仲介と買取再販どっちが儲かる?ビジネスモデル・収益構造の違いと経営判断のポイント
粗利率だけで比較しても意味がない。資金繰りまで含めて考える
執筆:泉 款太(株式会社SalesDock 代表取締役)累計40社以上の中小企業を支援
この記事は不動産会社のDX・業務改善 完全ガイドの一部です。不動産業の効率化を体系的に知りたい方はまず完全ガイドをご覧ください。
結論
収益モデルの違いを数字で押さえてから、自社の資金と体制で回るかを判断します。
- 買取再販は、仕入れと再生(リノベーション)の支払いが先に出て、契約時の手付金などを除き販売代金の大半が決済時に入る在庫商売です。仲介は在庫を持たない手数料商売です。
- 本記事の試算では、仲介は年商1億円、買取再販は年商3億円で営業利益はいずれも3,000万円です。買取再販は支払利息500万円を引くと経常利益2,500万円になり、仲介側に営業外損益がない前提の3,000万円を下回ります。
- 両方を行う場合は、仲介収入で固定費を賄えるか確認し、買取再販は保有できる件数に絞ります。事業別のPLと資金繰りを分けて管理します。
- この数字は業界平均ではなく、費用構造を比べるための仮定です。実際の判断では自社の資金力・人材・リスク許容度も確認します。
本記事の試算では、仲介は年商1億円、買取再販は年商3億円で、営業利益はいずれも3,000万円です。買取再販は支払利息500万円を引くと経常利益が2,500万円になり、仲介側に営業外損益がない前提の3,000万円を下回ります。買取再販は仲介の3倍の売上と在庫リスクを負って、営業利益が同額になる計算です。ただし、これは業界平均ではなく費用構造を比べるための仮定です。実際の利益は取引価格と費用で変わるため、粗利率・営業利益率・資金繰り・リスクの4軸で比較します。
買取再販のビジネスモデルと収益構造
買取再販は、中古の戸建てや区分マンションを自社で買い取り、リノベーションで価値を上げてから一般の買い手へ売るビジネス。仲介が「売主と買主をつなぐ手数料商売」なのに対し、買取再販は自社が売主となり、仕入値と再販価格の差を利益とする「在庫商売」。売上は再販価格で、売上原価には仕入値・リノベ費用に加え、取得に直接要する仲介手数料などの諸費用を含める。税金や登記費用などの具体的な会計処理は税理士に確認し、試算から漏らさない。さらに人件費・広告費などの販管費と、営業外費用となる支払利息がかかるため、粗利だけで収益性を判断しない。
仕入れ・再生・販売の3工程でお金が動く
買取再販のビジネスモデルで大事なのは、利益の出どころより「お金が出ていく順番」。仕入代金と工事費の支払いが先行し、販売代金は契約時の手付金などを除き、大半が決済時に入る。仕入れから入金まで、借入金利や人件費・広告費は毎月かかる。この記事の資金計画では3〜6ヶ月保有する場合を試算例とするが、業界平均を示す数字ではない。物件や市況で期間は変わるため、長期化した場合も確認する。
数字で見る買取再販の収益構造
買取再販は年商3億円、売上原価2.4億円、販管費3,000万円、支払利息500万円と仮定して試算します。当社や顧客の実績、業界平均ではありません。売上は税抜とし、仕入・工事・取得諸費用は売上原価、支払利息は営業外費用として区別します。
買取再販の収益構造(仮定による年商3億円の試算)
売上:3億円(再販売上)
原価:2.4億円(仕入・工事・取得諸費用の合計と仮定)
粗利:6,000万円(粗利率20%)
販管費:3,000万円(人件費・広告費・事務所費等と仮定)
営業利益:3,000万円(営業利益率10%)
営業外費用:支払利息500万円(仮定)
経常利益:2,500万円(経常利益率約8.3%。その他の営業外損益は0円と仮定)
買取再販は1件あたりの粗利額が大きくなる場合がある。たとえば再販価格2,000万〜5,000万円、粗利率15〜20%を仮定すると、1件で300〜1,000万円程度になる。弱みは在庫リスクと資金繰り。仕入れから再販の決済までは金利負担がある。たとえば3〜6ヶ月保有する場合を試算し、長期化する場合にも備える。売れ残れば値下げせざるを得ず、利益が一気に圧縮される。
仲介の収益モデル
仲介は在庫を持たないビジネス。売上は仲介手数料で、上限は原則、売買価格400万円超の物件で「3%+6万円」+消費税(2024年7月からは、800万円以下の低廉な空家等なら、依頼者に説明して合意すれば30万円+消費税まで受け取れる特例がある)。以下の試算は営業担当の人件費などを販管費に入れ、売上原価を0円と仮定する。実際の粗利率は外注費などの有無や原価・販管費の区分で変わる。
出典・一次情報
手付金の授受は国土交通省の不動産取引案内、支払利息の区分は日本政策金融公庫の損益計画記入例を参照。数値の試算はこれらの資料に載る業界平均ではない。
- 宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額(昭和45年建設省告示第1552号)(国土交通省)
- 「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」の改正(令和6年7月1日施行):低廉な空家等の報酬特例(国土交通省)
- 宅地建物取引業法関係(国土交通省)
制度・統計は改定されます。最新の情報は公表元でご確認ください。
仲介の収益構造(仮定による年商1億円の試算)
売上:1億円(手数料収入)
原価:0円(人件費などを販管費に計上する仮定)
粗利:1億円(粗利率100%)
販管費:7,000万円(人件費5,000万円+広告費1,500万円+事務所費等500万円と仮定)
営業利益:3,000万円(営業利益率30%)
仲介の強みは在庫リスクがないこと。弱みは、売上が営業担当の能力と件数に依存すること。人が辞めれば売上が落ちる。また、1件あたりの手数料は物件価格に連動するため、取り扱いエリアの相場が低ければ手数料も低くなる。
比較表:4つの軸で見る
表の利益率は費用構造を比べるための試算であり、業界平均ではありません。
| 項目 | 仲介 | 買取再販 |
|---|---|---|
| 粗利率 | 100%(年商1億円・売上原価0円と仮定した試算。業界平均ではない) | 20%(年商3億円・売上原価2.4億円と仮定した試算。業界平均ではない) |
| 営業利益率 | 30%(年商1億円・販管費7,000万円と仮定した試算) | 10%(年商3億円・粗利6,000万円・販管費3,000万円と仮定した試算。支払利息控除前) |
| 1件あたり粗利 | 手数料収入は税抜51万〜96万円(税抜売買価格1,500万〜3,000万円の片手仲介で上限額を受領する仮定。原価0円なら同額が粗利) | 300〜1,000万円(再販価格2,000万〜5,000万円×粗利率15〜20%を仮定) |
| 資金繰り | 手数料の受領時期は契約による。在庫なし | 仕入時に大きな支出。手付金などを除き入金の大半は決済時 |
| 在庫リスク | なし | あり(売れ残り・価格下落) |
| 人材依存度 | 高い(営業力に依存) | 中程度(仕入力+工事管理) |
ハイブリッドモデルの実態
仲介と買取再販を両方手がける会社もあります。不動産流通推進センターの2025年度調査では、回答者の事業内容(複数回答)に不動産売買仲介業84.1%と不動産売買業(買取・再販)35.2%が含まれています。ただし、両方を選んだ回答者の割合は公表されていないため、「両方手がける会社が多い」とは断定できません。
仲介収入で固定費を賄いながら、条件の合う物件では買取再販の利益を狙う組み合わせです。
ハイブリッドモデルでは収入源を分けられる一方、経営管理が複雑になります。仲介と買取再販ではKPIも資金管理も異なるため、事業ごとにPLと資金繰りを分けて確認します。
事業転換の経営判断チェックリスト
仲介から買取再販への参入、またはその逆を検討している場合、以下のチェックリストで判断する。
仲介 → 買取再販に参入する場合
- 仕入・工事・取得諸費用と保有中の支出を、融資の実行時期も含めて賄えるか
- 金融機関との融資枠は確保できているか
- リノベーションの工事管理ができる人材がいるか(外注先でも可)
- 仕入判断ができる目利き力があるか
- 販売開始から一定期間(例:3ヶ月)売れなかった場合の値下げ幅や売却方針など、損切りルールを仕入れ前に決めているか
買取再販 → 仲介を強化する場合
- 営業担当を採用・育成する体制があるか
- 集客チャネル(ポータル・自社HP)への投資予算があるか
- 物件価格と片手・両手の条件から手数料収入を計算し、固定費を賄う成約件数を確保できるか
- 成約までのリードタイムが長い(賃貸は短いが売買は数ヶ月)ことを許容できるか
まとめ:本記事の試算では営業利益は同じ、利息後は買取再販が下回る
本記事の仮定による試算結果
- 仲介は年商1億円、買取再販は年商3億円で、営業利益がともに3,000万円です。
- 支払利息500万円を引いた買取再販の経常利益は2,500万円となり、仲介側に営業外損益がない前提の3,000万円を下回ります。
- 買取再販は売上規模と在庫リスクが大きいため、利益率だけで有利とは判断できません。
- 実際には自社の数字で試算し、資金力・人材・リスク許容度に合う業態を選びます。両方を手がける場合は、事業ごとにPLと資金繰りを分けて確認します。
その「事業ごとにPLを分ける」を実際にどうやるかは不動産業の営業利益率・粗利率を業態別に見る|業界平均の正しい使い方で手順にしている。売上・原価・販管費のどこを業態別に割り振るかが決まらないと、比較しても判断材料にならない。
よくある質問
買取再販のビジネスモデルとは何ですか?
中古の戸建てや区分マンションを自社で買い取り、リノベーションで価値を上げてから一般の買い手へ売る事業。売上は再販価格、売上原価には仕入代金・工事費・取得に直接要する諸費用を含め、その差額が粗利になる。さらに人件費や広告費、支払利息がかかるため、手元に残る利益は粗利より少ない。仕入れで先に大きな支出があり、契約時などに手付金を受け取る場合もあるが、販売代金の大半は決済時に入るため、収益性と同じくらい資金繰りと在庫の回転が成否を分ける。
仲介と買取再販、どちらが儲かりますか?
本記事の試算では、仲介は年商1億円、買取再販は年商3億円で、営業利益はいずれも3,000万円です。ただし、買取再販は在庫を持つための支払利息500万円を引くと経常利益が2,500万円になり、仲介側に営業外損益がない前提の3,000万円を下回ります。つまり、この仮定では買取再販は仲介の3倍の売上と在庫リスクを負って、営業利益が同額になる構造です。これは業界平均や実績ではなく、費用構造を比べるための試算です。実際の利益は取引価格や費用で変わるため、自社の資金力・人材・リスク許容度も含めて判断します。
仲介から買取再販に参入するには、どのくらいの資金が必要ですか?
一律の最低額はなく、仕入代金・工事費・取得諸費用と保有中の金利・固定費の支払予定から、確実に実行される融資などの入金予定を差し引き、資金不足が最大になる時点で必要な自己資金を求めます。たとえば決済前の支出総額2,700万円、支払いに間に合う融資2,000万円、手付金の入金を見込まない仮定なら、差額700万円に売却遅延・工事増額への予備資金を加えます。これは計算例で、融資を受けられる保証や推奨額ではありません。資金計画では仕入れから再販の決済まで3〜6ヶ月保有する仮定を置き、さらに長期化した場合も試算します。一方、損切りルールの期間は販売開始から数えます。たとえば販売開始から3ヶ月売れなければ値下げ幅や売却方針を見直すなど、判断基準を仕入れ前に決めておきます。実際の期間は物件や市況で変わります。
仲介と買取再販を両方やる場合、何に注意すればいいですか?
仲介収入で固定費を賄いながら、条件の合う物件を買取再販する形もあります。収入源を分けられる一方、経営管理は複雑になります。仲介と買取再販ではKPIも資金管理も異なるため、事業ごとにPLと資金繰りを分けて確認します。
不動産・建設会社のためのAI業務改善ガイド
反響・見積・契約・管理ごとに、AIに任せる所と法令上人が見る所を分け、修繕依頼の実例と90日の進め方までまとめた全16ページの資料です。
資料を無料でダウンロード泉 款太(いずみ かんた)
株式会社SalesDock 代表取締役
慶應義塾大学法学部卒。スタートアップ、ラクスル、リクルート(SUUMO)を経て2025年に独立。 中小企業の経営・営業・業務・データをつなぐ事業基盤の設計と実装を支援。 不動産・製造業・クリニックを中心に、累計40社以上の支援に携わる。
運営は株式会社SalesDock(大阪市中央区本町)。中小企業向けに、AI自走プラン(初期構築15万円+月額10万円・90日)と、 そのあとのAI顧問(月額5万円・6ヶ月契約から)を提供しています。価格は税別です。 大阪・関西を中心に、オンラインで全国からのご相談に対応しています。
代表者情報を読む →この記事の数値について
本文中に一次資料へのリンクがある数値は、リンク先を出典としています。 リンクのない業務設計、判断基準、実務上の目安は、SalesDockが累計40社以上の支援と自社運用で得た知見を一般化したものです。 個別企業での成果を保証する数値ではなく、条件によって変わります。
関連記事
CASE
実際の支援では、こう変わりました
人材紹介3ヶ月の伴走支援
サイトの文言変更を、担当者が一人で本番公開まで完了。
防災メーカー3ヶ月の伴走支援
見積書づくりで人が行うのは、粗利をどうするかの判断だけに。
外国人材の就職支援試作からの伴走支援
書類の回収・仕分けと履歴書づくりを、どこまで自動にし、どこを人が確認するかを決めて試作まで完了。