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不動産

求人を出しても応募が来ない不動産会社 — 採用に頼らず少人数で回す仕組みのつくり方

最終更新 2026年8月11日10分で読める

この記事のポイント

地方の不動産会社の人手不足は、物件情報の自動収集・顧客対応の自動化・書類作成の効率化で、少人数でも回る仕組みを作ることで乗り越えられます。

「求人を出しても応募が来ない」「やっと採用できても半年で辞める」——地方の不動産会社なら、一度はこの悩みを抱えたことがあるのではないでしょうか。総務省の労働力調査を見ると、不動産業で働く人のうち65歳以上が3割を超えています。全産業では14%程度なので、2倍以上の水準です。人が採れないだけでなく、いま現場を支えている層が高齢化している、というのが実態です。

しかし、視点を変えると解決策が見えてきます。「人を増やす」のではなく、「少人数でも回る仕組みを作る」。この発想の転換が、採用難時代を乗り越える鍵です。

不動産業界の人手不足はなぜ続くのか

自社の事情に入る前に、業界側で何が起きているのかを数字で確認しておきます。ここを押さえておくと、「うちの求人の出し方が悪いのか」「そもそも業界全体がそうなのか」を切り分けて考えられます。

総務省統計局の労働力調査(基本集計)の「年齢階級,産業別就業者数」から、不動産業と全産業を並べたのが下の表です。

2026年4〜6月期平均(全国・男女計)不動産業全産業
就業者数(15歳以上)116万人6,880万人
うち60〜64歳12万人581万人
うち65歳以上37万人965万人
65歳以上の割合約31.9%約14.0%
60歳以上の割合約42.2%約22.5%

出典の公表値は万人単位(原数値)。割合は公表値からの単純計算で、統計局が比率として公表しているものではありません。丸めの関係で内訳の合計が総数と一致しない場合があります。なお同じ表で「不動産業,物品賃貸業」としてまとめた場合は146万人です。

不動産業で働く人の約42%が60歳以上。全産業の約22%と比べると、業界の年齢構成がかなり上に寄っていることがわかります。これが「人手不足がこの先も続く」と言える一番の根拠です。理由は単純で、いま現場を回している層が、これから数年のうちにまとまって引退の時期に入るからです。

そのうえで、中小の不動産会社にはもう2つの事情が重なります。ひとつは、業界そのものの規模が大きくないこと。不動産業の就業者は全産業の2%に満たないので、他業種と同じ土俵で採用競争をすると、そもそも母集団の絶対数で不利になります。もうひとつは、少人数の会社ほど教育に人を割けないこと。採用できても、教える側の時間が空いていなければ立ち上がりません。

つまり、採用市場の側に好転する材料が見当たらないのが現状です。であれば、打ち手は「採用をがんばる」の一本ではなく、1人あたりが回せる量を増やす方向にも配分するのが合理的、ということになります。ここから先は、その具体的なやり方の話をします。

出典・一次情報

制度・統計は改定されます。最新の情報は公表元でご確認ください。

不動産会社の「人手不足」の正体

人手が足りないと感じる原因は、単純に人がいないことだけではありません。実は「人がやらなくてもいい仕事」に多くの時間を取られていることが本質的な問題です。

従業員10名の不動産会社の業務時間を分析すると、典型的な内訳はこうなります。

営業マン1人の1日(8時間)の内訳

物件情報収集
2時間
書類作成
2時間
顧客対応
1.5時間
移動
1.5時間
商談
1時間

売上に直結する「商談」はたった1時間。残り7時間は仕組み化で圧縮できる余地がある

つまり、8時間のうち売上に直結するのは商談の1時間だけ。物件情報収集・書類作成・定型的な顧客対応は、ツールやAIで大幅に時間を短縮できます。人を増やさなくても、1人あたりの生産性を上げれば同じ効果が得られます。

仕組み化1:物件情報収集の自動化

毎朝のポータルサイト巡回を自動に

レインズ、アットホーム、SUUMO、楽待——毎朝複数のサイトを巡回して物件をチェックする作業に1〜2時間。これが営業マンの朝を奪っています。

自動収集ツールを使えば、あらかじめ設定した条件(エリア・価格帯・築年数など)に合致する物件情報を自動で取得し、一覧にまとめてくれます。営業マンは朝出社したら、すでに整理された物件リストを確認するだけ。1〜2時間の作業が10〜15分になります。

国土交通省の不動産情報ライブラリを活用

物件の周辺相場を調べるために、国土交通省の不動産情報ライブラリで地価公示や取引価格を手動検索していませんか?APIを活用すれば、物件住所を入力するだけで周辺の取引事例・地価公示・都市計画情報を自動取得できます。1物件あたり30分かかっていた相場調査が、数秒で完了します。

出典・一次情報

制度・統計は改定されます。最新の情報は公表元でご確認ください。

仕組み化2:顧客対応の自動化

問い合わせ対応の70%は定型文で返せる

「この物件はまだ空いていますか?」「内見はいつできますか?」「ペットは飼えますか?」——問い合わせの大半はパターンが決まっています。不動産会社の問い合わせ内容を分析すると、約70%は定型的な質問です。

チャットボットやAIを使った自動応答を導入すれば、この70%を即座に返答できます。残り30%の複雑な問い合わせだけ人が対応すればいい。顧客にとっても、夜間や休日でもすぐに回答が得られるメリットがあります。

導入事例:地方の仲介会社(従業員8名)

LINE公式アカウントにAIチャットボットを連携。物件の空室確認、内見予約、初期費用の概算を自動応答に。月間120件の問い合わせのうち、85件(71%)を自動で処理。営業マンの電話対応時間が月40時間から12時間に減少。浮いた28時間を商談と追客に振り向けた結果、月間の成約件数が3件増加。

追客メールの自動化

内見後のフォローメール、他社で決まっていないか確認する追客メール、季節の挨拶——こうしたメールを手動で送っていると、1通あたり10〜15分。20人のお客様に追客するだけで3〜5時間です。

CRM(顧客管理システム)を使えば、お客様の状況に応じて自動でメールを送れます。「内見から3日後にお礼メール」「1週間後に類似物件の紹介」「1ヶ月後に新着情報の案内」と、シナリオを設定しておけばあとは自動です。

仕組み化3:書類作成の効率化

重要事項説明書・契約書の作成を半自動に

不動産取引で最も時間がかかる書類作成。重要事項説明書は1件あたり2〜3時間、売買契約書は1〜2時間が相場です。しかも、記載ミスは法的リスクに直結するため、ダブルチェックにも時間がかかります。

テンプレート+自動入力の仕組みを作れば、物件情報や顧客情報をデータベースから自動で流し込み、書類の下書きを数分で生成できます。人がやるのは最終確認と微調整だけ。1件あたり30分〜1時間で完了し、ミスも激減します。

電子契約で「紙のやりとり」をゼロに

2022年の宅建業法改正で、重要事項説明のオンライン化や電子契約が可能になりました。クラウドサインやDocuSignを使えば、契約書の印刷・郵送・押印・返送のプロセスが不要になります。1件あたり3〜5日かかっていた契約手続きが、最短即日で完了。郵送コスト(往復で500〜1,000円/件)もゼロになります。

仕組み化の進め方:3ステップで始める

1

業務時間の記録(1週間)

まず、各営業マンが1日の業務を30分単位で記録する。「物件情報収集:2時間」「書類作成:1.5時間」のように。これだけで、どこに時間が取られているかが見えてきます。費用:ゼロ。

2

最も時間を食っている業務から仕組み化(1〜2ヶ月)

物件情報収集に最も時間がかかっているなら、まず自動収集ツールを導入。顧客対応なら、LINE公式アカウント+自動応答。1つずつ潰していくのがポイント。一気にやると現場が混乱します。

3

浮いた時間を「売上を生む仕事」に振り向ける

仕組み化で空いた時間を、商談・追客・既存顧客のフォローに使う。ここを明確にしないと「仕組み化したけど売上が変わらない」になります。目標は「1人あたり月間商談件数を1.5倍にする」のように数値化。

コスト感:月額いくらで何ができるか

仕組み化の内容月額費用削減時間/月
物件情報の自動収集1〜3万円約40時間(営業4名分)
LINE自動応答(チャットボット)1〜5万円約28時間
CRM(追客自動化)2〜5万円約20時間
電子契約1〜2万円約10時間

合計で月額5〜15万円、削減時間は月98時間。時給換算で1人あたり月40〜60時間の業務が浮く計算です。正社員1人の採用コスト(月額25〜35万円+採用費用)と比べると、圧倒的にコストパフォーマンスが高い。

それでも採用するなら—少人数の会社が取れる採用の型

ここまで「採用に頼らない」話をしてきましたが、採用をやめろという話ではありません。仕組み化で回る範囲を広げたうえで、それでも人が必要な場面はあります。ただし、大手と同じやり方で母集団を増やそうとしても勝てません。少人数の会社には少人数の会社の型があります。

求人票に何を書くか—「アットホームな職場」では応募は来ない

求人を出しても応募が来ないとき、原因の多くは媒体ではなく求人票の中身にあります。応募を検討する人が知りたいのは、雰囲気ではなく「入社後に自分が何をするのか」です。次の4つが書いてあるかを確認してください。

1. 1日の業務の内訳。この記事の前半で出した「営業マン1人の1日」のような時間の内訳をそのまま載せる。何にどれだけ時間を使う仕事なのかが見えると、応募の質が上がります。

2. 任せる範囲と、任せない範囲。「反響対応から契約まで一人で担当」なのか「案内と追客に専念、契約は責任者」なのか。少人数の会社ほどここが曖昧で、入社後のギャップになります。

3. 給与が上がる条件。「歩合あり」だけでは判断できません。何件でいくら、どの数字で評価されるのかを具体的に書く。書けないなら、まず社内で決めるところからです。

4. 未経験の場合の立ち上がり方。宅建の資格支援、最初の3ヶ月に何をやってもらうか。仕組み化ができている会社は、ここを具体的に書けます。これが実は最大の差別化になります。

4つめは、前半で作った仕組みがそのまま採用の武器になる、という話です。物件情報の収集が自動化されていて、書類作成にテンプレートがあって、追客のシナリオが決まっている会社は、「入社してすぐ商談に出られる」と書けます。属人的な会社は書けません。

どこに出すか—無料の枠から埋める

有料媒体にいきなり出す前に、費用のかからない導線を先に整えます。順番はこうです。

  • 自社サイトの採用ページ。求人検索エンジンは自社サイトの求人ページを拾います。ここがないと、他のどの媒体に出しても着地先がない。まずここを作る
  • ハローワーク。掲載は無料。地方では依然として応募の入口になります
  • 求人検索エンジンへの無料掲載。自社の採用ページを登録しておく
  • 紹介(リファラル)。社員・取引先・同業からの紹介。少人数の会社で最も歩留まりが高い経路です
  • 有料媒体・人材紹介。ここまでやってなお足りないときに使う

採用にかける費用は、媒体費だけでなく選考にかかる自社の時間も含めて考えます。応募が来ても面接の日程調整で1週間止まるようなら、そこは採用というより社内の段取りの問題です。

採る前に決めておく2つのこと

最後に、これを決めずに採ると失敗します。ひとつは「入社後90日で何ができている状態か」。ここが決まっていないと、教える側も何から教えればいいか分からず、新人は雑用から入ることになります。もうひとつは「誰が育てるか」。全員で見る、は誰も見ないのと同じです。担当を1人決めて、その人の業務時間を実際に空ける。仕組み化で浮かせた時間の使い道として、これは十分に妥当な選択です。

「やっと採用できても半年で辞める」の多くは、採用の失敗ではなく受け入れの設計不足です。人を増やす前に仕組みを整えるべき理由は、業務が楽になるからだけではなく、入ってきた人が定着する会社になるからでもあります。

まとめ:「人を増やす」前に「仕組み」を整える

不動産業界の人手不足は、残念ながらすぐには解消しません。有効求人倍率が下がる見通しもない。であれば、「採用に頼らない経営」を設計するのが現実的です。

やるべきことはシンプルです。まず1週間、営業マンの業務時間を記録する。次に、最も時間を食っている業務から1つ仕組み化する。小さく始めて、効果が出たら次の業務に広げる。この繰り返しで、少人数でも回る組織が作れます。

「何から始めればいいかわからない」という方は、業務時間の記録だけでも今日から始めてみてください。それだけで、御社の「人手不足の正体」が見えてきます。

70%
定型問い合わせの自動化率
98h
月間の削減可能時間
1/3
採用コストと比較した費用

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よくある質問

不動産会社の人手不足を採用以外で解決する方法はありますか?

はい、物件情報の自動収集・顧客対応の自動化・書類作成の効率化の3つで、少人数でも回る仕組みを作れます。合計で月5〜15万円の投資で月98時間の業務を削減でき、正社員1人の採用コスト(月25〜35万円+採用費用)と比べて圧倒的にコストパフォーマンスが高いです。

不動産会社の営業マンは実際どんな業務に時間を取られていますか?

1日8時間のうち、物件情報収集に2時間、書類作成に2時間、顧客対応に1.5時間、移動に1.5時間、売上に直結する商談はわずか1時間です。物件情報収集・書類作成・定型的な顧客対応はツールやAIで大幅に短縮でき、人を増やさなくても1人あたりの生産性を上げることで同じ効果が得られます。

業務の仕組み化を始めるには具体的に何からやればいいですか?

まず1週間だけ各営業マンに業務を30分単位で記録してもらいます(費用ゼロ)。次に最も時間を食っている業務から1つだけ仕組み化に着手します(1〜2ヶ月)。一気にやると現場が混乱するので1つずつ進めるのがポイント。そして浮いた時間を商談・追客に振り向け、月間商談件数1.5倍のように数値目標を設定します。

泉 款太(いずみ かんた)

株式会社SalesDock 代表取締役

慶應義塾大学法学部卒。スタートアップ、ラクスル、リクルート(SUUMO)を経て2025年に独立。 中小企業の経営・営業・業務・データをつなぐ事業基盤の設計と実装を支援。 不動産・製造業・クリニックを中心に30社以上の業務改善に携わる。

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