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不動産

売上は増えてるのに利益が残らない不動産会社 — 見えないコストの正体

8分で読める

この記事のポイント

不動産会社で利益が残らない原因は、売上不足ではなく「見えないコスト」の肥大化。広告費・採用コスト・事務工数の3つを数字で可視化すると、利益率改善の打ち手が見えてくる。

「去年より売上は上がっているのに、なぜか手元にお金が残らない」。決算を迎えるたびに、この違和感を持つ不動産会社の経営者は多い。

成約件数は増えている。仲介手数料の総額も増えている。なのに経常利益が横ばい、あるいは下がっている。なぜか。

答えは「見えないコスト」が売上以上のスピードで膨らんでいるから。不動産会社でよくある3つの見えないコストを解説する。

見えないコスト①:広告費の垂れ流し

SUUMO、アットホーム、HOME'S——ポータルサイトの掲載費は、売上に比例して上がっていく。物件が増えれば掲載枠も増やす。上位表示を狙えばオプション費用も増える。

問題は、この費用が「成約に結びついているか」を計測していないこと。月50万円払って反響が20件来ても、成約が1件なら成約単価は50万円。仲介手数料100万円のうち半分が広告費で消える計算になる。

売上が増えている時期ほど「広告をもっと出そう」となりやすい。でもチャネル別のROIを見ずに広告を増やすのは、穴の空いたバケツに水を注ぐのと同じ。

見えないコスト②:採用・離職の繰り返しコスト

売上を伸ばすために営業を増やす。でも半年で辞める。また採用する。この繰り返しにかかるコストは、多くの経営者が思っている以上に大きい。

求人広告費30〜50万円。面接の工数。入社後3ヶ月間の教育期間(この間は戦力にならないが給与は発生する)。先輩営業の指導時間。1人あたり150〜200万円。年間2人辞めれば300〜400万円が「入れ替えコスト」として消えている。

さらに厄介なのは、このコストが損益計算書に「採用コスト」として1行で出てこないこと。求人広告費は広告宣伝費、教育期間の給与は人件費、面接の時間は管理コスト——バラバラに計上されるから、トータルが見えない。

見えないコスト③:事務工数の肥大化

物件入力、契約書作成、広告掲載の管理、月次集計、報告書作成——成約件数が増えれば、事務作業も比例して増える。

でも事務スタッフは増やさない。「今の人数で回して」が暗黙の方針。結果、残業が増える。ミスが増える。ミスの修正にさらに時間がかかる。

営業も同じ。物件入力や書類作成に追われて、本来の営業活動(内見の案内、顧客とのコミュニケーション)に使える時間が減っていく。「忙しいのに成約が伸びない」の正体がこれ。

見えないコスト年間の目安PLでの見え方
広告費の無駄打ち100〜200万円広告宣伝費に埋没
採用・離職の繰り返し300〜400万円人件費+広告費に分散
事務工数の肥大化150〜300万円人件費(残業代)に埋没

合計すると年間550〜900万円。従業員30〜50名の不動産会社なら、経常利益に匹敵する金額が「見えないコスト」として漏れている可能性がある。

利益を残すための3つのアクション

1. チャネル別の成約単価を毎月出す

広告費の総額ではなく、チャネル別の「成約1件あたりいくらかかっているか」を出す。成約単価が高いチャネルは予算を絞り、低いチャネルに寄せる。これだけで広告費の無駄打ちが減る。

2. 営業の仕組み化で定着率を上げる

反響対応のテンプレート、追客のルール、プロセスの数字の見える化。この3つを整えるだけで、新人が成果を出しやすくなり、定着率が上がる。採用コストの繰り返しを止める最も効果的な方法。

3. 事務作業の棚卸しと自動化

まず「毎月繰り返している事務作業」を全部書き出す。次に、それぞれに月何時間かかっているかを計算する。時間の多いものから順に、自動化・効率化できないかを検討する。

物件入力の一括登録、月次集計の自動化、契約書テンプレートの標準化——1つずつ潰していくだけで、年間数百時間が浮く。

まとめ:売上を追う前に「漏れ」を塞ぐ

利益が残らない原因を「売上不足」に求めると、さらに広告費を増やし、さらに人を採用し、さらにコストが膨らむ。悪循環。

まず「見えないコスト」を見えるようにする。広告費のROI、採用の繰り返しコスト、事務工数の実態。この3つを数字で出すだけで、打ち手は見えてくる。

売上を追うのは、漏れを塞いだ後でいい。

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泉 款太(いずみ かんた)

株式会社SalesDock 代表取締役

慶應義塾大学法学部卒。スタートアップ、ラクスル、リクルート(SUUMO)を経て2025年に独立。 不動産・製造業・クリニックなど現場産業向けのAI業務効率化コンサルを提供。 30社以上の中小企業のAI活用・業務改善を支援。

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