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組織づくり

不動産営業の歩合率・相場|公開例と粗利から考える報酬制度

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執筆:泉 款太(株式会社SalesDock 代表取締役)累計40社以上の中小企業を支援

不動産営業の歩合率・相場|公開例と粗利から考える報酬制度

結論

不動産営業の歩合率に、業界共通の相場はありません。公式採用情報で確認できた固定給+10〜20%、固定給+粗利の5〜23%は2社の公開例で、業界平均や推奨値ではありません。広告費、紹介料、外部委託、契約事務、管理者の支援など案件ごとに会社が負担する費用を確認し、会社として残したい粗利から逆算して支給条件を決めます。

  • 同じ20%でも、売上の20%と粗利の20%では会社に残る金額が変わります。「何に掛ける率か」「固定給・広告費・紹介料・契約事務を誰が負担するか」「契約時と入金時のどちらで確定するか」を同じ表で比較します。
  • 案件台帳に、主担当だけでなく支援担当と役割を残します。担当者名だけで評価すると、見えにくい支援業務が評価から抜け落ちます。
  • 対象となる売上の定義、支給の時期、取消・返金、共同担当、担当変更、会社紹介案件の扱いを文章で示します。労働条件や就業規則に関わる変更は、社会保険労務士などの専門家に確認します。

この記事のポイント

主な対象は、営業の採用・定着と会社の利益を両立したい不動産会社です。外部の歩合率ではなく、自社が評価したい役割と案件の採算から制度を組み立てます。

不動産営業の報酬制度では、歩合率だけが話題になりがちです。しかし、反響を誰がつくるか、査定や契約事務を誰が支えるか、共同で進めた案件をどう扱うかで、個人売上の意味は変わります。制度は採用のための数字ではなく、会社として増やしたい行動を伝える設計図です。

不動産営業の歩合率に、業界共通の相場はない

不動産営業の歩合率は、固定給の有無、売上と粗利のどちらを基準にするか、広告費や紹介料を誰が負担するかで変わります。公的な「業界平均の歩合率」は確認できないため、求人や採用情報の数字を相場として一括りにするのは安全ではありません。

一方、各社が公開している制度は、自社の条件を決める比較材料にはなります。2026年8月17日に公式採用情報を確認すると、次のように計算対象と率の置き方が異なっていました。

公開企業公開されている歩合確認できる条件
リプラス株式会社 採用情報固定給+10〜20%何に掛ける率かは公開情報に明記なし。入金ベースではなく契約ベースで支給すると説明
ハウスコミュニケーション 採用情報固定給+粗利の5〜23%経験やスキルを考慮し、概ね3か月ごとに再評価すると説明

※2社の公開採用情報を並べたもので、業界平均や推奨値ではありません。制度・募集条件は変更されるため、最新情報は各社の公表元で確認してください。

同じ20%でも、売上の20%と粗利の20%では会社に残る金額が変わります。率だけを比べず、「何に掛ける率か」「固定給・広告費・紹介料・契約事務を誰が負担するか」「契約時と入金時のどちらで確定するか」を同じ表で比較してください。

まず「誰がどこまで担ったか」を分けて書く

一件の契約にも、集客、反響の一次対応、査定・媒介取得、売主・買主対応、案内、価格調整、契約事務、引渡し後の連絡など複数の役割があり、どの順番で誰が担うかは案件ごとに変わります。担当者名だけで評価すると、見えにくい支援業務が評価から抜け落ちます。案件台帳に、主担当だけでなく支援担当と役割を残すことから始めてください。

・反響を生んだ経路と、集客にかかった費用を誰が管理するか

・査定、媒介取得、案内、契約、事務のうち誰が主に担ったか

・共同案件や引継ぎ案件を、どの時点で誰が確認するか

・新規、紹介、既存顧客など案件経路による扱いをどう説明するか

一件の契約に関わる役割の例順不同・ほかにもある集客反響の一次対応査定・媒介取得売主・買主対応案内価格調整契約事務引渡し後の連絡担当者名だけで記録支援業務が評価から抜ける主担当+支援担当と役割案件台帳に残して確認する
担当者名ではなく役割で記録するのが要点です。支援担当と役割が台帳に残っていれば、共同案件や引継ぎ案件も同じ基準で確かめられます。

売上ではなく、会社に残す粗利から逆算する

制度の検討では、対象となる売上だけでなく、広告費、紹介料、外部委託、契約事務、管理者の支援など、案件ごとに会社が負担する費用を確認します。そのうえで、会社として残したい粗利を決め、評価対象となる成果と支給条件を整理します。

費用の確認、残す粗利の決定、支給条件と率の整理という順番で歩合を設計すると、「売上は大きいが支援コストも大きい案件」と「チームで再現できる案件」を同じものとして扱わずに済みます。個別の金額・率は、雇用形態や事業モデルにより変わるため、外部の例をそのまま当てはめないことが大切です。

1 費用を確認する広告費・紹介料外部委託・契約事務管理者の支援2 残す粗利を決める会社として残したい粗利3 条件と率を決める評価対象の成果支給の条件何に掛ける何%か外部の歩合率から始めない
率は最後に決めます。会社が負担する費用と残したい粗利が決まって初めて、歩合に回せる金額が決まります。

同じ「20%」で会社に残る額がどれだけ変わるか

率の話は、金額に置き換えないと判断できません。下の表は説明のための仮の数字で、相場でも推奨値でもありません。自社の実際の費用を入れて計算してください。

仮に、仲介手数料(売上)100万円の1件で、広告費15万円・紹介料10万円・契約事務など外部委託5万円を会社が負担した場合
計算の置き方歩合の支給額会社に残る額
売上の20%20万円
100万円 × 20%
50万円
100 − 30(費用) − 20
粗利の20%14万円
(100 − 30)× 20%
56万円
70 − 14

仲介手数料100万円・会社負担の費用30万円という仮の例では、売上の20%なら歩合20万円・会社に残る額50万円、粗利の20%なら歩合14万円・会社に残る額56万円となり、同じ「20%」でも6万円の差が出ます。費用が大きい案件ほど差は開き、広告費を多く使った案件で売上ベースの歩合を出すと、会社の取り分が想定より小さくなります。率を決める前に、何に掛ける率かを決めてください。

仮の例:手数料100万・費用30万売上の20%で支給費用30万20万会社に残る50万粗利の20%で支給費用30万14万会社に残る56万歩合の支給額差はどちらも6万円
同じ20%でも、粗利に掛けると歩合は6万円小さくなります。費用が大きい案件ほど、売上に掛ける場合との差は開きます。

片手と両手で、同じ物件でも売上が変わる

仲介では、売主か買主の一方だけを担当する場合(片手)と、双方を担当する場合(両手)があります。同じ物件でも会社に入る仲介手数料が変わるため、率が同じでも支給額と会社の取り分は変わります。案件台帳に片手・両手の区別を残しておくと、制度を見直すときに「率が高すぎたのか、案件構成が変わったのか」を分けて確認できます。

なお、宅地建物取引業者が受け取れる報酬(仲介手数料)の額には、告示で上限が定められています。上限額や計算方法は国土交通省の宅地建物取引業法関係のページで確認してください。制度の設計は、この上限の範囲内で会社に入る売上を前提に組み立てます。

先に決めておく3つの数字

逆算を始める前に、次の3つを自社の実績から出しておきます。どれも案件台帳と会計から確認できます。

  • 1件あたりの平均売上:片手・両手、売買・賃貸を分けて出す。混ぜると平均が実態から離れます
  • 案件ごとに会社が負担する費用:広告費、紹介料、外部委託、契約事務。反響経路によって大きく変わるので、経路別に見ます
  • 会社として残したい粗利:固定費と目標利益から決めます。ここが決まって初めて、歩合に回せる金額が決まります

支給条件と例外を先に明文化する

制度は、通常時より例外時に不信感が生まれます。対象となる売上の定義、支給の時期、取消・返金が起きた場合、共同担当、担当変更、会社紹介案件の扱いを文章で示します。口頭の運用を残すと、同じ状況でも説明が変わりやすくなります。

判断例:担当変更が起きた案件は、変更前後の役割と引継ぎ日を案件台帳で確認してから扱いを決める。

判断例:紹介案件は、紹介元・主担当・事務担当の役割を残し、誰の成果として扱うかを契約前に確認する。

注意点:労働条件や就業規則に関わる変更は、社会保険労務士などの専門家に内容を確認する。

迷いやすい場面制度文で先に決めておくこと
通常時の支給対象となる売上の定義と、支給の時期を文章で示す。
取消・返金が起きた場合扱いを文章で示す。口頭の運用を残すと、同じ状況でも説明が変わりやすくなる。
共同担当の案件案件台帳に支援担当と役割を残し、どの時点で誰が確認するかを決める。
担当変更が起きた案件変更前後の役割と引継ぎ日を案件台帳で確認してから扱いを決める。
会社紹介・紹介案件紹介元・主担当・事務担当の役割を残し、誰の成果として扱うかを契約前に確認する。
労働条件・就業規則に関わる変更社会保険労務士などの専門家に内容を確認する。

出典・一次情報

制度・統計は改定されます。最新の情報は公表元でご確認ください。

運用後は「行動が変わったか」を見る

見直し時に見るのは、個人別の売上だけではありません。案件経路、共同案件の発生、支援業務の偏り、失注や引継ぎの理由を並べ、制度が個人プレーだけを増やしていないかを確認します。不動産会社のKPI管理と合わせると、報酬と営業活動を同じ案件情報から確認できます。

導入前のチェックリスト

  1. 案件の役割と担当を分けて記録できるようにする。
  2. 案件経路と会社負担の費用を確認する。
  3. 通常条件と例外条件を文章にする。
  4. 現場へ説明し、質問が出た箇所を制度文に反映する。
  5. 運用後に、案件・粗利・連携への影響を定期的に見直す。

歩合給の設計だけを切り離さず、反響から契約までの役割と数字の流れを整えることが、採用後も説明できる制度につながります。

よくある質問

不動産営業の歩合率は何%に設定すればいいですか?

外部の歩合率をそのまま当てはめないことが大切です。個別の金額・率は、雇用形態や事業モデルにより変わります。対象となる売上だけでなく、広告費、紹介料、外部委託、契約事務、管理者の支援など、案件ごとに会社が負担する費用を確認し、会社として残したい粗利を決めてから、評価対象となる成果と支給条件を整理する順番で設計してください。

共同で担当した案件の歩合はどう扱えばいいですか?

案件台帳に、主担当だけでなく支援担当と役割を残すことから始めます。共同案件や引継ぎ案件を、どの時点で誰が確認するかを決めておき、担当変更が起きた案件は、変更前後の役割と引継ぎ日を案件台帳で確認してから扱いを決めます。紹介案件は、紹介元・主担当・事務担当の役割を残し、誰の成果として扱うかを契約前に確認します。

歩合給の制度を変えるとき、就業規則の見直しも必要ですか?

労働条件や就業規則に関わる変更は、社会保険労務士などの専門家に内容を確認してください。あわせて、対象となる売上の定義、支給の時期、取消・返金が起きた場合、共同担当、担当変更、会社紹介案件の扱いを文章で示します。口頭の運用を残すと、同じ状況でも説明が変わりやすくなります。

営業組織と数字のつながりを整理したい方へ

報酬制度だけでなく、案件・反響・KPIをつないで、現場で回る営業基盤を設計します。

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泉

泉 款太(いずみ かんた)

株式会社SalesDock 代表取締役

慶應義塾大学法学部卒。スタートアップ、ラクスル、リクルート(SUUMO)を経て2025年に独立。 中小企業の経営・営業・業務・データをつなぐ事業基盤の設計と実装を支援。 不動産・製造業・クリニックを中心に、累計40社以上の支援に携わる。

運営は株式会社SalesDock(大阪市中央区本町)。中小企業向けに、AI自走プラン(初期構築15万円+月額10万円・90日)と、 そのあとのAI顧問(月額5万円・6ヶ月契約から)を提供しています。価格は税別です。 大阪・関西を中心に、オンラインで全国からのご相談に対応しています。

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この記事の数値について

本文中に一次資料へのリンクがある数値は、リンク先を出典としています。 リンクのない業務設計、判断基準、実務上の目安は、SalesDockが累計40社以上の支援と自社運用で得た知見を一般化したものです。 個別企業での成果を保証する数値ではなく、条件によって変わります。

CASE

実際の支援では、こう変わりました

  • 人材紹介3ヶ月の伴走支援

    サイトの文言変更を、担当者が一人で本番公開まで完了。

  • 防災メーカー3ヶ月の伴走支援

    見積書づくりで人が行うのは、粗利をどうするかの判断だけに。

  • 外国人材の就職支援試作からの伴走支援

    書類の回収・仕分けと履歴書づくりを、どこまで自動にし、どこを人が確認するかを決めて試作まで完了。

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広告・営業・利益・データの詰まりを、3分で整理

反響対応や案件管理だけでなく、経営判断まで含めて、先に整える場所を確認できます。