ポータル広告とMEO、どちらを先に手を入れるか|不動産会社の広告予算の配り方
この記事はどちらに先に手を入れるかの判断だけを扱います。 MEOの具体的なやり方(プロフィールの整備、口コミ、投稿)は「不動産会社のMEO対策、Googleマップで「地域名+不動産」の検索を取る方法」で書いています。手を入れる先が決まっている方はそちらへ進んでください。
この記事のポイント
ポータル広告は払えば出る変動費に近く、MEOは手を止めると落ちる自社資産に近い。 効きはじめる時間も、止めたときの挙動も同じではないので、 優先順位はこの非対称から決まる。判断に使う軸は、指名の反響/商圏の広さ/売買か賃貸か/更新を続ける人/いまの広告費の性質の5つ。そして両方を同時に触らない。
「MEOもやったほうがいいと言われたのですが、ポータルの掲載を減らしてまで やるものでしょうか」という相談を受けることがあります。 聞きたいのはMEOのやり方ではなく、限られた予算と人手を どちらに先に入れるかという配分の判断です。
この判断は、施策の優劣では決まりません。決まるのは自社の状態です。 同じ規模の会社でも、いまの反響の内訳と扱っている商品で答えが反転します。 この記事では、先に確かめる軸を1つずつ挙げて、 最後に自社の状態から手を入れる順番を割り出せる形にまとめます。
ポータル広告とMEOは、お金の性質が同じではない
比べる前に、両者が何にお金と時間を使うものなのかを揃えておきます。 ここが揃っていないまま比較すると、 「MEOは無料だから先にやるべき」といった結論になりがちです。 外部に払う金額が小さいことと、社内の負担が小さいことは別の話です。
ポータル広告は、掲載や反響に対して外部へ払う費用です。 出稿を止めれば露出も止まりますが、出せばおおむね翌月から反響の量が動きます。 動いた分は自社に残らず、支払いを続けている間だけ続きます。 一方でMEOは、自社のビジネスプロフィールという 手元の資産を育てる作業です。外に払う金額は小さくできますが、 写真、営業時間、投稿、口コミへの返信という社内の手が必要で、 その手を止めると積み上げた状態が徐々に落ちます。 そして効きはじめるまでに、ポータルより長い時間がかかります。
| 観点 | ポータル広告 | MEO |
|---|---|---|
| 主に払うもの | 外部への掲載費・反響費 | 社内の手と時間 |
| 効きはじめ | 出稿の翌月から量が動きやすい | 数か月かけて変化が見えてくる |
| 止めたとき | 露出が止まる。残るものはない | すぐには消えないが徐々に落ちる |
| 積み上がるか | 積み上がらない(都度の変動費) | 積み上がる(手が続く限り) |
この非対称が、そのまま判断の材料になります。 いま反響が足りずに営業の手が空いているなら、量が早く動く側から入れる。 反響はあるが費用の伸びが止まらないなら、 積み上がる側を並行して育てる余裕があるか確かめる。 どちらの状況にいるかを先に決めるための軸が、以下の5つです。
軸1:いまの反響に、社名や店名で来ているものがあるか
最初に確かめるのは、いま入っている反響のうち、 自社の名前を知って来ているものがどれくらいあるかです。 マップの検索結果で拾えるのは、地域名で会社を探している人と、 すでに社名を知っていて場所や営業時間を確かめたい人です。 後者がほとんどいない状態でマップ側を整えても、 拾える母数がまだ小さいままです。
指名の反響がほぼゼロなら、まずポータル側で案件を回して、 接客した人の数を増やす順番になりやすいです。 接客した人が社名を覚え、看板やチラシで見た名前と一致し始めてから、 マップ側の整備が効いてきます。逆に、すでに社名で電話が入っているなら、その母数は今日も検索しているということなので、マップ上の情報が古いままだと取りこぼしが続きます。
不動産会社のためのKPI管理スプレッドシート
反響から成約までを1シートで管理するテンプレート。内見率・成約率・チャネル別の費用対効果が自動で出るので、広告費をどこに寄せるかの判断材料になります
KPIシートを無料でダウンロード軸2と軸3:商圏の広さと、売買か賃貸か
次の2つは、自社の商品と営業範囲から決まる軸です。 どちらも会社の努力では動かしにくい前提条件なので、 施策を選ぶ側を合わせることになります。
商圏が狭いほど、マップ側で出る回数が増える
マップの検索結果は、検索した人の位置と、 探している地域に強く紐づいて出ます。 つまり商圏が数駅、あるいは1つの市区に収まっているほど、 そのエリアで探している人の画面に自社が並ぶ機会が増えます。 店舗の周辺だけで完結する会社にとっては、 この出方が反響につながりやすい形です。
逆に、県をまたいで広域の物件を扱っていたり、 投資用や事業用で全国から問い合わせが来る商売だと、 マップで拾える範囲が商圏に対して小さくなります。 この場合は、地域に紐づかない入口を持っているポータル側のほうが、 商圏の広さと噛み合います。
賃貸は物件から、売買と査定は会社から探されやすい
賃貸の一次接触は、物件そのものを探す動きから始まりやすいです。 駅名と間取りと家賃で絞り込む行為は、 会社を探す行為ではないので、その入口はポータル側に集まります。 賃貸中心の会社がマップだけを整えても、 探し始めの人には届きにくいままです。
売買や査定は動きが変わります。 「この土地を売るならどこに相談するか」を考える人は、 地域名と業種で会社を探したり、近くの不動産屋を見に行きます。 この動きはマップの検索結果と重なるので、 売買や買取、査定を伸ばしたい会社では、MEO側の優先度が上がります。
軸4と軸5:更新を続ける人と、いま出ている広告費の性質
残る2つは社内側の条件です。 外から見えないぶん、判断のときに飛ばされやすく、 飛ばした結果として途中で止まる原因になります。
更新を続ける人を置けるか
MEOは、写真の追加、営業時間の更新、投稿、口コミへの返信が止まると落ちます。 担当を置かずに始めると、数か月後には 更新が途切れたプロフィールが残ります。 これは何もしていない状態より印象が悪く、 閲覧した人からは営業しているのかどうか分からない会社に見えます。
誰の仕事にするかを決められない時期は、止まっても内容が残らない側から触るほうが安全です。 ポータルの出稿は止めれば露出が止まるだけで、 中途半端な状態が外に残りません。 担当を置ける見通しが立ってから、育てる側に手を伸ばす順番になります。
いま払っている広告費が、固定なのか変動なのか
最後に、いまの支払いの中身を確かめます。 掲載枠に対して毎月同じ額を払い続けているのか、 反響や成約に応じて増減しているのかで、 手を入れたときに動く金額が変わります。課金方式ごとの性質は「不動産ポータルの課金方式3つ」で整理しています。
固定的に出続けている枠が大きいなら、 新しい施策を足すより、出稿の中身を点検するほうが金額が動きます。 掲載している物件の並び、写真、枠の数を見直すだけで 支払いが変わる余地があるためです。この点検の考え方は「SUUMO掲載費用の見直し」に書きました。逆に、反響ごとの支払いが読めていて、 そのうえで費用がかさんでいるなら、 積み上がる側を育てる話に進む段階です。判断の物差しとしては「反響単価」を先に押さえておくと、比較の土台が揃います。
自社の状態から、先に手を入れるほうを割り出す
5つの軸を、よくある組み合わせに当てはめた表です。 自社に近い行を1つ選び、そこに書いた指標だけを3か月見てください。 当てはまる行が複数あるときは、いま困っている度合いが強いほうを選びます。
| 自社の状態 | 先に手を入れるほう | 理由 | 3か月で見る指標 |
|---|---|---|---|
| 指名の反響がほぼない。営業の手が空いている | ポータル | マップで拾える母数がまだ小さい。先に接客数を増やす | 一次接触の件数と、そのうち来店・内見に進んだ割合 |
| 売買・査定を伸ばしたい。商圏は市区内に収まる | MEO | 会社を探す動きが起きる商品で、商圏とマップの範囲が重なる | 社名・地域名で来た一次接触の件数と、査定依頼の件数 |
| 賃貸中心。反響はあるが費用の伸びが止まらない | ポータル(中身の点検) | 固定的に出ている枠のほうが、動かしたときの金額が大きい | 反響あたりの費用と、枠ごとの反響数のばらつき |
| 更新を担当できる人がいない | ポータル | 止まっても中途半端な状態が外に残らない側から触る | 出稿の変更にかかった社内の作業時間 |
| 社名での電話が入っている。営業時間や写真が古い | MEO(情報の整備) | いま探している人を取りこぼしている。集客より先に修理 | マップ経由の電話・経路検索の件数 |
| 広域・投資用が主。問い合わせは県外からも来る | ポータル | 商圏がマップの範囲より広く、地域に紐づく入口と噛み合わない | エリア別の一次接触件数と、商談化した割合 |
両方を同時に触らない。先に「どこから来たか」を記録する
順番を決めたあとに一番効くのは、決めた片方だけを触ることです。 同じ月にポータルの枠を組み替えてマップの整備も始めると、 反響が増えたときにどちらが効いたのか分かりません。 分からないままだと、次にどちらへ寄せるかも決められず、 翌期も同じ議論を繰り返すことになります。
そして触る前に用意しておきたいのが、 一次接触の記録です。電話とメールが どこから来たのかを分けて残していないと、 どちらを先にやっても判断が積み上がりません。 項目を増やす必要はなく、いまの反響台帳に流入元の列を足すだけで足ります。
最低限そろえておく記録
- 一次接触の流入元を、ポータル経由/マップ経由/社名での指名/紹介・既存客に分けて残す
- 電話が主なら、聞き取った内容を書く欄を1つ用意する(何を見て電話したか)
- 来店・内見に進んだかどうかを、流入元と同じ行で持つ
- 触った施策と、触った日付を記録に残す(あとで変化と突き合わせるため)
ここまでそろえば、3か月後に「先に触ったほうが効いたのか」を 自社の数字で振り返れます。記録が取れていない状態で施策を比べると、 最後は印象の議論になり、翌期の配分も変わりません。
口コミの集め方と、順位を約束する提案には気をつける
MEO側に手を入れると決めたとき、 先に確認しておきたいことがあります。Googleは ビジネス情報の取り扱いについてガイドラインを公開しており、 そこで認められていない集め方をすると、 掲載が制限されるおそれが生じます。 順位を上げる工夫の前に、避けるべき行為を押さえておくほうが安全です。
自社でやらない、外注にもさせない
- 自社の従業員や関係者が、自社の口コミを書く
- 報酬や割引、景品と引き換えに口コミを集める
- 実在しない住所や、実際には営業していない店舗名を登録する
- 実態と違う店舗名にキーワードを足して登録する
いずれもGoogleのガイドラインで認められていない行為として挙げられており、 短期の効果と引き換えに掲載停止のリスクを自分で作ることになります。 口コミは、接客が終わったタイミングで書き方を案内する形にとどめるのが現実的です。
外注を検討するときも同じ観点で見ます。 上位表示を約束する提案が来たら、 何をして順位が動くと言っているのかを確認してください。 検索結果の順位はGoogleが決めるもので、 施策の側で保証できる性質のものではありません。 手法を説明できない提案は、上記の行為を含んでいる可能性があります。 成果の見方は、順位そのものより マップ経由の電話や経路検索の件数で追うほうが、社内でも共有しやすくなります。
参考
- Google ビジネス プロフィール ヘルプ「ビジネス情報を管理するためのガイドライン」:認められていない行為が挙げられていることの参照として
※ 本記事は判断の軸を整理した一般的な内容です。ガイドラインは随時更新されるため、 実施前に必ず最新のヘルプを確認してください。 また、優先順位の当てはまり方は商圏、扱う商品、社内の体制によって変わります。 自社の反響の内訳を確かめたうえで判断してください。
よくある質問
MEOとポータル広告は、両方同時に始めてはいけないのですか?
資金と人手に余裕があるなら両方やって構いません。ただし同じ時期に両方を変えると、反響が動いたときにどちらの効果か判別できなくなります。判別できないと、次に予算を寄せる先も決められません。少人数で回している会社ほど、片方を触って変化を見て、それから次を触る順番のほうが、結果として早く判断が積み上がります。
賃貸中心の会社は、MEOを後回しにしてよいのでしょうか?
後回しにしてよいというより、優先度が下がりやすいという意味です。賃貸の一次接触は物件そのものを探す動きから始まりやすく、その入口はポータル側に集まっています。一方で来店前に会社を下調べする動きは賃貸でも起きるため、マップ上の情報が古いままだと、せっかく作った反響を落とす側に働きます。この場合のMEOは集客手段ではなく、取りこぼしを止める整備として位置づけるほうが判断しやすくなります。
MEOは費用がかからないと聞きましたが、なぜ後回しになることがあるのですか?
外部に払う金額は小さくても、社内の手が必要になるからです。写真の追加、営業時間の更新、投稿、口コミへの返信が止まると、時間をかけて積み上げた状態が落ちていきます。担当を置けないまま始めると、途中で止まった状態が残り、閲覧した人には放置されている会社として見えます。更新を続ける人を決められない時期は、止まっても内容が残らない側、つまり出稿の中身を先に点検したほうが安全です。
どちらを先にやるか決める前に、社内で用意しておくことはありますか?
電話とメールの一次接触を、どこから来たかで記録する仕組みです。ポータル経由なのか、マップや検索から会社名で来たのか、紹介や既存客なのかを分けて残します。ここが取れていないと、どちらに手を入れても、その後の変化を実績として説明できません。項目を増やす必要はなく、一次接触の記録に流入元の列を足すところから始めれば十分です。
泉 款太(いずみ かんた)
株式会社SalesDock 代表取締役
慶應義塾大学法学部卒。スタートアップ、ラクスル、リクルート(SUUMO)を経て2025年に独立。 中小企業の経営・営業・業務・データをつなぐ事業基盤の設計と実装を支援。 不動産・製造業・クリニックを中心に30社以上の業務改善に携わる。
代表メッセージを読む →