不動産営業の歩合率・相場|公開例と粗利から考える報酬制度
この記事のポイント
主な対象は、営業の採用・定着と会社の利益を両立したい不動産会社です。外部の歩合率ではなく、自社が評価したい役割と案件の採算から制度を組み立てます。
不動産営業の報酬制度では、歩合率だけが話題になりがちです。しかし、反響を誰がつくるか、査定や契約事務を誰が支えるか、共同で進めた案件をどう扱うかで、個人売上の意味は変わります。制度は採用のための数字ではなく、会社として増やしたい行動を伝える設計図です。
不動産営業の歩合率に、業界共通の相場はない
不動産営業の歩合率は、固定給の有無、売上と粗利のどちらを基準にするか、広告費や紹介料を誰が負担するかで変わります。公的な「業界平均の歩合率」は確認できないため、求人や採用情報の数字を相場として一括りにするのは安全ではありません。
一方、各社が公開している制度は、自社の条件を決める比較材料にはなります。2026年8月17日に公式採用情報を確認すると、次のように計算対象と率の置き方が異なっていました。
| 公開企業 | 公開されている歩合 | 確認できる条件 |
|---|---|---|
| リプラス株式会社 採用情報 | 固定給+10〜20% | 売上に対する歩合。契約ベースで支給すると説明 |
| ハウスコミュニケーション 採用情報 | 固定給+粗利の5〜23% | 経験やスキルを考慮し、概ね3か月ごとに再評価すると説明 |
※2社の公開採用情報を並べたもので、業界平均や推奨値ではありません。制度・募集条件は変更されるため、最新情報は各社の公表元で確認してください。
同じ20%でも、売上の20%と粗利の20%では会社に残る金額が変わります。率だけを比べず、「何に掛ける率か」「固定給・広告費・紹介料・契約事務を誰が負担するか」「契約時と入金時のどちらで確定するか」を同じ表で比較してください。
まず「誰がどこまで担ったか」を分けて書く
一件の契約にも、集客、反響の一次対応、売主・買主対応、案内、価格調整、契約事務、引渡し後の連絡など複数の役割があります。担当者名だけで評価すると、見えにくい支援業務が評価から抜け落ちます。案件台帳に、主担当だけでなく支援担当と役割を残すことから始めてください。
・反響を生んだ経路と、集客にかかった費用を誰が管理するか
・査定、媒介取得、案内、契約、事務のうち誰が主に担ったか
・共同案件や引継ぎ案件を、どの時点で誰が確認するか
・新規、紹介、既存顧客など案件経路による扱いをどう説明するか
売上ではなく、会社に残す粗利から逆算する
制度の検討では、対象となる売上だけでなく、広告費、紹介料、外部委託、契約事務、管理者の支援など、案件ごとに会社が負担する費用を確認します。そのうえで、会社として残したい粗利を決め、評価対象となる成果と支給条件を整理します。
この順番にすると、「売上は大きいが支援コストも大きい案件」と「チームで再現できる案件」を同じものとして扱わずに済みます。個別の金額・率は、雇用形態や事業モデルにより変わるため、外部の例をそのまま当てはめないことが大切です。
支給条件と例外を先に明文化する
制度は、通常時より例外時に不信感が生まれます。対象となる売上の定義、支給の時期、取消・返金が起きた場合、共同担当、担当変更、会社紹介案件の扱いを文章で示します。口頭の運用を残すと、同じ状況でも説明が変わりやすくなります。
判断例:担当変更が起きた案件は、変更前後の役割と引継ぎ日を案件台帳で確認してから扱いを決める。
判断例:紹介案件は、紹介元・主担当・事務担当の役割を残し、誰の成果として扱うかを契約前に確認する。
注意点:労働条件や就業規則に関わる変更は、社会保険労務士などの専門家に内容を確認する。
| 迷いやすい場面 | 制度文で先に決めておくこと |
|---|---|
| 通常時の支給 | 対象となる売上の定義と、支給の時期を文章で示す。 |
| 取消・返金が起きた場合 | 扱いを文章で示す。口頭の運用を残すと、同じ状況でも説明が変わりやすくなる。 |
| 共同担当の案件 | 案件台帳に支援担当と役割を残し、どの時点で誰が確認するかを決める。 |
| 担当変更が起きた案件 | 変更前後の役割と引継ぎ日を案件台帳で確認してから扱いを決める。 |
| 会社紹介・紹介案件 | 紹介元・主担当・事務担当の役割を残し、誰の成果として扱うかを契約前に確認する。 |
| 労働条件・就業規則に関わる変更 | 社会保険労務士などの専門家に内容を確認する。 |
運用後は「行動が変わったか」を見る
見直し時に見るのは、個人別の売上だけではありません。案件経路、共同案件の発生、支援業務の偏り、失注や引継ぎの理由を並べ、制度が個人プレーだけを増やしていないかを確認します。不動産会社のKPI管理と合わせると、報酬と営業活動を同じ案件情報から確認できます。
導入前のチェックリスト
- 案件の役割と担当を分けて記録できるようにする。
- 案件経路と会社負担の費用を確認する。
- 通常条件と例外条件を文章にする。
- 現場へ説明し、質問が出た箇所を制度文に反映する。
- 運用後に、案件・粗利・連携への影響を定期的に見直す。
歩合給の設計だけを切り離さず、反響から契約までの役割と数字の流れを整えることが、採用後も説明できる制度につながります。
よくある質問
不動産営業の歩合率は何%に設定すればいいですか?
外部の歩合率をそのまま当てはめないことが大切です。個別の金額・率は、雇用形態や事業モデルにより変わります。対象となる売上だけでなく、広告費、紹介料、外部委託、契約事務、管理者の支援など、案件ごとに会社が負担する費用を確認し、会社として残したい粗利を決めてから、評価対象となる成果と支給条件を整理する順番で設計してください。
共同で担当した案件の歩合はどう扱えばいいですか?
案件台帳に、主担当だけでなく支援担当と役割を残すことから始めます。共同案件や引継ぎ案件を、どの時点で誰が確認するかを決めておき、担当変更が起きた案件は、変更前後の役割と引継ぎ日を案件台帳で確認してから扱いを決めます。紹介案件は、紹介元・主担当・事務担当の役割を残し、誰の成果として扱うかを契約前に確認します。
歩合給の制度を変えるとき、就業規則の見直しも必要ですか?
労働条件や就業規則に関わる変更は、社会保険労務士などの専門家に内容を確認してください。あわせて、対象となる売上の定義、支給の時期、取消・返金が起きた場合、共同担当、担当変更、会社紹介案件の扱いを文章で示します。口頭の運用を残すと、同じ状況でも説明が変わりやすくなります。
泉 款太(いずみ かんた)
株式会社SalesDock 代表取締役
慶應義塾大学法学部卒。スタートアップ、ラクスル、リクルート(SUUMO)を経て2025年に独立。 中小企業の経営・営業・業務・データをつなぐ事業基盤の設計と実装を支援。 不動産・製造業・クリニックを中心に30社以上の業務改善に携わる。
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