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製造業

製造業の営業、"社長の人脈頼み"から抜け出す3つのステップ

10分で読める

この記事のポイント

製造業の営業は「社長の人脈頼み」になりがち。Step 1: 既存顧客ヒアリングで自社の強みを言語化、Step 2: HPと事例ページを検索で見つかる形に整備、Step 3: 展示会・紹介の後工程をスプレッドシートで仕組み化。ツールの前に営業プロセスを書き出すことが先決。

「新規? うちは社長が展示会で名刺交換してくるか、知り合いの紹介だよ」

製造業の営業について聞くと、だいたいこの答えが返ってくる。技術力には自信がある。品質も納期も真面目にやっている。でも新規開拓の方法が、社長個人の人脈と年2回の展示会だけ—という会社は本当に多い。

問題は、それが「今は回っている」こと。社長が元気なうちは仕事が入ってくる。でも5年後、10年後を考えたとき、後継者がその人脈をそのまま引き継げるかというと、ほぼ無理だ。

この記事では、僕が製造業のクライアントと一緒に取り組んできた「営業の仕組み化」について、3つのステップで整理してみる。ツールの話ではなく、営業プロセスをどう設計するかという話。


なぜ製造業の営業は属人化しやすいのか

「技術で勝負」という文化

製造業には「良いものを作れば仕事は来る」という空気がある。実際、それで30年やってきた会社も多い。だから営業に投資するという発想がそもそも薄い。

社長=トップ営業マンという構造

従業員30〜80人くらいの町工場だと、営業専任がいない会社が珍しくない。中小企業庁の調査でも、製造業の約45%が「経営者自身が主要な営業活動を担っている」と回答している。社長が業界団体の集まりに顔を出して、そこで仕事をもらってくる。これが唯一の新規ルートになっている。

展示会の「やりっぱなし」問題

展示会に出展して名刺を100枚集める。でもフォローアップの仕組みがないから、2週間後には机の引き出しで眠っている。ある会社では、展示会で集めた名刺のうち実際にフォローできていたのは全体の15%以下だった。残りの85枚は、そのまま消えていく。

営業の現状よくあるパターンリスク
新規開拓社長の人脈・紹介のみ社長不在で新規ゼロに
展示会年1〜2回出展、名刺収集フォロー未設計で85%が死蔵
HP会社概要と設備一覧だけ検索しても見つからない
引き継ぎ口頭+同行後継者が再現できない

Step 1: 既存顧客を分析して「自社の強み」を言語化する

まず「なぜ発注してくれたのか」を聞く

新規を取りにいく前に、今の顧客がなぜ自社を選んだのかを整理する。これをやっていない会社が驚くほど多い。

僕がある金属加工の会社(従業員40名ほど)と一緒にやったのは、主要取引先10社に対して「最初にうちを知ったきっかけ」「発注を決めた理由」「他社と比べてどこが違うか」をヒアリングすること。時間にして1社30分、合計5時間くらいの作業だった。

見えてきたパターン

その会社の場合、こんな結果が出た。

  • 10社中6社が「知り合いの紹介」で初回接触
  • 発注の決め手は「短納期対応」と「小ロットでも嫌がらない」
  • 競合との差は「技術力」ではなく「レスポンスの速さ」

社長自身は「うちは精度が強み」と思っていた。でも顧客から見た強みは別のところにあった。これはよくある話で、自社の本当の強みは顧客に聞かないとわからない。

具体的な打ち手: 主要顧客10社にヒアリング(1社30分)。「きっかけ」「決め手」「差別化ポイント」の3つを聞く。スプレッドシートに記録して、共通するキーワードを抜き出す。


Step 2: HPと事例ページを「検索で見つかる形」に整備する

製造業のHPは「名刺代わり」で止まっている

町工場のHPを見ると、だいたいこの構成になっている。

  • 会社概要
  • 設備一覧(機械の型番がずらっと並んでいる)
  • アクセスマップ
  • お問い合わせフォーム

これだと、すでに社名を知っている人しかたどり着けない。「SUS304 小ロット 短納期」で検索している潜在顧客には永遠に見つからない。

事例ページが最強の営業ツールになる

Step 1で言語化した強みを、事例ページとして載せる。大げさなものじゃなくていい。

事例ページに書くこと(1事例あたり)

業界と課題(「食品機械メーカーから、試作品を2週間で欲しいと依頼があった」)

自社がやったこと(「5軸加工で一体成形し、通常4週間の工程を10日に短縮」)

結果(「量産前の検証が1ヶ月前倒しになった」)

これを5〜10本載せるだけで、検索経由の問い合わせが変わる。ある会社では、事例ページを6本追加した3ヶ月後に、HP経由の問い合わせが月0〜1件から月3〜4件に増えた。

項目整備前整備後
HPの内容会社概要+設備一覧事例6本+強みページ追加
検索流入月50セッション月180セッション
HP経由の問い合わせ月0〜1件月3〜4件
問い合わせの質「見積もりください」のみ具体的な加工相談が増加

具体的な打ち手: まず事例を3本書く。1本あたり300〜500字でいい。「誰の・何を・どうやって・どうなった」のフォーマットで統一する。社内に書ける人がいなければ、社長が口頭で話した内容を録音してテキスト化するだけでも十分。


Step 3: 展示会・紹介の「後工程」を仕組み化する

名刺をもらった「後」が本番

社長の人脈や展示会で接点ができること自体は悪くない。問題は、その後のフォローが属人的で、続かないこと。

仕組み化といっても、やることはシンプル。

名刺→商談までのフロー

  • 名刺をスプレッドシートに入力する(展示会の翌営業日中に)
  • 3営業日以内にお礼メールを送る(テンプレートを用意しておく)
  • 2週間後にフォローの電話 or メール(「その後いかがですか」ではなく、事例ページのURLを添えて「こんな実績があります」と伝える)
  • 反応があった相手だけ商談リストに移す

これだけ。CRMなんて入れなくていい。Googleスプレッドシートで十分回る。

テンプレートを1つ作るだけで変わる

お礼メールのテンプレートを1つ作っておくと、送信のハードルが劇的に下がる。

お礼メールテンプレート例

件名: 【○○展示会】ブースにお立ち寄りいただきありがとうございました

○○様

先日は弊社ブースにお越しいただきありがとうございました。

○○(自社名)の△△です。

当日お話しした□□の件について、

類似の加工事例をまとめたページがございます。

→ [事例ページURL]

ご検討の際にお役立ていただければ幸いです。

お気軽にご連絡ください。

ポイントは、メールの中にStep 2で作った事例ページへのリンクを入れること。名刺交換の記憶が薄れても、事例を見れば「あ、こういうことができる会社か」と思い出してもらえる。

仕組み化の前後比較

フェーズ仕組み化前仕組み化後
名刺管理社長の名刺入れスプレッドシートに翌日入力
お礼メール気が向いたら送るテンプレで3営業日以内に全員へ
フォロー覚えていればやる2週間後にリマインド+事例送付
商談化率名刺100枚→商談2件名刺100枚→商談8〜10件

具体的な打ち手: まずスプレッドシートを1枚作る。列は「日付・会社名・担当者名・連絡先・接点(展示会/紹介/HP)・お礼メール送信日・フォロー日・ステータス」の8列。次の展示会や紹介があったときに、このシートに入れるところから始める。


まとめ: ツールより先に「プロセスを書き出す」

製造業の営業を仕組み化するというと、「CRMを入れましょう」「MAツールを導入しましょう」という話になりがち。でも僕の経験では、ツールを入れる前にやることがある。

営業プロセスを紙に書き出すこと。

  • 今、新規の接点はどこから来ているか
  • その接点の後、誰が何をしているか
  • どこで止まっているか

これを書き出すだけで、「社長の人脈に依存している部分」と「仕組みに置き換えられる部分」が見えてくる。

全部を一気に変える必要はない。Step 1の顧客ヒアリングだけでも、自社の強みが明確になって営業トークが変わる。Step 2の事例ページを3本作るだけでも、HPが「名刺代わり」から「営業ツール」に変わる。Step 3のスプレッドシートを1枚作るだけでも、展示会の名刺が商談につながるようになる。

小さく始めて、回るところから仕組みにしていく。それが、社長の人脈頼みから抜け出す現実的な方法だと思う。

泉 款太(いずみ かんた)

株式会社SalesDock 代表取締役

慶應義塾大学法学部卒。スタートアップ、ラクスル、リクルート(SUUMO)を経て2025年に独立。 不動産・製造業・クリニックなど現場産業向けのAI業務効率化コンサルを提供。 30社以上の中小企業のAI活用・業務改善を支援。

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