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不動産

仲介手数料を値切られたら?不動産会社の断り方と判断基準

金額の応酬ではなく、対応範囲と判断基準を共有する

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執筆:泉 款太(株式会社SalesDock 代表取締役)累計40社以上の中小企業を支援

仲介手数料を値切られたら?不動産会社の断り方と判断基準

この記事は不動産会社のDX・業務改善 完全ガイドの一部です。反響対応から契約までの業務設計もあわせて確認できます。

結論

すべて応じる必要はなく、断ることもできる

不動産会社は仲介手数料の値引き要請にすべて応じる必要はなく、断ることもできる。法令が定めるのは報酬の上限で、一律の定価ではない。値引きするか断るかは、対応範囲・案件の採算・比較条件を確かめ、社内の承認基準に沿って回答する。

  • 法令上の上限と、顧客と合意する実際の報酬額を分ける
  • 断るときは、物件調査・販売活動・契約・引渡しを含む標準額だと伝える
  • 担当者が決められる範囲、責任者、回答期限を社内でそろえる

仲介手数料の値引き交渉は断れる?不動産会社側の結論

不動産会社は、仲介手数料の値引き要請にすべて応じる必要はなく、断ることもできる。法令が定めるのは報酬の上限であり、一律の定価ではない。実際の報酬額は上限の範囲内で依頼者と合意して決める。

仲介手数料の値引きを断るときは、「この金額には物件調査・販売活動・契約・引渡しまでの対応を含むため、今回は標準額でお願いしています」のように、金額に含む対応範囲を具体的に伝える。

値引き要請への回答者は社内で決めておく。一例として、媒介契約前で担当者の承認範囲内なら担当者が応じるか断るかを回答し、範囲を超える要請や媒介契約後から売買契約前までは上長、売買契約後から決済直前は責任者が判断する。担当者の承認範囲外では回答期限を伝えて預かる。

マンション売却の計算例

マンション売却の仲介手数料も、値引き要請にすべて応じる必要はなく、断ることもできる。たとえば売買価格3,000万円(税抜)のマンションなら、消費税の課税事業者が売主(依頼者の一方)から受け取れる仲介手数料の原則の上限は105万6,000円(税込)で、半額にすると1件で52万8,000円(税込)減る。回答の前に、媒介の種類(専属専任・専任・一般)、販売活動の範囲、調査・広告の工数を確かめる。

値引きを断る・保留するときの伝え方

値引きを断るときは「規則なので無理です」だけで終えず、金額に含む対応範囲(調査・販売活動・契約・引渡し)と、値引き後も必要な工数を説明する。すでに報酬額に合意している場合は、合意した条件もあわせて示す。値引きと引き換えにサービスの質を下げるような言い方はしない。対応範囲を絞って金額を下げる場合は、外す業務と金額を書面で明示し、双方が合意したうえで決める。

場面伝え方の例社内で確認すること
即答できない「案件条件を確認し、上長または責任者から回答期限までにご連絡します」社内の承認範囲、回答者、回答期限を確認する
標準額を維持する「この金額には調査・販売活動・契約・引渡しまでの対応を含むため、今回は標準額でお願いしています」説明した範囲と実際の提供内容の一致
比較先が半額「当社の金額には販売活動と引渡しまでの対応を含みます。比較先の標準対応と別費用の範囲をご確認いただいたうえで、改めてご判断ください」自社の標準対応、比較先に確認できた条件
売買契約後から決済直前「ご相談の内容は承りました。報酬額は媒介契約時にご説明し合意した内容ですので、変更できるかは責任者が確認し、○日までにご連絡します」合意した報酬額と責任者の判断
条件を調整する「金額だけでなく、依頼範囲と追加対応の条件を並べて再確認しましょう」法令・契約上外せない業務、別費用の可否

賃貸の値引きへの返答

賃貸で仲介手数料の値引きを求められたら、まず標準額が報酬の上限内か確認する。課税事業者の場合、貸主・借主の双方から受ける報酬の合計は借賃1か月分の1.1倍(税込)以内で、居住用建物では依頼を受ける時に承諾を得ていなければ、一方から受けられるのは0.55倍(税込)までだ。そのうえで「当社の標準額は、物件のご案内から契約までの対応を含む金額です」と説明する。社内ルールの一例として、入居申込前で社内の値引き幅の範囲内なら担当者が回答できる。入居申込後の要請や範囲を超える要請は店長などの承認者が判断し、担当者は回答期限を伝えて預かる。

値引き要請を受けたときの確認項目

  • 比較条件: 相手の提示額だけでなく、媒介の種類、対応範囲、追加費用、契約条件を確認する
  • 案件の採算: 調査、広告、案内、交渉、契約、引渡し、外注の見込みを案件単位で見る
  • 顧客の事情: 資金計画、希望条件、意思決定時期、何に不安を感じているかを聞く
  • 判断権限: 担当者の承認範囲と、上長・責任者に判断を委ねる条件を確かめる

「他社は無料・半額」という情報は、そのまま前提にしない。相手の会社やサービス内容を推測・批判せず、顧客が比較できる項目を並べて確認する。価格だけでなく、対応の範囲と条件をそろえることが公平な比較につながる。

値引きの要請担当者権限外は保留回答の前に確認する4点比較条件案件の採算顧客の事情判断権限標準額を維持含む対応を説明する範囲と条件を調整外せない業務を確認承認して値引き理由と範囲を記録
値引きするかどうかは、比較条件・案件の採算・顧客の事情・判断権限を確認してから決めます。

担当者が使える説明の順番を決める

  1. 要請の背景を聞き、金額以外に不安な点がないか確認する
  2. 相手の見積もりを批判せず、比較したい対応範囲と条件をそろえる
  3. 自社の標準対応、個別対応、判断が必要な事項を資料で説明する
  4. 案件単位の採算と承認基準を確認し、即答できない場合は回答期限を伝える
  5. 結論と理由、合意した対応範囲を記録し、次回の見積・面談に活かす

値引き以外にも、対応範囲の調整、段階的な支援、資金計画の見直し、条件整理などを検討できる場合がある。ただし、契約・費用・法令に関わる内容は、曖昧に約束せず社内の承認と文書化を通す。

値引き前に確かめる報酬上限と、1件あたりの値引き額

値引き後の金額を説明する前に、案件に適用される報酬上限を確かめる。主な分岐は次のとおり。

  • 課税事業者の売買媒介:売買代金(税抜)の200万円以下の部分が5.5%、200万円超400万円以下が4.4%、400万円超が3.3%(いずれも税込)の合計が原則の上限。
  • 800万円以下の売買・交換:媒介に要する費用を勘案し、媒介契約時の説明・合意を条件として、課税事業者は売主・買主それぞれの依頼者から33万円(税込)まで受けられる特例がある。
  • 課税事業者の居住用建物の賃貸媒介:貸主・借主双方から受ける報酬の合計は借賃1か月分の1.1倍(税込)以内。依頼を受ける時に承諾がなければ、一方から受けられるのは0.55倍(税込)まで。

売買か賃貸か、売買なら800万円以下の特例の対象か、課税事業者か免税事業者かを確認する。免税事業者と長期の空家等の貸借は上限の扱いが異なるため、金額を伝える前に国土交通省の報酬告示と解釈・運用の考え方で適用条件を確かめる。担当者だけで判断できない場合は宅建士を含む社内の確認フローに回す。

消費税の課税事業者が売買の媒介で依頼者の一方から受けられる報酬の上限(原則の料率で計算、税込)と、半額・1割引きにした場合の1件あたりの減少額を価格帯ごとに示す。

売買価額(税抜)原則の計算による上限(税込)半額にした場合の減少額1割引きにした場合の減少額
400万円19万8,000円9万9,000円1万9,800円
800万円33万円16万5,000円3万3,000円
1,000万円39万6,000円19万8,000円3万9,600円
2,000万円72万6,000円36万3,000円7万2,600円
3,000万円105万6,000円52万8,000円10万5,600円
5,000万円171万6,000円85万8,000円17万1,600円

表の上限額は消費税の課税事業者を前提に、国土交通省の報酬告示(昭和45年建設省告示第1552号)の原則の料率(5.5%/4.4%/3.3%)で算出。免税事業者は告示第十一②により上限の扱いが異なる。800万円以下では特例により上限が33万円(税込)になる場合がある。減少額は表の額を基準にした計算値で、実際の受領額が異なれば影響額も変わる。

仲介手数料の値引きを判断するときは、価格帯ごとの報酬額から1件あたりの減少額を出し、その案件の人件費・広告費と並べて比べる。たとえば3,000万円(税抜)の売買で原則の上限額105万6,000円(税込)を半額にすると、1件で52万8,000円(税込)が減る。調査・広告・案内・契約の工数も見積もれば、値引きできる範囲を自社の数字で判断できる。

担当者が応じてよい値引き幅の決め方

担当者が単独で応じてよい値引き幅は、案件の予定報酬額から人件費・外注費と社内で必要とする利益を引いた残りの範囲で、社内の承認範囲として事前に決めておく。

  1. 案件の予定報酬額を出す。
  2. 調査・広告・案内・契約の人件費と外注費を見積もる。
  3. 予定報酬額から費用と社内で必要とする利益を引き、残る額のうち担当者が単独で減らしてよい上限(承認範囲)を決める。必要な利益と承認範囲は自社の過去の案件実績から定める。
  4. 承認範囲を超える要請は、媒介契約前と販売活動中から売買契約前までは上長、売買契約後から決済直前は責任者が決裁するなど、段階ごとの決裁者を社内で指定する。

値引きの可否を決める前に、自社の収益のうち仲介報酬が占める割合を社内で共有する。報酬への依存度が高いほど、値引きは採算に直接響く。不動産仲介の収益構造で、収益の内訳から整理する手順をまとめている。

自社が仲介報酬中心の場合仲介の報酬手数料=採算の全部自社に関連収益もある場合仲介の報酬関連サービスなど手数料=採算の一部自社の採算を社内で確かめる
値引きの可否を決める前に、自社の手数料が収益に占める割合を社内で確かめます。無料・半額の比較先がどこで採算を合わせているかは推測せず、顧客に比較先へ確認してもらいます。

「他社は無料・半額」と言われたときの説明の仕方

「他社は無料・半額」と言われたら、その場で値引きを約束せず、「当社の金額に含まれる対応範囲をご説明します。比較先の標準対応と別費用の範囲もご確認いただいたうえで、改めてご判断ください」と伝える。比較先の収益構造は推測せず、顧客には標準対応に含まれる業務・別費用になる業務・リフォームやローンなど関連サービスの紹介先を自分で選べるかを比較先へ確認してもらう。

「他社は無料・半額」と言われたときに、「他社は囲い込みをしている」「あそこは自社物件しか出さない」などと根拠なく断定すると、競合を貶める発言になる。不動産会社は、標準対応に含まれる業務や別費用になる業務などの比較条件を顧客に示し、どこに依頼するかの判断は顧客に委ねる。

サービス範囲を面談前から見えるようにする

値引き要請を交渉の場だけで扱わない。初回面談や媒介契約の前に、自社がどこまで対応するかを一覧で示す。売却・購入・賃貸など業態ごとに、標準対応と個別見積の対応を分けておくと、担当者も説明しやすい。

段階説明する対応例確認する条件
媒介前調査、査定根拠、販売・探索の方針対象範囲、資料、意思決定者
契約・交渉内見、条件調整、重要事項説明、契約支援役割分担、追加対応、期限
引渡し後必要な連絡・案内の範囲無償・有償の境界と窓口

交渉のタイミング別の対応—媒介契約前・販売活動中・申込〜売買契約前・売買契約後〜決済直前

同じ「値引きしてほしい」でも、いつ言われたかで確認すべきことは変わる。決済直前の要請に媒介契約前と同じ返し方をしないよう、場面ごとに要請の背景、優先して提案すること、誰が判断するかを分けておく。

買主から購入側の仲介手数料の値引きを求められた場合も、判断する人を段階ごとに決めておく。一例として、買主との媒介契約前で社内の承認範囲内なら担当者が回答し、範囲を超える要請と、媒介契約後から売買契約前まで(物件探し・購入申込の期間を含む)の要請は上長、売買契約後から決済直前は責任者が判断する。

タイミング要請の意味対応の軸判断する人
媒介契約前他社と比較中。査定・調査の工数はかかっているが、販売活動はこれから価格と対応範囲をそろえて比べてもらう。社内の承認範囲を超える値引きは上長へ回す担当者(社内の承認範囲内)/上長(範囲外)
販売活動中動きが鈍く、費用感に不安が出ている手数料ではなく、価格設定・広告・売り出し条件の見直しを先に提案する上長。活動報告とセットで判断する
申込〜売買契約前資金計画が詰まった。諸費用の総額が想定を超えた手数料単体ではなく諸費用全体を並べ、どこを動かせるか一緒に見る上長。他の当事者への影響を確認してから回答
売買契約後〜決済直前合意済みの条件の変更要請。断りにくい状況を前提にしている場合がある原則として合意条件を維持する。応じる場合は理由と範囲を書面に残す責任者のみ。担当者は即答しない

販売活動中に仲介手数料の値引きを求められた場合は、成果が見えないことへの不安が背景にないか確認する。反響数・内見数・問い合わせの内容を示し、価格設定や広告の見直しも含めて相談する。値引きだけで解決すると決めつけない。

値引きの結果を事業データとして残す

案件ごとに、見積額、値引き額、対応範囲、追加工数、成約・失注、紹介・再来の有無を記録する。個別の成功談ではなく、自社の数字で「どの条件なら採算が合うか」「どの説明で比較がしやすくなったか」を確認できるようになる。

候補先と意思決定者に利害関係がある取引では、価格比較だけで判断せず、利益相反がある取引を事前説明と承認記録で管理する。同じ仕様で比較できない差も承認資料へ残す。

価値を伝えるとは、抽象的に品質を主張することではない。対応範囲と判断基準を透明にし、顧客が納得して選べる状態をつくることだ。

よくある質問

仲介手数料の上限はどう確認しますか?

課税事業者の売買媒介では、売買代金(税抜)の200万円以下の部分が5.5%、200万円超400万円以下が4.4%、400万円超が3.3%(いずれも税込)の合計が原則の上限です。売買代金(税抜)800万円以下の宅地・建物の売買・交換では、媒介に要する費用を勘案して、課税事業者は原則の計算額を超えて売主・買主それぞれの依頼者から33万円(税込)まで受けられる特例があります。適用には媒介契約時に報酬額を説明し、依頼者との合意が必要です。課税事業者の賃貸媒介は双方合計で借賃1か月分の1.1倍(税込)が原則で、居住用建物では依頼を受ける時に承諾がなければ一方から受けられるのは0.55倍(税込)までです。免税事業者や例外の適用は告示で別途確認してください。

値引き要請には必ず応じるべきですか?

いいえ。仲介手数料は法令で上限が決まっているもので、一律の定価ではありません。不動産会社は値引き要請にすべて応じる必要はなく、断ることもできます。対応範囲・案件ごとの採算・取引条件を確認し、社内の承認基準に沿って判断します。

比較されたときには何を説明すればよいですか?

金額だけを反論せず、媒介契約から調査、内見・交渉、契約、引渡し、取引後までの対応範囲を、比較できる一覧で説明します。相手の見積もり内容は推測せず、確認できる項目で比べます。

仲介手数料の値引きをどう断ればよいですか?

「この金額には物件調査・販売活動・契約・引渡しまでの対応を含むため、今回は標準額でお願いしています」のように、金額に含む対応範囲を具体的に伝えます。担当者が判断できない要請は回答期限を伝えて預かり、上長または責任者が判断します。

泉

泉 款太(いずみ かんた)

株式会社SalesDock 代表取締役

慶應義塾大学法学部卒。スタートアップ、ラクスル、リクルート(SUUMO)を経て2025年に独立。 中小企業の経営・営業・業務・データをつなぐ事業基盤の設計と実装を支援。 不動産・製造業・クリニックを中心に、累計40社以上の支援に携わる。

運営は株式会社SalesDock(大阪市中央区本町)。中小企業向けに、AI自走プラン(初期構築15万円+月額10万円・90日)と、 そのあとのAI顧問(月額5万円・6ヶ月契約から)を提供しています。価格は税別です。 大阪・関西を中心に、オンラインで全国からのご相談に対応しています。

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この記事の数値について

本文中に一次資料へのリンクがある数値は、リンク先を出典としています。 リンクのない業務設計、判断基準、実務上の目安は、SalesDockが累計40社以上の支援と自社運用で得た知見を一般化したものです。 個別企業での成果を保証する数値ではなく、条件によって変わります。

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