFULL HOME'S 掲載のご案内(株式会社LIFULL)—「最大30枚の写真」
- 不動産の表示に関する公正競争規約施行規則(公益社団法人首都圏不動産公正取引協議会)—写真・絵図の使用条件
- 「おとり広告」の規制概要及びインターネット広告の留意事項(不動産公正取引協議会連合会/2019年11月1日)—更新期間は最長2週間
制度・仕様は改定されます。最新の情報は公表元でご確認ください。
賃貸と売買の違い
賃貸:写真の回転率が高い(物件の入れ替わりが早い)ため、1物件に時間をかけすぎない効率重視の撮影が求められる。間取りが同じ物件が多いため、テンプレート化しやすい。
売買:1物件あたりの単価が高く、成約までの期間が長い。写真の品質が反響に直結するため、丁寧に撮る価値がある。特に中古住宅では「この家で暮らすイメージ」を持たせる写真が重要。
投資用:投資家は利回り重視だが、それでも写真が良い物件は問い合わせが多い。外観・共用部・周辺環境の写真が、管理状態の判断材料になる。
撮影を外注する場合の費用と、依頼範囲の決め方
ここまでは自社で撮る前提で書いてきたが、遠方の物件や、繁忙期で人が出せないときは外注という選択肢がある。撮影代行の料金は各社が公式サイトで公開しているので、実際の水準を見ておく。
2026年8月時点で公開されている料金を見ると、1物件あたりおおむね3,000円前後から3万円程度まで幅がある。この幅は「何をどこまでやるか」の差で、主に次の4つで決まる。
料金を左右する4つの要素
1. 撮影範囲と枚数。外観と共用部だけの数枚と、室内全部を30枚以上とでは、同じ会社でも数倍違う。まとめて依頼する件数で単価が下がる料金体系が多い。
2. 出張費。基本料金と別立てになっているのが普通で、距離に応じて加算される。エリア外の物件は、撮影料より出張費のほうが高くつくこともある。
3. レタッチと追加加工。明るさ調整程度は料金内に含む会社が多いが、車のナンバーのぼかし、動画、360度撮影、バーチャルステージングは別料金になる。
4. 納期。3〜5営業日が標準で、翌日納品などの特急は追加料金。繁忙期に前提を確認せず依頼すると、掲載が1週間遅れる。
料金の確認元(各社の公式料金ページ/2026年8月時点)
料金・プラン内容は改定されます。発注前に各社の公式サイトで最新の料金をご確認ください。
費用対効果で考えると、賃貸の回転が速い物件は自社撮影、売買や単価の高い物件は外注という切り分けが現実的だ。賃貸は1件あたりの撮影に外注費をかけると採算が合わないが、売買は1件の反響が売上に与える影響が大きいので、外注費が十分に回収できる。遠方で往復に半日かかる物件も、移動時間の人件費を考えれば外注のほうが安い。
外注に出しても、自社に残る責任
撮影そのものは外に出せるが、掲載する内容の正しさは自社の責任として残る。前章の広告表示のルールは、写真を誰が撮ったかに関係なく適用される。具体的には、次の判断は外注先に渡さない。
- •その写真が取引する物件のものかどうかの確認
- •掲載してよい写真かどうかの最終判断(表札・ナンバー・第三者の写り込み)
- •加工の範囲。汚れや傷を消すような加工を発注しない、という線引き
- •入居中の物件で撮影する場合の、入居者への説明と同意
発注時に「必須カットのチェックリスト」をそのまま渡すと、仕上がりのばらつきが減る。撮ってもらう内容が明確なら、社内で撮るときと同じ基準で品質を揃えられる。
写真加工の適正ライン
写真の明るさ調整やコントラスト補正は問題ない。実際の見え方に近づけるための補正はむしろ推奨される。ただし、以下の加工は不動産公正取引協議会の表示規約に抵触する可能性がある。
写真加工のOK/NGライン
| 加工内容 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 明るさ・コントラスト補正 | OK | 実際の見え方に近づける補正 |
| 傾きの修正 | OK | 撮影時のミスの補正 |
| 空の合成・差し替え | NG | 実際と異なる印象を与える |
| 家具のCG合成 | 条件付きOK | 「CGによるイメージです」と明記が必要 |
| 汚れ・傷の消去 | NG | 物件の瑕疵を隠すことになる |
まとめ:写真は最もROIの高い集客施策
物件写真の改善は、追加コストがほぼゼロで反響率を2〜3倍にできる、最もROIの高い集客施策。スマホ+広角レンズ+チェックリストがあれば、プロに頼まなくても十分な品質が出せる。まずは次の物件撮影で、この記事のチェックリストを試してみてほしい。
写真と合わせてポータルサイトの掲載を最適化したい場合は「不動産ポータルサイトの自動化」、リスティング広告との連携は「不動産リスティング広告の基本」も参照してほしい。
よくある質問
物件写真は何枚くらい載せるといいですか?
まずは「明るく、何を撮っているか分かる写真を20枚以上」が目標です。ポータルサイトの反響データでは、5枚以下は「写真が少なすぎて判断できない」と敬遠され、10〜15枚で基準値の1.5倍、20〜25枚で2倍、30枚以上で2.5〜3倍という傾向が出ています。ただし暗い写真が30枚あっても逆効果で、質が伴わなければ意味がありません。必須カットのチェックリストに沿って撮れば1物件あたり20〜30枚は自然に撮れ、撮影時間は慣れれば15〜20分で収まります。
物件写真はスマホで撮っても大丈夫ですか?
スマホのカメラで十分な品質が出せます。ただしスマホの標準レンズは画角が狭く室内が狭く写りがちなので、0.6x程度のクリップ式広角レンズ(2,000〜5,000円)を使うと部屋全体を1枚に収められます。手ブレ防止にはスマホ用三脚(1,500〜3,000円)が有効です。照明機材は不要で、カーテンを開けた自然光と室内照明の全点灯で足ります。一眼レフや360度カメラがあればベストですが、必須ではありません。
物件写真の加工はどこまでやっていいですか?
明るさ・コントラストの補正と傾きの修正は、実際の見え方に近づける補正なのでOKです。一方、空の合成・差し替えは実際と異なる印象を与えるためNG、汚れや傷の消去は物件の瑕疵を隠すことになるためNGです。家具のCG合成は「CGによるイメージです」と明記すれば条件付きでOK。判断に迷ったら、不動産公正取引協議会の表示に関する公正競争規約に抵触しないかを基準にしてください。
泉 款太(いずみ かんた)
株式会社SalesDock 代表取締役
慶應義塾大学法学部卒。スタートアップ、ラクスル、リクルート(SUUMO)を経て2025年に独立。 中小企業の経営・営業・業務・データをつなぐ事業基盤の設計と実装を支援。 不動産・製造業・クリニックを中心に30社以上の業務改善に携わる。
代表メッセージを読む →