仲介と買取再販どっちが儲かる?収益構造の違いと経営判断のポイント
粗利率だけで比較しても意味がない。資金繰りまで含めて考える
この記事は不動産会社のDX・業務改善 完全ガイドの一部です。不動産業の効率化を体系的に知りたい方はまず完全ガイドをご覧ください。
この記事のポイント
不動産仲介と買取再販の収益モデルを粗利率・営業利益率・資金繰りの観点で比較。ハイブリッドモデルの実態と、事業転換時の経営判断チェックリストを解説する。
「仲介は利益率が高い」「買取再販は1件あたりの利益が大きい」—どちらも正しいが、どちらも一面的。仲介と買取再販は収益の出方がまったく異なるビジネスモデルであり、単純な比較は危険。この記事では、粗利率・営業利益率・資金繰り・リスクの4軸で両モデルを比較し、経営判断のポイントを整理する。
仲介の収益モデル
仲介は在庫を持たないビジネス。売上は仲介手数料(物件価格の3%+6万円が上限)で、原価はほぼゼロ。粗利率は実質100%に近い。
出典・一次情報
制度・統計は改定されます。最新の情報は公表元でご確認ください。
仲介の収益構造(年商1億円の例)
売上:1億円(手数料収入)
原価:ほぼ0円(在庫なし)
粗利:1億円(粗利率100%)
販管費:7,000万円(人件費50%+広告費15%+事務所費等)
営業利益:3,000万円(営業利益率30%)
仲介の強みは在庫リスクがないこと。弱みは、売上が営業担当の能力と件数に依存すること。人が辞めれば売上が落ちる。また、1件あたりの手数料は物件価格に連動するため、取り扱いエリアの相場が低ければ手数料も低くなる。
買取再販の収益モデル
買取再販は物件を仕入れてリノベーションし、再販するビジネス。売上は再販価格で、原価は仕入値+リノベ費用。粗利率は15〜25%が一般的。
買取再販の収益構造(年商3億円の例)
売上:3億円(再販売上)
原価:2.4億円(仕入2億+リノベ4,000万)
粗利:6,000万円(粗利率20%)
販管費:3,500万円(人件費+広告費+金利負担)
営業利益:2,500万円(営業利益率8%)
買取再販の強みは1件あたりの粗利額が大きいこと(1件で500〜1,000万円)。弱みは在庫リスクと資金繰り。仕入れから再販まで3〜6ヶ月かかり、その間の金利負担がある。売れ残れば値下げせざるを得ず、利益が一気に圧縮される。
比較表:4つの軸で見る
| 項目 | 仲介 | 買取再販 |
|---|---|---|
| 粗利率 | ほぼ100% | 15〜25% |
| 営業利益率 | 20〜35% | 5〜12% |
| 1件あたり粗利 | 50〜200万円 | 300〜1,000万円 |
| 資金繰り | 決済時に入金。在庫なし | 仕入時に大きな支出。再販まで3〜6ヶ月 |
| 在庫リスク | なし | あり(売れ残り・価格下落) |
| 人材依存度 | 高い(営業力に依存) | 中程度(仕入力+工事管理) |
ハイブリッドモデルの実態
実際には、仲介と買取再販を両方やっている会社が多い。仲介で安定的なキャッシュフローを確保しつつ、良い物件が出たら買取再販で大きな利益を狙う—という戦略。
ハイブリッドモデルのメリットは収益の安定性。仲介の売上で固定費をカバーしつつ、買取再販の利益で成長投資に回す。ただし、経営管理が複雑になる。仲介と買取再販ではKPIも資金管理も異なるため、同じ管理手法では回らない。事業ごとにPLを分けて管理することが必須。
事業転換の経営判断チェックリスト
仲介から買取再販への参入、またはその逆を検討している場合、以下のチェックリストで判断する。
仲介 → 買取再販に参入する場合
- 運転資金として最低3,000万円以上の余裕があるか
- 金融機関との融資枠は確保できているか
- リノベーションの工事管理ができる人材がいるか(外注先でも可)
- 仕入判断ができる目利き力があるか
- 在庫が3ヶ月売れなかった場合の損切りルールを決められるか
買取再販 → 仲介を強化する場合
- 営業担当を採用・育成する体制があるか
- 集客チャネル(ポータル・自社HP)への投資予算があるか
- 仲介手数料の低さ(1件50〜200万円)を受け入れられるか
- 成約までのリードタイムが長い(賃貸は短いが売買は数ヶ月)ことを許容できるか
まとめ:「どちらが儲かるか」ではなく「自社に合うか」
仲介と買取再販は、どちらが優れているかではなく、自社の資金力・人材・リスク許容度に合っているかで判断すべき。手元資金が少なくて営業力がある会社は仲介向き。資金調達力があって目利きができる会社は買取再販向き。両方やるなら、事業ごとにPLを分けて管理する体制が必須。感覚ではなく数字で経営判断すること。
その「事業ごとにPLを分ける」を実際にどうやるかは不動産業の営業利益率・粗利率を業態別に見る|業界平均の正しい使い方で手順にしている。売上・原価・販管費のどこを業態別に割り振るかが決まらないと、比較しても判断材料にならない。
よくある質問
仲介と買取再販、どちらが儲かりますか?
粗利率だけ見れば仲介がほぼ100%、買取再販は15〜25%。ただし1件あたりの粗利は仲介が50〜200万円、買取再販は300〜1,000万円で買取再販のほうが大きい。営業利益率は仲介20〜35%、買取再販5〜12%。どちらが優れているかではなく、自社の資金力・人材・リスク許容度に合っているかで判断すべき。手元資金が少なくて営業力がある会社は仲介向き、資金調達力があって目利きができる会社は買取再販向き。
仲介から買取再販に参入するには、どのくらいの資金が必要ですか?
運転資金として最低3,000万円以上の余裕と、金融機関の融資枠の確保が目安になる。買取再販は仕入れから再販まで3〜6ヶ月かかり、その間は金利負担が発生する。あわせて、リノベーションの工事管理ができる人材(外注先でも可)、仕入判断の目利き力、在庫が3ヶ月売れなかった場合の損切りルールを決められるかも参入前に確認したい。
仲介と買取再販を両方やる場合、何に注意すればいいですか?
仲介で安定的なキャッシュフローを確保しつつ、良い物件が出たら買取再販で大きな利益を狙うハイブリッドモデルは収益の安定性が高い。ただし経営管理は複雑になる。仲介と買取再販ではKPIも資金管理も異なるため、同じ管理手法では回らない。事業ごとにPLを分けて管理することが必須になる。
泉 款太(いずみ かんた)
株式会社SalesDock 代表取締役
慶應義塾大学法学部卒。スタートアップ、ラクスル、リクルート(SUUMO)を経て2025年に独立。 中小企業の経営・営業・業務・データをつなぐ事業基盤の設計と実装を支援。 不動産・製造業・クリニックを中心に30社以上の業務改善に携わる。
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